【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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マヴロスモンスター(設定) 


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ゆるキャラ 毛皮には触手が纏わりついている

本当は主人公を書こうとしたんですけど、思った以上に人物を書くのが苦手だった。なので”黒き怪物”としての彼を描いてみたがどちらにせよ下手くそだった。
最初はただの巨人のつもりでしたがどうせなら盛っちゃおうと思って...本編に出るかは未定。どちらにせよ黄金の王様に力を封印されているので、あくまで設定。彼を倒せばあるいは...的な感じで。

目次にあるやつの方が綺麗かも



桜と怪物 「君がそれを望むなら」

「それでねえ、士郎ったら勝つまでやめたがらないからしょうがなしにお爺さまが弓を持たせたのよ」

 

「ちょっ、恥ずかしいからやめろって!だいたい何年前の話してんだよ藤ねえは!」

 

「ほお...シロウが弓を使い始めたのはそのような理由が」

 

 いつも通り食卓を囲み食事をとる。少し違うのは今日からは毎朝先輩の家で目が覚めて一緒に朝食を作って一緒に登校する。一緒に過ごす時間がいつもより多くなったこと。

 

 幸せ...といえるのかな。私は、先輩といるだけで嬉しいのです。

 

 でも―――

 

 ◇

 

 毎晩どこかに出かける先輩とセイバーさん。

 

 ...聖杯戦争。

 

 先輩がマスターということも分かってる。先輩のことだ、きっと誰かを助けるために頑張ってるのだろう。

 

”ガチャ”

 

 玄関口が開きセイバーさんが先輩を肩で支え帰ってきた。ぐったりとしたその姿を見て思わず息が詰まる。

 

「桜?...眠っていたのではないのですか?」

 

「――――――――」

 

 っ...そんなわけないじゃないですか。わたしがどれだけ先輩のことを心配しているのかも知らずに...

 

「退いてください、そんな支え方じゃあ先輩が辛くなります」

 

「いえ、これは――――」

 

 セイバーさんから半ば強引に先輩を引き寄せる。

 

「貴方が先輩となにをしているのかは知りません。わたしには答えてくれないことも分かっています」

 

 ...嘘

 

 本当は知っている。

 

「けど、貴方が来てから先輩は毎日辛そうです。セイバーさんの事情は知りません...けど、もう少しうまいやり方があるんじゃないですか?」

 

 貴方には先輩を守る力がある...わたしにはできないことが、貴方には出来る。そのはずなのに...

 

「それができないなら先輩を巻き込むのはやめてください」

 

 何か言いたげな彼女を無視し、寝室へ先輩を運ぶ。何やら魘されているようで時々呻き声をあげている。

 

 どうして先輩だけがこんな目に

 

「ごめんなさい...わたしがもっとしっかりしていれば」

 

 わたしにあなたを守る力があればとできもしないことを思い浮かべる。

 

 居間に向かうとセイバーさんは申し訳なさそうにうなだれていた...流石にさっきは言いすぎてしまった、彼女に謝らなきゃ。

 

「あの...セイバーさん。さっきはすみませんでした」

 

「え?」

 

「私にそんなこと言える資格なんてないのに、本当にごめんなさい」

 

 セイバーさんに頭を下げて謝罪する。

 

「頭を上げてください桜。桜の言ったことは正しい。今夜シロウが倒れたのは私の不注意、私の責任です」

 

「シロウの傍にいながら...申し訳ありません」

 

 でも...

 

「いえ、そんな...そんなこと言わないでください。わたしが悪いんですから」

 

 それでも心のどこかで思ってしまう。

 

 この人のせいで先輩は...この人がいなければ―――って。

 

「桜...?」

 

 でもそれは八つ当たりに過ぎなくて...分かってる。セイバーさんは強くて真面目で、いい人。

 

 ――――先輩を守ってくれる人。

 

「セイバーさん...先輩をよろしくお願いします」

 

 ...わたしには出来ないから。

 

 ◇◇◇

 

 夢を見る。世界が真っ赤に燃える夢を

 

 ―――点滅を繰り返す。

 

 まるで蟲が体を這いずり回ってるようだ

 

 ―――熱が体中に浸透する

 

 熱い、熱い

 

 後ろを振り返る、さっきまで住んでいたうちが燃えている

 

 ―――息をすれば喉を焼かれ、生きているだけで地獄の様

 

 苦しいから喉をかきむしる、肌が焼きただれ脳は蒸し焼きに

 

 ―――でもこれは10年前の話

 

 燃え盛る世界の奥で黒く輝く■■■■

 

 ―――この炎は過去の話

 

 手を空へ伸ばす

 

 酷く熱い...恐ろしく寒い

 

 ―――だから、あんなものは知らない

 

 太陽は黒く輝いていた 空には黒い太陽があった

 

 そこからドロリとしたものが流れ出て世界を覆う

 

 ―――そうして、あの日の光景が蟲の様に蠢いていた...

