FGO七周年おめでとうございます!!
アルクーー!!!運営さん愛してる!
「はっ―――はっ――――はっ」
慎二は走り続ける。
もちろん彼を追ってくるものはいない。戦場から逃げ出した彼に興味があるものなどあの場にはいなかった。
存在しない敵を恐れながら、慎二はただ”こんなはずじゃなかった”と心の中で叫び続ける。
「(キャスターなんて知るものか!!あんな役立たず、衛宮のサーヴァントに殺されちまえばいい!)」
いつからこうなってしまったのだろうか。
自分は選ばれた者。
優れた才能を持つ間桐の後継者。そのはずだったのに...
◇
「...さん。お父さん!」
古い書庫にあった本を抱え、お父さんに駆け寄った。
「この本。間桐家のご先祖様が書いたんだよね? 最初はマキリの魔術師のお話だと思ってたんだけど、でも気づいたんだ! これって僕らのことってことに!! ねえ、そうなんでしょお父さん?」
お父さんはただ”そうだ”と答えた。
やっぱりそうだったんだ! なら僕も勉強すれば、魔術師に―――
『慎二、
「―――――――」
『忘れろ、二度とこの話はするな...お前は運がいいんだ慎二』
...でも
僕は知っている。お父さんとお爺様が隠れて何をしていたか
―――マキリの物語に書いていたもの 命を懸けた大魔術の儀式――――
あの場で見た景色は絶対忘れない。
輝く魔法陣、召喚された黒い騎士。それを従えるお父さん。
「(なんだ。やっぱりお父さんは魔術師だったんだ)」
魔術の名門である間桐が滅びるなんて嘘さ。だってその血を受け継ぐ僕がいるんだから。勉強やスポーツだって他の人よりうまくできたんだ。お父さんは忘れろって言ってたけど一生懸命頑張れば僕だって―――
そんなある日、お父さんたちが養子を貰ってきた。ずっとビクビクしてて、陰気臭い年下の女の子が僕の妹になった。
「おい、ここで何してるんだよ。ここは間桐の跡継ぎである僕だけしか来ちゃいけないんだぞ」
そうだ。この書庫は、魔導本は僕だけのもの。少しだって見せてやるものか
「ごめんなさい...兄さん」
「ちぇっ」
よそ者なんかに教えてやるものか
◇
でも、いくら努力したって魔術が使えることはなかった。そんなある日。地下に通じる階段を下りてみたんだ
今まで行っちゃだめって言われてたけど
「なんだ、ここ...?」
そこで――――僕は知ってしまった
なんで?
「なんで、なんで!!どうしてだよ!こんなことって...ありえないありえないありえるもんか!!」
どうして
「父さん、どうしてだよ。なんであんな奴が...なんで...なんで、クソっ...」
どうしてこんなに頑張っているのに
『お前は魔術師にはなれない』
父さんの言葉が頭に響く
僕だって、僕だって頑張っていたのに...
「うっ...うう...ううっ...ううぇ...」
◇
「はっ、―――はっ、―――はっ、――――」
あれからどれくらい時間がたったのだろうか、慎二は町中を逃げ回っていた。後ろを振り返る。もちろん誰もいない。
疲れ切った体を引きずり家へと向かう。もう夜も深い、他のマスターと出会う可能性もある、その恐怖心が急に襲ってきた。
これも全部あいつらのせいだ。
「クソッ...」
この怒りと憎しみの感情をぶつけるため、慎二は家へと戻った。
「はっ?――――」
家へと戻った慎二。そこで目にしたのは――――
「これを、ひっくり返す...おお!綺麗に焼けてる!」
「凄いねキャスター。二回目でここまで綺麗に焼けるなんて」
「あははっサクラの教え方が上手なんだよ。う~ん、いい匂い。さっ、早く食べよう」
エプロンをつけ楽しそうに話す二人。仲良くパンケーキを作るキャスターと桜の姿だった。
「何やってんだよ...お前」
キャスターに向かって声をかける
「どうキャスター、美味しい?」
「うん。初めてにしてはとっても美味しい!すごいなあ現代の食事がこんなに素晴らしいものだなんて」
聞こえてないのか、慎二に気づかず会話を続けている。
ふざけるなよ...っ!
