この話はあれです。
ガメラ3です。
堕ちるとこまで堕ちます。
「桜!さくら!!———」
黒い影が現れた瞬間、私の意識は深く沈んでしまった。
苦しい、痛い、痛い、痛い、痛い...
全て吸い取られてしまう、何もかもが■■■■に...
どうしてわたしだけ、わたしばっかり。
こんなにも頑張っているのに、
わたしはただ...ただ
“おなかがすきました“
...帰りたいだけなのに。
◇
夢を見ました。
幸せで、とっても優しい夢。
もしも、あのままお父様とお母様と一緒に暮らせていたら、なんてずっと考えることすらできなかった夢
——姉さんと逆だったら
お母様が作った美味しいご飯を食べて、お父様に魔術を教えて貰って...
——そんな都合のいい夢
「桜は本当にいい子ね、ご褒美をあげなくっちゃ」
「上手だね、その調子だよ。桜は覚えが早い」
——そう、幸せな夢だった。
「ほら口を開けて?はい、」
血溜まりの上で私は口を開ける。
それは甘くて、まろやか、そして頬張るたびに満たされていく。まるで子供の頃思い描いた夢のお菓子のよう。
『どうだい、極上だろう?』
幸せな夢は続く。
場面は変わり、幼いわたしはドレスに着替えて夜のお城を散歩する。
キラキラ輝くイルミネーション。心躍らせランランラン。
“くうくうおなかがすきました“
満たされないなら一杯食べてしまえばいいのです。
お付きの騎士に命じればすぐにお菓子を持ってきてくれます。
小さく、小さく切り刻んで一口サイズになったら、パクリと食べる。
なんて美味しいお菓子たち。一杯持ち帰って、お母様たちにも分けてあげましょうか?
『そうだね、美味しいね。ほら、口を開けて。
もっと、いっぱい食べようね』
彼はわたしの味方の騎士様。いつだって私を護ってくれるのです。
もう一人の私の味方。
そう、正義の味方...正義の...
『今度は新都の方へ行こう。さあ、手を取って。夜はまだ明けない、楽しもうじゃないか』
ね、サクラ?」
...あれ?
これは夢だったけ。それとも、
「———桜?」
はっ、と目が覚める。
いつの間にかベットで眠っていたようだ。
先輩と...姉さんが心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「...貴方、当然倒れたのよ。あの影と入れ替わる様にね」
どこか警戒心を感じる言葉。
どうしてそんな目で見てくるんだろう。わたしは何もしていないのに。
「先輩...キャスターは?」
「あ、ああ。アイツはまだ、帰って来ていない。桜が倒れた後、ライダーに運んでもらったんだ。
だから、その後どうなったのかは...分からない」
「そう、ですか」
最後に見た彼の姿はとても人間のようなものではなく、まるで童話に出てくる怪物のようで。
『サクラ』
脳裏に触手の怪物が浮かぶ。それはとても恐ろしくて...
そんな私の考えは先輩の言葉によって遮られる。
「俺たちはもう一度森の方へ行ってみる。アイツのことも、そこで確認してくるつもりだ」
「なら、わたしも」
「桜は「駄目だ」駄目よ」
「え...」
拒絶だった。
それは一番向けられたくなかった感情で。なんで、なんで先輩も
「...桜は昨日倒れたばかりだろう。心配しなくても遠坂もいるし、ライダーもついて来てくれる。
だから、今はゆっくり休め」
俯くわたしに先輩の表情は見えなくて、見るのも怖くて、ただ頷く。
“置いて行かないで“
その言葉を口にすることはできなくて、伸ばした腕は空をきり、二人の目には映らない。
取り残されたわたしは一人眠りにつく。
次に目が覚めるときには、きっと全部が元通りに違いない。
ああ、きっと、
“もう手遅れだというのに“
そんな夢を思い浮かべた。
◇
「くそっ、なんだよこれ!?どうして入れないんだよ!!」
慎二は衛宮邸に来たはいいものの、何故か張られていた結界により中に入ることができなかった。
そもそも、彼の行為は不法侵入であり到底許される行為ではない。
彼の顔は酷くやつれ、目の下には深いクマが出来ている。プライドを余程傷つけられてしまったのだろう。散々荒れに荒れた結果、無理矢理サクラを脅しもう一度マスターに返り咲こうという考えに至ったか。
「っ...おい!桜ぁぁぁぁ!
