【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話   作:WhatSoon

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#106 アメイジング・スパイダーマン part1

じゃあ、もう一度だけ説明しようか。

 

僕の名前はピーター・パーカー。

3年前、放射線を浴びた蜘蛛に噛まれた時から、この世にたった一人の「スパイダーマン」だ。

 

大切な人を失ったけど、もっと多くの人を救った。

 

街も救った。

 

何度も、何度も、何度も。

 

 

……まぁ、誰も覚えていないんだけどね。

 

大切な人を救うために、僕は世界から記憶と記録、両方を奪われてしまった。

 

 

だから、僕に取っては3年前からだけど──

 

 

 

他の人にとっては、一ヶ月前からだ。

 

 

 

世界から忘れられてから一ヶ月が経った。

 

今はクイーンズに住んでるんだ。

借りた新しい新居は……隙間風は通るし、掃除しても取れない汚れがある。

『イマイチ』かな、僕と大体一緒だ。

 

 

そうそう、アルバイトを始めたんだ。

カメラマンの仕事と、ピザの宅配だ。

 

デイリービューグルは、例え一度忘れていても……スパイダーマンが現れれば、バッシング記事を書き始めたんだ。

 

だから、スパイダーマンの写真は高く買ってくれる。

嬉しいような、悲しいような……?

 

 

 

 

それで、もう一つ、ピザの配達の仕事だけど……どうやら、クビになりそうなんだ。

 

 

何故かって?

 

 

それは──

 

 

「忌々しい蜘蛛男め!無事に帰れると思ったら大間違いだぞ!」

 

 

僕の目の前にいる緑色の生地に、火花のような黄色いマークを付けた……この変な男のせいかな。

 

バリバリと音を鳴らし、ピカピカと光ってる喧しい奴。

 

コイツの名前は──

 

 

「エレクトロ、今どきそんな大道芸は流行らないよ。大人しく電気工事の仕事に戻った方がいいんじゃないかな?」

 

 

そう、エレクトロだ。

雷を操る能力を持った元電気工事士だ。

確か……稲妻に打たれて目覚めたんだっけ?

 

何だか昔、聞いた事がある。

訊いてもないのに、勝手に話してたんだ。

 

エレクトロはもう覚えてない出来事だろうけど。

 

全く、本当に……。

みーんな僕のことを忘れていても、関係なし。

 

悪人(ヴィラン)達は、いつも通り暴れている。

 

 

「ほざけ!」

 

 

両手がバチバチと光る。

あれは雷の発射兆候だ。

 

……僕は(ウェブ)を彼の足に引っ付けた。

 

 

「よっ、と……!」

 

 

地面を蹴って跳躍し、雷を避ける。

そのまま宙で捻りながら引っ張る。

 

 

「ぬぁあ!?」

 

 

エレクトロがバランスを崩して、地面に倒れた。

顔面から行った。

痛そう。

 

滑って転んだ隙に、僕はエレクトロに接近し──

 

おっと、超感覚(スパイダーセンス)に反応あり。

 

流石に光の速度で飛んでくる雷は避けられないけど、撃とうとしてくる場所が分かれば……撃つ前に避けるだけだ。

 

 

「これ以上、お前に邪魔されてたまるか!」

 

 

急に立ち上がって、雷を発射してくる。

まぁ、もうそこには居ないんだけどね。

 

バチン!と音がして、僕のいた場所の地面が爆ぜた。

 

 

「なぁっ!?」

 

 

避けられた事に気付いて慌てるエレクトロ。

 

 

「不意打ちする時は黙ってやった方がいいよ」

 

 

そのまま近寄って、顔面に──

 

 

「ぶぐぁっ!?」

 

 

ストレート、そしてノックアウト。

 

エレクトロは気を失って、地面に倒れた。

 

鼻が折れて血が出てる。

手加減したつもりだったけど……まぁ、自業自得だよね。

 

 

「よし、一件落着かな」

 

 

昔に比べて、危なげのない戦いだ。

 

そう、ずっと前にエレクトロと戦った時とは一味違う。

沢山の死戦を超えて、僕は強くなっていた。

 

 

まぁ、だって、この一年間……殺しの技を磨いていた殺し屋と戦ったからね。

ナイフや近接戦闘のプロと戦ったんだ……多少は学べてると思いたい。

 

……その殺し屋の正体は、僕の好きな女の子だったけど。

 

