ホテルのベッドで体を休めていた時、コンコンと私と承太郎のいる部屋の扉がノックされる。
「承太郎~」
「はぁ、怠けてんじゃあねぇぜ」
「今日の私は頑張ったもん。ベッドでゴロゴロするくらいいいでしょ」
「やれやれ…」
承太郎がベッドから体を起こし、扉を開けてからすぐにベッドで寝そべって雑誌を読んでいる私の方に戻ってくる。誰だったの、と聞く前に承太郎がジョセフさんが私と話をしたいということを伝えた。
黙っていれば、なんて思っていたけれど、やっぱりだめだよね。ちゃんと、ジョセフさんと話をしなくっちゃ…。
「……わかった。そのうちジョセフさんには話さなきゃいけないっていうのはわかっていたから」
「一緒にいた方がいいか」
承太郎の気遣う言葉に私はどうこたえるか迷ったけれど、結局こくりと頷いてしまった。
「ジジイ、ハルがいいとよ」
「あぁ」
ジョセフさんが部屋の中に入り、ソファに腰かける。すでに私は、今までずっと寝そべっていたベッドではなく、ソファの方に移動していた。流石にベッドで話すわけにはいかないからね。
承太郎はというと、私が座っているソファの背もたれに軽く体重を乗せるようにしていた。あくまでも私の近くの方に立って話を聞くらしい。
「遥花、何故お前はわしの魂が抜き取られるとき、JOJOと呼んだんじゃ。お前さんは承太郎のこともJOJOと呼んだことはないだろうに、何故だ」
「……正直に言うと、ほとんど無意識だったんです。口が勝手に動いた、というか」
ジョセフさんが今にも泣きそうな顔になるのを堪えながら俯いてしまった。
ああ…やっぱり、あの時のあの言葉を飲み込んでおけばよかった。そうすればジョセフさんにこんな悲しい表情をさせずに済んだというのに……。
「似ていた。確かに似ていたんじゃ……シーザーに。50年前のわしの友人で、兄弟子のキザなアイツと遥花、お前さんがぴったりと重なったんじゃ。だからどうか正直に答えてくれ、お前とシーザーは何か関係があるのか?」
「……本当は、誰にも言うつもりはなかったんです。ずっと私の中にしまっておくつもりだったんです」
私はぎゅっと自分の手を握ってから強い眼差しでジョセフさんの方を見た。
「ジョセフさん、私の祖母の名前はフランカ・ツェペリです。そして祖母の兄の名前はシーザー・A・ツェペリ。ジョセフさんの言うシーザーは私の大叔父にあたる人です」
「そう、か。やっぱり遥花、お前はシーザーと関係のある子だったんじゃな」
「黙っていて、ごめんなさい。祖母から50年前に大叔父、シーザーとジョセフさんの間に何が起きたか知っていました。だから、私がツェペリ家であることを教えたら、思い出して悲しませてしまうんじゃないかと、そう思うと話すのが怖くなってしまって……」
私の言葉をジョセフさんはちゃんと受け止めてくれたのか、納得したように深く頷き、そして私の頭を優しくわしゃわしゃと撫でた。
「…ごめんなさい」
「謝らなくていい。それよりもわしは嬉しいんじゃ、シーザーの守りたかったものが守られ、そしてツェペリの魂がお前さんに受け継がれていることが。だから、遥花、お前さんはこの旅が終わっても長生きするんじゃ。シーザーの分も」
「……はは、長生きしてほしいは私のセリフですよ、ジョセフさん。ね、承太郎」
「あぁ、そうだぜ」
「旅が終わったら波紋の使い方、ちゃんと教えてくださいね。誰も教えてくれなかったせいで私の波紋、ひよっこレベルなんですよ」
「ひよっこレベルとはいえ波紋を会得しているとは、遥花には驚かされてばかり
じゃのう」
「承太郎も一緒にやろうよ、ジョセフさんの孫だからきっとできるよ」
「旅が無事終わったらな」
承太郎がさっきのジョセフさんと同じように私の頭を撫でてくる。
ジョセフさんはそんなやり取りをする私たちを微笑ましそうに見ていた。