【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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いやーモルガン祭楽しみですね。妖精國の関連鯖は何故かコンプリートしているのでガチャの方は高みの見物が出来そう。
モルガンの簡易霊衣期待してますよ運営さん。


桜と怪物 「Let’s go イリヤ城」

さて、衛宮一行は森の奥に佇む大きな城へと赴いていた。目的は同盟の締結。

桜の体調はひとまず安定している。

ならば今最も警戒するべきなのは未だ被害を出し続ける“謎の黒い影“である。その為には戦力が必要。凛とは桜に関して決別しているので論外。未だ、所在不明のライダーのマスターも期待できないだろう。

ならば、現状最高戦力のイリヤの元を頼るしか手はない。

 

「本当についてくるのか桜?話をしに行くだけだから、何も無理してこなくてもいいんだぞ」

 

「いいえ、先輩ばかりに負担をかけてしまうのは申し訳ないですし、それにこの頃は不思議と体調が良いんです」

 

桜はマスターとして戦うことを選んだ。

そう、彼女は一人ではない。

 

「いざとなったらキャスターが守ってくれます」

 

二人の少し後ろに控えているキャスター。

その表情はいつもと変わらずわざとらしい笑みを浮かべてはいるものの、どこか強張っている。

正直乗り気ではないといったところか。バーサーカーに近づくことを避けようとしている節がある。

 

「本当に、信用していいんだろうな」

 

士郎はキャスターに問う。

信用できない、と言うのが本音だが今の自分達には戦う力はない。アーチャーの腕を使うにしても、最悪の事態に陥る可能性が捨てきれない。

だからと言って、キャスターに頼るというのも危険なことには変わりはない。

 

「勿論、サクラを守るという点に関しては僕たちは手を取り合える。そうだろう?」

 

「.....」

 

「ふふっ、そんな顔しないでよ。サクラの味方である限り、君のことも守ってみせるからさ」

 

今は、その言葉を信じるしかない。

どちらにせよ、彼らは進むしかないのだから。

 

とはいえ、こんな季節に森に入るのは些か堪える。寒さで身が凍りそうだ。

士郎はキャスターに尋ねた。

 

「なあ、俺と桜を抱いて、城までひとっ飛びできないのか?」

 

キャスターの身体能力ならそれが可能であると士郎は考えた。時間をかけて進むよりもそちらの方が早いし、安全では無いかと。

しかしキャスターはそれを渋る。

 

「撃ち落とされる訳にはいかないからね」

 

「?」

 

ひょっとして、この森には何か罠でも仕掛けられているのだろうか。辺りを注意深く見渡すが特に変わった様子はない。

鳥の鳴き声すら聞こえないこの森はまるで屍のよう。

進めば進むほど深くなっていく木々の海は、果てが無いのではと危機感を抱かせる。

 

森に入ってから数時間。

キャスターはともかく、二人には若干の疲労が見られる。歩き続けるにつれ息切れも多くなってきた。

一度出直すべきかと考えた時、

 

「———見つけた」

 

キャスターが指を刺した方向を見る。

その先にあったのは暗い闇だ。

木々の隙間、注意していなければ見失うほどの隙間の向こうに、何か、ひどく場違いなものがあった。

 

「壁...ですかね?」

 

不思議そうに言う桜。士郎にもそこにある闇がなんであるかは理解できない。

 

「聖杯戦争の拠点...雪国から空間ごと持ってくるとは無茶をするものだ」

 

何かをボヤきながら一足先に遠くへ見える闇へ向かうキャスター。

まだアレの正体が掴めず、困惑しながらも二人はその後に続く。

 

森を抜けた。

アレほどは手がないと思っていた森はあっさりと無くなった。

いや、ここだけハサミで切り取られたように、森の痕跡が無くなっていたというべきか。

 

巨大な円形の広場に鎮座する雪の城。

それがイリヤスフィールの住処だった。

あの少女が住むには広すぎ、一人で暮らすにはあまりに寂しすぎる。

深い森の奥に佇む孤城がそこにはあった。

 

「——————」

 

日本にあるまじき古風な城に圧倒されてしまう。

 

おそらく、イリヤスフィールは一行がやってきているのは知っているのだろう。

なら敵意がないことを示すために正門から堂々と入ろうと士郎は考えたが、

 

「よし、行くぞ桜...桜?」

 

桜はただならぬ顔で城を見上げている。

その顔は何かに怯えているような、そんな緊張感に満ちていた。

 

「桜、何か気になるのか?」

 

「...なにか、私たち以外の誰かがいます」

 

「そりゃいるだろう。イリヤとバーサーカーが住んでるんだ」

 

「そうじゃなくてそれ以外の、誰か、です」

 

「それ以外って...」

 

誰だ...?

