【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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今回はアタランテから見た、彼の印象です。(やっと主人公の名前が出せる)

 いつの間にかUAが9000突破していたのでびっくりしました。10000目指して頑張ります!



狩人と怪物 「汝」

 最初は軟弱な男、という印象だった。

 

「汝は挑戦者ではないのか?」

 

”ち、違います。噂で聞いた君の姿を一目見たくて...その...”

 

 それが彼との最初の会話。私の語気が荒かったのか、それとも目つきがアレだったのか。あたふたと答えるその姿を見て、変な奴だ、勝負に挑む度胸すらないのか等々と思ったのを覚えている。

 

 所詮、挑戦してきた男たちと同じ、もう会うことなどないと、そう思っていた。

 

 その次の日だったか、確か獲物を探していた時だと思う。珍しく見つけることが出来ず、今日の夕飯は諦めてしまおうと考えていた。

 

 何時間か森をさまよった頃だった、二頭の鹿が此方に駆けてくるのを見つけた。

 

 一頭は何の変哲もない小鹿、だがもう一頭は別格だった。

 

 黒く鮮やかなその美しい毛並み、雄々しいその角。

 

 思わず見惚れてしまうと同時に、”何としても仕留めたい”、私の狩人魂に火が付いた、付いてしまった。

 

 慎重に矢をつがえ、先ずは小鹿を狙う。シュッと放たれた矢は確かに小鹿の頭を貫いた。

 

 ”次はお前だ”と狙いをつけた瞬間、―――凄まじい速さで”それ”は駆けだした。

 

 私も足の速さには自信があるものの、森の中では鹿の方が一枚上手。こちらは木から木へ飛び移るに対し、あちらは縦横無尽に地を駆けている。何とか仕留めようと何本か矢を放つものの、右へ左へ避けられる。

 

 だが、私にも狩人としての意地がある。あちらの回避地点を予測し矢を放つ。急所をとらえることはできないものの、着実に傷を与えていく。

 

 おそらく血を流すぎたのであろう、確実に距離は縮まる。ここまでくれば確実に仕留められる、そう確信し脳天めがけて矢を放とうとした瞬間、

 

「えっーーー」

 

 有り得ない光景が目に映り、息を呑んだまま唖然としてしまった。

 

 確かに直前まで鹿の姿だったのだ。それが今はどうであろうか。

 

 それは、一瞬にして姿を変化させ、黒き大鷹となり大空へと羽ばたいているのだ。

 

 それを見上げる私の頭には一つの昔話が浮かんでいた。

 

 ―――昔、狩人の仲間から聞いた話だ。

 

 曰くそれは何にでも姿を変えられる。それは黒い怪物である。それを仕留めた者は英雄となる。

 

 所詮、酒の席で聞いた話だ。酔っ払いの冗談だと聞き流していたが、今なら信じることが出来る。

 

「(手を動かせ、これは絶好のチャンスだ!!)」

 

 止まっていた思考を動かし、空を飛び逃げようとする怪物に再び狙いを定める。

 

 怪物は判断を二つ誤った。

 

 一つは大鷹なのではなく、もっと小さな物になればよかったのだ。それならば幾ら狩の名手であろうとも見逃していただろう。

 

 もう一つは、わざわざ視界の悪い森から出てきたことだ。これなら、障害物を利用して矢を避けられることもない。

 

 狙いを両翼定め、矢を放つ。

 

"――――!?"

 

突然襲ってきた痛みに驚いたのだろう。ここからでも、その慌てようが手に取るように分かる。

 

 止めと言わんばかりに、怪物に向け矢を放ち続ける。慢心はしない、今度こそ確実に仕留させて貰う。

 

 最初はなんとか避けようとしたようだが、次々に矢が突き刺さっていく。

 

「その傷では羽ばたくのも難しかろう――――堕ちろ」

 

 その言葉とともに放たれた矢が心臓部を貫いた。

 

 それが最後の決め手となった、力尽きたように、地へ向かって怪物は堕ちていく。

 

 

 

 

「~~~~~ッ!!」

 

 達成感と喜びで体が打ち震えてしまう。

 

 私が!この手で!あの怪物を仕留めたのだ!この興奮を抑えられるものか!!

