【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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わー!いつの間にかUA10000超えてます!ホンマにありがとう!
これからも頑張ります!評価してくれた人もありがとうございます!

若モリアーティも爆死しましたが、ドキンキホーテ当たってのでヨシ!
張角おじいちゃん欲しかった...

追記6/14 え?何でこんなにアクセス伸びてんの?ランキングにも載ってる?!怖い!


狩人と怪物 「貴方の旅路に呪いあれ」

 相変らず、土砂降りが続いている。この様子では夜まで止むかどうかといったところか。

 

『ありがとう、"メラニオス"』

 

「~~~~~~~!!」

 

 一方、メラニオスは、いまだに喜びで眠れなかった。体力的にも精神的にも、すでに限界を超えていたが、アタランテの一言でそのすべてが吹っ飛んだのだ。

 

「すぅ...すぅ...すぅ....」

 

 隣にはアタランテが眠っており、寝息を立てている。

 

 その寝顔を見るたび、心臓が高鳴るのだ。

 

「(寝顔が可愛いというか、美しいというか...ご馳走様です!)」

 

 何度もちらちらと見てしまう。

 

 もう少し、近くで見てもいいかなと身体を近づけようとした,が

 

「...(目を開けこちらを見ているアタランテ)」

 

「...(まさか起きてるとは思わず固まるメラニオス)」

 

 欲をかいたのが仇となった。

 

 意図せず、見つめあう二人。この状況でなければ踊りだしたいものだ

 

「...私の顔はそんなに面白いか?」

 

「えっ?!...いやーそのー、お、おはようございます?」

 

「.ああ、おはよう...汝は眠れたのか」

 

「えっ、うん、バッチリ!」

 

 無論、嘘である。

 

 

 

「...礼を言わなければならないな」

 

 一言二言、言葉を交わした後、少し気まずそうな感じでアタランテは頭を下げる。

 

「お互い様だよ。僕も君に助けてもらったし」

 

「...そうか」

 

 そう言った後、こちらに背を向け黙ってしまった。

 

 ...気まずい沈黙が続く。こういった空気は苦手だ、思わず逃げ出したくなる。何か、話題はないものかな

 

「...どうやって、この呪いを解いたのだ?」

 

 それはあちらも同じだったようで。

 

 さて、どう答えたものか。懐にある林檎を握りながら考える。

 

 

「ん~~~内緒!」

 

 やはりごまかしてしまう。林檎のことをあまり知られたくないのだ。

 

「...汝は隠し事ばかりだな」

 

 こちらからは顔が見えないので、どのような表情なのかわからない。

 

 そうだ。僕は結局のところ彼女に、本当のことを何一つ話していない。

 

「隠し事する人は...嫌い?」

 

 嫌われたくないんだ。ただそばにいたい、それだけだ、それだけなんだ。一人になりたくない、そばにいてほしい。

 

 それは孤独感によるものなのか、それとも独占欲なのか。

 

「隠し事や、卑怯な手を使う者は、あまり好かんな」

 

「...そっかぁ」

 

 やっぱりダメかと、絶望的な雰囲気を醸し出しながら答える。本当のことを話せばどうなるのだろう。彼女はそれでも笑ってくれるかな、隣にいてくれるのかな

 

 

「―――ふふっ、そんな顔をするなメラニオス」

 

 彼女は微笑を浮かべこちらを振り向く。

 

「人は誰しも言いたくないことの一つや二つあるものだ。私もそうだ、言えないことなどたくさんある。汝が言いたくないのであればそれでいいんだ...私を助けてくれたことに変わりはないのだからな」

 

 僕の頭を撫でながら「ありがとう」と、そう言ってくれる。

 

 ―――『ありがとう、愛してるわ。私の愛しい息子

 

 遠い記憶が呼び起こされた。優しい声だ、そして懐かしい。しかし、これが誰の声なのかはわからない。

 

 けれども胸の奥が熱くなり、目からは今にも何かがあふれ出しそうになる。

 