 

うん。

……この話はよそう。

 

 

とにかく、気絶したエレクトロを(ウェブ)でグルグル巻きにする。

 

 

(ウェブ)の原液だって無料(タダ)じゃないんだからさ、請求したくなるね。君達みたいな奴らに」

 

 

軽口を叩きつつ、電灯に縛り上げる。

気絶してるし、聞いてないと思うけどね。

 

後は勝手に警察が捕まえてくれる。

今度は二度と脱走しないように、もっと厳重な刑務所に入れておいて欲しいね。

 

聞いた話によると、ライノもまた脱走したらしいし。

嫌になるよ。

 

 

内心で愚痴りつつ、(ウェブ)をビル壁に発射する。

思いっきり引っ張って、スイング。

 

そのまま、その場を後にする。

 

 

 

それで──

 

 

 

「お前はクビだ!」

 

 

 

冷めたピザを届けて、僕はクビになってしまった。

 

ごめんね、ピザを頼んだ人。

 

悪いのは店長でもなくて……僕とエレクトロだ。

でも責任の全部が10としたら、僕が3でエレクトロが7ぐらいだ。

 

本当に勘弁して欲しいよ。

 

数時間前、ピザの宅配中にバリバリ音を出してる銀行強盗を見つけて……流石に僕も眉間に皺が寄ってしまった。

 

僕からしたら大した事ないけど、一般人や普通の警察では太刀打ち出来ない。

万が一にも電撃が命中すれば、感電死する人も出るかも知れないし。

 

……僕がやらなきゃなって。

せめて、僕が休日の時にやって欲しい。

 

……いや、休日でもダメだよ。

何もせずに真っ当に仕事してくれ。

スーパーヴィランなんて引退してさ。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

僕は古着屋で買った服に袖を通して、クイーンズを歩く。

 

ついてない。

 

 

「また新しいバイト探さないとなぁ……」

 

 

良い事ばかりじゃない。

上手くいかないことの方が多い。

 

ちょっと、挫けそうだ。

 

一年前までも、こんな事ばかりだったのに。

上手くいかないのは、いつも通り。

マスクを脱げば冴えないピーター・パーカー。

昔からずっとそうだ。

 

だから、何も変わらない筈なのに。

 

 

「はぁ……」

 

 

だけど、どうしてこんなに気分が落ち込むのか。

 

きっと友達も、家族も居ないからだ。

僕を慰めてくれる人はいない。

 

 

目を閉じると……今でも、あの温かさと柔らかさを思い出せそうで……余計に辛い。

脳裏に映るのは……最後に見た、悲しそうに笑う彼女の顔だ。

 

 

……ふと、電光掲示板を見る。

 

 

『スパイダーメナスは正体を現せ!法を守らぬ自警団気取りに鉄槌を!』

 

 

白髪の生えた男性。

新聞社デイリービューグルの社長だ。

 

 

「……元気だなぁ、ジェイムソンは……羨ましいよ」

 

 

苦笑しつつ、街を歩く。

 

僕にとっては歩き慣れた道だ。

周りの人から見れば、僕は余所者って感じだけど。

 

 

まぁ、それはともかく。

生まれ育ったクイーンズ。

 

歩いていると──

 

 

「…………」

 

 

寂しさと、物悲しさを感じられた。

前と同じ景色だけど……いいや、同じ景色だから虚しいのかもね。

 

気分が少しでも落ち込むと、そのまま真っ逆さまに転がり落ちて行く……ドミノ倒しみたいに。

 

気を付けないと。

 

よーし、元気を出そう。

晩御飯は美味しいものでも食べようかな。

 

祝・バイトクビ記念って事で。

何も、めでたくないけど。

 

 

ふと、型落ちしたスマホが振動した。

……スティーヴンからの電話だ。

 

ちょっと前に連絡先を交換したんだ。

魔術の聖地にも電話回線やフリーWi-Fiが飛んでるらしい。

 

……Wi-Fiのパスワードも魔法の呪文みたいにオシャレなのかな?

