「カイロに着いたが、どうする?」
「まずはこれまで通り聞き込みをしてっましょう。この館の場所を知っている者がいるかもしれません」
「うむ、それじゃあ建物に詳しい大工たちに話を聞いてみるか」
写真を片手に色んな人に聞いてみたが誰も知らないようだった。
「わしは40年もこのカイロで屋根の修理しとるけど知らんねえ、こんな館は……似たようなのがいっぱいあるからなあ。でも建物の雰囲気だと建てられたのは100年以上前だな。ということはこの辺りから南の方を捜していけばいずれ見つかるよ」
「大工さん頭いいー……」
聞き込みをした大工曰く、カイロは南の方ほど古い建物になっているらしい。参考にならなくて悪かった、なんて大工は言ったが、かなりいい情報を掴めたと思う。
「ありがとよ。邪魔したな」
南の方に向かおうとしているその背後で1人の男が一行を見ていた。
「また会えたな、懐かしの顔ぶれ共……という感じだが、こんなに…DIO様の館に迫ってきているとは……もうすぐそこじゃあねぇか。ところで! ボインゴ! 新しく出たおめぇの予知だが…俺にはとても信じられねぇぜ! こんな馬鹿げたことが! こ、これから起こるわけねぇぜ!」
「ぼ…ぼ…ぼく、ぼくの、」
「"ぼくの予知は100%絶対です"そう言いてえんだろ!」
「そ…そうです。ハイ」
「うー、ちくしょう! こんなことを信じろというのか…正気の沙汰じゃあねぇ。こっ、こんなこと!」
ホル・ホースはトト神の予言の漫画を読んだ
―――
『ついに見つけたぞ、ジョースター! 承太郎! 遥花! ポルナレフ! アヴドゥル! チクショー! DIO様の館にどんどん迫っているじゃあねーか! スカタン共めーッ! 早いとここの弾丸をぶち込んでやるぞ!』
…と、ホル・ホースはドロドロに思いました。
『兄ちゃんのカタキだーッ!』
…と、ボインゴもブリブリ思いました。
でもホル・ホース。商店街でエンペラーの拳銃を使うことを考えてはいけません。
さあ! ホル・ホース! ポルナレフの鼻の穴に指を突っ込みーの! アーンドくすぐりーのするとォ!
やったーッ血を流して気絶だッ! ラッキーホル・ホース! 皆殺しのチャンス到来だーッ
―――
「……う、うう……う~~~っ、これが予知かァ!? 皆殺しのチャンス到来というのは分かったあ、ポルナレフの鼻に指を突っ込めだとお~ッ!? なんじゃこれはァ!? ええ、ボインゴよ!」
箱に隠れているボインゴにホル・ホースは予知の内容が書かれた漫画本の最後のページを叩きながらボインゴに言った。
「ふざけるな! …というのはこの点だ! いいか、仮にあの凄腕のポルナレフの鼻に指を突っ込めるほど奴に接近できるならだぞッ、ボインゴ。俺のエンペラーの弾丸を奴にぶち込んだ方が確実で手っ取り早いぜ! 違うか!?」
「だ、だ、だ…弾丸は…う、撃てないです……ハイ。う、撃とうと思っても、運命がそう…させる…からです。ハイ。し…信じるんです。ハイ。この漫画に描かれていることに…逆ら、おうとすると…苦しむ、だけです…ハイ。運命なんです、100%なんです。ハイ」
口ごもりながらも、ボインゴはそう言った。
だがホル・ホースはボインゴの兄貴、オインゴは予知を信じて行動したのに失敗し、今や病院のベッドで寝ている。そのことをボインゴに言う。
「に、兄ちゃんは身を守るため…つい、ウッカリして承太郎に変身してしまったんです。ハイ。漫画を信じて変身しなければ爆発したのは本物の承太郎なんです、ハイ。予知は間違っていないのです、ハイ」
疑心暗鬼のまま、ホル・ホースが再び一行の方を見ると、そこにポルナレフはいなかった。
「ポルナレフがいないぞ……おい、ポルナレフはどこだ? 奴がいないぞ…」
「動くな! ブスリといくぜ」
いつの間にかホル・ホースの背後にはポルナレフがいて、そしてその首にチャリオッツの剣が当てられていた。
「! ポ…ポルナレフ! うがあああっ」
ホル・ホースがエンペラーを出現させたが、すぐにポルナレフに壁の方に押し付けられてしまう。
「マヌケ、手癖の悪いことするんじゃあないぜ。腕は俺に見えるようにしとけよ。ハイエナのように尾行する奴がいるなと思って逆尾行してみれば…これはこれはお懐かしい、ホル・ホースの旦那じゃあねぇか? まだ懲りねえで俺たちを殺そうと…狙ってやがったな」