 

 ◇

 

「...――――っあ...はぁ...はぁ...夢...か...」

 

 最近はこの夢を見ることが多い...にしても今日はえらく鮮明な夢だった。

 

 爆ぜる空気。出口のない炎の壁。昔はこの夢を見て何度も魘された。

 

 それは十年も前の話、今でも眠りに落ちればあの日の空はそこにあり続ける...それでも傷はいえるものだし記憶は色あせるもの。

 

「...何で今更」

 

 肌が焼ける痛み迄実感することになるとは...それに、アレは何だったんだ。

 

 ”空に輝く黒い太陽”

 

 あんなもの俺は知らないし覚えていない。そもそもアレは――――

 

「――――っ」

 

 頭が痛む。

 

 あれ、俺はいつ布団に入ったんだっけ?昨日は...夜にセイバーと町に行って――――

 

アレは見てはいけない。触れてはいけない。知ってはならない

 

 確か...遠坂とアーチャーがアサシンと戦っていて...

 

 ―――突然アレが現れたんだ

 

 逃げなくては、逃げられない、動け、動くな―――逃げても無駄だ

 

『遠坂!!危な―――』

 

 そうだ...アレの影が伸びて...それで遠坂が飲み込まれそうになって...

 

 ”ヂリッ”

 

「ぐっ―――う゛う゛ゥゥ...」

 

 ハハハハハ は 吐き気がする 吐きあ吐き気はくはくはく

 

 吐き気がする

 

 気持ち悪い気持ちいいきもちわっるうるるキキキッキキキキ 気モチワルイイイ

 

 脳に蟲が絡みつく 体中に蛆が湧く

 

 ミキサーの様にかき混ぜられる美味し死s美味しいジュースの出来上がり 

 

 ぬちゃぬちゃ貪られ腐り落ち命が終わる美味しくない美味しい気持ち悪い

 

 気持ち悪い

 

 

 

「―――シロウ?どうしました...何か音がしたようですが」

 

 はっ、と意識が戻る。

 

 襖が開かれセイバーが心配そうに見つめていた。そうか、もう朝か。足に力を入れ立ち上がる。どうしてか、少し体がだるい。

 

「セイバー...いや、悪い。なんでも...ない...とっと」

 

 力が入らず、その場に突っ伏してしまう。クッソ...熱があるみたいだ。風でもひいちまったか。

 

「大丈夫ですか!?...シロウ、もしや起き上がれないほど体調が悪いのでは?」

 

 ◇

 

 藤ねえには俺が調子を崩したことが珍しようで、えらく真面目に心配された。

 

「もう、いつも通りご飯なんか作ってたら本当にカミナリ落としたんだから!」

 

 ...ほんと頭が上がらないな。

 

 桜もおかゆを用意してくれるし、「本当に大丈夫ですか」と心配してくれたがセイバーもいてくれるので問題ないと伝える。

 

 まあ、セイバーはというと

 

「はい、士郎が起き出さないよう監視をし食事を与えればいいのですね?」

 

 胸を張ってこたえるその姿、思わず見惚れてしまうが...それ間違っちゃあいないけど、なぜだか危機の予感がするぞ。

 

 その後二人は朝ご飯を食べるため居間に行き、セイバーもお腹を空かせているようなので一瞬に行ってこいと促す。

 

 いくら心配してくれるって言っても、こうジッと監視されていては休めるもんも休めない。はぁ、とため息を吐きながらもセイバーは朝食に行ってくれた。

 

「ふぅ...(熱はそんなにないんだけどなあ、とにかく体が疲れ切ってるみたいだ)」

 

 取り敢えず大人しくしとけばよくなるだろうと目を瞑る...

 

 ”シュッ”

 

 襖が開く、桜が立っていた。ああ、そういえばおかゆ作ってくれるって言ってたな。

 

「ありがとう桜」

 

「先輩、体起こして大丈夫なんですか?」

 

「うん なんとかな」

 

 やっぱり風邪の時はおかゆだな。早速いただこうとしてふと、気が付いた。

 

「そろそろ登校時間だろ?のんびりしてていいのか桜?」

 

「えっと...あの先輩。わたし此処に残っちゃいけませんか」

 

 ...?

 

 どうして、という疑問が浮かぶ。ひょっとして桜もまだ調子が悪いのか

 

「その...ずるしちゃおうかなって」

 

「なんでさ?」

 

 まあ、先日風邪ひいていたみたいだし普通に休めばいいのではと思う。

 

「う...ええっと...わたしの体のことはいいんです」

 

「???」

 

「その...わたしは元気で、日頃のお礼というか...先輩の看病がしたいのでずるしちゃいたいんです...っ

 

 顔を真っ赤にして伝えてきた桜。

 

 ―――そこまで言われちゃあ断れないよな。

 

「...うん。それじゃあ頼む」

 

「そ、そうですよね。セイバーさんもいるしわたしなんかが残っても――――――」

 

 ...相変らずだ桜は。自分を卑下しすぎだぞ。

 

「あの...」

 

「うん、だから看病を頼むよ桜」

 

「...!は、はい!わたし精いっぱい頑張りますね先輩!!」

 

 まるで花が咲いたような笑みを浮かべる桜

 

 ―――うん、やっぱり桜はこういう笑顔が似合ってる。

 

 ...少し眠くなってきたな。

 

「...先輩はちょっと人のことを大切にしすぎだと思います」

 

 桜が何か言ってる気がするが、瞼がだんだん重くなってきた。意識が沈んでいく...

