船を調達するために港へ到着したのだが、私の思っていた展開とは違い、ジョセフさんが、
「ここから船に乗るがまだ時間がある。丁度いいからこの波止場で骨休めをしていこう。今日まで休む間もなく連戦だったからのう…」
と言った。確かに、聖子さんを助けるための旅だけれど、私たちがダメになったら元も子もないもんね。
ということで私たちジョースター一行はこの波止場でしばしの休息をすることとなった。
「ポ、ポルナレフ…」
ホテルのカフェのところで何かを考えるように座っていたポルナレフに私は声をかける。
「ん?」
「そ、その、タイガーバームガーデンでのことを謝りたくって……あなたのことを結構思いっきり殴ってしまって……それがその、申し訳なかったというか……ごめんなさい」
気まずさから、私の指が忙しなく動いてしまう。そんな私を見たポルナレフが、私の頭をぽんと叩き微笑んだ。
「あの時の俺とお前は敵同士だった。だからお前のとった行動は間違いなんかじゃあなかった。だから俺に謝る必要なんざねぇんだぜ」
「……そう、だけど、それでももう一度謝らせて。ごめんなさい、ポルナレフ」
「なら俺は許すぜ、そうだ。名前聞いてなかったな。なんていうんだ?」
「
一方的に走り去ってしまったけれど、謝ったし、きっと原作通りポルナレフは仲間になるだろうからこれからは優しくしていきたいなぁ……。
〇 〇 〇
※第三者視点
ホテルから出てきた遥花が承太郎と花京院と合流する。
「お待たせ。承太郎、花京院。ちょっとだけでもここを満喫しちゃおうね!」
「あぁ」
「そういやさっき食べ歩きに丁度いいって言われてつい買ったのがあるんだ。遥花も食べるかい?」
「
もちもちサクサクのワッフル菓子を花京院から受け取り、遥花がぺろりと平らげると、すかさず承太郎がもう1つ鶏蛋仔を遥花に渡した。キラキラと幼い子供のように目を輝かせて再びお礼を言った。
3人は、食べながら波止場を散策する。
楽しそうに先を歩く遥花を見ながら花京院が承太郎に話しかけた。
「承太郎、どうして多めに買ったのか不思議だったけれど、こういうことか……」
「言わなかったか? アイツは結構な大食いだぞ。しかも舌が肥えているから味にはうるせぇ。まぁ出されたもんは全部食う奴ではあるけどな」
「ふふっ、彼女らしいね」
2人より少し先に行っていた遥花が露店の前でぴたりと足を止める。
遥花が足を止めた露店には、アクセサリーやその他小物が並んでいた。
「何か欲しいものでもあるのかい?」
「え? うん、やっぱりアクセサリーとかは気になっちゃうかなぁって。でもこれから旅をして、スタンド使いとも戦うっていうのにアクセサリーなんかつけていられないかなぁ……」
眉を少し下げながら持っていたシンプルな金色のピアスを戻そうとした時、その手を取って花京院が店主にピアス代を払う。
「えっ、ちょっと…」
「いいから、ね」
「…あ、ありがとう」
頬を少し赤らめたあと、誤魔化すように咳払いをして買ってもらったピアスを耳に通す。
「どう?」
「うん、似合ってる。とても可愛らしいよ」
「派手なのよりもシンプルなやつの方がお前には似合うな」
「うっ……ンンッ、そろそろ時間だろうから船着き場の方に行くよ!」
もう一度咳払いをしてから遥花は船着き場の方へとズンズン向かっていく。
「タイガーバームガーデンでの彼女は頼もしくてカッコイイ、なんて思ったけれど案外女の子らしいところもあるんだね」
「本人にそれ言ったら顔赤くしてああいう態度とるけどな」
「ふふふっ」
そんな和やかな空気に水を差すものがいた。
「…見ろ、手配書のガキ共だ。こんなとこをノコノコ歩いてやがった」
「素人のガキを殺して100万ドルとはおいしい仕事だぜ」
「おい、他の連中に気づかれると厄介だ。サッサと始末するぞ」
拳銃など、物騒なものを持った3人の殺し屋が承太郎たちの前に立ちはだかる、が……運が悪かった。
「…やれやれだぜ」
「
「全くだ、同情する気にもなれないね」
何を言っているんだと問いかける前に3人の殺し屋が、同じく3人の高校生に完膚なきまでにボコボコにされる。
そうして3人は何事もなかったかのように、まるでただ誰かとすれ違ったかの如く自然な態度で北の方にある船着き場へと歩いていった。
「距離を取られて戦われると面倒だが、それも花京院がいたらなんも問題はねぇな」
「そうだね。私も花京院程射程距離長くないからなぁ、これからも頼りにしてるからね、かきょ……」
名前を途中まで呼んで口を閉じ、何かを考える遥花。
「ん? どうしたんだい?」