「うがぁッ、うぐぐ…ッ」
「インドでは世話になったな。遥花が生きてたからよかったが、じゃなきゃぁここで今即ブッ殺してたところだぜ」
「くっ…」
「1人か? ホル・ホース…いいや、おめーが1人とは信じらんねぇな。近くに仲間がいるはずだ。え? そうだろ?」
ホル・ホースが肩をぴくんと跳ねらせ、汗を垂らしていた。
「おめーは1人では怖くねぇが、おめーには人の才能を見抜く才能がある。才能がある奴とコンビを組んだら恐ろしい力を発揮する。どこにいるんだよぉっ、その相棒のスタンド使いはよぉ!?」
ホル・ホースはボインゴの居場所を吐くことはなかったが、ボインゴの隠れている本からボインゴの指先と本が見えてしまっていた。
「ん? おいなんだ、その箱の下は?! 誰かいるな!」
「おい、ポルナレフどこだ? 尾行してたやつは見つかったか?」
アヴドゥルの声を聞いてホル・ホースからさらに汗がダラダラと流れる。
そしてホル・ホースは半ばやけになって箱の下を警戒していたポルナレフの鼻の穴に指を突っ込んだ。
「にゃに!?」
「ヤッターッ!」
「なんの…真似だ? ホル・ホース…」
「う…うう…っ」
予知の漫画通り指をポルナレフの鼻の穴に突っ込めたのは良かったが、その後どうするかはわからなかった。何とも言えない微妙な空気がホル・ホースとポルナレフの間にただ流れていた。
「どうした? ポルナレフ」
「尾行している奴はいたのか? ポルナレフ!」
「アヴドゥルたちが、く…来るぞ…」
一行が近づいてくるのを察し、どうするかと悩んでいたホル・ホースにチャリオッツを叩きこもうとした時、同じようにポルナレフの眼前にエンペラーが突き立てられた。
「しまった…」
「や、やった…! 俺の方が速い! う、動くなッ、撃つぞ!!」
「おい! 聞こえているのか!?」
アヴドゥルたちがポルナレフのいる方を見ると、そこには壁にもたれかかっているポルナレフがいた。
「なんだ、そこにいたのか…。どうした? 尾行者はやはりいたのか?」
「あ、ああ~……」
姿が見られないように物陰に隠れたまま、それでいてエンペラーをポルナレフの後頭部に突き立てたままこれからのことを考えていた。
ポルナレフの鼻の穴に指を突っ込んだら全員をやっつけられるラッキーチャンスがやってくる、そんな予知が起こりそうにもない現状にホル・ホースは静かに腹を立てていた。
「び、尾行者はいなかったぜ。俺の気のせいだった」
「そうか。ところでお前、そんな建物の隅で何をしているんだ?」
「ちょ、ちょいともよおしたもんでなあ……小便だよ。へへへ」
「なんだって?」
「おいおい立ち小便か? こんな街の中で恥ずかしい奴だなぁ」
「てめぇポルナレフ…ハルもいるんだぞ」
承太郎の後ろから顔を覗かせて様子を見ようとした遥花の頭をぐいっと押して自分の背中の後ろの方へと隠してしまう。
「じょっ、いたいっ、なにっ、よく聞こえなかったんだけど、ジャンはなんて?」
「尾行者はいなかったんだと」
「(クッソォ、恥かかせやがって! そうだ! 合図を送ろう! 気づいてくれよ…)」
そう思ったポルナレフが舌を器用に動かして合図を送るが、全員何しているんだ、と言わんばかりの表情でポルナレフを見つめていた。
「ま、そういうわけだからちょっくら先に行っててくれ」
口ではそう言うが、合図に気づいてくれ、後ろにホル・ホースがいることを気づいてくれとポルナレフはまたも舌を器用に自分の背後の方に動かしていた。
「どうかしたのか? 顔を引きつらせて、ベロが痛いのか?」
「なに、私も見たい」
「大人しく後ろにいろ」
「なんで…?」
未だに頭を押され承太郎の後ろから顔を出せない遥花が切実な声でそう言った。
「……いや、後ろの物陰に何かあるという…ハッ」
気づいたのは良かったが、不幸にもアヴドゥルが口に出してしまったことでホル・ホースに合図を送ったことが気付かれてしまった。
そのことに腹を立てたホル・ホースがエンペラーの引き金を引こうとした時、ポルナレフが大きくくしゃみをした。その拍子にホル・ホースが物陰から姿を現してしまう。
「なっ、なにぃ…バカな、くしゃみだとぉ~!?」
「こ、この男は!」
「ホル・ホースだ! 気をつけろッ、そこの箱の下にも誰か潜んでいるぜ!」