僕は部外者だから聞けないけど……気になる。

 

 

おっと、電話に出ないと。

 

 

通話ボタンを押して、電話に出る。

 

 

「もしもし、スティーヴン?」

 

『……ピーター、サンクタムまで来てくれないか?』

 

「え?急ぎですか?」

 

 

用事はない。

というか無くなった。

 

宅配バイトはクビになっちゃったから。

だけど、新しくバイトを探さなきゃならない……今すぐって用事でもないけど。

 

 

『急ぎだ』

 

「あー、うん、すぐに向かいます」

 

 

僕は通話を切って、バックパックにスマホを仕舞う。

 

そのまま路地裏へ行って……シャツとズボンも脱ぐ。

 

中に着込んでいたスーツ……そして、頭にマスクを被れば……。

 

 

いつもの赤と青のコスチューム。

スパイダーマンだ。

 

(ウェブ)を飛ばして宙を飛ぶ。

電車やタクシーに乗れば良いって?

 

それもそうだけど、スティーヴンは急ぎだって言ってたからね。

こっちの方が早いんだ……最短距離で行けるから。

 

 

でも、1日に何度も着替えてる気がする。

 

スタークさんの作ったナノマシンスーツなら着替えも直ぐなんだけど……こうやって、ビルの裏に隠れてスリル満タンの早着替えもしなくて済むのに。

 

 

(ウェブ)を再び飛ばして、スイングする。

ガラスに反射された赤と青の残像が、跳ね上がる。

 

 

スパイダーマンもピーター・パーカーも大忙し。

 

 

これが僕の新しい生活。

 

だけど、忙しいのに……正直、この忙しさに助かってる。

落ち込んでる時間がないってのは、それはそれで良いんだ。

 

 

涙を流さないように。

 

悲しくならないように。

 

嘆かないように。

 

 

だから、僕は……今はただ、目を逸らしていた。

僕自身が感じている寂しさから。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

私は木製のドアの横……チャイムを鳴らし、コートに手を突っ込む。

 

靴のつま先で床のタイルを軽く叩き、見渡す。

 

整えられた芝生、幹の太い木。

理想的な庭と……白い壁。

小さな傷は時代を感じさせる……年代物の一軒家だ。

 

 

ここはニューヨーク。

クイーンズ、フォレストヒルズ。

静かな住宅街だ。

 

 

そして、私の名前は……ミシェル・ジェーン=ワトソン。

ヒーロー達に助けられてから、そう名乗っている。

 

一ヶ月前まで、ミシェル・ジェーンという名前は偽名だった。

本当の名前は『レッドキャップ』だった。

 

しかし、私の所属していた組織は壊滅した。

私を『レッドキャップ』と呼ぶ人間はもう居ない。

 

そして、ニック・フューリーによって作られたIDには『ミシェル・ジェーン=ワトソン』と書かれている。

 

だから、これが私の本名だ。

もう……何処かに向かう度に名前を変える必要はない。

 

 

『S.H.I.E.L.D.』に保護されてから、一ヶ月経った。

当初は病室から出して貰えなかったが……二週間程で、別の場所に移された。

 

 

ニューヨーク、マンハッタンにある大きなマンションだ。

元はトニー・スタークの父、ハワード・スタークによって作られたマンションらしいが……トニー・スタークが受け継いだ後、『S.H.I.E.L.D.』へ寄贈したらしい。

 

そこには私のような訳アリの人間が沢山住んでいる。

狼女とか、元スパイとか、人語を話す犬とか。

 

ニック・フューリーは私が『選択』するまで、そこで自由に過ごして良いと言ってくれた。

 

 

『選択』とは、つまり……。

 

普通の人間として社会で生きていくか、『S.H.I.E.L.D.』に協力してエージェントとして生きていくか。

 

その二つに一つだ。

 

 

私は……普通の人間として生きていけるとは思っていない。

いや、生きてはならない。

誰かが許しても……私は、私を許せない。

 

なら、『S.H.I.E.L.D.』のエージェントとして生きるのか?

正義の味方として?

 

 

……出来る気がしない。

私は今まで、大した信念もなく流されて生きてきた。

 

そんな私が、ヒーローとしての責任を負う?

