【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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感情を露わにする主人公、笑みすら浮かべない英雄王。もう戻れない二人の闘いが今始まる...


桜と怪物「人の軌跡」

『擬態解除 class casterから...monster

ステータス 偽装停止 — — — — — EX...error

ステータス E E A A++ E EX』

 

自身が纏っていた偽りの名を剥ぎ捨てる。これが彼の最初の姿。服装は黒い衣から純白の衣に、それはかつての友の面影を思い出させる。

 

class モンスター 

そのクラスの該当者は英霊でも反英霊でもない。その該当条件は『怪物』であること。もしくは怪物として葬られたこと。

キャスターなど偽りのクラス、この世界に現界するための楔にすぎない。

 

己の願い...過ちを正すため怪物は再び人類に牙を剥く。

 

———さあ、目を開けよう。敵は目の前にいる。

 

金色の鎧を纏うギルガメッシュの背後の空間から撃ち出される無数の宝具。このまま受け止めれば霊基ごと消滅させられるのは間違いない。ならばどうするか?そんなのこと考えるまでもない。

宝具には宝具で対抗すればいいのだ。

 

大地に血を一滴垂らす、それで事足りる。神代の頃の規模は不可能、不満はあるがこれは人類が選んだ道。それに関して口を挟むことはできない。

今できる全力の力を振るうのだ。

でなければ“死“だ。

 

「最初から...全力(フルスロットル)でいくよ、ギル」

 

その怪物は迫る死の最中でさえも笑って見せた。

 

“人間が歩んだ道。それは星と共生する存在から星の命を消費する存在へ進化した“

 

“彼らは耕し、栽培し“

 

“収穫し、奪い合い、助け合い“

 

“創造し、破壊し“

 

“対話し、鬱憤し“

 

“威圧し、落胆し、加虐し、乱倫し“

 

“崇拝し、喝采し、繁殖し“

 

“そして愛し合い、殺し合うのだ“

 

「———今こそ紡ごう 人の歩み、その業を」

 

それは、怪物が普段から詠唱の必要もなく宝具と言えるものだった。大地に魔力が走る。怪物の血は大地を侵食し、己の一部へと強制的に塗り替える。

 

『—————————人の軌跡(テラス・オブ・バビロン)———』

 

彼が人として歩んだ人生そのもの。そして、人の歴史を再現した宝具。彼が目にしたあらゆる宝具(歴史)が生み出され、収穫される。

底はある。確かにある。しかし、それは星の終わりと同義。ゆえに無尽蔵。

向かいあう二人。全ての砲門が狙いを定める。

そして一呼吸置いた後、双方合わせて百を超える宝具が放たれた。

金属同士の衝突音が崩れかけの孤城に響き渡る。

一騎当千の男たちの戦いはまさに神話の再現そのものと言えるほど苛烈なものだった。

あらゆる宝具の原型を集めたとされる、最古の英雄が所有する黄金の蔵。

並の英霊にとっては必殺一撃になり得るもの。それが無造作に、そして凄まじい速度で蔵から射出される。

対する怪物は、大地そのものから宝具を強制的に“収穫“する。それこそが星を食い尽くす人の業。

神秘を纏った無数の宝具が生み出され放たれ続ける。

 

「ほう...安心したぞ。中身が腐ろうとその猿真似は相変わらずか」

 

「酷い、そんな言い方はないじゃないか。アレより万能ではないにしろ、これで対等だ。あの日と同じように遊ぼう?」

 

「貴様のそれはどこまでいっても真似事に過ぎん...決して奴には届かぬ」

 

「...やだなあ、今は僕を見てよギル」

 

「言ったであろう、見るに堪えんと」

 

次第に砲門は百を越え、千へと昇る数ほど開かれる。対抗するように怪物も生み出す宝具を増やす。城への被害などお構いなし。寧ろ、彼らにとってこの城は狭すぎたのだ。

だから、広げる。

遠慮なんてものはない。ここは既に彼らの遊び(殺し合い)の場なのだから。

 

「くっそ...無茶苦茶だ。あいつ、俺たちが居ること忘れてんじゃないのか...!」

 