「おい!キャスター、どういうつもりなんだお前!」
びくっと肩を震わせる桜。キャスターはそこでようやく慎二の気が付いたのか
「ああ、シンジ。無事だったんだね、よかったよかった」
「なにが...っ、なにがよかったって言うんだよ!おかげでセイバーに殺されるところだったんだぞ!」
怒りを露わにする慎二。
コイツのせい、衛宮のせい、僕は悪くない。
「兄さん、先輩と戦ったんですか!?先輩には手を出さないって言ったのに...」
「うるさい!...お前、お前いま衛宮のこと考えただろう!!」
腕を振りかぶり桜を殴りつけようとする慎二。自分ではなく衛宮士郎を心配されたことに腹が立ったのである。
”ガッ!...ベちゃあ”
鈍い音と、なにかが床に転がる音
「ひっ、――――」
殴られたのは桜をかばう様に立ったキャスター。殴られた拍子に首が転がり落ちたのだった。
「おおっと、まだくっついてなくてね。あの剣、僕と相性が悪いんだ」
首を拾い上げ再びくっつけ慎二に向き直る。
「な、なんなんだよお前 お、お前が悪いんだぞ、お前が弱いから衛宮のサーヴァントなんかに負けちまうんだ! そのせいで僕は「死にかけた?」..っ、そ、そうだ。お前のせいだぞ!」
叩きつけられる言葉にキャスターは笑いながら言葉を返す。
「ふふふっ、死ぬ、死ぬねえ...そりゃ死ぬさ、この戦争をゲームかなにかと勘違いしてるのかい?」
「はっ?」
「だいたい君らこの戦争に参加した時点で死んでると同じようなもんさ。 まあ、僕も叶えたい願いがある。君がマスターである限り命は保証するよ」
「ぼ、僕はただ――――」
「覚悟しろよ慎二。今日の一件でセイバー陣営とは完全に敵対している。あんなに派手にアピールしたんだ他のマスターからも狙われるかもね」
「ま、守ってくれるんだろう!? それがサーヴァントの役目なんだからさ!」
怯える慎二。
縋るような目でキャスターを見つめる。
もちろんと頷き
「けど悪役の最後はどれも惨めなものだ。 だからさ、シンジ。しばらくは僕に任せて何か策でも考えていてよ。 ―――ねえ、優秀な魔術師さん?」
「あ、ああ...わかった」
部屋へ戻っていく。これでしばらくは大人しくしているだろう。セイバーのマスターとの約束は守った。
「...キャスター、その」
恐る恐る声をかける桜。
「さっきはありがとう...でも首は大丈夫?」
「うん。ほら、もう完璧に修復した」
見ると首は完全につながり傷跡すら残っていない。ほっとしたように息を吐き無茶をしないようにとキャスター窘める。
「先輩を殺さないでくれてありがとう...あの人が居なくなったらわたし」
黙って頭を撫でるキャスター。
だが、その顔は酷く歪んだ笑みを浮かべていた。
「さあ、もう夜も遅い。また明日、セイバーのマスターのところへ行くんだろ?早く寝なきゃ」
そうして”おやすみなさい”と声をかけ自室で眠りにつく桜。
キャスターは料理の片づけを済ませ外へ出る。向かうは柳洞寺。死にかけの害蟲と、今この時召喚されようとするアサシンに会うためキャスターは足を速めた。
◇
~柳洞寺~
人の気配もなくただ蟲の鳴く声が響く静かな夜。この寺にその醜い害虫は巣くっていた。
「お、おのれ、キャスターめ。まさかワシの本体を潰すとは...」
現在の臓硯は本体であった蟲を失い、予備として残していた羽虫一匹の姿をかろうじて保つことで生きながらえていた。
「五百年、五百年じゃぞ...このような匙で終わらせるものかっ!」
地面が輝き始める。その姿になってもその歪んだ願いが消えることはなかった。
「まだあきらめるものか...!」
霊脈が十分に通っている柳洞寺、そして聖杯戦争のシステムを作り出した張本人である彼がそろうことでアサシンが召喚されようとしていた。
「―――。――――。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
地面がより一層輝きを放つ。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
辺りから魔力が収縮してゆき
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
そうして姿を現したのは――――
「サーヴァント・アサシン。影より貴殿の呼び声を聞き届けた。貴殿が私のマスターか?」
「かかかっ、左様。お主の力存分にふるってもらうぞアサシン 白き杯はこの間桐臓硯がいただく」
笑い声が響き渡る。永遠を望んだ魔術師、名前のない暗殺者、この二人が聖杯戦争にて暗躍を始めようとしていた。
一方、その様子を見ていたキャスター。
「なるほど...あれじゃあ五百年の妄執は消えなかったか」
若干、そのしぶとさに引いたような表情を浮かべ声をかけるか暫く迷ってしまったのだった。
はてさて福袋は誰と出会えたでしょうか、皆様に良きご縁があるよう祈ってます。
次回 「敗退者」お楽しみに!
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