 

 アルテミス様にいい報告ができそうだ。父にも報告してあげようか、もしかしたら...などとくだらない考えが浮かぶが、いかんいかんと冷静になる。

 

 まだ、死体を確認していない。これで逃げられてでもすれば滑稽にもほどがある。怪物堕ちたほうへ足を向ける。

 

「だが...あれの正体はどのような物なのであろうな」

 

 きっとすさまじく醜悪なものに違いない。かつてのアルゴー船の旅で遭遇したハルピュイアを思い出す。当時はあれほど醜悪なものに出会ったことはなく、暫く夢にまで出てきたほどだった。

 

「......」

 

 やはりやめておこうかと足を止めそうになる。が。仕留めた責任は自分にあるのだ、致し方なし。

 

「確かこの辺りに...む?これは血の跡か――――ッ!?」

 

 

 それを見て、さっきまの興奮は一気に冷めた。

 

 そこにいたのは、怪物でもなく、醜悪なものでもなく

 

「どうして、どうして汝がいる!?...まさか」

 

 あの青年だった。

 

「(これがあの怪物の正体だとでも?!)」

 

 思考が追い付かない、様々な疑問で頭が割れそうになる。

 

”ぐっ―――ごぷっ”

 

 血を吐く青年の姿を見て我に返る

 

「っ!今はそんなことより手当てをしなければ!!」

 

 そうだ、事情は後で聞けばよい。このままでは後味があまりにも悪い、青年を肩で担ぎ、自分の天幕へと急ぐ。幸いそう遠くない。

 

 ◇◇◇

 

 

"やばっ、こ、転―――ぐえっ”

 

 怪我人のくせに動こうとして転びそうになっている馬鹿の襟首を掴んで引き戻してやる。

 

「はあ―――なにをしているのだ汝は...」

 

”えっ!、あ、その、ありがとうございます?”

 

 はあ、と心の中でため息をついてしまう

 

「(いったい何者なのだコイツは)」

 

 

 

 あの後、青年に対し応急処置を施したものの、野生の中で学んだ知識のみで行ったので、このままでは今夜が山場かどうかの状況に陥った。

 

「くっ、アスクレピオスの処置をもう少し見ておくべきだったか」

 

 だが、その心配も杞憂に終わった。

 

 突然、青年の身体に刻まれた回路のような線が光りだす

 

「...これは、確か魔術回路だったか?」

 

 以前、王女メディアが魔術を使う際に見たことがあった。魔術師にとっての疑似神経だとか、魔力の変換機だとか説明を受けた気がする。話を聞いてもあまり理解はできなかったが。

 

 おそらくだが、自分の魔力を傷の治療にまわしているということだろう。事実、傷が少しずつ修復されていってる。

 

 顔色も大分よくなっている。しばらくは様子を見ておくのが一番だろう。

 

「そういえば、小鹿も仕留めていたな...今のうちに取りに行ってこようか」

 

 

 

 ...そうして、帰って早々これだ

 

「全く...怪我人なのだから大人しくしていろ。」

 

 無理矢理、床に寝かし傷の具合を確認する

 

”はわわわっわ”

 

 ...驚いたり、照れたり、騒がしい奴だ。

 

 とはいえ、傷もすっかり塞がっている。とても人間とは思えないほどの回復力。

 

「いったい何者なのだ汝は、あのように姿を変えたり、ただの人間ではあるまい?」

 

 どうしても疑問がぬぐい切れず、問いかけてしまう。

 

 あまり聞かれたくないことなのだろう、あんなに騒がしかった顔も血の気が引いたように青ざめている。

 

 暫く悩んでいるそぶりを見せていたが、観念したのか、静かに口を開いた。

 

”人間だよ、ちょっとだけ魔術が使えるね”

 

 嘘だ...とは言い切れない。随分とあっけらかんと答えたようだが、その目は真剣だ。

 

「私はあまり魔術に関して詳しいわけではない。だが、汝のそれは...」

 

"ぎゅるるる"

 

 響き渡る、腹の音。

 

 ...この状況で?