「あれ?...なんでかな、止まらないや」

 

 ぽたぽたと目から流れ落ちる涙。流がすのは何百年ぶりだろうか。

 

 拭っても、拭っても、それは流れ続ける。

 

 別に悲しいわけではない、ただ「ありがとう」と言われただけ、それなのになぜ。

 

 ―――なぜこんなにも心が苦しいのだろうか

 

「なぜ汝が泣くのだ、まったく...」

 

 アタランテはメラニオスをそっと抱き寄せ、胸を貸す。

 

 訳も分からず泣き続ける彼を、黙って見守る。

 

「今は少し休め...私にはこれぐらいしかできない」

 

 ◇◇◇

 

 

 どうやら、雨は止んだようだ。空には満天の星空が広がる

 

「もう、大丈夫なのか」

 

 アタランテが心配したように声をかけてくる。

 

 随分と恥ずかしいものを見してしまった。泣き顔を見られることすら情けないというのに、幼子のように抱きしめられては、恥ずかしいやらなんやらだ。今後、まともに顔を見れない気がする。

 

「うん、ありがとう。だいぶ憑き物が落ちたみたい」

 

 事実、心はだいぶ楽になった。結局のところ、あの声が誰なのかはわからない。でもいいのだ、今はこれでいい。彼女と過ごすこの時間を噛み締めていこう。

 

 二人は共に星空を見上げる。空は雲一つなく、星を見るのなら絶好の日だ。

 

「あ、ほら見て流れ星だ」

 

 メラニオスは空に向かい指をさす。それに目を向けると、きれいな尾を引いた流れ星が見えた。一つや二つどころではない、それは、まるで星空が泣いているように次々と降ってくる

 

「これは...素晴らしいな。これ程のものは初めて目にする」

 

 二人は目を輝かせ星空に魅入る。今、この時間だけは二人で同じものを共有できている、それは何よりも喜ばしいことだった。

 

「そういえば、願い事をしなきゃ」

 

「願い事...流れ星にか?」

 

 彼は手を握り、流れる星に祈りをささげる。

 

「昔、旅先で聞いてね。星の光が消えるまでに願い事を心の中で祈ると叶うんだってさ。何だか幻想的だと思わない?」

 

 メラニオス(怪物)が何かに祈ることは滅多にない。神に向かって祈ろうものなら、空からは轟雷が、雨が、矢が降り注がれる。それほどまでに神々は彼を恐れ、怒りを向けるのだ。

 

 しかし、星々は違う。どんな時でも明るく照らしてくれる。たとえその手が血に塗れようとも、別れに涙しているときも、常に見守っていてくれた。だからこそ祈れるのだ、「明日も生きれるように」と

 

 だが今日ばかりは違った。いつもは、ただ感謝を祈るだけであったが

 

「(いつまでもアタランテが笑顔でいられますように!アタランテが幸せでいられますように!アタランテと...ええっと...ご飯を食べれますように!それからー、それから―...)」

 

 実に欲望に忠実だった。

 

 アタランテはというと、ただ静かに祈っていた。その姿は美しいもので、メラニオスも祈りを中断し見惚れてしまうほどであった。

 

「...何を願ったの?」

 

「そうさな、こd......いや、ふふっ―――内緒だ」

 

 口に人差し指を当て、お茶目にそう答える。その姿は『ん~~~内緒!』と自分がごまかした時と重なった。

 

「「―――ふふふっ、あはははは」」

 

 お互いの顔を見ながら笑いあう。なんて幸せなんだろう、そうだ、僕はこの笑顔を見るために生きてきたんだ。

 

 ◇◇◇

 

 

 さて、楽しい時間はいったん終わり。

 

 

 

 ―――『単純なことよ、私を楽しませなさいな。貴方がどんな風に結末を迎えるか、その瞬間を見てみたいのよ』

 

 

 

 別に言う通りにするわけではない。ただ、確認というか、覚悟を示したい。

 