「いやね、私たちって一緒に旅をする仲間なわけじゃない?」
「そうだね」
「それでもって私たちは同年代で学生同士、よね?」
「うん」
「花京院はこっちを名前で呼んでくれているのに私たちが苗字呼びなのはちょっとばかし距離感があるように感じてね。だからさ、これからは典明って呼んでもいい?」
「へっ? えっ?」
素っ頓狂な声が出た花京院は思わず承太郎の方を見てしまったが、当の本人は「諦めな」と直接言いはしないが、そんなようなまなざしで花京院の方を見て首を横に振る。
「嫌だった? なら今まで通り呼ぶけど…」
「あっ、い、嫌じゃないっ、その、少し驚いただけなんだ」
「ふふっ、そう。それじゃあこれからよろしくね、典明」
ぱちっと可愛らしくウインクをして遥花を見て花京院は悟った。
「これ、まさかさっきの仕返しじゃあ…」
「だろうな。見ろアイツの顔、してやったみてぇな顔してるぞ」
船着き場に着くと、すでにジョセフとアヴドゥルがいて、3人と合流した。
「休めたか?」
「えぇ! こんな状況で言うのもなんですが、とても楽しかったですよ」
「はは、それはよかった。この先にスピードワゴン財団にチャーターを依頼した船がすでに港に入っているはずじゃ」
その船がどこかときょろきょろするジョセフらの前に1人の男が立っていた。
「どうした、まだ何か? ポルナレフ」
「まだDIOの呪縛を解いてもらったお礼を言ってない」
「だったら私でなく承太郎に言え」
「いらないな」
「ハッ、せっかくの礼だが受け取り手はいないらしい」
「あ、ああ……わかった、くどいのは俺も嫌いだからな。だが用はもう1つ。ムッシュジョースター、ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい」
「奇妙な質問?」
「詮索するようだが、あなたは食事中も手袋を外さない。まさかその左腕は右腕ではないだろうな」
左腕が右腕、先にポルナレフが言った通りそれは奇妙な質問であった。
問われたジョセフが自身の左腕を見ながら不思議そうに首を傾げる。
「確かに奇妙な質問じゃ、いったいどういうことかな?」
「妹を殺した男を探している」
真剣な眼差しと声音で告げられた言葉に、一同は言葉を失う。
「顔は分からない、だがそいつの腕は両腕とも右腕なのだ」
それを聞いたジョセフは、静かに左手の手袋を外す。そこには右腕ではなく、銀色の義手があった。
「50年前の戦いによる名誉の負傷じゃ」
「…失礼な詮索であった、許してくれ」
「良ければ何があったのか聞かせてくれんか」
ポルナレフは重々しい雰囲気を見せながら、口を開いた。
「もう3年になる」
――俺の妹は雨の日、学校からの帰り道をクラスメイトと二人で歩いていた。故郷フランスの田舎道だ。道の端に男が一人背を向けて立っていた。
雨が降っているというのにその男の周りは透明の膜でもあるかのように雨がドーム状に避けて通っていた。
突然、クラスメイトの胸がかまいたちにでもやられたかのように裂けた。そして次に、妹が辱めを受け、殺された。男の目的はただそれだけだった――
「九死に一生、命を取り留めたその友人の証言だ。その友人は男の顔は見ていないが"両腕とも右腕だった"と。誰もそれらの証言の内容を信じなかったが、俺には理解できた。俺がそれまで誰にも隠していた能力と同じものを、その男は持っていると思ったからだ!」
「明らかにスタンド能力者だ」
「俺は誓った! 我が妹の魂の尊厳と安らぎは、そいつの死で持って償わなければ取り戻せん! 俺のスタンドが、然るべき報いを与えてやる!」
「それで、妹の仇を捜している最中にあなたはDIOに出会ったというの?」
「あぁ、そうだ。それでキミらを殺してこいと命令された。それが正しい事と信じた」
「肉の芽のせいもあるが、なんて人の心の隙間に忍び込むのがウマい奴なんだ」
ポルナレフは、何かを決心した目でジョースター一行を見て、こう言った。
「俺はあんたたちと共にエジプトに行くことに決めたぜ! DIOを目指していけばきっと妹の仇に出会える!」
その言葉に最初に反応したのは花京院だった。自分以外のメンバーに「どうします?」と問いかける。
「私に異存はありませんが」
「フン…」
「どうせ断ってもついて来るじゃろうしなぁ」
「よろしく頼むぜ」
「うんっ! よろしくね、ポルナレフ!」
「おっと、ああ、よろしくな遥花!」
遥花が嬉しそうに笑いながらポルナレフに思い切りハグをして、ポルナレフもそれを受け止めた。
そうして新たな仲間と共に、シンガポール行きの船に乗った。