 

「腹が空いているのか?」

 

"そういえば今日はまだ何も食べてなかったな、あははは..."

 

 その一言を聞き、何だか馬鹿らしくなってしまった。

 

 外で焼いていた、小鹿の肉を差し出してやる。

 

「私の今日の獲物を分けてやる、それを食べて精をつけろ。」

 

 そう言って手渡すと、少しぎょっと顔をゆがめたが、直ぐにガツガツと肉を食べ始めた。

 

 少しだけ、”黒い怪物”の話題を出したものの、

 

”え~~酔っ払いに退治されるのはちょっとなあ”

 

 などと、冗談めいた答えを返された。結局、コイツの正体は分からないままだが、まあいいだろう。

 

 暫く、観察するようにその様子を眺めていると、不思議に思ったのだろう。首を傾げ何か言いたそうにしている

 

「汝の間抜け面を見ていると...ふっ、どうやら私の杞憂だったようだ」

 

”君ってその...案外ハッキリ言うタイプなんだね、あははは...はあ...”

 

 そんな話をしているうちに、食べ終わったようだ。

 

”ありがとう、だいぶ元気も出たしそろそろ自分の天幕に戻るよ”

 

 ...なぜもう動けるのだ、やはり人間ではないのでは?

 

「そうか...もう一度忠告するが用が済んだのならこの国を去れ。次にもし森で撃たれても文句は言えんぞ」

 

”あーうん、考えておくよ。じゃあね”

 

 手を振り、帰っていく。こちらが手を振りかえすことはしなかった。

 

 今度こそ、もう会うことはない。

 

 ない...はずだったのに!

 

 

 その次の日、いつものように狩から帰り、焚き火の準備をしている時だった。

 

”あ、おー-い!”

 

 聞き覚えのある声が後ろからする。

 

 振り向けば、手に一杯の果実を持ち、笑顔でこちらに近づいてくる彼の姿。

 

「はあ...」

 

 頭が痛くなる、何なのだいったい。

 

 私は確かに、この地を去れと言ったはずなのだが。

 

「汝は...馬鹿なのか?」 

 

”ええっ?!”

 

 その日から、彼が毎日訪れてくるのが日常になった。

 

”今日はブドウを持ってきたんだ、よかったら”

 

「いらん、去れ」

 

”え、”

 

 次の日も

 

”今日はザクロを...”

 

「...(無言で矢を放つ)」

 

”ひええええ"

 

 そのまた次の日も

 

"あれ?居ないのかな.."

 

「……(木の影に隠れている)」

 

"はあ...また明日来るか"

 

「何なのだ、まったく」

 

 性懲りもなく私のもとを訪れてくる。それが何日続いたのだろうか。

 

 ある日のこと、こちらもいい加減、我慢の限界がきた。

 

”今日はね、林檎を貰っ「...ええい、寄越せ!」え、あ”

 

 一度、食ってやれば満足するだろう。それに、林檎など等に食べ飽きている、こんなくだらないもの...。

 

 そう考え、少々乱暴に口に入れる。

 

「もぐっ――――こ、これは!」

 

 口いっぱいに広がる甘美な味わい。噛めば噛むほど溢れてくる旨味。何なのだこれは、私が今まで食べた林檎は腐ってでもいたのか?

 

 一口食べるたびに身震いするほどの快感が全身を駆け巡る。噛むたびに溢れる果汁、とにかく甘い!思わずほっぺたが落ちそうになる。

 

 口に運ぶ手が止まらない、あっという間に完食してしまう。

 

 思わずもう一つ食べようと手が伸びてしまうが、ふと、視線に気づいた。

 

「...なんだ」

 

”ん?いや別にー。まだまだ沢山あるし、良ければ一緒に食べない?”

 

「...好きにしろ」

 

 林檎につられたとか、断じてそういうわけではない、決して。

 

 彼はどこか嬉しそうに私の隣に座って、話し始める。

 

”森にいる動物たちがね、美味しい果実が実っている場所を教えてくr”

 

モグモグモグモグ...(林檎を食べるのに夢中)」

 

”え、もしかして聞いてない?!”