 

 

「君の父上に会ったよ」

 

「そうか」

 

「結構、傲慢な人だったよ」

 

「そうだな...初めて会った時からそうだった」

 

 感情のこもっていない声。僕がこれからいうことを知っているのだろう。

 

「君は父上に...きっと...」

 

 ”愛されていない”その言葉を紡げない。でも、彼女は理解しているのだ

 

「”愛されてない”か...そうであろうな、分かっているさ」

 

「ッ...!分かっているなら何で、何で、従い続けるんだ!」

 

 逃げ出してしまえばいい、投げ出せばいい、彼女にはその資格がある。これは八つ当たりに近い。「逃げたい、助けて」、それを言ってくれのであれば直ぐにでも行動に移せるというのに。

 

 

 

「どうしてだろうな...家族だからかな。あれでも私の...血の繋がった、たった一人の家族、親なんだ」

 

 

 

 メラニオス(怪物)はその思いを理解できない。根本的に無理なのである、”彼”自身には親、ひいては本当の家族と過ごした記憶などない。だから分からない、子が親を思う気持ちなど。その愛が決して満たされることがないことも。

 

 

 

「父から、私に勝負を挑めとでも言われたか?」

 

「...直接的にってわけじゃないけど」

 

 実際、あの男ではなく女神から言われた事ではある。

 

「やめておけ。汝は私には勝てない」

 

 それは確信めいたものだろう。彼女の足の速さにかなう”英雄”など今まで現れなかったのだから

 

「やってみなくちゃ分からない」

 

「姿でも変えるのか?やめろ、人でない姿になろうものなら、周りのものに反感を買いどんなことをされるか...」

 

 別にそれでもいい、どんなことを言われようと、何はともあれ勝てばいいのだ。でも、それを彼女は望んでいないだろう。だから、その選択はしない。

 

「大丈夫、僕は人として勝負を挑むよ」

 

「なぜっ!!...私は、お前を」

 

 ”殺したくない”、それがアタランテの本心。たった数日の関係、それでも彼女にとってメラニオスは、『生きてほしい』、そう心から思えるほどの存在となった。

 

「それは...僕は君を―――

 

 

 

 

愛している愛して、愛して愛して、している。

 

 

 

 

君を...君が、大切な人だから」

 

「だから、君を手に入れてみせる」

 

 どんな手を使っても、と懐にしまっている林檎を握りしめる。

 

「...愚か者」

 

 ―――ただ、幸せに生きてほしい。自分なんか気にせずに、貴方ならもっといい人と出会えるはず。

 

 その思いは彼には伝わらない。その言葉では彼を救えない。

 

 それで会話は終わり。もはや言うべきことはないと、互いに背を向け、いるべき場所へと帰る。

 

「僕は、必ず...君に勝ってみせる」

 

 その言葉に応える者はおらず、ただ静かに響き渡るだけだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 最初から気づくべきだった

 

 

「あれ程忠告したにもかかわらず、それでも私に挑むのか」

 

 

 なぜ周りを囲む者たちが武器を持っているのか、なぜその者たちが獲物を狙う目をしているのか

 

 

「言ったろ、君を手に入れてみせるって」

 

 

 

 

 全ては女神の手のひらの上ということを

 

 

 

 

「...加減はせん。全力でこい」

 

「言われなくとも」

 

 スタートの合図が鳴り響く。

 

 相も変わらず、アタランテは少し遅れてから走り出し、メラニオスの後を追う形となる。

 

 しかし、二人の距離はどんどん近づいていく、もとよりハンデなどないに等しいのだ。

 

 

『林檎を後ろに投げなさいな、そうすれば彼女は足を止めるわ』

 

 

 頭に声が響く、そうだ、そうすればいいんだ。

 

 懐に手を入れ林檎を掴む、後はこれを―――

 

 

 

 

”隠し事や、卑怯な手を使う者は、あまり好かんな”

 

 

 

 

 

「あっ―――」

 

 

 駄目だ、できない。林檎を投げれない。

 

 これで勝っても、彼女の笑顔は見れない。

 

 

 ゴールまであと半分といったところでメラニオスは追い抜かれる。彼女が後ろを振り返ることはなく、ただいつも通り走り抜ける。

 

 

「(僕自身の力で勝たなきゃ意味がない)」

 

 だからと言って諦める?勿論、否だ!

