【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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桜と怪物 幕間 「不滅の貴方」

 人は誰しも永遠を手に入れたいと願う。それは憧れであり、常人には決して叶わない望みでもある。

 だが、この場にはそれを手にした二人がいる...正確には今から手にしようとする者とそれを見守る者だが。

 一人は時間を手にする為に。永遠の時間が手に入れば自身の願いに手が届くと信じて。そしてもう一人は死を恐れた。ただ死ぬのが怖かった。それが自分の意思なのか、妖精の悪戯なのかは定かではない。

 

 両者の違いがあるとすれば、自身で望んだか、考えなしに行った結果の末に後悔しているか、である。

 

 暗い境界の中で二人の男が問いを交わしていた。

 

「.....どうして、そこまで永遠を望むの?」

 

 神父服の魔術師に尋ねた。とある田舎町で出会った男。数奇な縁から彼の研究を手伝うに至り、今この場にいる訳である。

 彼らは友人であり共に苦難を乗り越えた中ではあったが、“永遠“を祝福するものと、否定するものと言う決定的な違いがあった。

 

「前にも言ったでしょうが、私は全てを知りたいのですよ。ですが人のままでは時間が足りない」

 

 魔術師は黙々と研究資料をめくり儀式の準備を進めていく。これから行うのは魔術師が“永遠“を手にすべく行われる転生の儀式。

 

 既に魔術師は転生先を決めており、あとは実行するだけであった。

 

 “時間が足りない“

 

 魔術師の言葉を男は否定した。

 

「だけど世界は今も、これからも広がり続ける。君がやろうとしてることは終わりのない旅に出ることと同義だ」

 

 故に全てを知ることは不可能。彼は無駄なことだと吐き捨てた。

 

 魔術師は答える。

 

「いいえ、必ず可能にして見せます。結論は必ず、何代かかろうが、必ず私自身の手で導き出してみせる」

 

 魔術師は楽しそうに笑う。これから自分が歩む道を思い、いつの日かその願いに手が届くことを心から信じているのだ。

 

「私は終わりを見届けたい。それには“永遠“という時間が必要なのです。貴方のような欠陥だらけの物ではなく、終局まであり続ける自分自身の時間が」

 

 男の不死性は元々あったものではない。

 

 彼を作り出した妖精はそこまでは付与できなかった。元々はごっこ遊びの悪役。英雄に倒されて、死ぬのが役目。

 巨神の一部を取り込み、機神を喰らい全てを手に入れた。そのことが関係していたのかもしれない。しかしそれを星の意思は許しませんでした。

 

“あの怪物をこの大地に残すわけにはいかない“

 

 白き巨神に振るわれるはずだった聖剣は怪物を打ち倒すため作り出される。

 

 本来なら彼はあの日、あの聖剣に打ち倒される筈だった。しかし、聖剣の光が迫る瞬間ある一つの感情が芽生えました。

 

『死にたくない』

 

 だから逃げたのです。

 

 体の大半を失いながらも世界の裏側へ。

 

「貴方だって私と同じだったはずだ。“人のことが知りたい“そう思ったからここにいる」

 

「今になって後悔してるけどね」

 

 裏側にいる彼は知りたいと思った。自分を殺せる人間のことを“英雄”のことを。

 

 だから端末を産み出したのです。この彼もその一つに過ぎない。

 

「(人間の生きる意味が罪を乗り越える為だとすれば、僕は一体...何のために生きてるんだろう)」

 

 約束があったのかもしれない。それを果たすためにこの世界にいる。

 

“———いつ 日 、 い 来で っと”

 

 が、とうに記憶は摩耗し、思い起こそうとしてもノイズ音が鳴るだけ。

 

 約束をしたんだろう、誰かと、大切な人と 

 

「よし...準備は整いました」

 

 魔術師はパンと手を合わせ完成を告げた。

 

 その音で意識を現実に戻す。二人の別れの時は近づいていた。

 

「本当に行くのかい?」

 

「ええ、悲願のためです」

 

 描かれた魔法陣が火花を散り始める。いよいよ転生の儀が始まるのだ。

 

「そうだ、私の教会を好きに使ってください。寝床にするも良し、信徒の真似事をするのもよしです。いい暇つぶしにはなるでしょうから」

 

「...生憎、どちらかというと恨まれてるタチでね。祈ったところで何だというんだ」

 

「祈るだけでいいのです。貴方の願いが実現できることを願えば」

 

 魔術師が光に包まれる。

 

 男は苦笑しながらもそれを見送る。きっとお互い禄な結末を迎えないと実感しながらも。

 

「では、またいつか...次に会う時はお互いに姿、魂すら別物になっているでしょうがね」

 

 ———いつか。

 

 それはきっと希望の言葉。明日、明後日、先のことが楽しみになる。

 

「いつか、か。僕にとってその言葉は...呪いだよ」

 




神父服の魔術師

運命に出会えなかったもの。雷系の魔術を得意とする。転生を繰り返して終わりを見届ける、それが「 」へと通じると考えている。
主人公と共に埋葬教室を立ち上げるものの、外法を犯したことが露呈し追われる立場になる。
主人公の不死性を不完全と否定した。が、彼自身の転生の法も繰り返すたびに元の人格が薄れていくという欠陥がある。

結局、彼らが再開することはなかった。18世紀ごろある島に赴いた魔術師はそこで怨讐に出会ってしまった。

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