【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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 なぜ人物の絵が描けないのだろうか?主人公を今度こそ書いてみようと思ってできるのは異形の怪物ばかり...ま、いっか。




短編 騎士王と裏切者「終わりの始まり」

~決別~

 

 一人の王と黒い騎士が塔の上で言葉を交わしていた。

 

 騎士は語る。凶作は続く、異民族は増えこの地は人の住めぬ暗黒の大地になると。卑王ヴォーティガーンの力は増し、間もなくブリテンの民は死に絶える。

 

”君が頑張ってもこの国が豊かになることはない。例え戦いが減ろうとも、豊かになることがなければ民は不満を持つ。そうすればまた争いが起こる、ハナから詰んでるんだよ”

 

 王はそれを踏みつぶし、理解されることなく進み続けることになると。

 

 それでも王は笑う。

 

”...っ、人のために自分を犠牲にすることはないだろう!?”

 

 彼はマーリンとは違い昆虫的な思考は持ち合わせておらず、人に近い感情的な思考で物事を判断する。それ故に非道に成りきれずにいた。だからこそ目の前の王を、どこにでもいる普通の女の子として見ていたのかもしれない。

 

 しかし王は笑顔を浮かべ答えた。

 

『私が傷つけば国が豊かになる。見ていてください、サー・ギルベルト。すぐにではないが、この島を善き国にしてみせます。伝説に言うアヴァロンにも負けないように』

 

 だから貴公も力を貸してくれ、と。

 

 騎士は己の間違いに気づきそして嘆いた。

 

”......君は、王になるべきではなかった。どうせなら玉座に座するのではなく、王に仕える騎士であるべきだった

 

 その言葉が王に聞こえたかは分からない。

 

 彼女は作り上げられた王に過ぎない。民の『理想』を実現すべく、自ら先陣を切り戦う。王としての尊厳など初めから持ち合わせてなかったのだ。

 

 騎士は最初から分かっていた。あの日出会ったその時から、彼女は人のためにその身を滅ぼすのだと。

 

 だからこそ、いつか現実を知り膝をつく日がくる。その時に玉座を降りることを促せばいいのだ...そう、目を背けていた。

 

 騎士は彼女を侮っていたのだ。

 

 

 こうして二人は決別した。二つの道が交わることはなかったのである。

 

 一方は繁栄を望み、もう一方は破滅を望んでいたのだから。

 

 ◇◇◇

 

~卑王と騎士~

 

 ここは卑王ヴォ―ティガ―ンが統治する城塞都市。その玉座でもう間もなく行われるアーサー王率いる軍との決戦のための会議が開かれていました。

 

 周りには異民族の族長らが参列し王の言葉を待っています。

 

「王よ!間もなくアーサーが来ます!我らは一体どうすれば!?」

 

 誰かが声を上げる。焦る必要はない、既に手筈は用意されている、そう王は答えました。

 

”バンッ”

 

 突然、扉が開き一人の騎士が現れます。

 

『おお、待っておったぞ。円卓の騎士ギルベルトよ』

 

 この場にいた誰もが驚きの声をあげました。まさかこの男が来るとは。

 

 騎士ギルベルト。円卓に空きがあった際、番外としてその席に座るもの。

 

 手には大英雄が振るったとされる"大剣マルミアドワーズ"。その剣技は彼のランスロット卿にも及び、数々の敵を葬ったアーサー王の右腕ともいえるこの騎士が卑王の側に着くのだと。

 

”随分ピンチのようじゃないか、卑王よ”

 

『なに、予想通りの展開よ。奴らはこの玉座まで突破してくるであろうが、その時こそ奴らの最後。この儂自らが、ブリテンの黒き竜として存分に力を振るってくれようぞ』

 

 歓声が上がる。

 

「「冷酷なる卑王!偉大なるヴォーティガーン!栄光あれ我らが王!!!」」

 

 卑王は不敵に笑う。

 

『それにサー・ギルベルト、貴様もいるのだ...フハハ!!楽しみであるぞ、あのアーサーの悲痛に歪んだ顔を拝むのは!!』

 

 アーサー王は信頼する臣下の裏切りに遭い戦意を消失、そこを一気に叩けば卑王の勝利は確実。ついにブリテンの地は人が住まれぬ暗黒の時代になるのだと、喜びの声があがったことでしょう。

 

 しかし、その騎士は喜ぶことも、いえ...表情一つ変えることなく

 

『クハハハハッ!!...おいまて貴様なn―――!』

 

 その手に握った大剣を振るい、その場にいた人間たちを例外なく切り裂いた。

 

 飛び散る血しぶき、零れる苦悶の声。玉座はあっという間に地獄絵図と化した。

 