 今の今まで彼女に敵う”英雄”は現れなかった。無論、彼も"英雄”ではない。

 

「『私に力を 私は地を駆け 森を駆け 風となる』」

 

 全ての魔力回路を起動。全魔力を駆け抜けるためのブースターとして放出させる。

 これでも勝てるか五分五分といったところか。だがそれでいい、彼女の隣に並ぶことはできる。さあ、足がもげようと走り続けよう、その覚悟はできているのだから。

 

 

「ーーーうおおおおおおっ!」

「っ!...メラニオス?!」

 

 

 

 背後から吹っ飛んでくる者に驚くアタランテ。それもそのはず、今まで彼女に追い越された者は皆、諦めるか、逃げ出すかの二択だった。

 

 だがメラニオス(怪物)は違った。彼はその背中を追う、自分自身の力で、全力で。強化された身体能力によりグングン差を詰めていく。

 

―――ゴールまであと数十メートル、ついに彼女の隣に並ぶ

 

 アタランテは追うことはあっても追われることなどなかった。だからこそ負けられない、俊足の狩人としての意地がある。それがたとえ己が愛する男でも。

 

―――ゴールまであと数十歩、残るは猛烈なデットヒート、二人は必死の形相でゴールを目指す

 

「(あと一歩、あと一歩前に出なければ、勝てない)」

 

 ならばどうするか、まあ、答えは決まっているのだけども。

 

 

 ”敢えて魔力を暴走させる”

 

 

 勿論、彼女を巻き込まないように小規模にではあるが。

 

BOM"

 

メラニオスの身体が小さな爆発を起こし、ゴール直前に前に吹っ飛ぶ。

 

 必死に、がむしゃらに走り抜けた。誰一人、たどり着くことなかったゴールに、彼はたどり着いた。ずざざーと、頭から突っ込む形とはなったものの、それは確かに記録に残った。

 

「ゴホッゴホッ...かっこ悪いなあ...もう」

 

 それでもいいとメラニオスは思う。勝たなければならない、それは勿論そう。でも、どんなに無様でも、彼女と並び走れたことが何よりも喜ばしいことなのだ。

 

 アタランテがこちらに歩いてくる。

 

「...無茶をする」

 

「あはは...絶対に勝つって言ったろう?」

 

「そうだな...お前の勝ちだメラニオス」

 

 手が差し伸べられる。

 ああ、言わなくちゃ。今まで言葉にできなかったけれど、今ここでいうのがふさわしい、そうに違いない。

 手を取り立ち上がる。彼女に向かいあい、僕は口にする。

 

 

 

「僕は...君のことを―――

 

 

 

 

 

『―――今よ!矢を放ちなさい』

 

 

 

 

 

愛しt―――ゴフッ」

 

 

 突き刺さる、一本の矢。

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 沸き立つ観衆。それに呼応してか次々と矢の雨が二人に降り注ぐ。

 

「(ああ...そうか、最初からそういうつもりか。)」

 

 メラニオスはアタランテを引き寄せ、庇うように抱きしめる。それでは守り切れないと巨大な翼を自分たちを包み込むように展開する。

 

 それでもなお、矢の雨は降りそそぐ。

 

 

 

 

 

「お、おい。いいのか?アタランテごと撃っちまっても?」

 

「ああ?知らねえよそんなの。あの怪物を退治すれば、この国の王にしてやるって”アフロディーテ”様から直々の神託だぞ。へっ、それによお―――王になれば、あの程度の女、いくらでも抱き放題だぜ?」