いるのは分かってるんだ、ここを開けろよ!
僕のいうことが聞けなのかよぉ!?」
必死に玄関扉を叩くが反応がない。防音性の魔術でも仕掛けられているのか。
どちらにせよ、魔術の才能などカケラもない慎二に破る術などない。誰かが手を貸せば或いは、
扉を叩く音が響く中、慎二は背後に気配を感じた。
空気が凍る。
「シンジ、どうした? 中に入りたいのかい?」
不幸中の幸いと言うべきか怪物はシンジの前に姿を見せた。怪物は既に人の体を取り戻している、が、どこか以前の姿とは様子が違う。
僅かに幼さが残っていた以前と比べ、その体は成長し成人のような印象を感じる。夜空のように黒く輝く髪には僅かに金色の毛が混ざっている。
どうやら取り込みは成功したものの少しばかり侵食されてしまったようだ。
ニヤニヤと嘲笑いながら、声をかける。
「おいおい、まさかこんな簡易的な結界も分からんのか?
やはり、魔術の才能は微塵も無い。
神は二物を与えないとは正にこの事よ。本当に惜しい男よな」
「う、うるさい! なんなんだよお前、僕をわざわざ馬鹿にしきたのか!
なんだよ糞、どいつもこいつも、僕のことを...!」
彼にはもう余裕がないのだ。
下手なことをすれば殺されかねないというのに慎二は唾を飛ばしながら怒号を震わせる。
「ふふふっ、悪かった悪かった。 で、何の用?」
「何の用だあ?そんなの桜を迎えに来たしかないだろ」
「サクラを?」
「ああ、そうさ。兄貴が妹を連れ戻しに来て何が悪い」
もっともそれが本心かと言うと否である。
今の慎二に家族愛などあるものか。ただ、己の欲を満たすための言葉に過ぎない。
「ふむ。確かにそれはもっともだ。 サクラの兄としての行動だもんね。我にはそれを邪魔する権利はない」
「そ、そうだ! 僕は桜のことを思って。
だって、あいつは僕のものなんだ。自分の物を取り返すのは当然の行為さ!」
うんうんと頷きパチンと指を鳴らす。
それを合図に扉はガラガラと音を鳴らし開かれる。
「サクラは奥の部屋で眠っている。あまり騒がしくしてくれるなよ?」
「なんだよお前。随分と話がわかる様になったじゃないか」
慎二は靴を脱がず家に入って行く。
それを怪物は無表情で見送る。
後は桜がどう動いてくれるかである。ことが上手く運べばそれで勝利は近づくのだから。
怪物は再び霊体化し、事を静観することにした。
ギシギシと誰かが廊下を歩く音で目が覚める。
誰かが帰ってきたのか、重い瞼を開け身体を起こして扉の方を見る。
「先、輩?」
名前を呼ぶ。
違う。口に出してから後悔した。体が震える。それは嫌悪と恐怖か。
そこに居たのは、
「——おいおい、まさか少し見ないうちに兄さんの顔を忘れちまったのかよ桜?」
「に、いさん」
「僕は悲しい、悲しいよ桜。そんなに怯えちゃったら、まるで僕が悪者みたいじゃないか」
抵抗する間もなく、組み伏せられる。
嫌だ
手足をバタつかせ抵抗するが、弱った身体では振り解くことができない。
嫌だ
血走った顔が近づいてくる。
「よし、令呪はまだ残ってるな。帰るぞ桜」
力ずくで身体を引き起こされる。引っ張られる腕は気遣いなど微塵もない。
痛い、やめてと懇願すると苛ついた目で男は見てくる。
「なんだよグズ。大人しく僕の言うことを聞けよ。」
抵抗など意味がない。
「っ、きゃあ...!」
「この裏切り者、随分と偉くなったじゃないか、ええ?
