誰しも勢いで買って後悔することは多々あるだろう。
例えば使いもしないのに便利さに目がいってしまい、つい買ってしまった家電。
いつか使いたいと思っていたけど一回しか使わなかったマニアックな調理具。
結局のところ埃を被るのがオチである。だが、無駄な物を買うことを非難するわけではない。自分が本当に欲しい物であれば、有無を言わず買うことだって大切なことである。欲望に忠実と言うのは悪いことばかりではない。
長々と言い訳を語っているわけだが、何が言いたいかというと
ーーー欲望に偏り過ぎると思わぬ災難が訪れることもある、ということだ。
◇
「まずいな」
僕の目の前には一つの枕がある。それは通常の枕ではなく、いわゆる抱き枕というやつだ。
この枕に抱きつく事でリラックス効果が出るとかなんとか...確かそんなことを猫耳商人が言っていたような気がする。
限定品だとか、あなただけのオリジナルが作れるとか、なんだか上手い話に乗せられた気がしなくはないがそこはいい。
ただ自分の好きなモノを枕にプリントできるという、その時は大変素晴らしい商品だと思ったのが運の尽きだった。
今この枕にプリントされているのはもちろんアタランテ。ただ困ったことに、なぜか赤面して恥ずかしがってる照れ顔と、まるでこちらを誘ってるようなポージングが問題なのだ。
「勢いで買ってしまったが、これは...まずいな」
こんな注文した覚えはないのだが、知識人曰く“そういう物“らしい。
この頃はレイシフトがどうとかで僕も彼女もなかなか一緒になれないことが多い。部屋に帰ってきても、一人でいるというのはなんとも寂しいものだ。
まあ、そいう時は賑やかそうなところに行くのだが...
『弥助!ちょうど良いところにきたの、ほれ儂が今川を撃つべく出陣した時の...もうその話は聞いた?なんじゃ沖田冷めること言いおって。弥助、お主からも何か言って...儂があの時ビビり散らかしてたじゃと?そ、そんなわけないもん!』
『おや、アタランテは留守なのですか。なら私の部屋で飲みに来ませんか、あの時と同じように共に月でも見上げながら...あはははは!冗談、冗談ですよ...でも、ときどきで良いので私にも構ってくださいね?』
夜は酔っ払いどもが蔓延っているので、絡まれること絡まれること。一緒に騒げば、その時は気を紛らわせれるものの、部屋に帰れば再び襲う恋しさ。
でも、
「いくら寂しいからって、これはないな」
やはり本物には敵わない。作成者には悪いが処分することにしよう。今日はアタランテも帰ってくるらしいし、久しぶりに一緒に寝れるだろう...でも一度も使わないというのは勿体無い。これでも意外と高かったのだ、料金分は満足しなければ。
そう思い、枕と一緒に毛布をかぶる。
「......」
彼女のイラストと向かい合う。
照れた彼女の顔...目を逸らさずこちらをじっと見つめてくる。
「困った...悪くない」
普段、というか見たことすらない新鮮な表情。なんとも言えない背徳感が押し寄せてくる。これを書いた方は素晴らしいな、いい感じにモフモフ感と可愛さを両立してある。うん、本当に困った。捨てることは、とてもじゃないができない。
とはいえ、とはいえだ。もうすぐ彼女が帰ってくる、捨てるのはやめにしていい隠し場所はないか...くっ、ここで等身大なのが足を引っ張るなんて。
とりあえず、ベットから出て...
「帰ったぞメラニオス!」
この時、思春期男子の“親が突然部屋のドアを開けて慌てふためく気持ち“がわかった気がした。
「む、もしかして寝ていたのか...すまない、悪いことをした」
「い、いや。今起きようとしてたから」
我ながらこの時の毛布を被るスピードは素晴らしいものだと自負している。
さて、どう誤魔化すか
「だが、もう昼時だ。そろそろ起きたほうがいいのではないか?それに、その...汝の顔が見たいというか。べ、別に寂しかったというわけではないぞ!」
...うーん、好き!
