審判の暗示を持つスタンド、ジャッジメントを倒してから、ジャンが嬉しそうに浜辺の方へと向かう。私はその後ろを歩いて付いていった。
「おい! みんな驚くなよっ! 誰に出会ったと思うっ!」
「ポルナレフ! 心配したぞ!」
「どうした、その傷は? 敵に襲われたのか?」
「傷のことはどうでもいいんだよ! いいか、たまげるなよ承太郎! 驚いて腰抜かすんじゃあねーぞ、花京院! びっくりして漏らすなよ、アヴドゥル!」
全員が眉を顰め、首を傾げたりする。
「誰に出会ったと思う!? ジョースターさん! なんとっ、喜べ! パンパカパーン! 遥花が生きてやがったんだよォ!」
誰よりも大はしゃぎで、嬉しそうに私が生きていたことを話すジャンと、それを聞いてから私は現れて見たけど、みんなの視線がちょっと恥ずかしい、かも。
だけど、ジャンの予想とは違って、他のみんなはジャンほど喜ぶことはなく、どこか冷静で、ジョセフさんにいたっては出発を促していた。まあインドにいた時から私が生きていることを知っていたらこんな反応にもなるよね。私だって逆の立場ならそうなると思う。
「よう、ハル。怪我はねぇか?」
「ないよ」
「久しぶりだね、遥花」
「うん、久しぶりだね」
「もう背中の傷は平気なのか?」
「平気だよ。あーでも、ちょっとだけ突っ張るかな…」
そんな風に自然に会話を繋げるのを見て、ジャンは驚いていた。そりゃそうだよね。死んだ仲間が生きていたというビッグニュースにしては冷静すぎるもんね。
「おい…どういうことだ? その態度は、死んだ奴が生きていたというのに! なんなんだ!? その平然とした日常の会話は!?」
「ポルナレフ、すまなかったな。わしが遥花を埋葬したというのは、ありゃ嘘だ」
「なっ、な、な、なにぃーっ!?」
「インドで撃たれて倒れた私の頭と背中の傷を手当てしてくれたのはジョセフさんと承太郎だよ」
正直に言ってみると、ジャンはわなわなと震えながら典明の方を見た。
「て、てめーら、インドからすでに遥花が生きてるってこと、知ってやがって俺に黙ってやがったのか? 花京院! てめーもかッ!」
「僕も最初は驚いたさ、ポルナレフとJ・ガイルを追っているときは本当に遥花が死んだと思っていたよ。でもその後、本当は生きているってジョースターさんと承太郎に教えてもらったんだ。だけどポルナレフ、君は口が軽いから敵に知られるとまずい」
「うっかり喋られでもしたらハルが安心して傷を治せないからな」
「…そ、そうだ遥花! お前の姉さんがこの島にいる!」
「ごめん。それ私の変装。姉さんがいるのは本当だけど日本にいるよ」
「に…にゃにお~んッ! そこまでやるか…よくもぬけぬけとテメーら、仲間はずれにしやがって、グスン」
涙目になるジャンを見て、少しやりすぎてしまったかなと思い、抱きしめてよしよしと慰めてやる。
「ごめんごめん、悪かったよ。許して」
「遥花にはある買い物をしてもらっていたんだ」
「結構目立つ買い物でね、アラブの大金持ちを装って買ってきたの」
結果的にはただでもらったことになるけど……まあ間違ったことは言っていない! うん、言っていない。
「ある買い物?」
「さあ、それに乗って出発するぞッ!」
「うおおおっ、せ、潜水艦…ここまで買う?」
「これで紅海を渡るのか」
「追手から姿を消せるかもしれないが…」
「随分金のかかる旅行だな、この旅はっ」
「それは私も思う……」
気を取り直して潜水艦に乗り込む、と言ったところで典明が私に近づいてくる。
「どうしたの典明、私に何か用?」
「……遥花」
「うん? わわっ、なに、どうしたの?」
典明がぺたぺたと私の頬を触ったり、前髪をあげて額に残った傷を見て表情を変えたりした。
「よかったよ、本当に生きてて……」
そう言いながら典明が思い切り私を抱きしめる。
「も~……さっきジャンにすました顔で言ってた言葉はなんなの、ジャンにも言ったけど、君たちのせいで私はおちおち死んでなんかいられないよ……」
ため息をつきながら、私よりも少しだけ身長の高い典明の頭を撫でる。
「花京院も泣いてんじゃあねぇかっ」
「うるさいぞポルナレフ。僕だってあの時本当に死んでしまったかと思ったんだ」
「んもぉ~……承太郎~」
「心配させた罰だ。そのくらい許してやるんだな」
微かに笑みを浮かべる承太郎を見て、私は嬉しいような、そうでないような複雑な気持ちになる。
はあ、自分が思っていた以上に私って愛されているのかも。もうちょっと慎重になろうかな……。
そう心に決めて、私は潜水艦に乗り込んだ。
「そういやハル、いつのまにポルナレフのことをジャンって呼ぶようになったんだ?」
「ついさっきだよ。ジャンが私を死なせてしまったことを償いたい、なんて言うものだから呼び方を変えさせてもらったんだ。前からみんなともっと仲良くなりたいって思っていたからね」
「そういうことか。なら二度と死ぬんじゃあねぇぜ、ハル」
承太郎は私の頭を雑にぐしゃぐしゃと撫でてから、乱れた髪を手櫛でさっと直してくれる。
幼い頃からよく承太郎がやる撫で方。男らしい大きなごつごつした手で撫でられるのは、正直嫌ではない。だから私は髪が乱されるのも構わずに、承太郎の手を受け入れている。
「ふふ」
「何笑ってんだ」
「騒がしいのが、なんだか心地いいなぁって。承太郎も思うでしょ?」
「……さぁ? どうだかな」