 

 ...そういえば、名前をまだ聞いていなかった。あちらは知っていて、こちらが知らないのは不公平だろう。

 

「...汝、名はなんという?」

 

"え、ああ、そういえば名乗ってなかったね。僕の名はーーー"

 

 その日から、彼が何か持ってくるたびに、ともに食事をするようになった。始めは、話をただ聞いていることが多かったが、次第に私からも話題を振ることが増えていった。

 

"友達が美味しいものが実っているところを教えてくれるんだ”

 

「友達...それは森の動物たちのことか?」

 

”うん、他にもいろんなことを教えてくれるんだ。例えば天気の見分け方t「人間の友達はいないのか?」...い、今はいない?かな、多分、うん"

 

 少し揶揄ってやると、彼は子供のような表情を見せる。その顔がなんだか面白くてつい笑ってしまう。

 

 まあ、友達がいないのはどうなのか、少し哀れと思う。この様子なら友の一人や二人簡単に作れそうではあるのだが。

 

"で、でも子供には好かれるんだよ!たまに遊んだりするし...”

 

"子供"その言葉に反応してしまう。

 

「そうか、子供か...それはいいことだな」

 

”子供好きなの?”

 

 無論だ。彼らが幸せに暮らすことが出来る世界を、私はいつも願っている。それが、どんなに難しいことか

 

「ああ、彼らの笑顔が好きだ。愛おしいと思う...」

 

 子ども達の笑顔を思い浮べると自然に笑みが浮かんでしまう。

 

"ならさ、今度一緒近くの村に遊びに行こう!子ども達も喜んでくれるよ!”

 

 急に何か思いついたような顔すれば、そんなことを提案してくる。

 

「汝と...一緒にか?」

 

"うん!"

 

 ああ、それはきっと楽しい日になるだろう。想像しなくても分かる。

 

 だけど、

 

「...そうさな、それは楽しみだ」

 

 ーーーきっと叶わない、私にそんな自由などないのだから。

 

 ◇◇◇

 

 

「アタランテ、いい加減父の言葉に従わぬか」

 

「申し訳ありません。ですが、これが私の信仰なのです。」

 

「そんなくだらない信仰など捨て置け!」

 

 このような問答をするのも初めてではない。

 

 

 

 数か月前だろうか、私のもとに一人の使者が来た。なんでも、父を名乗る者が私を呼んでいると。

 

 嬉しかった、嬉しかったんだ。今まで親の顔すら知らなかったので一目会いたいと常々思っていた。

 

 私はすぐに父のもとに向かった。

 

「おお、アタランテ...会いたかったよ」

 

 父は暖かく私を向かい入れ、温かい食事まで用意してくれた。

 

「そこでイアソンの奴が...」

 

「ほう、そうかそうか」

 

 つい口が軽くなり、これまでの旅の話をしていた。嬉しかった、私の話を楽しそうに聞いてくれて、それだけでも、もう満足だった。

 

 話がひと段落ついた頃、父から一つの提案を出された

 

「お前を王女として迎え入れたい」

 

「本当ですか!」

 

 今まで生きていて良かった。やっと家族と暮らすことが、

 

「―――そこでお前に、婿を取ってもらいたい。」

 

「え...」

 

 時間が止まった気がした。

 

 ああ、結局のところそれが目的だったのだな

 

「で、でも、私はアルテミス様に誓いを...」

 

「だからどうした?子は黙って親に従うものであろう?」

 

「アタランテ...私の、父の頼みをどうか叶えてはくれぬか?」

 

 肩に手が置かれる。

 

 口調はこちらを諭すようなものだが、その目は濁り、自らの欲望に取りつかれている。

 

 この男は、自分の父だというのに、”嫌悪”その感情が湧きおこる。

 

「っ...なら条件があります」

 

 この時点で、逃げ出していればよかったのだ。それができなかったのは―――

 