予知通りに動くんじゃなかった、ボインゴと組むんじゃなかったと後悔しているホル・ホースと一行の元に1台の車が近づいてきていた。
「承太郎、あの車私たちの方に突っ込んで」
遥花が言い切る前に、その車はホル・ホースとボインゴ以外の5人に勢いよく突っ込んだ。
「こ…これは…さっき割れた香油の壺でトラックがスリップした、のか? いくら奴らでも、突然すぎてスタンドでトラックを防ぐ暇はなかったか……鼻に指を突っ込んだら予知通りになった…! 信じられねえ、一度に5人を!」
「運命なんですハイ、予知は絶対です。でも止めを刺すのはまだ早い、次の予知を見てからにするんです、ハイ」
「OK!」
―――
『やったぁーッ! 奴らを皆殺しのチャンス到来だッ! しかし気をつけろ、隠れて様子を見るんだー!』
『奴らに近づくのはまだ早い! 他の3人は気を失ったが、承太郎と遥花は気を失っていない! 立ち上がるぞッー!』
―――
「く、くう…承太郎と遥花は一瞬早く車をかわしていたか…。あぶねえ、うっかり近づいていたら反撃を食らっていたぜ。遥花が無事そうでよかったが、状況としちゃこいつはマズイぞ…」
ホル・ホースとボインゴは事故を起こした場所から離れた場所で状況を見つめていた。
「う…んん……ごめん、承太郎…もう少し早く言ったらスタープラチナで防げたかもしれないのに…ごめん」
「いや、いい。どこを怪我した?」
「ほとんど承太郎が庇ってくれたから、左腕がかなり痛い、右足もビリビリ痺れててあんまり力が入らない……でも多分骨は折れていないと思う…」
そう言って気を失っていない2人がよろよろと立ち上がる。
「この俺を捜しているな、止めを刺そうとせずにいなくなったことに疑問を持っているようだ。奴らに勝ちてぇよ、なあボインゴ。ここまで苦労したんだ、何としても勝ちたいぜ……そうだろ? ボインゴ」
わなわなと拳を震わせながらホル・ホースはボインゴに言う。
「おめぇの漫画の予知は100%完璧だ! し、信じよう。予知通り俺はなんだってやるぞ! 指を詰めろと出たなら詰める! クソを食えと出たなら迷わず食うぜ! 勝ちてえんだよ、俺は!」
「で、で、で、出たっ! つ、ついに出ました、ハイ! さ、最後の予知がッ!」
「なに…」
―――
『さあ! 次なるホル・ホースの攻撃はクライマックスだーッ! ホル・ホースは下水道工事の男たちを言つけたぞーッ! そして、金を払って下水パイプを1か所開けてもらうんだっ。ホル・ホースは! そのパイプの中に弾丸をありったけブチ込めば……どばっと弾丸が道向こうのパイプから飛び出て!』
ボインゴがページをめくると、そこには承太郎の額が撃ち抜かれている絵が広がっていた。
『正午キッカリにホル・ホースの弾丸が脳天をブチ抜いたぞーッ!』
―――
「やっ、やったッ! ついに出ました、ハイ! 待ってたんです、ハイ。この予知が出るのを待ってたんです、ハイ! ウケウコケウケッ」
「こ、こいつはすげえ! 承太郎の眉間をはっきりと撃ち抜いてるぜ、すっ、すげえが! ちょっと待て! 漫画の解釈を読み違えるとヤバいことになるぜ! み、見ろ! この前のページを、おめぇの兄貴がやられた時に出た予知だ! "承太郎が爆発して再起不能"って出てるのにこうなったのはおめぇの兄貴の方だったぜ!」
「こ、これは、兄ちゃんが変身の能力を持ってたからで、うっかり変身しちゃったからです、ハイ。でも今度は、ぼ、ぼくもホル・ホースさんも変身なんかできません! ハイ」
「そう、その通りだッ! 俺は変身なんかできない! 承太郎の真似だってするもんか! す、するってえと! この予知は!」
「そ……そうですハイ。兄ちゃんの仇を討てるんです! ハイ! この予知に読み間違いはありません! ハイ! あのパイプに弾丸をブチ込むとこの絵の通り承太郎は死ぬんですッ! ハイ!」
予知の漫画をもう一度読んでいたホル・ホースが時間が指定してあることに気づいた。
「正午キッカリだと? おい! 正午キッカリだとッ! 正午まであと2分しかねぇじゃあねぇかッ!」
「あ、慌てないで! ぱ、パイプに弾丸を打ち込むだけです、ハイ。十分に間に合います! ハイ。う、運命なんです。必ず起きます」
「わ、わかってる…100%だ! 信じている…信じているが…じ、時間を指定されると…焦るぜぇ~~…っ」