タイガーバームガーデンに着き、2人のスタンド使いの激しいバトルが繰り広げられる。
「おい、何かに隠れろ! アヴドゥルのあれが出る!」
「あれだと? ハル、エスケイプを出しな」
「リョーカイ。エスケイプ、異空間を開いて」
承太郎に言われた通りに遥花はエスケイプで異空間を展開し、マジシャンズレッドが繰り出すクロスファイヤーハリケーンの熱を異空間で吸い取って、別方向に出す。
それとは別に、ポルナレフが弾き飛ばした炎がアヴドゥルの身を焼く。
「アヴドゥルさん!!」
いくら話の流れを知っているとはいえ、仲間が自分自身の強い炎でその体が焼かれている様を見て、遥花は動揺せずにはいられなかった。
「ハハッ、予言通りだな。自分の炎で焼かれて死ぬのだ」
マジシャンズレッドが声を上げ、抵抗するのを見てポルナレフが呆れた声を出す。
「あーあ、やれやれやれやれだ。悪あがきで襲ってくるか、見苦しいな!」
悪あがき、敵のポルナレフの目からはそう見えても仕方がないのだろうが、事実、アヴドゥルの行動は
その証拠に、シルバーチャリオッツのレイピアは妙な手応えを感じていた。
次の瞬間、シルバーチャリオッツとその本体であるポルナレフの体が炎に包まれる。
「馬鹿な、切断した体内から炎が出るなんて!」
「あれはスタンドではない、人形だ」
「!?」
「炎で目が眩んだな。貴様が斬ったのは、シルバーチャリオッツが彫った彫刻の人形だ。私の炎は自在と言ったろ、お前が打ち返した火炎が、人形の関節部分をドロドロに溶かし、動かしていたのだ。自分のスタンドの能力にやられたのはお前の方だったな!」
改めてマジシャンズレッドの技、クロスファイヤーハリケーンがシルバーチャリオッツに確実に当たる。
「占い師の私に予言で戦おうなどとは、10年は早いんじゃあないかな」
「恐るべき威力、まともに食らった奴のスタンドは溶解してもう終わりだ!」
「ひでえ火傷だ。こいつは死んだな、運がよくて重症…いや、運が悪けりゃかな」
「どっちみち3ヵ月は立ち上がれんだろう。スタンドもズタボロで戦闘は不可能」
「さあ、ジョースターさん。エジプトへの旅を急ぎましょう」
「うむ」
階段を下りてくるアヴドゥルとすれ違うように遥花が階段を上る。
「どうしたじゃ遥花」
「終わりじゃあない」
その言葉と同時に遥花のスタンド、エスケイプの少女型の方が出現し、警戒態勢をとる。
その時「そうだ」と言わんばかりにシルバーチャリオッツがバラバラに分解し始め、ポルナレフの体が宙に飛んだ。
「奴が寝たままの姿勢で空へ飛んだ!?」
「ブラボー、おお、ブラボー」
拍手をしながらそう言うポルナレフに遥花を除く一行が驚きと困惑で目を丸くした。
「信じられん」
「ピンピンしている!?」
「しかし、奴の体が何故宙に浮くんだ」
「フッフッフッ、感覚の目でよーく見ろ」
華麗に着地を決めたポルナレフの横には甲冑を外し、身軽になったシルバーチャリオッツがいた。
「呆気に取られているようだが、私の持っている能力を説明せずにこれから君たちを始末するのは騎士道に恥じる。闇討ちにも等しい行為。どういうことか、説明する時間を頂けるかな」
「どうぞ、好きにしてちょうだい」
「遥花っ」
「どうかここは、私に任せてくれませんか。アヴドゥルさん、そろそろ私一人で格好つけてみたいのです」
キザったらしくウインクしてからポルナレフの方に数歩歩みだす遥花は様になっており、正直、すでに格好良かった。
「私のスタンドはさっき分解して消えたのではない。シルバーチャリオッツには防御甲冑がついていた。今脱ぎ去ったのはそれだ。アヴドゥルの炎に焼かれたのは甲冑の部分、だから私は軽症で済んだのだ。そして甲冑を脱ぎ捨て多分、身軽になった。私を持ち上げたスタンドの動きが見えたかね? そう、それほどのスピードで動けるようになったのだ!」