士郎は宝具の嵐が飛び交う中、震えるイリヤと桜と共に、突然現れた壁に身を隠していた。壁は放たれた宝具を全て受け止め少年達を守っていたのである。

強い魔力を帯び、ある種の結界の役目を果たす黄金色の壁。それを構成する煉瓦の一つ一つに『ナブー・クドゥリ・ウスル』という意味を表す楔形文字が刻まれた壁が二重、三重と重ね聳え立った。

まるで、少年達を守るように。

 

「我を前にして他の雑種を気にするか。随分と余裕があるな?」

 

「...?ああ、約束した...したような気がするから。それに、まだあの子には利用価値があるんだ。やすやすと死なせない。死なせてやるものか」

 

自覚が無かったのか、ギルガメッシュに指摘され自身の行動に疑問を浮かべた。しかし、少女を利用するためと自分を納得させた。少女は怪物の願いを叶えるため不可欠なのだ。どのような末路を迎えるであれ、死なせてはいけない。

 

「あれが何であるか貴様は理解しているはずだ。罪を背負う前に殺してやるのがせめてもの慈悲であろう...それが分からぬほど腐りよったか」

 

魂が腐れば外見もその思考も偽りのものへと塗り替えられていく。

怪物は一つの願いに執着し続け、ついにはその願いすらも忘れ、別のモノへと塗り替えられた。

ギルガメッシュの言葉は、その願いを否定するもの。

願いを否定された怪物は、張り付いた笑みではなく苛立ちをみせ、縋るような声で王に叫んだ。

 

「...一人を殺して救える世界など滅んでしまえ。ああ、そうさ。正しさや善行だけで救えるなら僕のことも救ってくれよ...!それをしてくれないから、こうして自分で頑張っているのに...!!」

 

「溺れゆくものは、海の深さに気を取られ広さを知らぬ...今の貴様は駄々をこねる子供にすぎん。その願いは今を生きる人間にとって傍迷惑なこと。いい加減に目を覚まさんか、戯け」

 

城が崩れ去る。

いや、よくここまで持ち堪えたと言うべきか。巨人と王の戦いの時点で限界だったのだ。この城は十分にその役目を果たした。

 

士郎達は落ちてくる瓦礫をなんとか避けながら、城から脱出する。後ろを振り返える。凛は既に居ない。彼女のことだ、心配せずとも脱出している、ならば自分達の命を守らねばならない。

退路は幸いにも残されていた。問題は落ちてくる瓦礫と、未だ降り注ぐ宝具であるが、

 

「この壁...守ってくれてるのか」

 

彼らを守るように壁が現れる。恐らくはキャスター...モンスターの宝具だろう。もう彼らがこの状況について行くのは不可能であった。あれの正体も分からず、さらに疑心が増すのみ。とにかく自分達ができることはこの戦場から逃げ帰ることだ。痛む腕を抑えながら少女達を連れ城の外へと飛び出す。

 

戦場は広場へと移る。

砲門の数はさらに増え、数千もの宝具がぶつかり合う。戦闘の余波により大地が抉れ、瓦礫は宙をまい、森の木は薙ぎ倒される。アインツベルンが張った結界のおかげもあってか外界への影響はゼロに等しい。それも時間の問題に過ぎないのだが。

 

「——————!!」

 

怪物の姿が一瞬揺らぎ、紫の衣装を纏った女に変わったかと思えば、腕を前に出し無数の槍を発現する。己の内にある魔力を纏わせた真紅の槍が王の心臓めがけ射出される。その槍は因果によって標的の心臓を必ず貫く呪いの槍、いくら英雄王といえど心臓を潰されてはその命を絶たれるのみ。

向かいくる宝具の雨を貫き払い、無数の呪い纏いし槍が心臓めがけ突き進む。

だが、英雄王は一歩も動かない。

 

「...小癪な真似を」

 

ギルガメッシュは『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から複数の盾型宝具を展開する。因果律を操る宝具が向かってくるならば、こちらも因果律により絶対に所持者を守る宝具で防げばいい。そうすれば矛盾が発生し、後は質が高い方が打ち勝つのである。

