【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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雷雨が降り注ぐ中、二人は暗い洞窟の中で夜を越すことにした。


狩人と怪物 短編「嵐の夜に」

 外の雨音が洞窟内に響く。

 

 旅の途中、突然の雷雨に見舞われ雨宿りできるところを探していると幸運なことにこの洞窟を見つけることができた。おかげで今晩は何とか凌げそうだ。

 

 轟音を上げ雷が鳴り響く。

 

 しかし今日は一段と酷い。もしかしたらどこかの誰かがゼウスを怒らせたのかもしれない...なんてくだらない考えが頭をよぎる。ああ、もちろん僕のせいじゃない、あの神に手を出すのは今の時点では部が悪い。それに、今は一人じゃないんだから。

 

「にしても明かりがないのは少々困るな」

 

 生憎のところ火をつける道具は持ち合わせていない。火種を起こそうにも湿っていて使い物にもならない。気温はどんどん下がっていく。このままじゃ命に関わる。

 

 けど問題はないのです。以前、鹿を狩った時に毛皮を剥ぎ取っておいた。この自然の毛布、大きさも十分でこれなら二人でも使うことができる...少し密着するけど、うん、明後日の方向でも向いておこう.

 

「アタランテ、毛布用意したからこっちおいで...アタランテ?」

  

 返事はない。

 

 この洞窟はさほど広くはない。数メートル歩けば奥にたどり着けるぐらい、まあ二人だけならちょうどいい広さだ。しかし、明かりもないので真っ暗。ここからでは彼女がどこにいるか分からない。

 

「アタランテ、どこ?大丈夫?」

 

 もう一度暗がりに声をかける。

 

「ここ、いる」

 

 か細い声が聞こえた。

 

 その声を聞いて安心する。良かった、姿は見えないけど確かにそこにいるようだ。

 

「そんな奥の方にいないでこっちこない?」

 

「.......やだ」

 

 思考がフリーズ。

 

 頭を切り落とされた時のように意識が一瞬断絶される。

 

 ...っ、あ...拒絶?あ、まって泣きそう。何か気に触ることでもしたのか、心当たり......心当たりしかない。こういう時どうすれば?...教えてよシドゥリ。

 

 何秒かその場で立ち尽くしてしまうが、このままではいけないと考えると自然に口から言葉はこぼれ出た。

 

「ごめん....そっちに毛布置いとくから使ってください。僕は入り口のところいるから」

 

 毛布を置いた後、悲しげな後ろ姿で入口の方へ向かう。

 

 ...今日は寂しい夜になりそうだ。雨は僕の心情を表すかのように一層激しく降り注ぐ。

 

「あっ、待って———きゃっ...!」

 

 光が視線をよぎる。

 

 その数秒後、先ほどとは比べ物にならないぐらいの轟音で鳴り響く雷。

 

 しかし確かに聞こえた小さな悲鳴。沈んでいた心なんか吹き飛び、すぐさま彼女がいると思われるところへ駆け寄る。

 

「ねえ返事をして!?できるなら僕の名前を呼んでみて!」

 

「うぅ...」

 

 啜り泣きのような声は聞こえるけど依然として彼女の姿は見えない。手探りで探してみるもなかなか触れることはできない。

 

 どうして気ばかり焦ってしまうのか。落ち着け、落ち着けよ、何も死の危険があるわけじゃない。ただ彼女は泣いていて、その涙を一刻もはやく拭いたいだけなんだ。

 

「———っ」

 

 その時、再び雷が落ちる。有難いと言っていいのか分からないが、光のお陰で彼女の姿が一瞬見えた。

 

 膝を両腕で抱え込み、震えながら隅にうずくまる彼女が

 

「...大丈夫?側に行ってもいい?」

 

「.....」コクリ

 

 返事はなかったものの頷いたのはわかった。そっと側に近づき隣に座る。

 

「おっと」

 

 すると僕は勢いよく彼女の方へ抱き寄せられてしまった。ここに僕がいるのを確かめるように思わず痛いと感じてしまうほど力強い抱擁。突然のことで驚いていると、彼女の頭が僕の首元へ埋められる。サラサラとした髪が肌に触れる度、くすぐったくて身を捩れさせてしまうも絶対に逃さんと言わんばかりに体を押し付けられる。

 

「大きい音とか光とか苦手?」

 

 片手で彼女の背中を抱きしめ一方の手で優しく頭を撫でながら聞くと彼女は小さく頷いた。

 

 悪いことをしてしまった。きっとこんな奥にいたのは雷の音を聞いて動けなくなっていたんだろう。もっと早く側にいてあげるべきだった。あいも変わらず雷鳴は響いてる。彼女の震えは少しは収まっているがこの様子じゃ、しばらくはこうしておくほうがいいだろうが、寒さで震えているのなら話は別だ。

 

「毛布...ああ、あそこに置きっぱなしだ。ごめんアタランテ、少し放してくれるかな?」

 

「やだ」

 

 より一層抱きしめられる力が強くなる。まだ、怖いのかな。不安がってるのがよくわかるけど、毛布があったほうがいいのでは?

 

 そう聞くと。

 

「いい、このままでもいいから....今は、そばにいて」

 

 その言葉で胸が高鳴るのがわかる。

 

 僕もこうしてるほうがいい。この状況を満喫するというのは気がひけるけど、とても心地よいから。彼女から伝わる熱が僕の体温を暖めていき、きっとこの熱も彼女に伝わってるだろうから。

 

 互いに存在を確認し合うように抱擁は強くなっていく.

 

「大丈夫。ここにいるよ、だから今日はこのまま眠ろう」

 

「...うん」

 

 彼女は安心したような笑みを浮かべて目を瞑る。そのうち静かな寝息も聞こえてくるだろう。

 

 夜はまだ長い、この嵐もしばらくは続く。それでも、今だけはこの状況を密かに楽しむとしようか。

 

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

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