【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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「...汝は狩りが下手くそだな」
「うっ...しょうがないじゃないか。今まで弓を使って狩りなんてしたことないんだ」
「慢心するのがならんのだ。獲物を仕留めるまで決して目を離すな。狩りの成功を確信するのは相手が死んだ時だけだ」
「ん、頭の片隅に置いておくよ」
「うむ、よろしい。では、そろそろ晩飯にしようか」
「今日は何を食べようか?」
「そうだな、私が仕留めた兎がーーー」

ありし日の思い出



桜と怪物「蛇」

鮮血が宙に舞った。

グチャッと音を立てて怪物の首が地面に落ちる。首を失った体がピクピクと痙攣し、ドス黒い血を垂れ流し続ける。これで怪物は死ぬ...

断頭台により怪物は裁かれ、その命を散らした。

これにて終幕

ギルガメッシュの勝利でこの戦いは終わる...はずもなかった。

 

「—————————」

 

それを見た少年たちは息を呑む。

彼らは知っている。

 

「———g、Aaaaaa...」

 

瞬時に飛び散った鮮血、その生首が再び怪物の体に戻っていく。それはまるで映像の巻き戻しの様。

 

首がくっつく。

その目に光が戻る。

 

「逞帙>蟇セ繝√い繝√い逞帙>繝√い荳?菴阪≠!?」

 

鎖が軋む。

怪物は、思考がまだ回復しないのか狂ったように痛みを訴え、鎖を砕こうと暴れる。

悲しいことに、いくら不死に近い体を持っていようとも痛覚は人並み、正気を保ち続けるのは難儀なことだ。

 

「ほう、やはりこれでは満足できんか」

 

「雖後□雖後□雖後□繧ゅ≧逞帙>豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?勧縺!!」

 

獣のごとく唸り声を上げながらもがく怪物を王は冷めた目で見下ろす。

既に勝敗は決まった様なもの。

怪物になす術はない。

必死に触手を伸ばし、今から始まる裁定に抗うように抵抗するものの、その抵抗すらもギルガメッシュが取り出した剣の一振りにより斬り捨てられる。

 

「なぜ拒む?貴様が欲していたものだろう、ありがたく受け取らんか」

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)が開かれる。

次々と宝具が射出され、怪物を殺していく。

何度も、何度も、何度も....

 

けれども怪物は死なない。

死ねない。

もはや生命維持すらおぼつかぬ。産まれたばかりの赤子同然だというのに、死ねない。

 

「.....あっ...がっ...」

 

「ただ斬る、刺す程度ではダメか」

 

新たな宝物庫への扉が開かれる。

そこから顔を出したのは、武具だけではなく概念そのもの。銀色に輝く氷、白く輝く炎、重力を放つ砂...英雄王の蔵にある以上それは人が生み出したものなのだろう。

 

「さあ喜べ。

圧死、轢死、焼死、好きなだけ味わうがいい。もはや普通の死に方では満足出来ぬであろう?」

 

「——————、あ—————————」

 

拒絶の声を上げることも許されない。

死なぬというなら、死ぬまで殺す。

怪物は見上げることしかできない。受け入れるしかないのだ。

それらは確かな殺意をこもった動きをし、全ての砲門が狙いを定め

 

——"宝具”の数々が怪物へ射出された。

 

 

蘇生の痛みを形容するのは非常に難しい。

それは人知の及ぶものでなく、決して人知の内にあってはならないものであるからとも言える。

 

『あ゛あ゛ああああああああああああああ』

 

——正気を保つ事などできない。

自分とも思えないほどの醜い獣の叫び声が聞こえる。

死を何百と味わおうが慣れない痛み。

しかし、この痛みこそが僕を“人“足らしめているのだと思う。

痛みとは実在の証であり、その不自由さがなんとも心地よい快感を生み出す。

蘇生の瞬間、僕は何度でも産声を上げる。

 

僕は戻ってくる。

確信していたことではあるが、この男では僕を殺すことはできないようだ。...消し飛ばされれば、話は変わって来るだろうが。その際は仕方ない。この星ごと道連れだ。どうであれ僕の勝ち。

 

とは言えだ。

それでは人類に申し訳ない。彼らは愛すべき隣人なのだ。全てを巻き込むというのは本意ではない。僕は悪であるが故、彼らが居なければ存在ができない。

...おかしな話だ。僕が抱く願いは彼らにとって最悪であることに変わりはない。だと言うのに、なぜ僕は彼らのことを気に掛けているのだろうか?