 

「そ、それもそうだな。競争に勝つより、こっちのほうがいいってもんだもんな!!」

 

「おい!早く矢を持ってこい!!あいつを殺し続けろ!!」

 

「へへっ、この槍もぶん投げちまおう!」

 

「おい!翼じゃねえ胴体だ!胴体を狙え!!」

 

 男たちは矢を放ち続ける。誰もかれもが、チャンスを狙い続ける。あの怪物を退治すれば王になれるのだ。誰もが最後の一撃をお見舞いする、その瞬間を今か今かと待ちわびる。

 

 

 

 アタランテは自分をかばい続けるメラニオスを前に何もできない。何が起きているのか、理解するにはそう時間はかからなかった。

 やはり、彼が黒き怪物だったのだ。自分は怪物退治に利用されたのだろう。だが、そんなことどうでもよかった。数百もの矢を受け、いまだ自分をかばい続ける彼のことが何より心配だった。”もういい、私を置いて逃げてくれ”と、胸の中で訴え続けるのだった

 

 

 

 

 

 その光景を見下ろす神が二柱

 

 一柱は女神アフロディーテ。楽しそうにその光景を眺めている

 もう一柱は羊飼いの神”アポロン”。アフロディーテにお願いされて仕方なく手伝っている

 

『アハハ!見なさいよアポロン!あの無様なさま!私の言う通りにしないからよ!』

 

『ああ、勿体ないなあ。私が神じゃなかったら、絶対に手を出していたんだけどなあ』

 

『...それはアタランテのことかしら?それとも、怪物...いえ、今はメラニオスと名乗っているらしいわね』

 

『どちらもさ。でも、アタランテちゃんはアルテミスの信者だし、メラニオス君は立場的にね』

 

『...相変わらずの好色家ね、人の形をしていればなんでもいいのかしら』

 

『それは心外だなあ。まあ、君を抱ける権利を貰えたんだ、それぐらいは許容しようじゃないか』

 

 アフロディーテ単独ではここまで行えなかったので予言の神としての側面を持つアポロンに協力を仰いだ。その代わりに自らを抱く権利を与えたのだ。

 

 だが、アポロンは内心めんどくさがっていた。

 ”怪物”を殺して見せる。それを聞いたときは、何を寝言を抜かしているのだと考えた。理由を聞いたら、”私を見てもあの怪物は表情一つ変えなかったわ。美の女神たる私を見たのによ!!”だと

 それは当たり前なのだ、神や人間がアフロディーテを美しいと思うなら、その真逆の存在である彼が好ましく思うわけがないのだ。むしろ嫌悪したに違いない。そもそも、価値基準が違うのだから。

 

 それに、アポロンは他の神々ほど怪物を恨んでいるわけではなかった。殺したいという気持ちは確かにある。だが、機神としての身体を失ったことで、こうして色々な人間と関わることができるのだ、その点は感謝している。

 

 いつか、お礼という名の復讐をしてやろうと思うほどに

 

 

 

『でも、これは上手くいかないんじゃない?』

 

『はあ?どういうことよ、アレは不死身ってわけじゃないでしょう?矢を撃ち続けていればいずれ死ぬわ』

 

『あー誤解しているようだね。確かに彼は不死身ではない。だけど、我々神や普通の人間では殺せないんだよ。彼はね―――英雄にしか殺せないんだ』

 

 ”それに”と、笑いながら指をさす

 

『彼ら、我慢できなくて、突っ込んじゃっているよ』

 

『―――っ!!あのバカ共!』

 

 

 ◇◇◇

 

 

「もういい!メラニオス!私を置いて逃げろ!」

 

「...ぐっ...そういうわけにはいかないなあ...」

 

 何百本の矢が突き刺さりながらもしっかりと抱きしめアタランテを離さない。既に広げた両翼はボロボロになり限界が近づいている。

 

「ごめんね...ごめんね...」

 

