【悪役を押し付けられた者】   作:ラスキル

74 / 74
怪物と狩人

【選択】

 

この時代,作物の不作や病の流行は珍しいものではなかった。

この日立ち寄った村も,同様に飢饉に見舞われている様子だった。ここのところ、雨も降らず農作物が育たない。水不足と飢えに苦しみ、誰もが生きる気力をなくしている。既に餓死者が出始め、村人の全滅も目に見えていた。

 

「行こう。もう助からない」

 

「・・・あぁ」

 

これも自然の摂理の一つ、わざわざ関わる理由もない。そうやって私たちは村を離れる。

 

【考えたくない】

 

 まだ幼い頃,老婆が山に捨てられるのを見たことがある。

父に捨てられ,雌熊に育てられた私はよく人里近くの森を狩場にしていた。その頃だったと思う。

 老婆を背負ってきた男たちが,すまない,すまない,と何度も繰り返し,老婆を森に置いた。もう自分で動くことができない老婆は,声もあげずポロポロと涙を流した。

 その頃は人と関わることは少なく,彼らが何をしているのかも理解できなかった。少し大きくなって,改めて思い返せば自分も昔あのように捨てられたのだろう。忘れようとしても忘れられなかった。

それを今になって時折思い出す。

 あと何十年もすれば,あの老婆のようになるのか。足腰が弱り,自分で動くことなど叶わぬ,自分で生きることができなくなるのか。

 死ぬことは怖い。

 でも,それ以上に,もっと怖いのは・・・メラニオスが。

 

 

 最期には彼にそばにいて欲しい。けれど,醜くなった自分を見て欲しくはない。ならば,せめて別れを言ってから?

 

“考えたくない“

 

 そう言って思考を閉ざす。彼と出会ってから随分と弱くなってしまった。彼のせいだ,こんなに女々しくなって。

 

 それでも,

 

 隣で眠る彼をみる。

 彼の肩に寄り添い,その顔をみる。

 

 それでも好きだ。汝が,どれだけ否定しようと。汝がいない暮らしなど,考えたくもない。

 ため息を吐く。

 それ以上は無駄だと考え,やめることにし,再び眠りにつく。

 

 お願いだ。どうか,私のことを。

 

『君を愛している』

 

 どうか,この夢が覚めぬように。

 

【夢】

 

 赤子は,横抱きにするとぐずる。縦抱きにすると機嫌良くした。

 アタランテが自分の胸にもたれかかせるように抱いていると,メラニオスは彼女の背中から赤子を覗き込む。

 実を言うと,少々暑苦しい。赤子の体温は高すぎて,ただでさえ夏だというのに,この子を抱いていると余計に汗をかいてしまう。

 

「孝行な子だ」

 

 メラニオスがふと,そんなことを溢した。

 

「孝行?」

 

 布でよだれを拭き取りながら,彼に尋ねる。このように幼く,半開きの口からはよだれを垂らしていると言うのに。

 アタランテは,なぜこの子が親孝行なのか分からなかった。それがメラニオスに伝わったのか,彼はアタランテに目を合わせ微笑む。

 

「この時期に生まれてくれた・・・冬産まれは大変だから」

 

 ああ,そうか。

 冬に産まれれば,食糧も少なく,凍える寒さの中で乳をやらねばならない。無事に冬を越せる保証もない。けれど,夏生まれなら少しだけ準備ができる。夏の間にたくさん食べ,力も付けれるだろう。

 

「よかったな。孝行者だと父に褒められたぞ」

 

 私はその言葉をかけられたことがなかった。だから,自分の子にはしてあげたい。生まれてきてよかったと思えるように。

 赤子の顔を優しく撫でる。ふあ,と赤子は欠伸をする。若い夫婦はそれを見て,声を出して笑った。

 

 

 

 

━━━そんな,ありえない夢を見る。この家で,ただ一人。自分の死を待ちながら。ある夏の暑い日のことだった。

fgo 編のアタランテと怪物の関係 どれが見たい?

  • イチャイチャ
  • つよつよ奥様
  • しっとり/依存
  • 無関心/やり直し
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

モルガン陛下が最初のバーサーカーになったマスターの末路(作者:湿度100モルパーセント)(原作:Fate/)

マスターは逃走した!▼「できるわけないでしょう?」▼→しかし、バーサーカーからは逃げられない!▼「…ん、呼んだ?」▼→なんなら他のサーヴァントからも逃げられない!


総合評価:554/評価:7.43/連載:15話/更新日時:2026年04月30日(木) 12:00 小説情報

【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。(作者:土ノ子)(原作:Fate/)

【第一部完結】▼・現代から転生したテンション高めのガルラ霊がメソポタミア冥界でエレちゃんを助けようと頑張るお話▼・達成偉業:【冥界DASH企画達成】【■■■■神撃退完了】【神性:EX獲得】【都市国家ウルク守護完遂】【汝、冥府を■らす■】▼・原点:召喚触媒用短編▼・エレちゃんはいいぞエレちゃんはいいぞエレちゃんはいいぞエレちゃんはいいぞエレちゃんはいいぞエレち…


総合評価:30229/評価:9.01/連載:204話/更新日時:2024年07月06日(土) 06:00 小説情報

愚問なり、無知蒙昧、知らぬならば答えよう(作者:まいねーむいずあしたか)(原作:Fate/)

▼型月世界に転生した男が聖杯戦争に巻き込まれたりする話。▼神様転生じゃないので、転生特典はなし。▼ただし、型月世界に転生したらこうならね?っていう特典みたいのはある。▼Fateの二次創作って書いたことないなぁと思い立って書いた。▼型月世界に合わせて調整した至高天・黄金冠す第五宇宙モドキが書きたかっただけともいう。▼至高天・黄金冠す第五宇宙の詠唱が好きなんや。…


総合評価:16772/評価:8.36/連載:20話/更新日時:2026年02月16日(月) 15:00 小説情報

フランスの悪魔(作者:林部)(原作:Fate/)

お願いだから(頼むから) 長生きしてくれ(祖国のために死んでくれ)▼矛盾する思いに葛藤しながらジャンヌ・ダルクを火刑へ導いた男。▼彼は後にこう語られる。▼彼こそまさしく悪魔だと。▼※原作レベルのグロ、メタあり。


総合評価:5968/評価:8.91/連載:34話/更新日時:2026年05月10日(日) 00:24 小説情報

転生者が生前のジャンヌを火刑から救う話(作者:クソ眼鏡3号)(原作:Fate/)

ざっくり言ってしまえば転生者がジャンヌから初恋泥棒する話


総合評価:1589/評価:7.17/短編:8話/更新日時:2026年02月14日(土) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>