だが、なんとも間が悪いことか、というか僕が悪いんだけども!彼女にこの枕を見せるわけにはいかないのだ、最悪この生活にヒビが入る。
「さてはベットから出られなくなったか?しょうがない、私が無理矢理でも」
「こ、来ないで!」
「え...」
しまった、つい言葉が強く
「そ、そうか。寝起きに話しかけるのは、鬱陶しかったな...ごめんなさい、ここ数日汝のことばかり想っていたので、ついはしゃいでしまった」
「え、いやその」
「少し、外に出てくる」
「違うんだ、待ってお願い!」
罪悪感が二倍!
ああ、こんなはずじゃなかったのに、もうこれは駄目だ。見たかあの顔を?あんな悲しそうな顔をさせるなんて、夫として失格だ。
出て行こうとする彼女の手を取り、必死に事情を説明した。普段は凛とした佇まいの彼女だが、振り返った姿は弱々しい少女の顔だった。その顔を見て再び罪悪感に襲われたのはいうまでもない。
「そう、だったのか...だが、少し妬けるぞ。責任は取ってくれるんだろうな?」
そういうとアタランテは僕に向かって腕を伸ばした。僕はそれを黙って受け入れ、彼女の背中に手を回す。お互い隙間がないほど密着する、互いの体温がしっかりと感じられる距離。アタランテは目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしている。
「汝の香りがする」
「あはは、そんなに臭う?」
自分では分からないが、意外と加齢臭でもしているんだろうか。いや、この姿はまだ若い時のままだしそんなことはないと思うけど。子供に「臭い」って言われたらショックで寝込んじゃうかもなあ。
アタランテは鼻を寄せて再び大きく息を吸った。
「私はこの香りが好きだ」
「......」
「暖かくて落ち着く....何より、あなたが生きていることを実感できる」
参ったな、今日はずっと赤面しっぱなしかもしれない。彼女が発する言葉を聞くたびに心臓は飛び上がり、心は幸福感で満たされる。それは彼女も同じことだろう、今僕たちは思いを共有できているんだ。
「...もっと強く抱きしめてくれ」
「....うん」
いう通りに彼女の体を強く引き寄せる。彼女は僕の胸に顔を埋め、心地よさそうにしている。抱き返してくる力も強くなり、これが僕に対する想いの強さだと思うと、より一層愛おしく感じた。
だが、
「ーーーそれはそれとして、枕は捨てる」
そうは問屋が卸さないそうで。
「...嫉妬してる?」
「違う」
「本当に?」
「...少しだけ」
渋る僕を、じっと目を細め睨んでくる表情は内心かなり嫉妬していたことを示してるようで、なんだか笑ってしまった。
「あはははは!」
「なにがおかしい。早くそれを渡せ」
「いやあ、君が物に嫉妬するなんてね」
「私だって...嫉妬ぐらいする」
この枕のことは非常に残念だが、彼女をこれ以上嫉妬させておくのも悪い。今回は縁がなかったと諦めることにする。
それに最近は、君のことを想って待つということも楽しいと感じるようになってきたんだから。
手をこちらに向け、早く渡すように催促する彼女に枕を手渡すために持ち上げた。表面のアタランテと別れを告げる。
「まったく、これのどこがいいの...っ!」
「どうしたの?」
なぜだか、みるみるうちに赤面していくアタランテ。そのうちワナワナと震え始め、どうやら怒りが込み上げているようだ。
今彼女が見ているのは裏面。そういえば買ってから表面しか見てないからどんなアタランテが描かれているのか僕は知らない。
これは後から知ったことだが、裏は過激だったらしい。その後のことはお察しのとおり。
アタランテはしばらくこちらを見るどころか、口を聞いてもくれなかった。
〜Fin〜
登場サーヴァント
•メラニオス 食堂で赤い弓兵に慰められる姿が目撃される
•アタランテ あの絵を描いた人物は許さないと激怒する反面、自分はあのような表情ができるのかとドキドキ
•カルデア商会 刑部姫の協力のもと製作。がっぷり稼いだらしい。
•酔っ払いの魔王 儂の武勇伝聞けるとか、普通泣いて喜ぶはずなんじゃが、じゃが!?
•酔っ払いの虎 一人で飲むお酒はあまり美味しくありませんねえ
fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?
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イチャイチャ
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つよつよ奥様
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しっとり/依存
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無関心/やり直し