 

しかし、その疑問は突然鳴り響いた轟音に掻き消された。

“ドゴーンッ“と豪快な崩壊音。

城壁はキャスターの触手によって無惨に崩れ去った。

 

「え———ちょ、おまえ、えぇ」

 

「キャ...」

 

口を抑え驚愕する。二人の頭には“これ弁償額どれくらい?“という考えがよぎった。

そんなのお構いなしに黒い影は城内へと消えていく。

 

「っ——————ああもう、なんなんだよアイツ...!!」

 

こっちは話し合いに来てるのに、これじゃあ城攻めと見られても言い訳できないぞ、と士郎は思う。しかし、やってしまったものは仕方がない、桜の手を引き、慎重に城内へと足をすすめた。

 

侵入した部屋から廊下に出る。

豪華絢爛な光景に目を奪われるが、それ以上に圧倒的な何者かの存在感を感じてしまう。

これはバーサーカーのものではない。あの巨人以上の何者かが、この場に存在している。

 

「.....そうか、来ちゃったかあ」

 

キャスターは響いてくる戦いの音に耳を傾ける。

何かが絶え間なく降り注ぐ音、微かに響く剣と剣が撃ち合う音。

嵐のような轟音が城中に響いている。

 

「ッ...」

 

桜の肩が震える。

嵐のような音を怖がっているのか、それともその正体に気付いたのか、

いずれにせよ、この城のどこかでバーサーカー達と何者かが戦争をしているのは間違いない。

 

一行は駆け出す。

音は下から響いてくる。

位置関係からすると、戦いは城の中心、来訪者を迎える大広間に間違いない。

 

降り注ぐ音に比例して撃ち合う音は刻々と小さくなっている。

なにが起こっているのか、理解しているのはキャスターだけか。しかし、意見を交わしている場合はない。

ただ一つ言えるのは、取り返しのつかないことが起きようとしているということだ。

 

広間に出る。

そこで目にしたのは、

 

「■■■ーーー!■■!!...■■■■■...」

 

「やだ——————やだよぅ、バーサーカー...!!」

 

数多の宝具を体に受けなお、それでも背後の怯える主人を守るために戦った狂戦士。しかし、その圧倒的な力はもう一つの強大な力によって嬲り殺されてしまった。

少女は何もできなかった。ただ、その黄金の力に怯えることしかできなかった。

目の前で命を散らす英雄の後ろで、子供らしく泣くことしか。

 

それは最初から決まっていた戦いだったのだ。

あらゆるサーヴァントは、英霊である以上あの王には勝てない。

全ての宝具の原典、その英霊を殺した宝具を所有するモノに勝てる道理はない。

 

その結果がこれだ。

 

いかに英雄としても、英霊である以上は、決してあの王には勝利できない。

 

消えゆく勇者と、泣き叫ぶ少女。

それをつまらなそうに見下ろす黄金の王。

その後ろに立っていたのは、

 

「あ...」

 

「遠、坂...?」

 

その目はどこまでも冷たく、二人を見ていた。

サーヴァントを失った彼女が何故?

その疑問に凛は答えない。

 

「悪いわね。衛宮くん達には悪いけど——————そこの化け物に勝たせるわけにはいかないのよ」

 

それは宣戦布告。

もはや話し合いなど不要。凛は、この戦争に乱入した“怪物“を排除するため黄金の王を従える。

 

「——————ほう?

自ら首を差し出しにくるとは、躾の甲斐があったな雑種」

 

王の口元には不敵な笑み。

もとより、少女や士郎など眼中になく、ただ一人、黒い男にその言葉は向けられる。

 

「その物言い。泥を被ろうが変わらないなんて...相変わらずだねギル」

 

皮肉と少しばかりの喜びを込めてキャスターは答える。

 

「...貴様は随分と醜くなった。見るに堪えん、魂まで腐敗したか」

 

「酷いなあ、僕は人として歩んだだけさ」

 

王はあくまでも尊大なまま、それでも明らかに他の者達へとは違う態度で言葉を紡ぐ。

 

「くだらん。それが呪いであることがなぜ分からぬ。何度死のうが、そこだけは変わらんな」

 

先程までの退屈に満ちた顔が嘘のように、嫌悪と憐れみ、そして僅かな喜び。複雑な表情を王は浮かべた。

 

目の前の怪物はあの頃と全く変わっていない。

姿形が変わろうと、あの日の想いだけは変わらなかった。

しかし、それが男を縛りつけているのは確かだ。

 

「悪意など一過性のものであり、いずれ薄れゆくものよ。それを何百、何千と繰り返せるほど貴様は狂人ではなかろう」

 

「憐れみのつもりか?よしてよ、気持ち悪い。

それに今更遅い、手遅れだ」

 

あの日、共通の友の死をもって二人の道は分かたれた。

この会話は既に意味の無いもの。言葉を交わすには、遅過ぎたのだ、

 

「僕はただ、自らの願いを叶えるためここにいる

だからさ、」

 

男の纏う霊基が変質してゆく。

本来の、彼らと共に生きた頃の姿へ。

ギリシャの怪物など偽りの名、キャスターなど偽りのクラス。

 

これは二人にとっては再現にすぎない。あの日のように、ただ殺し合う。ここには止めれるものなど存在しない。

状況が掴めぬ子供らをよそに、二つのjokerはぶつかり合う。

 

「———おまえは邪魔だ、英雄王」

 

怪物の血が辺りを侵食し始め、周囲の地面と同化を始める。地面が蠢き、怪物の一部であるかのように、無数の触手として顕現する。

 

「そうか、ではこれ以上言葉を交わす必要もない。

 

———裁定の時だ。十分に役目を果たして逝け。我に醜態など晒してくれるな」

 

英雄王はそれを見て、宝具の力で宙へと浮かぶ。

王の背後に黄金の波紋が出現する。あらゆる原典が収納される宝物庫——— 「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」より、数十、数百本の宝具が顔を出した。

 

それに呼応して、怪物の操る触手が、剣や槍、弓といったあらゆる武具...いや、彼がこれまで見てきた宝具へと姿を変えた。

 

相対する数多の宝具。

今ここに、かつての神話が再現されようとしていた。

 

 




次回予告
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