自分が抱える矛盾に頭が痛む。

...そうではないのだ。人類がどうとか、▪️▪️▪️のためではなく、ただ自分のために。

盤上をひっくり返す。

 

僕は勝たねばならない。絶対的な強者であるこの王に。

これはただの意地だ。

 

怯えている少女に目を向ける。

 

彼女はどうであれ“怪物“に至る。

それを私は祝福しよう。たとえ誰にも望まれず、誰もが君の排除を望んだとしても、

 

"やすやすと殺させてなるものか"

 

何度目かの死を迎える前に、散らばった右手に意識を向ける。

その手の甲に描かれているのは令呪。

奪い取ったそれに魔力を流し、二画分の命令を下す。

 

———手の甲の令呪が輝いた。

 

"助けを求める者は誰だって救われる。どんな者であれ救われなくちゃいけないんだから"

 

 

キンキラキン

 

空に輝くお星様のようで、思わず見惚れてしまった

 

飛び散る肉片は、た一つの輝きを彩るイルミネーション

 

ビチャビチャと水音を立てて赤い血が降ってきます

 

結局、姉さんが全て奪っちゃうんです

 

あの人は表情ひとつすら変えず、金色の王様の後ろに立っています

 

"ずるい"

 

いつもそう 私より強くて、幸せな癖に 私が持っていないものも全部持ってる癖に

 

"ずるい"

 

ぐっちゃっと、何かが私の側に落ちてきました

ピクピクと蠢くそれは私を見ています

 

"やだ"

 

金色の波紋はこちらを見ました

 

"嫌"

 

それの近くにいる私も殺されるのでしょう

 

"嫌"

 

ドロドロとした何かが湧いてきます

 

 

「———桜!!早くここから逃げるんだ...!!」

 

誰かに手を引かれました

 

ですが、私の目の前には もう 剣が 

 

助け...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『——————ライダー』

 

風が吹いた。

 

突然何かがその場に現れたかのような突風が。

 

連続した金属音が響く。

少女と怪物を葬るべく降り注いだ武具の数々を鎖が防ぐ。

 

「え...」

 

少女達の前には大きな大蛇がいた。

黒の衣服に身を包み、呪われた目を仮面で覆い隠した大蛇が。

 

「だ、れ?」

 

見覚えはない。それもそのはず、この蛇とも言い表せる大女は今の今まで戦いの場に姿を表すことがなかったのだから。

問いを投げかけられた女はその質問に答えることはなく、こちらを見下ろす王に視線を向けていた。

 

「...我の前に畜生如きが姿を晒すか」

 

裁定を邪魔されたのだ。

女に向けられるのは殺意と嫌悪。

それらを向けられてなお、女は物怖じせず王から視線を外すことはない。

 

「そう言われましても...私は現在のマスターに“この娘たちを守れ“、“ここから逃げ出せ“と命令されただけですので」

 

 

アトラムの工房

 

「ま、待て。取引をしようじゃないか...!私が差し出せるものなら何でもやる!

だ、だから命だけは...」

 

懇願する魔術師。

 

「何でもねぇ...」

 

クツクツと笑いながら怪物は思案した。わざとらしく腕を組み考えるフリをする。怯える魔術師を見ているのが楽しいのだ。

その一方、床に転がされたライダーは、いつ殺されるのかと内心落ち着かなかった。

 

怪物は思いついたように魔術師の左手を指して行った。

 

「——なら、その令呪を貰おうかな」

 

魔術師の左手には三画の令呪が刻まれていた。

 

「...は?そんなの無理に、」

 

「無理、という訳じゃないようでね。間桐の家で色んな書物を漁ったんだけどその中で令呪に関する物があってさ。...些か理解するのに時間がかかったが、まあ、何とかできそうなんだ」

 

「...そ、そんな馬鹿な。サーヴァントが令呪を持つなど...」

 

「駄目?酷いなあ、何でもするって言ったじゃないか。僕、他人に嘘つかれるのあんまり好きじゃないんだ」

 

首を絞める腕に力が入り始める。

このままでは死。

そんなことあってはならない、自分はここで死ぬわけにはいかない。魔術師は目の前の男が何を考えているのかなど理解すること以前に自らの命を最優先とした。

 

「わ、わかった!やる、令呪はお前にやるから!」

 

その言葉を待っていたと、怪物はにっこりと笑った。

首から手が離れる。

尻餅をついて倒れ伏す魔術師。

 

「じゃあ、左手を伸ばして。うん、そうそう、そのまま...」

 

怪物は魔術師に左手を伸ばさせる。

それはまるで、

 

「えい♪」

 

どこから切り落とそうか測っているようだった。

 

「ぇ———」

 

ぼとりと腕が落ちた。

腕がなくなった体からはドクドクと血が流れ続ける。

魔術師は声にならない叫びをあげている。それもそうだ、腕だけであればともかく、己の魔術刻印ごと切り落とされたのだ。その痛みは想像を絶する物であることに違いない。

 

怪物は落ちた腕を拾い、

 

「よいしょっと...うん、いい感じ。欲を言うならもっと良質な物が良かったなあ」

 

自分の左腕と一体化させた。いや、取り込んだと言うべきか。怪物の左手の甲には確かに三画の令呪が刻まれている。

 