空間が歪む。

金切り声をあげ、矛盾がぶつかり合った。

目の前に迫ったその槍は数枚の盾を貫いたところで停止し崩れ去ってしまう。怪物の宝具は所詮“完璧に近い再現品“に過ぎない。その全てが宝具の原典である王の財宝と比べると質では劣る。

 

「ねぇギル。ひょっとして『僕が間違っている』そう言いたいの?」

 

口元を歪ませながら怪物は尋ねた。その問いに王は無言で答える。

 

「可笑しいよ。だって、助けを求めるなら、救われないものはない。どんなものであれ、最後には救われるんだ。そうでなくちゃ不公平だ。そうさ、僕にだって権利はある、そのチャンスをくれたっていいじゃないか!なんで、どうして僕の邪魔ばっかり...」

 

それを遮るようにパチンと英雄王の指が鳴る。

 

「見苦しい」

 

瞬間、怪物を取り囲むように砲門が開かれる。周囲360°を囲まれれば逃げ場など存在しない。

冷静さを取り戻した怪物は身構え、

 

「...霊基偽装

 

怪物の姿が再び変わる。精神も、感情すらも偽装し、世界を騙すのだ。

反撃の隙を与えぬほどの宝具の雨が降り注ぐ。怪物はそれを迎え撃つ。

 

「姫鶴飛んで山鳥遊ぶ...谷切り結び五虎退かば...祭剣まつりて七星流る...松明照らすは毘天の宝槍」

 

詠唱を唱える。目には歯を、宝具は宝具で受け止めるしかない。 

先ほどまで黒い衣を身に纏っていた男は、白い法衣を身に纏い長槍を天に掲げていた。そして周りに八本の武器が現れる。恐らくはそれぞれが名のある宝具。獲物を撃ち抜かんとする宝具の数々をその8つの宝具で薙ぎ払っていく。でも、駄目だ。それでも全ては受けきれない、手数が違いすぎる。

それゆえ、もう一つの手を繰り出す。

 

「運は天に在り...鎧は胸に在り...手柄は足に在り」

 

胸に手を当て、偽りの信仰で祈る。

生前、銃弾飛び交う敵の眼前で悠然と酒をあおるも、全ての弾はその者を避けて通ったといわれる、ある軍神の逸話がもとになった加護。自身の周囲に事象操作に近い現象を起こし、攻撃の軌道すら歪めるため本人が当たると思わなければ絶対に攻撃が当たることはない。

 

そう、本人が当たると思わなければ。

 

「———はっ、所詮は猿真似よな」

 

「ちっ...ッ!」

 

ゆえに本人に当たると思わせる程の気迫を込めた一撃であれば加護を破ることは可能。

彼にとってギルガメッシュは絶対的な強者だった。

周囲に張り巡らされた加護が撃ち破られ射出された宝具が襲い掛かってくる。

それを八つの武具を同時に使いこなし、怪物は迫る宝具を払い落としていく。

が、打ち落とせたものは僅か数十本。打ち漏らした宝具が頬を掠める。

 

「貴様は他人の真似をせねば生きてゆけん。それゆえ個人に執着してしまう...愚かなものよ」

 

「...うるさいなあ。個に囚われることの何が悪いのさ。誰かを愛して何が悪い。知りたいと思って何が悪いのさ!!」

 

「分からぬか?貴様が関わるから碌なことにならんことを。己の胸に問うてみよ、今まで救えた者はいたか?最後まで愛せたか?...その者の名前すら朧げな貴様が愛を語るとは、片腹痛いわ」

 

「名前...違う...僕はただ、ただ」

 

思考にノイズが走る。

次第に撃ち落とす手数も追い付けなくなっていく.