だったらお望み通りにしてやるよ!」
掴まれていた腕が離され、ベットの方へ押し倒される。
男の指が肌に接触した。
奥底に縛り付けていた不快な記憶が呼び戻される。
「いやっ——!」
びくん、と顎が上がる。
肌...首筋から肩になぞられ胸元まで蹂躙する感触。それは私たちにとっての始まりの合図。
そう、これは決まっていた手順。
男は私にとって絶対者だった。
一度罵声を浴びせられれば反抗心は消え去り、体を明け渡し、満足するまで痴態を晒す。この行為が済むまで感情を表すことはしなかった。辛いだけなのだから。
ただ言いつけ通り犯され、奉仕し、淫蕩に溺れる。それで済む話。
それが男とわたしの関係。
だが、今は違う。
「はっ、どんなに大人しいふりをしても変わらない。お前は間桐の女だ。卑しい魔術師くずれの淫売女。
それがお前なんだよ桜!」
荒々しく押さえつけられる。
「んっ...! だ、や...」
体が跳ねる。
それをいつもの反応だと信じている男は気色の悪い笑みを浮かべた。
変わらない。自分の玩具は何も変わってないと、考えているのだろう。
だからきっと気づかなかった。
もがくわたしは、快楽に身を委ねるような昂揚などないことを。男に向ける反応は嫌悪と抵抗心しかないことに。
「なんだよ、意外に元気じゃないか?...そうか、衛宮のやつ手も出してこなかったってワケ。そうか、そうか、そりゃあいい!
久しぶりにやる気が出るってもんさ、なんたってお前はとんでもない色情狂だもんな?こんな家の中で我慢なんてできるワケないもんなあ?」
もはや犯すことしか考えてないのか、この瞬間が愉快で仕方ないのか。
男の手が服にかけられる。
丁寧に脱がす、なんてことはしない。ただ体を暴くのだ。
「だめ——止めて、近寄らないで、兄さん...!!」
渾身の力を振り絞り、圧し掛かってくる男を拒絶する。
「———は?」
まるで奇怪な物と対峙したように男の動きが止まる。
見下ろす目は震えている。
「なんて言った? 今、なんて言った?」
唖然とした声。
その姿を見てゴクリと唾を飲む。そしてありったけの勇気を持って見つめ返す。
「近寄らないで、と言ったんです。わたしはもう、兄さんの言いなりにならない。
...先輩は受け入れてくれた。こんなわたしでも守ってくれるって...!
わたしは兄さんの物じゃない。この体に触れていいのは、貴方なんかじゃない!」
ああ、けど悲しかな。
必死に圧し掛かった男を跳ね除けようとするも、よろめきすらしない。
それも当然。
弱った体にはそんな力など残っていないし、馬乗りになられては抵抗のしようがない。
「———けん、な」
空洞の様な声が響く。
「———ふざけんな。ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけんなよ、この売女が!」
頬に痛みが走る。続いて腹、そして頬。
男は気が狂ったようにわたしに向かって拳を向ける。
「なんだよお前!僕の言いなりにはならない...!?
勘違いするな、お前にそんな権利あるはずないだろ!?決めるのは僕だ、いつだって僕だ。お前はただ、僕の指示に大人しく従っていればいい!人形のように頷いていればいいんだよ...!!」
手加減はない。
目の前の玩具、持ち物に逆らわれた男には、気にかけるほどの理性など消し飛んだに違いない。
「 」
抵抗はしない。結局出来ない。
顔を庇うことすらせず、殴られ続ける。
けど、強い意志を以って、男を睨み続けた。
それが、さらに男を逆撫でたのだろう。
自分を真っ直ぐに見つめられるのが男には何よりの苦痛だった。
だから、
「...そうかよ。なら、こっちにも考えがある。衛宮が良いって言うんなら好きしろ。
けどさあ、桜? それなら、好きな人に隠し事なんかしちゃいけないよなあ?
「—————————兄、さん」
今のわたしはどんな顔をしているのか。
「は」
目の前の男は笑う。どうやらこの表情は、少しだけ男の怒りを冷ましたらしい。
「そうだよ桜。二人で一緒に打ち明けようぜ。大丈夫だって、あいつはお前の事を受け入れてくれたんだろ?なら、それぐらいどうってことないよな?」
「—————————や」
止めて、という言葉が口に出せない。
ただ愕然と、以前のような関係に巻き戻り。
「は。はは、あははははははは!