「私に走りで勝つこと。それでなければ結婚には応じません」

 

 嬉しかったのだ、必要とされたことが

 

 

 それから、求婚してくる男を打ち負かす日々が始まった。

 

 私に足の速さで勝てる男など、ギリシャ中探してもいないだろう。だから時間の無駄だ。だというのに日に日に参加者は増え続ける。どうやら、父が手をまわしているらしい、小賢しい男だ。

 

 父は時折、私のもとを訪れては先程と同じようなことを繰り返す。まるでそれしか言えない人形のように。

 

 

「アタランテ、何のためにお前を呼び寄せたと思っている!」

 

 だが今日は少し状況が違った。いつもは一人で来るのだが、今日は一人の女性を連れている。顔はよくわからないが...

 

「お帰り下さい。貴方と話すことはない」

 

「お、おのれ...!」

 

 いつもならこれで終わりなのだが

 

『あらあら、父に対して随分厳しいのね』

 

「...何者だ?」

 

『あなたに名乗る気はないわ。そ、れ、よ、り、も、やっぱり、貴方気に食わないわね』

 

 女性がこちらに手をかざし、なにか呪文のようなものを唱えだす

 

 いったい何のつもりだ!と抵抗しようとした瞬間、

 

「あれ...」

 

 突然、力が抜け、ガクッと膝をついてしまう。身体が燃えるように熱くなり呼吸をするのも辛くなってくる。

 

「はぁ...はぁ...な、なに...を」

 

せいぜい苦しみなさいな。さてそろそろ戻りましょう

 

 何か言っているようだが、もうよく分からない。

 

 ドサッと床に倒れ込む。

 

 既に二人は立ち去っており、この場は私一人。

 

「...っ...ふぅ...ふぅ」

 

 このまま、死んでしまうのだろうかと覚悟した。

 

”アタランテ...いる?”

 

 声が聞こえた。

 

"大丈夫⁉なんだ...この熱”

 

 誰か来たらしい。

 

 意識がハッキリしないのでよくわからない

 

「...だ...だ、だれか...」

 

 思わず、手を伸ばしてしまう。

 

 コレは幻かもしれない。もしかしたら誰も手を掴んでくれないかもしれない。

 

"....っ!"

 

 ―――でも、しっかりと手は握られた。

 

 その手の温もりに安心した。

 

 意識を手放す瞬間、目にしたのは、心配そうにこちらを覗き込む彼の顔だった。

 

 ◇◇◇

 

 

「...ん、うる、さい...」

 

 雨が天幕にあたる音で目を覚ます。

 

 どれほどの時間が経ったのだろう

 

「身体が軽い...」

 

 あれほど、辛かった身体が嘘みたいだ。

 

 なんだか、以前よりも力が湧いてくる、今にも走り出してしまいそうな。

 

"すぅ...すぅ...すぅ..."

 

 ⁉︎

 

 横を見ると、座りながら寝ている彼を見つけた。

 

 服もびしょ濡れのままで、完全に疲れ切ってしまったのだろう。

 

「...汝はどうしてそこまで、私に構う」

 

 答えは返ってこない。

 

 ここまで、看病してくれたのも彼であろう。

 

 でも、私には理由が分からない。

 

 所詮、他人でしかない、それなのに何故

 

"んん...アタ...ランテ"

 

「⁉︎......寝言か」

 

 今はただ感謝しよう。

 

 彼は紛れもなく、私を救ってくれたのだ

 

「ありがとう、"メラニオス"」

 

 初めて彼の名を呼ぶ。

 

 「...意外と気恥ずかしいものだな」

 

 そうして、再び眠りにつくのだった。

 

 ◇◇◇

 

 

「(えーー!今!名前呼んでくれた⁉︎)」

 

当の本人は名前を呼んで貰えたことに大興奮であった。

 

 




 ということでギリシャにおいての彼の名は"メラニオス"です。由来は単に本来の夫になる筈だった青年の別名からとりました。

 次回 「貴方の旅路に呪いあれ」
もしよろしければ、評価や感想などお聞かせください。心よりお待ちしております。

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