このままでは、宝具の雨に押しつぶされるのは明らか。再び宝具を生み出したとしても焼け石に水。

ならばどうするか、

考える時間はない。王の言葉でぐちゃぐちゃになった自分を無理矢理正気に戻す。この1秒に満たぬ時間の中で、既に百を超える宝具が迫ってきている。

怪物は握った槍を振るいながら跳躍し、先程数十本の宝具を打ち払ったことで生まれた隙間へと身を躍らせた。迫る宝具の全てを躱すことは不可能。だが気にすることはない。修復に魔力の大部分を回しているおかげで致命傷には至らない。

そのまま、攻撃の余波で宙に浮かんでいる瓦礫に足をかけ、空へと駆け上がる。

 

「ほう、不遜にも我に向かってくるか」

 

突如怪物は空中で反転し、瓦礫を足場に四方八方駆け回り徐々に接近していく。

そも、聖杯戦争の戦いにおいて、人間離れした速さなど珍しくもない。しかし、それを加味したとしても迫り来る怪物の速さは異様であった。

『ギリシャにおいて最も速いとされた狩人に追いついた』

そう謳われた、彼の一つの逸話。それに恥じることなき速さをもって戦場を駆け回る。

一瞬にして王の目の前に迫る剣先。

 

「読んでおるわ」

 

怪物の手持ちの武具が槍から一振りの装飾剣に変化しているのを見抜いた英雄王。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を放ちながら大きく距離を開こうとする。

 

が、それは怪物に絶好の機会を与えることになる。

 

「——— 永遠に遠き...勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

怪物の剣が光り輝き、斬撃が巨大な光の束となる.

それは決して彼の聖剣の輝きに届くことはない。それでも一人の王は、理想の王の伝説を追い求め続けた。その王の姿を模した怪物が手に持つその剣は、なんの変哲もないただの剣。()()()()()()()()()()()、ただの剣である。

その剣から放たれる光はただの模倣に過ぎない。しかし、限りなく本物に近いそれは、真に勝るとも劣らない威力をもって王に襲い掛かる。

 

「くだらん!」

 

ギルガメッシュは体の正面に盾を顕現させ、光の束を防ぐ。

 

「よりにもよって、星の願いの贋作を我に向けるか!よほど死に急ぎたいようだな。その愚行、万死に値するぞ!...むっ」

 

光が晴れる。盾を散らすと、そこには怪物の姿はなかった。

そして、自分のすぐ真後ろ。空気が凍るほどの殺気が背中を刺した。

背後に浮かぶ瓦礫。

ギルガメッシュが目を細めながら振り返るとそこには、

 

「———獲った」

 

矢を振り絞り、王の背に狙いを定めた怪物の姿があった。

この至近距離であれば盾を出す前に射抜ける。

大弓が激しく撓み、真っ二つにへし折れようかというその瞬間、

 

射殺す(ナイン)...」

 

その宝具の真名が告げられる。

それは怪物が最も恐れた英雄の宝具であり、それが知っている人の到達点の一つである至高の絶技。かの大英雄が生み出し、ただ一人で完結させてしまった「一つの神話」。その矢は神気を纏い標的の命を射抜くまで戦場を駆け巡るのだ。

 

ああ、だが悲しいかな。

 

「———百.......ッ!?」

 

一瞬の隙だった。そう見えても仕方のないことであった。

しかし、この戦いにおいて英雄王は油断も慢心もない。ゆえに、怪物の浅知恵など手に取る様に読んでいた。

 

「——————天の鎖よ———」

 

鎖の音が鳴り響く。

矢は放たれることなく、鎖に砕かれた。

両腕、両足、体の至る所の部位があらぬ方へ捻じ曲げられる。

 

「がっ...ギギッッッッ」

 

現れた無数の鎖によって、黒い怪物は捉えられた。

奇しくも、かつての神話を再現する光景。王の庭に手を出した怪物は、天の鎖によってその身を縛り付けられる。

抜け出す術はない。一度神を取り込み、その身に神性を宿す怪物には、この鎖は断ち切れないのだ。

 

そうして英雄王ギルガメッシュは、王ではなく、戦士ではなく、彼を打ち倒す英雄ではなく『裁定者』として言葉を怪物に紡いだ。

 

「喜べ。

———貴様を『人』として裁定する」

 

怪物の頭上に断頭台が顕現する。もはや逃げる術などない。

鎖の軋む音が鳴り響く。それにとって死は何よりも望むものであり、何よりも恐れていることだった。

 

刃が降りる。

そうして、罪人のように

 

——首を断たれた。

 




次回 桜と怪物「裁定」
怪物ボッコボッコ回。


fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

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