手を握って開いて、特に違和感はない。

マスター権も無事移り、目的は果たした。もうこの場には用はないと背を向け出口に向かおうとするが、

 

「たす...助け...た、たす...」

 

今にも消えそうな声が聞こえた。

 

魔術師は体を引きずり、懇願した。

その腕からは依然血が流れ続けている。止血すらできないのだろう。

助けを求めた。

“取引したはずだ“と必死の形相で怪物に縋る。

 

「んん〜〜?...すまない。最近、どうも物忘れが酷くて酷くて。———誰だっけ君?」

 

あっさりとその希望は砕かれる。

魔術師はライダーの方を見た。助けを求める。

しかし、

 

「......」

 

彼女も動こうとすら、ましてやこちらを見ることすらなかった。

マスター権のない、情もない相手を助ける義理などなかったのだろう。魔術師が少しでもライダーを尊重していれば結果は変わっていたのかもしれない。

 

「(なぜ、どうして。僕はまだ、なにも———)」

 

最後まで分からぬまま、意識は薄れ体温が奪われていく。それでも彼は救われたのかもしれない。少なくとも楽に死ねたのだから。自身の行った所業に比べればマシな最期である。

 

この場に残されたのは、二人の怪物。

傷も癒えたライダーは警戒しながら怪物に問うた。

 

「私は...何をすれば?」

 

逆らうこともできる。しかし、本能が訴えているのだ。目の前の怪物に手を出すなと。だから彼女は反抗することなく新たなマスターに従うことにした。

 

「今すぐ、と言うものは無い。時が来れば命じる。それまで姿を見せるな」

 

淡々と怪物は言った。

“ここで自害しろ“などと言われるのではないかと思っていたライダーはホッと胸を撫で下ろした。

 

「...この子供たちはどうするのですか?」

 

床に転がる実験材料の子供。

死んではいないものの、以前目が覚める様子はない。強い暗示がかけられているのか、いずれにせよ死ぬわけではない。

 

「良かったら食べるかい?お腹が空いてるならこれほど効率のいい食事はないぜ」

 

眠る子供を尻目に答える。

 

思わず顔を顰める。

いくらライダーといえ、良心ぐらいは持ち合わせている。命令とあれば大人しく従うが、流石に気の引けることだ。

 

しかし、怪物も子供を無碍にするわけではないようで。どうやらライダーの反応を見たかっただけらしい。“冗談だよ“と笑った。

趣味が悪いものだ。

 

「君の好きにすれば良い...例えば、外に出しておくとかね。そうすればお節介焼きの誰かが手を回すだろうさ」

 

そう言った後、今度こそ出口に向かっていった。

 

取り残されたライダー。

 

「...人使いの荒い方ですね」

 

肩に数人の子供を担ぎ、ボソッと言葉を溢した。

結局何十往復かすることになったが無事子供たちは外の世界に出ること出来たのだ。

 

この話はただそれだけである。

 

 

相対する蛇と金色の王。

しかし、ライダーが不利なことに変わりはない。彼女単騎なら数秒程度は持ち堪えようが、背後には少女たちがいる。少女たちを守りながら離脱するのは不可能に近い。

 

「興が冷めたわ。そこの阿呆諸共、我の前から消え失せよ」

 

砲門が開かれる。

ライダーの手に負えないほどの数の砲門が狙いを定めた。

 

「....」

 

ライダーは仮面を外す。

その下には赤く耀く魔眼。それは彼女が怪物と言われた所以たる“石化の魔眼“。その眼は確実に王を捉えた。

 

「—————————くだらん」

 

ギルガメッシュの動きが一瞬止まる。されどたった一瞬である。

もとより動きを止めたとて、砲撃は止まらない。ライダーの行動は無駄な抵抗にすぎない。

 

だが、この一瞬。ギルガメッシュの意識は僅かに怪物から逸れた。

——それこそが怪物の狙っていたものだ。

 

此度の英雄王に一切の慢心と油断はない。

裁定すべき怪物はもはや動くことはできず——いや、辛うじて腕ぐらいは上げれたか———後は消しとばすのみだった。

しかし、王は一つの失点を負った。

まだ息をしている敵から視線を切った。複数対1では動けない敵から目を離すのは仕方がないことかもしれない。加えて、ギルガメッシュにはもう一人の明確な排除すべき敵がいた。既に動かない敵から視線を切り、新たな敵を見定める。その一瞬の隙は仕方がないことだった。

 

強いて言うなら、最初からその僅かな隙を狙っていた怪物こそが最低だと罵られるべきだ。

 

 

——“ガチャリ“と鍵の閉まる音が森に響いた。

 




11月22日、出遅れたか。いい夫婦の日の短編あげれたら良かったな

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

  • イチャイチャ
  • つよつよ奥様
  • しっとり/依存
  • 無関心/やり直し
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