【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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????「勿論わたしは直接は介入しない。でもさ...ちょっとだけ認識を弄るのはセーフだろ?"手"は出してないんだからさ」


狩人と怪物 「薪の英雄」

「お前に会うためだとも、麗しのアタランテ」

 

 そう答えるのは、カリュドーン王子メレアグロス。アルゴー船の冒険など数々の試練を打ち破り英雄と謳われる人物である。

 

「どうだ久しぶりに狩りでも...もちろん俺とお前二人きりで、な?」

 

 そうしてアタランテの腰に手を回し手を取る。そのまま壁の方へ押し付ける形になるが

 

「――断る」

 

 振り払われるメレアグロス。

 

「生憎とそのような気分ではないのでな。用がないのであれば帰れ」

 

 ”でなければ殺すぞ”と殺気だった目で睨みつける。メレアグロスは冗談だというようにわざとらしく振舞う。

 

「ははっ、相変わらずだな。いやなに、お前が”攫われた”と聞いたのでな俺は心配で心配で」

 

 聞けば、アルカディアに訪れた際、ある噂が広まっていたそうだ。青年がアタランテに競走を挑み、卑怯な手を使い勝利したや、黒い怪物が現れ戦士たちを皆殺しにした。アタランテはその怪物に攫われた、などなど

 

「して、噂によるとお前はある男と競走して"負けた"と聞いたが...一体どのような手を使われたのだ?」

 

「...彼は、メラニオスは私に正々堂々挑み勝利した。過程はどうであろうと私は自分の意志で彼と共にいる」

 

 メレアグロスは少し驚いた様子だ。おおかたアタランテは無理矢理ここに連れ込まれているとばかり思っていたのだろう。すぐさま頭を下げて謝罪をした。

 

「ギリシャ最速の狩人といわれるアタランテに走りで勝ったというのか⁉......すまない、俺は何という失礼なことを。して、そのメラニオス殿はここに居られるのか?」

 

 アタランテは少し顔を曇らせながら首を横に振り不在だと答える。残念そうに肩を落とすメレアグロス。

 

「そうか...お前に勝つほどの男、ぜひ一度手合わせをしてみたいものだったが仕方ないか」

 

「ふっ、なにせ私を追い越した男だ。もしかしたら腕っぷしでも汝に勝つやもしれんぞ」

 

 夫をあげられて気分が良くなったのか自慢げにそう話す。アタランテがそこまで言うのが意外だったのかまたも驚きの表情を見せる。

 

「なんと、そこまで言わせるほどか。うーむ、なおさら惜しいな」

 

 悔しそうに声を唸らせる。どうやら何か事情があるようだ。

 

「実をいうとなアタランテ。俺はお前に力を貸してほしくてここに訪れたのだ」

 

「私の力を?どういうことだ」

 

 メレアグロスはこれまでの経緯を話し始めた。

 

「私の国カリュドーンでは先日アポロン神とアルテミス神に生け贄を捧げる儀式を行ったのだが...我が父オイネウス王はあろうことかアルテミス神に対しての生け贄を用意してなかった」

 

 毎年恒例で行われる神々に対して感謝を捧げる儀式。あろうことかその儀式で最もやってはいけない行為をしてしまったという。

 

「...愚かな」

 

 ただ吐き捨てるように告げる。アルテミス神を信仰している身にとってはその一言しか浮かばなかった。

 神々に対して失礼を働いた者の結末は古来からきまっている。

 

「まったくだ、我が父ながら愚かしいにもほどがある」

 

 同意するように頷く。

 

「しかし、問題はここからなのだ」

 

 語気を少し強め本題へと移る。その顔は怒りに満ちている

 

「それからしばらくした後、ジュゴス山から”怪物”が現れたのだ!」

 

「怪物...?」

 

 何か引っかかりを覚えた。

 

「ああそうだ!それは民を踏みつぶし、喰らい、田畑を荒らした。国中の勇士が挑んだものの―――壊滅してしまった」

 

「―――...」

 

 

 怪物という単語に引っかかる。なにか忘れているような...

 

 

 やはり、彼が黒き怪物だったのだ。

 

「神様、神さ...おっごお」

 

「なんで!コイツ弱ってるんじゃなかったのかよお!」

 

「殺せ!殺せ!早く!」

 

 血に塗れる大地、その中心で

 

ーーーーあはははははははははははははははははははははははは

 

 "メラニオス"は笑う

 

 

思い出さないといけないのに、記憶を探ろうとするとノイズが走ったように乱れる。

 

「今は何とかジュゴス山の方へ追い返したが、いつまた戻ってくるか分からん。それにあの怪物は異常だ、姿が全く分からん」

 

「姿が分からない?それはどういうことだ」

 

「俺も遠目でしか見れなかったのだが、まるで靄がかかったようだった。何かしらの幻術の類がかけられているやもしれない」

 

 恐らく、アルテミス様が遣わした魔獣の類であろうが...何故だ?まるで正体を隠したいがために何者かがーーー

 

「そして奴は選ばれし"英雄"しか打倒できないとアポロン神から神託を受けている!」

 

「アポロン神から?」

 

「ああ、そうだとも。そこで俺は各地から討伐隊を募ったのだ!聞いて驚けーーーあの"ヘラクレス"が参加してくれるのだぞ!」

 

 その他にも、かつてのアルゴー船の乗組員カストロとポルクス、カイニス、テーセウス。そしてメレアグロスの叔父のであるトクセウスとプレキシプス...等々。

 様々な国から歴戦の戦士達が集まる。これまで行われたことがないほどの大規模な狩りになるのは間違いない。

 

「そしてアタランテ。弓の名手であるお前にも参加してもらいたい」

 