 最初から間違えていたのだ。僕と関わらなければ巻き込まずに済んだのに、本当に申し訳ないな。

 

「もういい...もういいから...お願い...」

 

 アタランテ、アタランテ、アタランテ、愛してごめんなさい、欲しがって、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

「あああああ!もう我慢できねえ。俺が今すぐ首を切り落としてやる!!」

 

「あ、テメエずるいぞ」

 

「ヒャッハー!俺たちも行くぞおお!!」

 

 もはや矢を放つのも無用と考え、我先にとどめを刺さんと男たちは各々の武器を取り、怪物に向かって走り出す。

 

 ただそれは、最も悪手だった。

 

 

 ―――でもさ、約束したんだ。一緒に遊びに行こうって

 

アタランテ、君を自由にして見せる

 

「な、に、を...あっ」

 

 顔に手をあて簡単な魔術をかける

 

 彼女には少しだけ眠ってもらおう。こんな僕は見てほしくないんだ

 

 

「おい、なんかおかしくないか?」

 

「ああん?何がだよ...」

 

「いや、ここの地面ってこんなに黒かったか?」

 

 男達が下を見ると、そこには真っ黒に染まった地面。怪物から流れ出た大量の血液が大地を染めている。

 

「なあ、これってまず――――」

 

 気づいたときにはもう手遅れ

 

 その大地はすべてを殺しつくすために牙をむく

 

 

 

「はっ?!なn――――ぎゅぎゅぎゅううううう」

 

「おいおいおい聞いてないぞ!あ”あ”あ”あ”あ”あ”」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいい」

 

「神様、神さ...おっごお」

 

「なんで!コイツ弱ってるんじゃなかったのかよお!」

 

「殺せ!殺せ!早く!」

 

 地面から、槍が、剣が、斧が、獲物を殺しつくさんと地面から次々に飛び出す。あるものは斬られ、あるものは貫かれ、あるものは叩き潰される。

 

「殺せったってどうすりゃあいいんだよ!」

 

「首だ!首を堕とせば『いーただーきまーす』...あっ」

 

 男が最後に見たのは、大きく口を開けた真っ黒な化け物だった

 

 

 

『――――お腹がすいたな

 

 あはははははははははははははははははははははははは

 

 頭から、足から

 

 丸ごとペロリ

 

 残さず、綺麗に綺麗に

 

 おいしい。おいしい、君たちに感謝します

 

 ありがとう、ありがとう

 

 わたしはあなたたちがだいすきです

 

 もっともっともっともっと食べさせて

 

 

 

 わたし、ぼくはあなたたちをあいしています。だからー―――

 

 

 

 もっと泣き叫んでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ』

 

 

 ◇◇◇

 

 

 一面広がるは血に染まり赤黒くなった大地。

 

 少女を抱えた青年がぽつんと立っている

 

 青年は身体を血で染めており、それが自分の血なのか、返り血なのか判断できないほどだった。

 

 

「やあ!メラニオス君、いや、黒き怪物といった方がいいかな?」

 

 何かが声を掛けてきた。

 

「アハハ、そんなに睨まない、睨まない。私は君に危害を加える気はないよ、少なくとも今はね」

 

「なに、おまえ、なんようがある?」

 

 誰かは分からないが、邪魔をするのなら食べてやろう

 

「早くその子を抱えて逃げたほうがいいよ。アフロディーテが結構怒っていてねえ。追手が来ちゃうかもね」

 

 腕に抱く女に目を向ける。寝息をたて眠っている。こうしてみると、ただのあどけない少女。

 

 ...そうだ、

 

 自由にしてあげるんだ。だって、アタランテはお姫様のように煌びやかにいるよりも、森を、大地を駆けている方が美しいと思うから

 

 メラニオスはふらふらと森の方へ歩き出す。腕にはしっかりとアタランテ(愛する人)を抱えている。

 

 

「―――君の旅路に祝福(呪い)あれ―――ふふふっ、私たちはいつでも君を見守っているよ」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 日が暮れたのか、少し寒くなってきた。