「ふふ、さっきは甲冑が重かったからアヴドゥルさんのクロスファイヤーハリケーンを食らったと、そう言いたいの?」
その言葉にポルナレフは頷かず、ただ不敵に微笑んでいた。
「逆に今はスピードに特化している分、防御力がないってことよね?」
「フム……ウイ、ごもっとも。だが無理だね」
「そうハッキリ言い切られるとちょっとムカついちゃうわね」
「何故なら君に、ゾッとするものをお見せするからだ」
「へえ、私を驚かせられる自信があるの?」
ポルナレフのスタンドが7体に増える。
「ば、馬鹿なっスタンドは1人1体のはず」
それを見た一行は信じられないものを見るような目で見たが、反対に遥花は「だから?」という目でポルナレフを見ていた。
「……それは残像でしょう」
パチンと遥花が指を鳴らすと、先に出現していた少女型とは別の、少年型が姿を現す。
「私のスタンドは正真正銘残像などではなく、2体いる」
「なッ」
「ゾッとしたのは、どっちかしらね。ねえ、ポルナレフ?」
「っ、だが、君の感覚はこの動きについてこれるのかな?」
「それは、こっちのセリフ。とも言えるかな」
煽るように笑い、一歩踏み出した瞬間、遥花の姿がふっと消える。
「どこに行ったッ!?」
「後ろ」
ポルナレフの耳元で、囁くように紡がれた言葉にポルナレフの心臓が跳ねた。シルバーチャリオッツの剣が遥花の体を斬ろうとするが、一足先に遥花の体がまた消える。
ポルナレフの四方八方に黒い何かが出現し、そこから声が聞こえる。
「残像だと言っても、その速さに感覚が追いつかないとしても、結局やることは1つだと思う」
遥花が先ほどと同じように指を鳴らす。
エスケイプが作り出す異空間が、残像も本当も、本体も関係なく全て異空間で体の一部を捕らえ、動けなくする。
「全部捕まえて動けなくする。私のエスケイプが出せる異空間の数に今のところ制限はない。つまりはそれだけ私の精神力は強い事なんじゃあないかと私は思うのよね」
両手足を拘束され、完全に身動きが取れないポルナレフにツカツカと近づいていく遥花。
「でもね、私のスタンドはパワーがない。あなたを倒すほどのパワーが」
ポルナレフは何かを感じ取ったように身を強張らせる。
「だから私が直接殴って気絶させる。恨まないでね」
鈍い音がタイガーバームガーデンに響いたような気がした。
それは宣言通り遥花がポルナレフを殴り、気絶させた音であった。
気絶したのを確認し、遥花は異空間を消して自分の方に倒れてくるポルナレフをしっかりと受け止める。
「ンッ、流石に重いかも……」
「な、なんという子じゃ! 本当に1人で片付けてしまいおった……」
「頼もしい限り、ですね…」
「それにしても最後の最後まで騎士道精神を掲げた誇り高き男じゃった……。殺すには惜しいのう」
気絶したポルナレフと、それを抱きとめる遥花の側に一行が近寄る。
「彼も私のように心の弱みを握られて操られていたんじゃないでしょうか」
「もはや戦える力は残ってはいまい。承太郎!」
「ああ、"抜き取る"ぜ!」
ウネウネと気持ち悪く動く触手を見てジョセフがうえぇ、と声を漏らす。
「うん、これで肉の芽が無くなって、憎めない奴になったわけじゃなぁ。ジャンジャン、ひひっ」
なんてくだらないダジャレを言うジョセフの傍らで遥花は、自分が殴って気絶させてしまったことに対する罪悪感を払拭するためにも、傷ついたポルナレフの体に、微弱ながらも波紋を流していく。
「本当ごめんね。ポルナレフ……あなたの目が覚めたらもう一度謝らせてね……」
未だ気絶しているポルナレフの額にこつん、と自分の額を合わせて遥花は謝っていた。
そうして一行は、船が来る港の方へと向かった。
出番とっちゃってごめんなアヴドゥル……だがこれは7スタ公式に「自分が戦う」コマンドがあったのが悪い。