「―――怪物はいつまでも...ありゃ、寝ちゃったか」
メラニオスが二人の子供を寝かしつけていた。二人の可愛らしい寝顔を見ると自然と笑みがこぼれてしまう。
「寝かしつけご苦労様...ふふっ、いい寝顔だな」
子供たちの頭を優しくなで、アタランテは微笑む。
二人はあの戦いから逃げ出すことができた。大英雄は追い付けず、神はその姿を見失った。命からがら逃げてきた二人は数か月ぶりに子供たちの下へ帰ることができたのだった。
「帰ってきてからは貴方にべったりだな...少し妬いてしまう」
「え~大人げないなあ」
意地悪く笑みを浮かべる彼にアタランテはムッとした表情で答える。
「...私だって貴方とこうして暮らせるのを夢見ていたんだ...少しぐらいいいではないか」
その肩によりかかるようにしてアタランテが隣に座る。子供たちが寝静まった今だけはこうして二人の時間が訪れる...それがたとえ幻想にすぎないとしても。
「どうしたんだい...珍しいな君がここまで...その...あははっ」
「...んん、笑ってくれるな」
しばらくの間、寄りかかるアタランテの頭を撫で、時々零れ出る色っぽい声を楽しむメラニオス。ふと撫でるのを止めてしまうと不満げにこちらを見上げる彼女の姿が可愛らしい...そんなことを続けていると
「これではまだ満足できない。ほら、腕を広げろ...そう、そうだ...そのまま抱きしめて」
首に腕が回されしっかりと密着する形となる。
「こうして甘えられるのは今だけなのだ...もっと強く...貴方を感じさせてくれ」
お互いが相手の体温を確かめ合う。それはぬくもりがあり、相手がそこに存在しているのだと実感することができる。
「...昼はあの子たちに譲ろう...でも今だけ、この時間だけは私の、私だけの貴方でいて欲しい」
抱きしめあう力が強くなる。彼女の顔を見ようとしてもこちらの胸に顔を押し付けているので赤く染まったその耳しか見ることができない。でも、どんな顔をしているのかは容易に想像することができた。
「たとえ老いてもずっと私の側にいてくれ」
「...ああ」
「なにがあっても帰ってきて」
「......」
「...愛してる」
「うん」
「――――――」
―――時間は刻々と過ぎゆく。覚めてしまうからこそ夢は幸せな記憶となる。
「......そろそろ眠らなきゃね」
「もう、か?...もう少しこのままでも――――わっ」
彼女の身体を抱え寝床に運ぶメラニオス。突然のことで動揺する彼女だが、いつかの光景と重なりまた笑みを浮かべる。
「では、昔の様に一緒に寝よう...そうして起きたときには、その笑顔を見せてくれ」
黙って頷く。
ふと、窓の外を覗いた。
「ああ、見てくれ。今日も―――月がきれいだ」
◇
古ぼけた小さな家に一人の老婆が住んでいた。かつてはギリシャ随一の狩人と謳われたその面影は見られず、ただ静かに外の景色を見つめるだけの生活。
それでも多くの村人が彼女を慕い、いつも誰かが訪ね、世間話をしてくる。それに彼女は優しく微笑み耳を傾けていた。
「...いかんな、こう歳をとるとつい眠ってしまう...な」
子は巣立ち、孤独を感じることは多々ある。そんな時は目を瞑り夢の世界へ浸る。そうすることで、寂しさが紛れるような気がしている。
『―――アタランテ』
その姿が色褪せることはなく、いつまでもそこにあり続ける。
「貴方は嘘つきだ。結局私は一人...年甲斐もなく涙をこぼすこともあるのだぞ」
誰が答えるわけでも、誰に伝えるわけでもない、ただの独り言。
「......いつか、また」
―――遠い未来で、また貴方に...
月はその姿を見守るように、彼女を照らし続けていた。
もともと狩人と怪物のエピローグにする予定だったもの。
IF、それはもしものお話。きっと水着アタランテも別の世界線では実装されてるに違いない、そう、きっとそう。
そんなIFもいいかもなあと思う今日この頃、次回こそは本編を続けようかと
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