【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

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バレンタインは過ぎちゃいましたけど、FGO編で描く予定のアタランテと彼の話をチラッと書きました


あったら良かったのに

 

「ここで待ち合わせか」

 

待ち合わせは噴水の近く。

少し早めに着いてしまったのでベンチに座り時間を潰すとする。

 

「...だが、わざわざ待ち合わせをする必要などあるのだろうか」

 

そもそもここはカルデア内のシミュレーションの中だ。

ダヴィンチの気まぐれで水族館とやらを再現したようだが、私には関係のない話だと思っていた。

 

しかし

 

『あっ!そうだ!

 アタランテさん、よかったら一緒に行きませんか!』

『わ、私か? 汝にはマシュや...あの人がいるだろう。私よりもそちらを優先した方がいいのではないか?』

『ううん!アタランテさんと行きたいの!』

『そうか、誘ってくれるのであれば断る理由はないのだが...』

『やった。それじゃあ決まりですね!...ふっふっふっ』

 

マスターが、何を企んでいるかは知らないが、子供からの好意を無碍にすることは出来まい。

主従関係を良好にする為にもいい機会だろう。

 

それと彼女の要望として、わざわざメディアに貰った現代服を着ている。

まあ、いつもの格好ではこの場に似つかわしくないから、と納得する。

 

「しかし、これではまるで学生だな」

 

改めて自分の服装を見る。

白と黒のセーラに緑のパーカー。耳を隠すための帽子。パーカーには、ご丁寧に私の顔をデフォルメまでしたワッペンまで着いている。

お陰でこの空間に馴染めているので口には出せないが、なんというか、些か少女趣味が過ぎるのではないだろうか。

 

辺りを見渡す。

シミュレーションにしてはよく出来ているもので、親子連れや恋人同士など多種多様な人々でごった返している。

見てると眩しくて、目を背けてしまいそうになる。

 

『...今度、彼を誘ってみようか』

 

誘ったところで来てはくれないだろうな、と心の中で苦笑する。

一体、どこで間違えてしまったのだろうか私たちは。

あの時に引き留めていれば、何か変わっていたのだろうか。

 

と、ありもしないことに耽っていると誰かが近づいてくる気配がした。

席を立ち、その人物に声をかけようとして...

 

思考が止まった。

それほど予想外だったからだ。

 

「...な、なぜ汝がここに.....?」

 

そこには、同じように現代服を着こなした彼が居た。

 

「モンスター....!」

 

彼も予想外だったのか頭を押さえながら口にした。

 

「...立夏に呼ばれたんだよ。君こそなんでここに?」

「私はマスターとこの水族館に行く予定だったんだ...が」

 

すると、通信端末にメッセージが届いた。

 

『お父さんをよろしくお願いします!』

 

...謀ったなマスター。

 

「立夏から水族館に行くから着いてきてと言われたんだ。ちゃんとオシャレもして来てねって...まったく」

 

不機嫌そうな声で彼は答える。

いつもと違い、外出用に着替えているようで、この空間にも違和感なく溶け込んでいる。

 

困った、おそらくマスターは来ないだろうし、何せ突然のことなので会話も続かない。

だが、こうして二人きりなのだからチャンスは生かさねばならない。

折角の機会なのだ。

彼と一緒の時間を過ごしたい。

 

が、

 

「...帰ろうか」

 

「え、」

 

そんな私とは裏腹にもう用はないと言わんばかりに彼は背を向ける。

 

「君の時間を無駄にできないからね。あの子が迷惑かけてすまなかった」

 

彼はそう言って去ろうとする。

まただ、また私から逃げようとする。

何度話しかけようと、何度距離を詰めようとしても、こちらに目もくれず逃げ去ってしまう。

拒絶されているのはわかっている。話すら聴いてくれないことも。彼が忘れたくてそうしてることも。

 

それでも、私は

 

「———ま、待ってくれ」

 

駆け寄り、彼の裾を掴む。

そうして口にする。

 

「よかったら、私と水族館に行かないか?」

 

彼の方へ再び歩み寄る。

 

「.......」

 

少し驚いたようにこちらを見つめてくる。

その目から逸らさないように見つめ返す。

 

「それとも、私と一緒は...嫌、か?」

 

できれば、目を背けて欲しくない。から、もう一度しっかりと彼の目を見つめ返した。

彼の歩みは止まる。

悩ましそうにこめかみを押さえながら、否定した。

 

「そういうわけじゃ...ない」

「なら、一緒に行こう」

「...しかし、折角の時間をこんなことで過ごすのは...」

「いいや、私は行きたい。汝と共に、この時間を過ごしたいんだ」

 

本当はどこだっていい。

汝と共に居れるならどこへだって。それだけで私は心が満たされる。

 

「...ワタシはやることがある。忙しいんだ」

「今日は食堂の当番ではあるまい?」

「...林檎の様子を見なければ」

「心配ない。今、マスターから連絡が来た。

 『マシュと二人でお世話するのでお父さんは心配しないでね』...っと写真付きで。ふふっ、随分と親想いの子だな」

「なっ」

 

お節介にも程があると、愚痴を零す彼。

うん、後でマスターには改めて感謝を伝えねばならない。

お陰で観念したみたいだ。

 

「はぁ...分かったよ、今日は君に付き合うよ」

 

「———本当か!」

 

鼓動が高音る。

相変わらず私には笑みすら見せず、無愛想な顔だがそれでもよかった。

今日をきっかけに、また距離を縮めることができるかもしれない。

そう思い、私を見つめる赤い目に笑いかけた。

すぐにフイッと逸らされてしまったが、少しだけ目が緩んでいた気がした。

 

彼は水族館の方へ足をむけ歩き出す。

 

「ほら行こう。時間は限られている」

「あっまっ、待ってくれモンス....」

 

クラス名で呼ぼうとすると彼はピタッと足を止める。

 

「...名前」

 

「え?」

 

「ここじゃあ、似つかわしくないだろうソレは。気分が台無しだ」

 

それもそうだな、と頷く。

再現といっても周りの人には違和感を覚えさせるだろうし、他人行儀に感じてしまう...なんとなくむず痒いが、久しぶりのように口にする。

 

「...メラニオス?」

 

かつての名を口にする。

彼にしてみれば捨ててしまった名前。

一瞬、顔が歪んだように見えたが

 

「.....行こう」

 

と短く言葉にし、はぐれないためか私の腕を引く。

しっかりと、けれど優しく握られた温かい手。

頰が紅潮する。

けれど、これは羞恥からくるものではなく、また別の感情のものだ。

 

私は手だけではなく、身体まで彼に寄せる。

この行動を彼が拒絶することはなかった。

 

 

二人は共に旅をしましたが深い海の底を見ることはありませんでした。

きっと、水族館で美しい景色を見るんでしょう。




的なお話をFGO編で出来たらいいなと思っています。
今までの彼とは少し違う道を歩んだ主人公。人としてではなく人喰いの怪物として。
もし、アタランテに抱いた感情が恋、ではなく憐憫だったら見たいな感じのIFのお話になる予定。
他の英雄との関わりも多めに書きたいなあ。失踪しなければですけど。

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

  • イチャイチャ
  • つよつよ奥様
  • しっとり/依存
  • 無関心/やり直し
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