 

……自信がない。

私のような人間が、人のために生きられるのだろうか。

 

人を傷付けてしまわないだろうか。

大きなミスを犯し……誰かを不幸にしてしまわないだろうか。

 

 

そう思うと怖くて……踏み出せない。

 

人を殺す事よりも、何かを『選択』し『責任』を持つことの方が怖い。

 

 

……私の持つ、他人にはない紛い物の大いなる力。

それに対して……大いなる責任を持てないのだ。

 

 

ヒーローは誰でもなれる訳じゃない。

善性と……途方もない責任感が必要なのだ。

 

 

だから……私には無理だ。

答えは出ない。

 

 

返答を先延ばしにしても、彼等は許してくれた。

ニック・フューリーも、キャプテンも、トニー・スタークも……誰も、彼もが、私を被害者だと思っている。

 

そうではない。

そう言っても、誰も取り合ってくれない。

 

みんな、私が立ち直るのを待ってくれている。

 

違う。

私は……そんな、誰かに期待されるような人間ではない。

 

 

そう思いながら……私は未だ、『選択』も出来ず……今は、まだマンハッタンのマンションに住んでいる。

週に一度、アベンジャーズタワーへ赴き……メンタルケアなんかをしながら。

 

 

一人暮らしをしている。

何不自由なく。

……何も失わず。

 

 

兎に角、外出の許可を得た私は、一つ、どうしてもやりたい事があった。

いや、知りたい事か。

 

 

頭の奥底にある違和感を探る事だ。

私が私らしくない行動をしている記憶があり……それの原因を突き止める事だ。

 

 

クイーンズのフォレストヒルズに来たのも、それが目的だ。

 

チャイムの音にドアが開き……一人の熟年の女性が現れた。

この家の、家主だ。

 

 

「あら……貴女は?」

 

 

そう聞かれて、私は頭を下げた。

 

 

「初めまして……メイ・パーカーさん。私はミシェル・ジェーン、です」

 

 

メイ・パーカー。

私が探している相手……スパイダーマン。

その正体、ピーター・パーカーの叔母だ。

 

両親の居ない彼の、育ての親だ。

 

 

「あらあら……?何か、ご用なの?」

 

 

メイ・パーカーは私に警戒心を抱いていない。

彼女にある底抜けの善性がそうさせるのか……それとも、私の容姿が女の子供だからか……。

 

どちらも、だろう。

 

ほんの少し、目を瞑り……彼女に質問する。

 

 

「ピーター・パーカーという名前を……ご存知、ですか?」

 

 

この世界にスパイダーマンがいるのなら……ピーター・パーカーがいるのなら。

 

彼女の甥で──

 

 

「いいえ?知らないわ……でも、名字(ラストネーム)は一緒ね?」

 

 

その返答に、私は驚き……目を瞬いた。

 

知らない?

そんなバカな……。

 

 

「…………」

 

「えっと、その……どうかしたの?」

 

 

ハッとして、再びメイ・パーカーの顔を見る。

 

思わず放心してしまっていたようだ。

 

違和感の手掛かりを掴んだ筈が……余計に大きな違和感を掴まされてしまったからだ。

 

 

「いえ……その、ピーター・パーカーという名前の人を探しているので……」

 

 

嘘を吐く理由もなく、そう述べる。

 

 

「あら……お力になれなくて、ごめんなさいね」

 

 

しかし、メイ・パーカーは謝罪の言葉を述べた。

何も悪くないのに……その顔を見れば、本当に申し訳なさそうにしていた。

 

 

「……こちらこそ、急に押しかけて、ごめんなさい」

 

 

そう謝って……その場を後にした。

 

 

 

この世界に……ピーター・パーカーが存在しない?

そんな筈はない。

 

テレビで見たスパイダーマンの姿は、私がよく知るものだった。

赤と青の……黒い、蜘蛛のマークが入ったスパイダーマンだ。

 

だから……居る筈だ。

女でもなく、豚でもない、ゾンビでもない……ピーター・パーカーが。

 

それなのに、メイ・パーカーは知らないと答えた。

 

関わってすらいないと……そう言っているのだ。

 

 

分からない。

脳がぐるぐると回る。

 

この胸にある違和感……喪失感。

それは一体何なんだ?

 

クイーンズ、フォレストヒルズの住所が書かれたメモ用紙を握り潰した。

そのまま、道沿いにあったゴミ箱に投げ入れれば……からからと音を立てた。

 

アレは住んでいるマンションの一階にあるコンピューターで調べた情報だ。

無駄足に終わったが。

 

……目的を失った私は、そのままフォレストヒルズを後にし……別の場所へ向かった。

 

 

今日は行く予定なんて無かったが……想像よりも早く終わってしまった。

 

ならば、ついでにと……NY科学館へ来た。

そこもクイーンズにある施設で……態々、マンハッタンから足を運んだのだから行く事にしたのだ。

 

……大きな白いドームのような施設。

記憶通りだ。

 

私は以前、ここに『一人』で来た。

そう、一人でだ。

 

私が?