『...儂すらも裏切るというのかギルベルト?』

 

 部下たちが殺されたのは問題ではなかった。竜の血を飲み、ブリテン島の意志その物と化した王にとって人間など下等種、取るに足らない存在だった。だがこの騎士は違う。人間ではないことは知っていた、自分と近しい存在であると分かっていた。だからこそこの話に乗ったのだ。

 

”悪いね。うん、悪いと思ってるよ僕は......それに、戦わないわけじゃあない”

 

 笑みを浮かべ、ゆっくり、ゆっくりと近づいてきます。

 

『何が言いたいのだ』

 

”どうせ、あの娘には勝てない...それほどまでにアレを縛る運命というのは強固なんだ”

 

 一歩、その足を進めるたびに騎士の体には触手が巻き付いていく。異形のものへと変わるその姿に王はたじろぎます。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 かつてギリシャ中を恐怖に貶めた異形の姿が闇の中で照らされました。もうすでに騎士としての姿はなく、本来の悪の者がその場に顕現したのです。

 

 しかし流石は卑王、すぐに立ち直り威勢を放ち

 

『はっ、貴様程度、アーサーとの決戦の前の前座にすぎぬわ!!』

 

 王は暗黒を身にまとい黒き竜と化します。そうして、大きなその手を振り上げ...

 

”ぶちgちゃあgちゃぐちゃ”

 

 振り下ろされたその手は異形の怪物を叩き潰した。ぐちゃっとそこら中に広がる肉片。実にあっけなく決着はついてしまいました。

 

『フハハハハハ、どうだ!!儂にかかれば幾ら円卓の騎士だろうと―――なんだ?』

 

 王は気づきました。散らばった肉片が蠢いているのを、そして我が身に少しずつ纏わりついてくるのを。

 

『な、なんだこれは。ぐっ...と、取れぬ。ええい!やめい!儂にまとわりつくな!!』

 

 体中を搔きむしり必死に振り落とそうとしますが、そのたびに肉片の侵食はより深くなっていくのです。

 

”...君じゃ勝てない。だけどねブリテンの黒き竜。その身体が無惨に切り裂かれ、貫かれ、灰塵に帰すのは勿体ない......だから、ね?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その言葉と共に王に纏わりついていた肉片が穴という穴から内側へ侵食し始めた。

 

『ああああああああ!やめ、やめろおお!!入って、入ってくるなあ!!』

 

 体を掻きむしり、壁に体を打ちつけますが何もかも手遅れ。

 

”お疲れ様、卑王。さようならヴォ―ティガ―ン...どうか僕に身を任せて―――”

 

 ◇

 

「王の力を疑ったことはありません。あの方こそ騎士の理想、自ら先陣を切る御姿、その背中を追いかけるたび私はブリテンの良き未来を確信したのですから」

 

 そう語るのは円卓の騎士ガウェイン。前に座る誰かに我らが王の偉業を興奮気味に語っている。

 

「ですが、一度だけ...一度だけ、王の勝利を危ぶみ、その背中を見送ることしか出来なかった戦いがあります...魔竜ヴォ―ティガ―ン、それがブリテンを破滅させようとする敵の正体だったのです―――」

 

 ◇

 

 あの日、卑王ヴォ―ティガ―ンとの決戦の日。平野に展開されていた異民族の連合軍を蹴散らし、ついに我々は卑王が待ち構える城塞へとたどり着きました。敵城に乗り込み、残る兵士を叩き潰さんと突撃しましたが城内には人影一つなく、我々は困惑しました。

 

 しかしながら、奴は城の奥にある玉座の間にて待ち構えていました。

 

■■■■■■■■!!

 

 そこにいたのは人ではなく、黒き竜と化した異形の化け物、卑王ヴォ―ティガ―ン。

 

 ヴォ―ティガ―ンの体から伸びた黒い触手により前線の兵士は貫かれ、口から放たれたその一撃により残りの兵士も蒸発し、我が聖剣ガラティーンの輝きは失われた。そして我が王の聖剣エクスカリバーの輝きも、もはや暗闇にともる篝火のようだった。

 

 戦いは数時間に及び、ヴォ―ティガ―ンの咆哮は暗雲を呼び、その身体を巨大化させていった。兵士たちの武器、死肉、崩れた城塞、それらを取り込み顕現する黒き竜...王は知っていたのでしょう。ヴォ―ティガ―ンはブリテンそのものだと。

 

「アーサー王!!敵はブリテン島の化身、いくら聖剣と言えど敵いませぬ!今は撤退を!!」

 

「もう少しだけ手を貸すものだぞガウェイン卿」

 

「王!?」

 

 何とアーサー王はこの状況でも戦い続けるというのです。そうしてこう続けました。

 

「私と貴公が揃っているのだ。島の癇癪の一つや二つ、静めてみせなくては聖剣の立つ瀬がない」

 

「っ!?......はっ!」

 

 この場に立っているのは我々二人のみ。恐れを知らぬのではなく、恐れを受け入れて尚立ち向かう姿に私は闘志を奮い起こし、共に魔竜へ挑みました。

 

 そうしてついに...

