【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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今回はあの時、彼が何を思っていたのかを補足するような感じにしました。


桜と怪物(幕間) 「いつかの夢」

 ―――夢を見た。

 

 でもこれはわたしの夢じゃない。

 

 きっと...

 

 ◇

 

”子供なんて別に興味はなかった。君と話すキッカケにしただけ”

 

 目の前には新緑に輝く髪をもち、美しい女性がいる。

 

”でも...子供たちのことを語る君は嬉しそうで、まるで女神みたいな慈悲深い表情だった。その顔を見るのが日々の楽しみだった”

 

 焚火を囲んで二人の男女が談笑している。女は夢を語り、男はそれを相槌しながら聞いている。

 

”『この世の全ての子供らが、愛される世界を作る』...それが君の夢、願い"

 

”無理だ、そんなの叶わない”心の中でそう思ったよ。まあ、希望に縋りたくなるのが人間...君はきっと人間の綺麗な面を信じているんだね”

 

『汝は笑わないでいてくれるんだな...ありがとう』

 

”でも、君なら...きっとその夢を”

 

 場面は変わり、男が女を抱えている。女は照れ臭そうに顔を隠しているが、男はどこか悲痛な面もちだ。二人は傷だらけで、血にまみれている。それは自分らの血なのか、返り血なのか本人たちにも分からない。

 

”今でも後悔する。君と関わらなければよかった...君はもっと幸せになれたんじゃないかって。でも君は『ごめんね』って『ありがとう』ってそんな風に言葉をかけてくれる"

 

『ありがとうメラニオス』

 

"やめてくれやめておねがいやめて...ごめんなさい愛してるごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ愛してるごめんなさいごめんなさいごめんなさい愛していますごめんなさいごめんなさい好きなんだごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ごめんなさいごめんなさい君が欲しいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい―――”

 

 二人が日常を過ごしている風景が流れる。それは一緒に狩りをしたり、一緒に水浴びをしたり、一緒に眠ったり...女は笑顔で男を見ている、きっとこの日常が幸せなのだろう。それに対して男は哀愁に満ちた笑顔を浮かべる。

 

”君は一段と笑みを浮かべるようになった。それが嬉しくもあり...こんなにも満ち足りてていいのかと不安に思ってしまった”

 

 再び場面は変わり、村の入り口のようなところで二人が立ち止まっている。

 

”この辺りはほとんど雨が降らず、どこの村も飢餓状態だった。珍しいことじゃない、どうせ誰かが神の怒りを買ったのだろう...そういう時代だったんだ。この世は弱肉強食、いつも通り村を無視し旅を続けようとしたとき...”

 

お願い...助けてぇ

 

 女の腕に、赤ん坊を背負った少女が縋っている。どうやら助けを求めているらしい。

 

”生憎僕らは手持ちの食糧は少なく、一時の慰めにしかならない。それに他の村人もうようよと生気がない顔でこちらに這いよってくる”

 

メラニオス!!私はこの子たちの家に運んでくる。貴方は―――』

 

”ああ、僕は飛んださ。数キロ、数十キロ各地で動物を狩ったり、果実を獲ったり...本当は君を無理矢理でも村から引き離そうとしたんだ。けど、何でだろうな。ほっとけないって思っちゃったんだ”

 

 巨大な大鷹に化けた男が大量の食糧を運んできた。村人は二人に感謝を告げ涙を流している。

 

『...私は何もできなかった。汝を待つことしかできなかった。あれ程、子供たちを救いたいなどと言っておきながら...』

 

”違う、君がいたから...”

 

『私は、無力だ...子供たちが、愛される未来など私などでは―――』

 

 男は女を抱き寄せ言葉を紡ぐ。

 

「僕一人じゃあ、できなかった...君がいたから僕は飛べたんだ」

 

”そうさ、君がいたから...君が願ったから...僕は―――”

 

 場面が変わる。

 

 村で暮らす二人...いや、少女たちを加えた四人が暮らしている。

 

 それは..わたしが経験したことない...いつか夢見た、そんな光景のようだ。

 

”君はこの子たちを自分の子供の様に接していたね。生憎僕には難しいことだった。僕にとっては子供も大人も、等しく同じ人間という個体に過ぎないんだ...でも―――”

 

『お兄ちゃん、あのねこれあげる』

 

 男に果実が渡される。困惑した表情で男は受け取った。

 

『えへへ、お姉ちゃんと妹とね一緒に探してきたんだあ。お姉ちゃんがね、「彼は果実を食べているときが一番笑顔なんだ」っていってたから』

 

『えっ、いやその...貴方の好物を私は知らなかったから...果実を食べてる貴方の姿が浮かんで...い、嫌だったか?』

 

”それは何の変哲もないただの果実。特別でも何でもない、何処にでもある普通のもの...それでも”

 

 男は渡された果実に齧り付く。黙ってただ齧り続ける。

 

ごっくん......うん、美味しい...ありがとう、とっても美味しい!」

 

”凄く美味しかったんだ。なんでもないその果実が...特別に感じたんだ”

 

 ◇

 

 景色が薄れていく。

 

 ―――もう目覚めなくちゃ




特別だと感じたいつかの思い出。

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

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  • 無関心/やり直し

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