「ん...」
頭の痛みで目を覚ます。酒に弱かったわけではないが、存外飲みすぎてしまったらしい。
起き上がろうと体に力を入れたところ、なにかに掴まれているようで全く起き上がることができない。隣を見てみると、アタランテはすやすやと寝息を立て、僕に抱きつきながら眠っている。
こちらの背中に腕を回し、足をしっかりと絡め、絶対に逃がしてなるものかという気概が伝わってくる。
「(一応、離れて眠ったつもりなんだけどなあ)」
嬉しいのは山々だが少し苦しい。ひとまず彼女が目を覚ますのを待つしかないようだ。
彼女の緑の髪が朝日に照らされ輝く。綺麗だなとそっと撫でてみた。するとそれが少しくすぐったかったのか小さく身じろぎをし、瞼をゆっくりと開いた。パチパチと瞬きを繰り返しこちらを見つめてくる。
「おはよう、アタr―――ぐへっ」
優しく頭を撫でながら挨拶をしたはずだったのだが返ってきたのは"おはよう"ではなく、ビンタである。”パンッ”と軽快な音が鳴り響く。
「な、な、なんで抱き着いているのだ⁉」
誤解だ。そもそも抱き着いているのは君じゃないか、と訴えると彼女もそれを理解したようで.申し訳なさそうにしながらも、その頬を赤く染めていた。
「...すまない」
大丈夫だよと声をかけるも、気まずそうに俯き布団の中に隠れてしまう。
「昨日はだいぶ飲みすぎたみたいだけど体調は大丈夫?」
返事は返ってこなかったものの頷いたのは分かった。とりあえずは安心なので起き上がることにする...出かける準備をしなくては
「...メラニオス。その、昨日のことは、だな...」
布団からひょっこりと顔を出しどこかぎこちないアタランテ。
はて、昨日のこと...ああ、可愛かったなあ
「すっ――ごい可愛かったよ。ほめて!だなんて言われたときはびっくりしたけれど」
「っ...!!そのこと、じゃなくて、いや...もう知らん!」
顔を真っ赤に染め恥じらう姿はもはや芸術物だ。しかし、不機嫌にさせてしまったようだ、少しからかいすぎてしまった。しばらくは布団から出てこないようなので、一足先に朝食の準備でもしておこうか
そうして、アタランテ一人が部屋に残される。
「~~~~~~~!!」
”ん~~~ほめれくれ!”
”...私のこと、嫌いなんだ...ぐすっ...”
”私たちは夫婦なのだぞ。これくらい...いいではないか”
昨日の失態が次々と頭の中に溢れてくる。広くなった布団で転がりながらアタランテは恥ずかしさで悶えてしまう。飲み始める前は、酔った彼をあれこれ世話してやろうと考えていたのに、まさか自分がされる側になるとは
「次こそは...!」
リベンジを誓い、再び布団にもぐる。彼の前では平気だといったものの、酔いはまだ残ってるようで。このまま二度寝するのも致し方ないことである。
『僕は――――――......』
再び眠りにおちようとする中で、ふと思い出してしまった。辛そうにこちらに顔を向けるメラニオス。聞くつもりはなかった、最初から分かっていたのに。彼が私をどう思っているなんて、見ればわかるのに。やはり言葉にされないと不安になってしまうのだ。
「どうしてだろうな...こんなにも思っているのに伝わらないなんて」
◇◇◇
「おねーちゃーん!おーきーてー!」
身体を揺らされる。正直なところまだ起きたくないのだ。酔いは覚め切っておらず、ボーっとしてしまう。
「む〜〜お!き!て!」
とはいえこれは嬉しいものである。まさか子どもに起こしてもらえる日が来ようとはーーーここは私にとっての理想郷のようだな。少しばかりこの状況を堪能させてもらうとしよう。
そうして、寝たふりを続けるつもりだったが
「お兄ちゃんが出ていっちゃう―――!」
一瞬で飛び起きる事態になった。
◇
「うえええええええん」
「はあ...どうしたものか...おー、ほらほら、泣かないでー。大丈夫大丈夫すぐ帰ってくるからねー」
玄関で妹をあやすメラニオス。いざ出発しようとしたところ、子ども達が起きてしまい、しばらく出かけると伝えた途端この始末である。せめて、アタランテを起こして出るべきだったと絶賛後悔中である。
どうしたものかと嘆いていると”ドタドタ”と寝室の方から勢いよくアタランテが向かってくる。泣き声を聞きつけてくれたのだろう「助かった」と声をかけようとしたのだが
「たすk―――えぇ⁉どうしたの?」
助けてくれるどころか、抱き着かれる。まさかの本日二回目
「ど、どうしたの?できれば離してくれると...」
「...さい」
「は?」
「ご べ ん な ざ い。わた、わたじがあんなごと聞いたから...」
泣きながら抱きしめてくるアタランテ。恐らくまだ酔いが覚め切ってないせいだと思うが、こうもカオスな空間になってしまうとは。
「うええええん「いかないでー--!「ぐすっ...ぐすっ...」
◇
床に正座させられるメラニオス。