 

「「はあああああ!」」

 

『■■■!?』

 

 魔竜ヴォ―ティガ―ンの手を切り裂き、飛び立たんとするその巨体を大地に体を堕とすことに成功。しかしながら武器を突き刺してしまい王は丸腰となってしまいました。

 

 ですがその時、王の手に光り輝く槍が現れたのです。

 

「それは!?」

 

「―――最果てに光を放て」

 

「その輝く槍は...!」

 

「其は嵐の怒り―――ロンゴミニアド!!

 

 そうして魔竜ヴォ―ティガ―ンは心臓を貫かれ敗れたのでした。

 

 ◇

 

「ヴォ―ティガ―ン...」

 

 アーサー王は倒れ伏す卑王に近づいていく。それは宿敵の最後を見届けるため。

 

 人の姿に戻ることなく、心臓を貫かれ死の間際の卑王はアーサー王を睨みつけ口を開きました。

 

『...愚かな。ウーサーの子よ、貴様ではこの国は救えない。なぜなら、もう神秘の時代は終わったのだ...これからは文明の時代、人の時代が始まる。取り残されているんだ、僕も、君も。我らの根底にある力は決して人間と相いれない...お前がいる限りブリテンに未来はない』

 

「っ――――」

 

『恨むがいいさ、このブリテンは当の昔に滅んでいる』

 

 王が心臓に突き刺さる槍を引き抜くと卑王は笑い声をあげ、塵に帰っていきました。

 

 戦いの終わりを告げた王の姿は何時にも増して光に溢れていた。あの姿を見届けたものは誰もがその力に感服したでしょう。それほどこの戦いは神々しかった。

 

 我らがアーサー王がいる限り恐れるものはないと、そう確信したのです。

 

 ◇◇◇

 

「ぐっ...ガハッ...ガッ...不味いなこれ」

 

 心臓を苦しそうに抑えながら黒い騎士は逃げるように森を進んでいきます。しかしながら限界がきたのかその場に崩れ落ちてしまいます。血反吐を吐き、切り裂かれた体は今にも消えてしまいそうです。

 

「(流石に、聖剣相手は分が悪すぎたか...卑王の力を得たのは大きいが、これではな...)」

 

 ですが騎士は一人ではありません。彼の主はいつも見ているのですから。

 

「―――何をやっておるのだ我が騎士」

 

 騎士に近寄り、治療を始める一人の魔女。

 

「ああ、助かるよ。モルガン...」

 

 暗躍し続ける、魔女モルガン。それに仕える円卓の騎士ギルベルト。互いに利用し合う歪な関係がそこにはありました。

 

「些かお遊びが過ぎるのではないかギルベルト。あの場で愚妹を殺してしまえばよかったものを...まさか、絆されたとでも言うまいな?」

 

「...いくら何でも分が悪すぎたんだよ。聖剣の使い手が二人、そしてあの輝く聖槍...僕じゃあ勝てない」

 

 しかしながら事は上手く運んでいる。城塞都市を落としたことにより新たな城が築かれることになる。そう、アーサー王はついに王都を奪還したのだ。

 

「...ああ、待ち遠しい。あの玉座に私が座るのを夢見るのは何度目であろうか」

 

 魔女は確信する。もうすぐ、もうすぐだと。既に円卓の中には我が子を幾人か入れている、後は内部から破滅するのを待つのみ。

 

「ギルベルト。お前には期待している...もうすぐ我が最高傑作を円卓に送り込む、利用してもかまわん。どんな手段を使っても私に玉座につけよ」

 

 そういった後、魔女は闇夜に消えていった。

 

 一人残った騎士は独り言を零した。

 

「モルガン...君の願いもまた、決して叶わないんだよ」

 

 崩壊するブリテンの中、騎士は再び歩みを進めるのだった。




本来、騎士王編はFate編が終わった後に書こうと思ったもの、しかしながら短編として終わらすのも惜しい...

 もしよろしければご感想などいただければと。良かった、って思ってくれる人がいたら、また本編として書き直してみようと思います。(アルトリアとの最初の出会いから)

もう一話短編を上げて本編に戻りたいと思います。

次回「円卓崩壊」

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