科学館に?

一人で?

 

ありえないだろう。

 

 

……誰かに誘われたのだと思う。

だが、その誰かは何処にも居ない。

少なくとも、記憶の中には。

 

 

安い入場料を払って、中に入る。

 

 

前に見た時と展示物が異なっている。

 

以前来た時は……何もかもが目新しく見えて……そして……嬉しかったのだ。

 

何が、嬉しかったのか。

それは分からない。

 

 

……疑惑は、確信へと変わっていく。

 

私はきっと『誰か』と共に、ここへ来たのだ。

親しい『誰か』と……この記憶を共有した。

 

私はきっと、その誰かの好きを知れた事が嬉しかったのだ。

 

 

一歩、一歩、奥へ進む。

 

 

そして……大きな、機械の展示物があった。

 

 

「……これは」

 

 

知っている。

これは放射線照射装置だ。

昔、公開実験にも使っていたらしい。

 

展示された資料を見て……眉を顰めた。

 

公開実験についての情報は……存在しない。

それなら、誰が私に言ったのか?

 

『誰か』だろう。

 

 

大きな機械を見上げる。

3メートルほどの……放射線照射装置。

 

そして、公開実験。

 

 

……放射線。

 

 

放射性の血。

 

 

そして、クモ。

 

 

 

無意識のうちに、目を見開いていた。

視線を……少しずつ下げる。

 

 

ピーター・パーカーは放射線を浴びたクモに噛まれて、スパイダーマンになった。

作品によって、設定は多少ズレたとしても……それは変わらない。

 

その放射線……そして、この目の前にある機械は、放射線照射装置。

 

記載されていないのに、何故か知っている公開実験の話。

 

私と共に来ていた筈の『誰か』。

 

一ヶ月前、急に現れたスパイダーマンの存在。

 

メイ・パーカーも知らない『ピーター・パーカー』という名前。

 

 

パズルのピースが埋まって行く。

 

 

……スパイダーマン、ピーター・パーカー。

彼は昔から存在していて……私の友人であり……それを、みんなが忘れている?

 

 

推測でしかない……それも思い込みの混じった結論。

だが、一度そう考えてしまえば……それが正しい答えだと思い込んでしまっていた。

 

 

「……ピーター・パーカー」

 

 

コミックには……現実を意のままに操る『現実改変能力』を持つ者が存在する。

 

スカーレットウィッチ、モレキュールマン、ジェイミー・ブラドック、メフィスト……他にも。

 

能力の範囲や性能は異なるが……しかし、世界中から彼の記憶や存在を消す事だって……可能な者もいる。

ドクター・ストレンジだって出来るだろう。

 

 

何かが原因で、彼の記憶と記録がこの世界から抹消されたとしたら?

 

……もし、そうならば……辻褄が合う。

私の違和感の正体も分かる。

 

しかし、誰かが操った結果なのだとしたら……何故、操ったのか。

 

そして、どうしてスパイダーマンは誰にも話さないのか。

 

 

……何より。

 

 

ピーター・パーカーが私や、グウェン、ネッドの友人なのだとしたら。

 

世界中の誰からも……友人からも忘れられているのだとしたら。

 

 

それは、とても……。

 

 

「悲しい……」

 

 

誰からも忘れさられて、それでも生きていかなければならないとしたら……それは悲し過ぎる。

 

 

胸元のアクセサリーを弄る。

 

ツギハギになった青と白のバラのアクセサリー。

病室で……接着剤を使って、修復した見窄らしい砕けたバラ。

 

……それを手で包む。

アクセサリーを贈られるほど、私は親しかったのだろうか。

 

 

なのに……どうして?

 

 

どうして、スパイダーマンは……ピーター・パーカーは私やグウェンに話をしに来ない?

記憶を失った理由を教えてくれない?

……どうして、孤独でいる事に納得している?