「一言も言わず、出ていこうとしなくてもいいではないか」
怒りたっぷりのアタランテ。
一応、置手紙はしていたもん。それに、湿っぽいのは嫌いなんだと、言い訳を重ねるメラニオスに呆れた目を向ける
「それで、いつ帰ってくるのだ?」
「一週間、いや、一か月くらい、かな?」
「すぐに帰ってくると言っていたではないか...」
「一か月なんてあっという間さ。ちゃんと帰ってくるよ」
また嘘を重ねる。帰ってこれる保証などないに等しいのだ。
「...本当だな?本当に帰ってくるんだな?」
「勿論。みんなで待っていてよ、きっとお土産でも持って帰ってくるさ」
僕が死んでも、この村でなら彼女は幸せに暮らしていける。
笑顔で会話しながらもメラニオスの心は後悔を続ける。
「分かった、この子達と村は任せておけ。そのかわり、なるべく早く帰ってこい」
「うん、ありがとう...そうだ、これを渡しておくよ」
そうして手渡されたのは、黄金に輝く林檎。
「これは...」
「お守り代わりと言っちゃあなんだけど。怪我した時や病気になった時に使うといいよ」
「ああ、分かった...いってらっしゃい」
振り返れば、いつまでも手を振る子ども達。不安そうに目を伏せるアタランテ。
メラニオスは死地へ赴く。それでも胸の中で必ずと帰ってくと誓う。それが決して叶わぬと分かっていても―――
◇◇◇
ここはギリシャ西部にある都市、カリュドーン。四方を山に囲まれ自然豊かであり、そしてアルテミス神とアポロン神を祭る大神殿があるギリシャ有数の都市である。先日までこの都市ではこの二柱の神に生け贄を捧げる儀式が行われていた。
しかし、問題が起きた。カリュドーン王であるオイネウス王はなぜかアルテミス神に対しての生け贄を忘れてしまったのである。気づいたころには時すでに遅し、カリュドーンは神の怒りを買ってしまう。
―――それはある日突然現れた。
「...おい。何だあれ」
まさか自分たちが神の怒りを買ったとは知らず、いつものように農作業をしていたカリュドーンで暮らす人間たち。その中の一人が勢いよく山からこちらへ向かってくる巨大な黒い影を見つけた。
「逃げt―――」
声を上げる暇もなくその人間は踏みつぶされた。他の人間たちもなすすべなく蹂躙されていく。あるものは喰われ。あるものは触手で貫かれる。
辺り一面は血に染まり、さながら地獄のような景色ができる。
「GAaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
身体をどす黒い血で染めたそれは咆哮する。大地を揺るがし、天にまで轟くその叫び。聴いたものはその場で凍り付き、死を悟る。
これこそが後の世で語られることとなった、神話の汚点
―――カリュドーンの怪物である
◇◇◇
「...お兄ちゃんまだかえってこないね」
あれから、一週間、一か月と日々は過ぎていった。まだメラニオスは戻らない。
「そう、だな...きっともう少しで帰ってくるからそれまで元気で待っていような。ほら、そんな悲しそうな顔をしてるとメラニオスが悲しむぞ」
こうやって元気づけるのも、もう何度目だろうか。
やはり何かあったのではないか。無理にでもついて行くべきだったか、などと不安ばかりが積もっていく。
"コンコン"
玄関の扉が叩かれる。
「もし。ここにアタランテは居られるか?」
村人ではない。
子ども達を奥に連れていき、アタランテは扉へ近づく。
「どなたか居られるのか?この扉を開けてもらいたいのだが」
「(聞き覚えのある声だ。もしや...)」
警戒はしつつも扉を開けると
「汝は...」
「おお、アタランテ!!久しぶりだな、アルゴー船以来か?元気なようで何よりだ」
そこに立っていたのは、一人の青年。
「メレアグロス...なぜ此処に来た」
カリュドーン王の息子であり、かつてのアルゴー船の船員。
薪の英雄と称される王子メレアグロスであった。
「何故って...お前に会うためだとも、麗しのアタランテ」
まああれです、もののけ姫の祟神みたいなもんに化けていると思ってくだい。
これからはちょくちょく短編も上げたいと思います。
いよいよクライマックスが近づいているので頑張っていきたいと思います!
fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?
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イチャイチャ
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つよつよ奥様
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しっとり/依存
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無関心/やり直し