そうだよ、そうだよなあ。結局はその程度さ! いいな桜、それが嫌なら逆らわずに大人しくしていろ。お前は僕の人形なんだから。
...まあ、衛宮が帰ってきたらバレちまうだけどなあ? 僕の趣味じゃないが、何、たまにはシチュエーションも変えないと。お前もマンネリは飽きるだろ」
なんで、と虚な感情は答えた。
先輩に秘密をバラされるのは、死んでも嫌だ。
兄との関係、お爺様に言い付けられこの家を監視していたこと、11年に渡る間桐での暮らし。
先輩も薄らと気づいている。
知らないのは兄との関係だけで、知られたとしても、嫌われることなんてことない。
それすらも受け入れてくれる。
だから、また我慢すればいいだけのこと。
「—————————や」
けれど、それはもう容認できない。
...今までは我慢できたこと。
けれど願いを持ってしまったわたしには、兄であるこの男、慎二に体を許すなど、何者にも勝る嫌悪だった。
「—————————や、だ」
だから願ってしまった。
男の手が胸元を掴む。
当然のように、わたしの体を晒そうとする。
「いや———いや、いや、いや、いや....!止めて、こんなのヤダ、もう止めてよう、兄さん...っ!」
もう一度、必死に抵抗する。
その無力な抵抗を、男は笑った。
「はっ、何言ってんだ、お前だって本当は欲しいんだろ? お前は男なら誰でもいいんだ。衛宮にも教えてやらないとな。今までお前がどのくらい僕に縋りついてきて、どのくらい汚らわしく交わったかってコトをさあ...!」
笑う。
道化のように笑う。
「—————————」
それで、全て理解した。
この人は言う。
何があっても、自分が何をしても、先輩に言ってしまう。
この人はただ自分が面白がりたい為に、わたしの全てを台無しにする気なんだ、と。
なんで、なんでこうなるんだろう。
わたしは頑張ってきた。
嘘をついて、人に嘘をついて、自分にも嘘をついて、こんな自分でも幸せになれるんだって嘘で塗り固めた。
先輩のそばに居るだけで幸せなんだと、幸福なんだと思ってきた。
だっていうのに。
どうして、この人はそんなことも守ってくれないのだろう。
「—————————」
...違う。守ってくれないのはこの人だけじゃない。
ずっと前から思っていた。
ずっと前から恨んでいたんだ。
どうして、どうしてわたしの周りにある世界は、こんなにも、わたしを嫌っているんだろう、と...
「は——————はは、ははははははははは!
ほら、いつも通り薄汚く股を開けろよ...!お前にできることなんて男のモノを咥え込むだけなんだからさあ!」
勝ち誇り、いつも通り犯そうとしてくる。
それを、虚ろなまま見上げ。
そして思ってしまった。
願ってしまった。
わたしの手に宿る令呪に、
「——————誰か、助けて」
と。
「いいとも」
ぱしん、と軽い音がした。
圧し掛かっていた男が力無く倒れる。
舞いかかる鮮血。
鮮やかな赤色が部屋を彩る。
傍観に徹していた第三者の声が聞こえる。
「隠し事をしてはいけない。それは正しいようで間違っている。言いたくない事を言わなくて何が悪い。
人には辛いことや悲しいこと思い出したくない記憶、そんなの数え切れないほどある。それを全て打ち明けなければ関係性を築けないのであれば人はどうやって「愛」を紡げばいい?」
姿を表す怪物。
彼が纏う触手には血痕が。
それで全てを悟った。
「ふむ。返答はないか...力加減が難しい。
すまない、我も余裕があるわけではなくてな。どうか許してくれシンジ」
笑い声が聞こえる。
倒れ伏す男に再び目を向けた。
「——————あ」
即死だった。
ものすごく鋭いもので、ぱしん、と頭を叩かれたのだろう。
後頭部にはナイフで切り裂かれたような線だけがある。
線は脳にまで達し、けれど幸いというべきか、細すぎる傷口は中身をこぼすことはない。どこまでも赤い血液だけが流れ出ている。
「ん?どうした、サクラ。てっきり笑ってくれると思ってたんだが」
「——————どう、して」
疑問を口にした。
目の前の怪物は不思議そうに見下ろしてくる。理解できなかった。
「どうして、とは?
君が命令したじゃないか。僕はそれを叶えた」
当然だろと答えた。
子供のように、悪戯な笑みを浮かべながら。
「—————————ち、が」
手の甲の令呪を見る。
残されていた一角は消え、痕が残るだけ。
彼に命令したのはわたしで、だから殺したのもわたし。
兄を殺したのわたしだ。
でも、違う。違う、違う違う違う。
そんなことわたし望んでない。
「だって嫌いだっただろ?疎ましかっただろう?———居なくなってしまえと願っただろう?」
「そんな、こと やめて ない わたしは」
“嘘つき“
「兄さんはあんなんだけど『あははははははハハハ』可哀想だけどわたしの『うふふふふふふ』昔は優しくてケーキを『ははハハハハハハハハ』違うのわたし、違う」
「うん、うん。分かってる分かってる。楽しいねえ。嬉しいねえ」
違う、わたしは楽しくない。嬉しくもない。
怖い、怖い、目の前の怪物が怖いという恐怖が心を塗りつぶす。
もうやだ、やだやだやだ
拒絶を示す。
それが正しく怪物に伝わっているのか、いや、わたしのことを見ているのかもう分からない。
「もう遅い」
そう怪物は口にする。
「手遅れだぜ?