 

 

探さなきゃ。

 

 

会わなきゃ。

 

 

会いたい。

 

 

確かめたい。

 

 

胸にある空いてしまった穴。

今はもう、それを埋める事に躍起になっていない。

 

それよりも、私の考察が正しいのであれば……今、ピーター・パーカーは苦しんでいる筈だ。

 

……その苦しみの理由を、私は知りたい。

 

 

私は、未だ会った事もない人に……想いを馳せていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

サンクタム・サンクトラム。

見た目は少し古臭い……いや、風情のある煉瓦作りの施設だ。

外からも天窓が……魔法陣みたいな形になっているのが見える。

 

 

ドアの前まで来て、チャイムを押そうとして……ドアが勝手に開いた。

 

 

「うわ、自動ドアだ」

 

 

サンクタムの中に入りながら振り返ると、ドアが閉まった。

少なくとも電気式ではなさそう。

魔術式自動ドア?

 

 

というか……あれ?

何だか寒いな。

 

春も過ぎて、夏に向かっているのに。

 

 

 

室内を見る。

 

 

雪だ。

雪が積もってる。

 

 

「……え?」

 

 

ぐるりと見渡すと……サンクタムの中は雪まみれだ。

まるで部屋の中で吹雪が発生したかのような……。

 

 

「よく来たな、ピーター」

 

 

広間の階段を降りてきたのは……コートを着たスティーヴン・ストレンジだ。

 

 

「あの、スティーヴン?何……?これ」

 

「あぁ、雪か?」

 

 

スティーヴンが指を鳴らすと、足元の雪が波打ち、僕らの足元から離れて行く。

 

 

「サンクタムには様々な場所に繋がっている次元の扉があってね。山脈の頂上に繋がっている物もある。メンテナンスを怠った結果──

 

 

手で、雪まみれの辺りを指し示した。

 

 

「ご覧の有様だ」

 

「……手伝います?」

 

 

なるほど。

スティーヴンが呼び出したのは、この雪を──

 

 

「いや、手伝わなくていい」

 

 

どうやら違うみたい。

 

 

「じゃあ、何をすれば──

 

「特に何も?」

 

 

スティーヴンが笑いながら答えた。

 

……え?

急ぎじゃなかったっけ?

首を傾げる。

 

 

「何か用事があって呼んだんじゃないんですか?」

 

「いいや?特に用事などない」

 

 

スティーヴンが指を鳴らすと、足元の雪が薄緑色に変化した。

 

それらは蝶となって宙を舞い、やがて空中で粒子となって消えた。

 

 

「片付けに手を借りる必要はない」

 

「え?じゃあ何のために……」

 

「あぁ、君をここに呼び出すのが目的だった。そういう意味では既に目的は達成しているな」

 

 

あまりにも不可解な事を言うから、困ってしまう。

スティーヴンはいつもそうだ。

 

会話してるとIQトレーニングをしているような気持ちがする。

 

 

「……ふむ」

 

 

スティーヴンが自分の腕を見た。

高級そうな腕時計が巻いてある。

 

 

「……少し雑談でもするか。最近、調子はどうだ?ピーター」

 

「調子?うん、バッチリ。絶好調」

 

 

嘘だ。

バイトをクビになったばかりだ。

 

 

それを見抜いたのかスティーヴンは顔を顰めた。

 

 

「ピーター、辛い時は辛いと言っていいんだぞ?」

 

「大丈夫ですよ、僕は」

 

 

確かに……失った事は辛い。

家族も友達も……尊敬する人も。

 

最初から持っていなかったのなら、納得は出来た。

だけど、持っていた物を落としてしまった時……それが一番、辛いんだ。

 

だけど、これは僕が選んだ選択だ。

この辛さから逃れるために、全てを台無しにするつもりはない。

 

 

スティーヴンがため息を吐いた。

そして、顎に手を当てた。

 

 

「……君は幸せになる事が怖いのか?」

 

 

その質問に、思わず首を傾げた。

 

 

「そんなつもりは、ないですけど……」

 

「だろうな。無意識か」

 

 

彼が額に指を当てて、揉んだ。

 

 

「ピーター、君は自分を許すべきだ」

 

「……許す?」

 

「己が感じている罪悪感に押し潰されてはならない」

 

 

スティーヴンは僕より一回り……二回り、歳上だ。

年の功、と言うべきか。

 

僕を導こうとしてくれている。

 

 

「そんな、罪悪感なんて……」

 

「君はもう十分に苦しんでいる。救われてもいい筈だ」

 

 

僕の言葉を無視して、彼は言い切った。

 

無意識のうちに感じている罪悪感?

