【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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※オリジナル設定です。実際の年代や神話などとは齟齬があるかも知れません。

ご感想や評価など頂けたら幸いです。


プロローグ
汝、悪であれ、怪物であれ


 昔々、あるところに妖精たちが暮らす小さな集落がありました。そこは妖精たちにとって理想郷であり彼らはそこでつつましやかに暮らしていました。

 

 ある日のこと、妖精たちは不思議な噂を耳にしました。人間たちが一人の青年に”この世全ての悪”をすべて押し付けて洞窟に閉じ込めてしまった、というものです。

 

 所詮噂話程度なので詳しいことはよくわかりません。「何でそんなことをするのだろう、相変わらず人間は不思議だ」と、そのままほとんどの妖精はいつも通りの生活に戻りましたが

 

 一匹の妖精は違いました。

 

”なんて面白そうなんだろう!!”

 

 早速自分でも真似してみようとその妖精は思いましたが、すべての悪を押し付けただけではあまり面白くありません、それでは人間と変わりません。

 

 三日三晩悩みましたがこれといった考えは浮かびません。

 

 少々飽きてきたので、気分転換に外に出てみると遊んでいる妖精たちの姿がありました。何をしているのかと聞いてみると、どうやら英雄ごっこをしているそうです。噂で耳にした様々な英雄たちになりきって遊んでいるのだとか。

 

 だけどみんなが英雄しかやらないので悪役がおらず、面白くないということでした。

 

”なら造ればいいじゃないか!!”

 

 さっそく準備を始めます。まず必要となるのは素体となる人間です。

 

 さすがに一から造るのはめんどくさいですから、近くの人間の村から持ってくることにしました。とりあえず村で最初に見つけた人間を持っていこうと探していると、一人の青年を見つけました。

 

 青年はこれといって優れた能力もなく平凡な人間です。誠実で真面目で努力家で村のみんなから愛されている、そんな人間でした。

 

 妖精は青年を眠らせると、さっそく自分の住処に持ち帰り準備に取り掛かります。

 

 ◇◇◇

 

 

「え...ここは...父さん?母さん?」

 

 どうやら人間が目を覚ましたそうです。ちょうど準備も整いましたし、妖精は儀式を始めます。

 

 幸い妖精は魔術に精通しており、ある程度の実力はありました。手始めにあらゆる”悪役”とされた怪物、英雄の情報を人間に押し込みました。それは過去のものであったり、未来であったり、またまた別の世界のもの、それはそれは膨大な量でした。

 

「ひっ、な、なに...い、イタイイタイ!おねが、やめっ、あああああああ!!!」

 

 当然、人間には耐えることができないほどの情報量です。このままでは死んでしまうので、治癒魔術などをかけながら少しずつ儀式を進めていきます。

 

 恐らく人格や記憶などは壊れるでしょうが、そんなもの些細なものです。

 

「.........」

 

 やがて青年は声も上げず、ただ妖精を恨めしそうに睨めつけるだけになりました。そんな人間の姿を見て流石に妖精も心配になったのか青年の頭をヨシヨシと撫でながら囁きました。

 

”もうすぐ終わるからね。そうしたら、みんなで遊ぼう。きっと楽しいよ!”

 

 けれども人間はちっとも嬉しそうではありません。ますます憎悪を込めた目でこちらを睨んでくるのです。やっぱり人間はよくわからないとおもいました。

 

 いよいよ最後の仕上げに取り掛かります。悪役は、最後には英雄に倒されるのは当たり前のことです。

 

 ですが簡単に倒されるのは面白くない、少しぐらい英雄たちと戦えるくらいではないといけないと考えました。最初は魔術などで強化しようかと思いましたがめんどくさくなり、戯れに自分の魔術回路を移植することにしました。

 

 それだけでは足りないと感じたのか一つ能力を与えました、”なんにでも姿形を変えられる”というものです。それは、竜であったり、悪魔であったり、またまた...

 

 ◇◇◇

 

 

”かくして悪役は造られた。”

 

妖精はとても喜びました。これでみんなも喜んでくれるでしょう!

 

———目の前の化け物は嬉しそうにしている

 

姿や表情はよくわかりませんが、この化け物も喜んでいるはずです。頭を撫でてあげましょう。

 

———自分の頭を触ってくる。気持ち悪い、不快感がこみあげてくる。

 

おや?どうやら他の妖精たちが訪ねてきました。ちょうどいい機会です。みんなにも紹介してあげないと!妖精は入り口に向かいます。

 

———いよいよ我慢ができなくなってきた。込み上がる怒り、憎しみ、それらを吐き出す。

 

妖精が入り口にたどり着いた瞬間、後ろから迫る巨大な獄炎に飲み込まれるのでした。

 

———それは、巨大な炎の塊となり辺り一面を包み込みこんだ。

 

 ◇◇◇

 

 

 そこからは地獄さながらでした。妖精たちの集落はあっという間に炎に飲み込まれました。

 

 少し離れた人間の村でもきっと彼の姿は見えたことでしょう。ですが、人間だった頃の彼の面影は全くあらず、ある者は"竜"だと、またある者は"悪魔"だと、そして彼の家族はそれを"神"であると言い祈り始めました。

 

 何もかも、何もかも燃やし尽くされ、食い尽くされる。もはや、人ですらないその怪物は翼を広げ飛び立ちました。

 

"汝、悪であれ。英雄に打ち滅ぼされるべし"

 

 これが記録に残る彼の最古の記録です。その後も彼は様々な神話や物語に登場していきます。次に彼が登場するのは...

 




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