 弓の名手数いれど、アタランテ以上の狩人はいない。そう確信に満ちた顔でメレアグロスは答えを待つ。

 

 ”当然だ。ぜひ参加させてもらう”と言いたいところではあるが。

 こちらを覗き込む子供たちがアタランテの目に映る。彼女らを置いていくなどできない。それに

 

 

『勿論。みんなで待っていてよ、きっとお土産でも持って帰ってくるさ』

 

 

 ーーー待っていなくては。約束したのだ。家に帰ってきたとき思いっきり抱きしめ”遅すぎる!”と叱ってやらねばならない

 

 メラニオスのことを想い、自分の信念を曲げてでも彼女は参加しないことを選ぶ。

 

「悪いが、私は―――」

 

 参加できないと口にしようとしたとき

 

 

「おや、ここにいらしたのかメレアグロス殿」

 

 

 突然後ろから声が聞こえた。

 

 振り向けば、そこにいたのは”村長”。どうやら玄関の方からいつの間にか入ってきたようだが、一言声をかけてくれればいいものの

 

「ご老人!先ほどはありがとうございました。おかげでアタランテと会えましたよ」

 

「ほほっ、それはよかった」

 

 メレアグロスは村長の案内でここまで来たようだ。どうやら村長は今までの話を聞いていたようで

 

「聞きましたよアタランテさん。カリュドーンで怪物が現れたとか、貴方は討伐隊に参加なさらないので?」

 

「あ、ああ。子供たちのこともあるが...私はメラニオスを」

 

 そこまで言いかけて、

 

「そんなものワシに任せておきなさい!」

 

 村長の言葉にさえぎられた。子供たちのことは自分にまかせて討伐隊に参加してこいということだ。

 何故そこまで村長がこだわるのかは疑問ではあるが...

 

「アルテミス神を信仰している貴方が参加しないでどうするのですか!」

 

 確かに、その怪物がアルテミス様が遣わせたものであるならば放っておけるはずがない、しかし

 

「いや、そうは...言ってもだな」

 

 渋るアタランテに村長は詰め寄る。

 

「―――既に神託はくだっております。あの怪物はあなた達、英雄が殺すべき存在なのです」

 

 村長の目が金色に輝く。その目に覗き込まれてしまい私は...

 

『今こそアルテミスに報いるときだろ?』

 

 声が頭の中で響く。

 ああ、そうだとも。あれは私達が殺さなくては。捧げるのだあの怪物を。

 

「そう、だな。アポロン神の神託なら従うほかなかろう。メレアグロス、私も参加させてもらうぞ」

 

 その答えを聞いた途端、待ってましたとばかりメレアグロスは声を上げる

 

「よし!アタランテ、お前ならきっとそう言ってくれるに違いないと思っていた!」

 

 早速出発しよう、先に出ておくぞと出て行ってしまった。アタランテも狩猟服に着替え、弓と矢を担ぎ外へ向かう。

 

「お姉ちゃん...どこいくの?」

 

 呼び止められた。少女は涙目でこちらを見上げてくる

 

「ああ、いかねばならない」

 

 ”子供たちをよろしく”

 

 声が聞こえた気がした。

 

 少女が縋るように手を伸ばしてくる。

 

「村長がお前たちのことを見てくれる、何も心配することはない」

 

「でも...でも...ぐすっ」

 

 ”きっと帰ってくるから”

 

 ...なにも心配はない。私はすべきことをする、それだけ

 

 アタランテがその手を取ることは無かった。ただ冷徹に突き離すように。既にその目は獲物を狙う狩人の目をしており、何を言っても無駄だとわかる。

 

「では村長、後は頼んだ」

 

「ええ、任せてください...お気を付けて」

 

 少女がなにか言っていた気がするが、アタランテは振り返らない。

 

 ―――さあ、怪物狩りの始まりだ

 

 

 ◇

 

『ふふふっ。さてと私も用意を始めるとするかな』

 

 不気味な笑顔を浮かべる村長?それを不思議そうに子供たちは見ている

 

『おや?』

 

 見られていることに気づいたのか、それは子供たちを見る。特に危害を加えるつもりはないのか、はたまた興味がないのか...『はあー、せめて男の子だったらなあ』と愚痴をこぼしたかと思うとその場で動かなくなってしまった。

 

「おじいちゃん...?」

 

 少女は心配そうに声をかける。

 

「ほあっ...わ、ワシは一体?」

 

 村長はまるで今まで意識がなかったかのようにうろたえている。

 

「私たちの面倒見てくれるって...おじいちゃんが言ったんでしょ?」

 

「はへ?そうじゃったかのお...もう歳か、死んだばあさんに怒られるわい」

 

 アタランテが村から出ていったことさえどうやら記憶にないようで。だが、メラニオスに頼まれたことがあることを思い出したようだ

 

「そういえば!アタランテさんを村の外に出さないよう言われとったんじゃった、しまったのお」

 

 今更追いかけようとも時すでに遅く、村長は申し訳なさそうにうなだれるのであった。

 




 次回予告ーーー

「此処に集まった全ての英雄に告げる
これは神が課した試練だ!我々が乗り越えるべき試練だ!」  
「ふん、あんな女に負けてたまるか」
「久しぶりだなヘラクレス」
「ーーー獲った!」 
「私があれを撃ち抜く」
『ヒュドラの毒さ』
        「嘘だ
         嘘だ
         嘘だ」
「やめてくれ!彼は、私のーーー」
「おのれメレアグロス!どういうつもりだ!」
「貴殿が...メラニオス殿か?」

  「怪物はこのメレアグロスが討ち取った!」

次回 『カリュドーンの怪物狩り』

 イケメンは死なない

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

  • イチャイチャ
  • つよつよ奥様
  • しっとり/依存
  • 無関心/やり直し
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