 

「―――けど先輩? わたしは先輩のそういうところが...大好きです

 

 

 ◇

 

 さてと、おかゆを食べて少し眠ったことでだいぶ調子は戻った気がする。

 

「(うん、手足のだるさはなくなった。)」

 

 やっぱりこれ風邪なんかじゃなく栄養が足りなかったんだ。この戦いが始まってから気を張りすぎてたからな、とは言えこの調子なら今日の夜にもまた街に行けるだろう。

 

 そうだ、昨日何があったか遠坂に聞いてみるのもいいかもな...あの影のことも遠坂なら分かっているかも。

 

「先輩 お電話です」

 

「お?...誰からだ?」

 

「...さっきから待ってますからどうぞ」

 

 ...?

 

 藤ねえか?もしかして心配してくれてるのか。そう思い電話に出た瞬間―――

 

「はい、衛宮ですが―――」

 

衛宮ですがじゃないっ!!アンタ何無断で学校休んでんのよ!!私がどれだけ心配したか分かってんの!?

 

 ~~~~~っきいたあ。耳が痛いほどの怒声。

 

ちょっと聞いてる!?衛宮君本当に無事なんでしょうね!?

 

「聞いてる、聞いてるから...」

 

 俺が無事だと分かると”心配して損した”とか言う遠坂...不満はあるがひとまずの鼓膜の安全は確保された。

 

「で?、あの影について何かわかったのか?」

 

『...まったく。アレがなんなのか皆目見当がつかないの。今はアーチャーが街を見張っているけれど成果は無し...お手上げね』

 

 そんな...じゃあどうすれば。あれを放っておくのはヤバい、そう俺の直感が告げている。

 

『取り敢えずは地道に調査するしかないわね。私たちは今日の夜もう一度新都の方へ行ってみるわ、衛宮君たちはどうするの?...正直あなた達は巻き込みたくはないのだけれども』

 

 そんなこと言ってられる場合か。体調はもう大丈夫、セイバーとならきっといける。

 

『そう...なら柳洞寺の方へ行ってくれるかしら』

 

「柳洞寺...?何でだ?」

 

 どうやら先日、柳洞寺で大規模な戦闘があったらしい。そこにあの影も関係しているかもということだ。

 

『その戦いでランサーは消滅したらしいわ』

 

 なんでそのことを遠坂が知ってるんだ?...まあ、今はそんなことはいい。

 

『柳洞寺には魔術的な結界が張られているの。もしかしたらアサシンのマスターがいるかもしれないわ...何かあったら直ぐに連絡して頂戴』

 

「ああ、分かってる。じゃあ切るぞ」

 

 居間には桜がいるんだ、これ以上物騒な話はできない。そうして受話器を置こうとするが

 

『ちょ、ちょっと待った!!』

 

「...なんだよ、まだ何かあるのか?」

 

『あ、あるわよっ...いいから明日絶対に学校に来なさいよね!!大事な話があるんだから!!』

 

 ”がちゃん”と一方的に切られる電話。何だってんだ一体...

 

「ったく...前は行ったら怒ったくせに」

 

 今日は来いなんて勝手な奴だ。なんてことを愚痴りながら居間へ行くと

 

「ん?―――」

 

 桜が俯いていた。さっきから一体どうしたんだ?

 

「桜?どうした気分悪いのか」

 

「いえ、私は元気です...ただ 先輩すごく嬉しそうだからどうしたのかなって」

 

 ...嬉しそう?今の電話がか?

 

 確かに、遠坂の声が聞けてほっとしたのはあるが...

 

「...先輩。自分で気づいてない」

 

「...む?」

 

 結局、俺には理由がわからなかった。

 

 ◇

 

「よろしいのですかシロウ?...まだ体の調子が」

 

「大丈夫だ。それに、休んでいられる状況じゃあないだろ」

 

 ...そんな会話が聞こえてきた。今日も先輩は行ってしまう。

 

 わたしは止めることは出来ない。わたしにはその力はない。

 

 でも―――

 

「...キャスター、いるんでしょう」

 

 虚空に呼びかける。

 

「―――ああ、ここに」

 

 黒い衣服を着た彼が現れる。

 

「...お願いがあるの」

 

「うん、いいとも...でも、口約束じゃあ保証はできないよ」

 

 分かってる。だからわたしは...

 

「令呪をもって命じます...キャスター、先輩を...先輩を守って」

 

 令呪が輝き、その一画が失われる。残る令呪は一画...大丈夫。これで、きっと先輩は...

 

「承った。でも、彼だけでいいのかい?」

 

 セイバーさん...彼女は...先輩のことを...

 

「......」 

 

 そうしてキャスターは微笑む。

 

「―――君がそれを望むなら」

 

 ...お腹が減ったな。




原作に沿うのはこの辺りまでにしたい。トントン拍子で進めて行きたい所です。

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