何人食った、愉しんで食った、みんな食った、食べた食べた食べた食べた食べ過ぎた
今更引き返せない、引き返させない。だが心配することはない。
大丈夫、お前を助けてやる。お前を救ってやる。
だから僕を助けてくれ、僕を救ってくれ」
怪物の影が立ち上がる。
触手を広げ、わたしを包み込むように大きく立ち上がる。
「——————、あは」
脳裏に浮かぶのはいつかの夜のこと。
夢。
夢。
そうだった、わたし夢なんか見ていない
夢なんかじゃなかった。
夜な夜な街を徘徊して、誰彼構わず食べたのは紛れもない自分自身。
そう、いっぱいたべた
いっぱいいっぱいたべた
ニゲルヒトカラたべたあしからのこさずたべたダレであろうとたべたたのしんでたべたわらいながらなきながらたべたいっしょにたべた、わたしたちが、わたしがたべたんだ...!!
「——————あは。あははは。あはははははは」
ああダメだ笑ってしまう。
可笑しくて笑う。
だって、笑わないと壊れちゃう。
笑わないと耐えられない。
もうとっくに壊れていたのに、寸前で堰き止められていたものが溢れ出す。
笑えば笑うほど決壊していってボロボロと崩れていって、涙が止まらなくて、何もかもがどうでもよくなって。
「「はは! あはは、あはははははははははははは!」」
二人で笑う。
とっくに壊れていた二人は笑った。
それが楽で、それが本当の自分なんだと、とてもとても自然でいられる。
ああ、なんてバカらしいバカらしい、愚かな私達。
わたしはもう、諦めました。
怪物は体を塵に変化させ、優しく、優しく少女を包み込みました。
「そうだ、何もかも諦めて笑おう。
誰もお前を救わないというなら、僕がそれを否定しよう。
全部壊して、壊して壊して、君を肯定する」
視界は黒く染まり、意識は次第に塗り潰されていく。
「お前の中にある、その悪の胎児。その役目を僕が変わろう。
代わりにこの世の全てを呪って、殺し、食い尽くす、どうだ笑えるだろう?」
少女は微笑んで受け入れます。
「———うん、わたしのモンスター。どうかわたしの願いを...叶えて」
少女の意識はそこで終わった。
いや、正確に言えば成り代わった。
◇
「———ふ——————ふふっ」
...そうして。
邪魔な兄だったものをいじくりまわした後、ゆっくりとベットから立ち上がった。
「ん〜♪んん〜♪」
自らの体に指を突っ込み、ぐちゃぐちゃぐちゃ体を掻き探る。
「気持ち悪い...でも、これでサヨナラです」
体から引き摺り出してぶちゃぶちゃと足で踏み潰します。
体は所々傷だらけ、でも心配ありません。すぐに治っちゃうんですもの。
「ふふっ。ん〜〜〜♪ ふふっ、ふふふふふふ」
姿見の前で
その姿を見て満足したのか血に塗れたままで部屋から出た。
廊下を誰かと踊るように進んでいく。
誇らしげな微笑みを浮かべながら。
「桜...?」
玄関口に躍り出た時、少年と鉢合わせた。
肩で息をする少年。少女の危機を察して駆けつけたか、たまたま鉢合わせてしまったか。何にせよ少しばかり遅かった。
少年は
「———お帰りなさい、先輩。どうしたんですか?まるで....怪物でも見ちゃったような顔をして?」
わたしは笑った。
慢心+最強の霊基+聖杯のバックアップを獲得。
しかし怪物にとって予想外だったのは桜が思ったより我慢強かった事。主導権を全て奪うことは残念ながらできなかった。
次回 「我らは怪物である」
あと3〜4話ぐらい?よかったら感想でもお気軽にどうぞ、
fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?
-
イチャイチャ
-
つよつよ奥様
-
しっとり/依存
-
無関心/やり直し