考案中小説集   作:屋田光一

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原作:鬼滅の刃

紫色の花を咲かせ、風に揺れ動く藤の花。山全体に、とある区画だけを取り囲むように狂い咲くこの藤の花は、一年中咲いているという、にわかには信じがたい生態を持っている。

 

花たちが囲むように咲いたその一角で、神社を彷彿とさせる石階段、その頂にそびえる赤い鳥居。

 

その奥に広がる広場には、全員が10代と思われる少年少女が十数名。だが少年少女と言うには、その顔に写されているのは並々ならぬ覚悟によって作られた表情。そしてその腰には、全員に古き時代のものとされる一本の刀が差されている。

 

 

 

 

その空間に、階段を一歩一歩登りながら、新たに二人の子供が現れた。

 

 

 

「ここで…あってるのよね…?」

 

一人は少女。艶のある黒い髪をうなじ辺りで切り揃えた、一見すると顔立ちは華族にも引けをとらない美しさを持つ。だが、その顔に映った表情は、緊張と覚悟が見え隠れしており、観光目的でこの場に来たわけではないことは明白。

 

「みたいだな…。ここが『藤襲山(ふじがさねやま)』…最終選別が行われる場所…」

 

もう一人は少年。この国において…否、世界から見ても珍しく、黒ずんでいるが自然を思わせる緑の髪と目を有している。少女と同様に、彼もまたこの先起こり得る()()()()なるものに挑戦しに来た者だろう。

 

この場にいる少年少女と同様に、腰に差した一振りの刀がその証。

 

 

「「皆様、今宵は『鬼殺隊』最終選別にお集まりくださって、ありがとうございます」」

 

血の繋がっている姉妹だろうか。同じ着物を纏った白髪と黒髪の二人の子供が、ここに集った者たちを労い、そして鬼殺隊と呼ばれた者たちの選別の進行を執り行っている。選別に合格する条件は、今いる場所のさらに奥…藤の花が咲いていない区画の中で、七日間生き残る事。

ただ区画の中で生き残るだけなら、それ程までに恐れる必要などないだろう。

 

 

 

 

だが、その区画の中に、何もいなければ…の話である。

 

 

 

 

 

 

『鬼殺隊』―――。

その数およそ数百名。政府から正式に()()()()()()()()組織。だが古より存在していて、今日も()を狩る。しかし、鬼殺隊を誰が率いているのかは、謎に包まれていた。

 

「獲物だぁ!一年ぶりの人肉だァ!!」

「二人もいるぞ!しかも一人は女だ!!」

 

『鬼』―――。

主食・人間。人間を殺して食べる。いつどこから現れたのかは不明。身体能力が高く、傷などもたちどころに治る。斬り落とされた肉も繋がり、手足を新たに生やすことも可能。体の形を変えたり、異能を持つ鬼もいる。太陽の光か、特別な刀で頸を斬り落とさない限り、殺せない。

 

「俺が女を喰う!!」

「馬鹿言うな!俺が二人とも喰らうんだ!!」

 

鬼殺隊は生身の体で鬼に立ち向かう。人であるから傷の治りも遅く、失った手足が元に戻ることもない。それでも鬼に立ち向かう。鬼に喰われないよう、人を守るために。

 

だが、驚異的な身体能力を持つ鬼を相手に、真っ向から戦っても人間では勝てない。人の力など簡単に凌駕し、捻じ伏せてしまう。

 

「下がってろ」

 

ならば鬼殺隊は、どうやって鬼に立ち向かうのか。彼らには、鬼と同等の力…あるいは上回る力を瞬間的に発する術を持っている。襲い掛かる二匹の鬼に対して、少女を退かせた少年は、鬼たちを見据えながら普段とは違う、音の違う()()を始める。

 

呼吸法。それが、鬼に対抗する人間が、奴等と渡り合う為に身につけた力。

『全集中の呼吸』とも呼ばれているその技法によって、体中の力を上げれば、鬼を滅する刃を振るえるようになる。

 

呼吸法にも種類が存在し、長き時を経て脈々と受け継がれている。自然に存在する元素を銘とした、炎・水・岩・風・雷と言う五つの流派に分かれており、基本鬼殺隊に属する者たちのほとんどが、この流派のうちの一つを習得している。

 

 

 

だが稀に、その流派から逸脱した、独自の呼吸。あるいは、派生させた呼吸を習得して、戦う者たちがいた。

 

 

「全集中…『()の呼吸』・弐ノ型…!」

 

 

 

抜き身の刀を真っすぐと構え、左側に下げた後、二匹の鬼目掛けて跳躍。刀に砂がまとわりついているかのように幻視されるその刃を振るいながら、右足を軸に横回転。二匹の間を切り抜ける様に振るった刀は正確に鬼達の頸を斬り落とした。

 

「『真砂旋風(まさごつむじ)』…!」

 

特別な刀で頸を斬り落とされた鬼は、その死体を残すことなく、黒い灰となって消えていく。太陽の光によって焼かれた鬼も同様。それが、鬼と言う生き物だ。

 

「っ…!茂みにもう一体…!」

 

少年が一息をついている隙を狙ってか、茂みに隠れていた鬼を感知した少女が、今度は自分がと言いたげに刀を構えて足に力を込める。そしてその鬼が隠れている茂みに…ではなく、近くの木に向けて一瞬で飛び跳ね、その視線を先程の茂みに固めたまま、再び跳躍。少年とは違う呼吸を扱い、己の体を高めていく。

 

「『()の呼吸』・壱ノ型…『刹那疾雷(せつなしつらい)』!!」

 

少年の方を狙っていた鬼は、少女の動きに気付く間もなく彼女に頸を跳ねられ、その身体を灰と変える。少女は刀についた血を払い納刀すると、少年の方に目を向けながら呆れるように言った。

 

「油断大敵よ『春斗』。先生からも注意されていたでしょ?」

 

「あ、ああ。すまん…『卯月妃』」

 

少年の名は『戸鳥(とどり)春斗(はると)』―――。

少女の名は『松前(まつまえ)卯月妃(うつき)』―――。

 

独自に派生した呼吸…とは少し違い、基本流派の呼吸に複数の適性があったことから、二つの呼吸を複合させたものを使う事を可能にした、珍しい例だ。

 

 

時には名の突出した者も、時には人知れず鬼に敗れた者も、時には他の隊士から嫌われた者も、長い鬼殺隊の歴史の中に、確かに存在した二つを合わせた呼吸を使いこなす隊士たち…。知らずのうちに、彼らはこう呼ばれるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

原作:鬼滅の刃

 

 

 

『複合呼吸の剣士たち』

 

 

 

時は大正。国は日本。蔓延る悪鬼を滅さんが為…。

 

 

 

今日も鬼狩りは、刃を振るう。

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