 

 ただ、腕の中で眠るこの少女の体温のみが僕の身体を温めている。

 

「...んっ...ここは?」

 

 アタランテは歩く振動で目が覚めたようだ。きょろきょろとあたりを見まわしている

 

「あ、おはよう。起こしちゃったね」

 

「メラニオス!よかった無事だったのだな...」

 

 彼女は嬉しそうに声を上げ、そして気づいた。自分が両腕で胴と脚を抱えられ。いわゆるお姫様抱っこをされていることに

 

「お、降ろしてくれ...その、恥ずかしい」

 

「可愛い(ごめん、すぐおろすよ)」

 

「な?!」

 

 赤面するアタランテ。

 もう少し見ていたかったが、流石にそろそろ噛みつかれそうなので地面に降ろす。

 

 彼女は僕の身体を見ると悲痛な表情をする。そんな顔できれば見たくなかったんだけどな。

 

「...酷い傷だな」

 

「なーに、唾でもつけとけば治るよ」

 

 今の僕の姿は酷いものだろう。あらゆる場所に切り傷や矢で貫かれた痕がある。まあ、じきに完治するだろう。

 

「...此処はどこだ?」

 

「うーん、森を抜けて...出鱈目に歩いたからよく分かんないや、ごめんね」

 

「そうか...汝はこれからどうするのだ」

 

「また、旅にでるよ。神様に目をつけられちゃったみたいだし。...だから、君とはこれでお別れだ」

 

「......」

 

 何も言ってくれない。ううん、それでいいんだ。

 

「君は自由に生きていいんだ。父に縛られることはない、お節介だったかもしれないけど」

 

「だから、バイバイ。またいつかね」

 

 せめて最後は笑顔で!

 

 そう告げ、背を向けて歩き出す。

 これでよかったんだ。僕は彼女が幸せで生きてくれたらそれでいい。でも、他の男の人といたら妬いちゃうかもな―――

 

 

 

「―――まて、

 

 

 腕を掴まれる。

 

 アタランテが腕を掴んでる。

 

 此方を見上げてる。僕を見ている。

 

 

 

私も共に行く。汝と共にだ」

 

「どう して。...見ただろう?僕は君が言っていた通り"怪物"だ。物語で語られた通り、醜い怪物だ。君を巻き込みたくない。今日みたいに殺されるかもしれない。君を不幸にしたくないんだ」

 

 それに、また、人間を殺してしまうかもしれない。あの姿を見たら、君はどんな顔するのだろう

 

「構わん。私はこれでも数々の冒険をしてきたんだ、今更というやつだ」

 

「でもっ「ーーーメラニオス。汝は私に勝ったのだ」...え」

 

「汝は言ったな、"私に勝って手に入れてみせる"と。それを投げ出すのか?」

 

 確かに言った。でも、君を失いたくない。巻き込みたくない。自分なんかほっといて幸せに生きていってほしい。

 

「それにだ。汝は、私のーーー大切な人だからな」

 

 そうやって笑顔で手を差し伸べてくれる。

 その姿は月明かりに照らされとても神秘的な光景だった。

 

 恐る、恐る、手を伸ばす

 

"ダメだ"

 

 手を握ってしまう

 

"きっと不幸にする"

 

 彼女が握り返してくれる

 

"後悔する"

 

 それでも僕はーーー彼女が欲しい

 

「私に勝ったのだ。その責任、取ってもらうぞ」

 

「ああ...勿論!」

 

 思わず抱きついてしまう。アタランテはまた顔を赤くさせあたふたとしている。

 本当に可愛い、好きだ。

 

「お、おい⁈わ、私はアルテミス様に純潔の誓いを...まったく、汝は困ったやつだな、もう」

 

 "ああ、僕はこんなにも幸せでいいのかしら"

 




次回は平和な感じで行きたいもんです。

もしよろしければご感想や評価のほうお待ちしています。

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

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