怪物の歩んだ道はどうだったでしょうか。
よければご感想などどうぞ。その分、彼と彼女が幸せになれる√が書けるってもんです。
強い雨が打ちつけている。
青年が話の幕を閉じても、夜が明ける気配はなかった。
服から滴る水滴はなく、とっくに乾いてしまった。
黒髪の青年と美しい新緑の髪をした狩人は向かいあって座っている。
ごう、ごうと、嵐の音だけが聞こえている。
『...どうして』
苦々しい声で狩人は言った。
『苦しむくらいなら、誰かを傷つけるくらいなら、どうして』
青年は答えない。
『わたしは確かに望んだ。また、汝と共に生きることを、ここで過ごせる夢を見ていたんだ。だが、堕ちてしまうくらいなら、忘れてくれた方が良かった』
愛していた。
『ずっと、あなたといたかった。共に生きて欲しかった。ただ、それだけで良かったのに』
愛しているんだ。
『わたしはお前を恨む。これまで愛した分、憎み続ける。永遠にだ。決して癒えることのない傷を、わたしにもたらしたお前を、嫌い続ける』
青年は答えない。
弁解のしようがなく、それを受け入れるしかない。
『...随分と長居した。そろそろ、出ていくよ』
乾いた服に着替え、青年は立ち上がる。
家の外はいまだに嵐が吹き荒れている。それは決して鳴り止むことはない。
それでも青年は行かねばならない。
永遠に止むことのない怨嗟の雨に打たれ続け、冥界にも、無に消えることもできず、明けることのない旅路を進む。
この家に残ることは許されない。
ここに存在することが許されるのは、英霊の座に向かい入れられた者だけ。
ただ一人の人間として、忘れ去られた青年はその座には至れなかった。
おそらくはこの時間が、青年に与えられた慈悲なのかもしれない。
本来ならば、永遠に彷徨うだけの青年に、この世界に、この場所に立ち寄ることなど許されるはずがないのだから。
青年が歩いていく。外への扉に。
一瞬、扉を開ける手が躊躇するが、右手に力を込めて、戸を開ける。勢いよく、雨風が吹き込んでくる。
狩人は思わず立ち上がる。
——————共に歩きたい。叶うのならば、許されるのならば、そうしたい。
だが、彼女が追うことはできない。
正義が悪とは分かり合えないように、英霊である彼女と、倒されるべき怪物では居るべき所が違うのだから。
アタランテは青年を見送ることしかできなかった。
『何度でも言う。わたしは』
声は震えている。
『わたしは汝を恨み続ける。わたしに寂しさを教えた汝を嫌う。どれだけの時間が経とうと、記憶に刻み続ける。いつまでも、いつまでも、永遠に汝を恨み続ける...けれど』
それでも、と言葉を紡ごうとした時、
水滴が頰伝う。
『愛してる』
本当は恨んでなんかいない。
何度迷惑をかけられても良かった。
傍にいたかった。
共に、生きて欲しかった。
———愛しているんだ。
青年は振り返らなかった。
———違うんだ。
僕は確かに君を愛していた。
君のことだけを想って、ここまで来た。
———今も、叫びたいほどに
けれど、君の愛と僕の愛はきっと違う。これは美しいものなんかじゃない。
邪魔者は皆殺しにして、君を傷つけないように閉じ込めて、犯して、その全てを喰らってしまいたいような、
汚くて、黒くて、醜い愛情。
愛す資格なんて、ない。
一瞬、全てを吐き出してやろうと想った。己の愚行をここまで赤裸々に語ったのだから、今更隠すようなことではないような気がした。
が、
何もかも遅く、取り返しもつかず、取り繕うことも叶わないとしても。
青年は、振り返らず、決して振り返らずにこう言った。
『——————その言葉があれば、僕にも生きていた意味があると思えるんだ』
せめて最後だけでも、一人の人間として。君を愛した男として、彼女の記憶に残りたかった。
怪物だった青年は、再び歩みを始める。
アタランテは彼を追ったが、扉はそれを阻むように閉まり、外へ出ることは叶わなかった。
読み終わった本のように、扉は重い音を立てて閉まる。
嵐は過ぎ去った。それでも夜は明けない.
太陽は、もう二度と上らない。その代わりにいつまでも満月は照らし続ける。
誰かが啜り泣く音だけが、世界に響いた。
fgo編は書き溜めが出来次第、UPしていきたいと思います。
一年の間、本当に有難うございました。
fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?
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