 

 

そんなの……僕だって、分かってる。

 

 

……今でも時々、夢に見るんだ。

 

叔父さんが死んだ日。

僕が強盗を見逃した日。

 

リアルな夢だ。

どれだけ体を動かそうとしても……動かない。

 

僕は悪人を見逃して……背負うべき責任を放棄した。

 

 

そして──

 

 

「ピーター」

 

 

スティーヴンが声を掛けてきた。

 

 

「もっと自分勝手になれ」

 

 

肩に手を置かれた。

 

 

「君が感じている責任は……君だけの物ではない。誰かも感じている物だ。一人だけで背負おうとするな」

 

「…………わかりました」

 

 

僕が頷くと、スティーヴンがまた、ため息を吐いた。

 

 

「分かってないな……だが、今日は別に説教をしたい訳ではない」

 

「十分、説教みたいだったんですけど……」

 

 

そう反論すると、スティーヴンが眉を顰めた。

そして、腕時計を見た。

 

 

「……まぁ、いい。もう帰ると良い……人と会う約束があるんだ」

 

「人と?誰かが来るんですか?」

 

「いや、会うのは私ではない」

 

 

……また、難解な事を言う。

魔術師ってみんな、こうなのかな?

でも、ウォンって人はそうでもなかったし……。

 

兎に角、時計を見てるって事は時間が来たって事なんだろう。

 

 

「……それじゃ、僕もう帰りますね」

 

「あぁ、偶には近況の連絡をして来ると良い」

 

 

スティーヴンに手を振って、肌寒いサンクタムを出ようとした。

 

……一つ、思い出して振り返る。

 

 

「僕の借金なんですけど、まだちょっと返せなくて──

 

「良い。寧ろ、君はもっと私に迷惑を掛けるべきだ」

 

 

よく分からない言葉に、僕は首を傾げる。

 

 

「……すみません?」

 

「……さっさと、帰れ」

 

 

思わず謝ってしまうと、スティーヴンは手をひらひらと振り返してきた。

 

頭を下げながら扉を閉じて……僕はサンクタムを後にした。

 

 

外に出れば……空はもう、赤くなっていた。

 

ここから自宅のあるクイーンズに帰る頃には夜になってるかも。

 

今からスパイダーマンのスーツに着替えて──

 

袖をまくり、(ウェブ)のカートリッジを見る。

原液はもう少ないみたい。

 

帰りにもし、スパイダーマンの出番が来れば……と考えると使えないな。

 

ちょっと、遠いけど歩いて帰ろう。

 

 

あぁ、それと……今日の晩御飯を何処かで食べないと。

これだけ遅くなったら、ご飯屋を探すのだって面倒に感じちゃうな。

 

この辺、詳しくないし高そうだし……クイーンズに帰ってから食べようかな。

 

あの辺なら、僕も詳しいし。

 

僕は晩御飯の事を考えながら、生まれ育った街へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

NY科学館から出た後、私はクイーンズを歩いていた。

 

空は赤く染まっている。

時計の短針は真下を指していた。

 

 

……あまり、クイーンズを出歩くのは良くないかも知れない。

 

私の偽装した死体を見た人間がいるかも知れない。

 

と言っても、私が死んだ事を知っているのは学校の同級生ぐらいか?

 

ニューヨークの人口は多い。

ばったりと出会わなければ、人混みの中で私に気付く事もないだろう。

 

きっと杞憂だ。

 

 

だが……そろそろ、マンハッタンに戻るべきか。

 

……腹を撫でる。

私は空腹を感じていた。

 

どこかで食事をしてから帰ろう。

 

私の住んでいるマンションは寮ではない。

食事は各々で用意しなければならない。

 

だから、ここで食べて帰るべきなのだ。

 

 

幸い、お金は持っている。

トニー・スタークから押し付けられた、お小遣いだ。

 

要らないと言ったのに……。

断ったら更に大きな額を押し付けられた。

 

お陰で黙る事しか出来なくなった。

また断ったら余計に大きな額を押し付けられそうだからだ。

 

ヒーローはお節介焼きだ。

それは好ましいが……お節介を焼く相手は選んだ方が良いと思う。

 

 

何処で食べるか。

 

クイーンズの食事処には、そこそこ詳しい。

ここに住んでいた時には、毎日外食していたからだ。

 

……私は、足を止めた。

 

 

あぁ、そうだ。

あそこにしよう。

 

私は踵を返して、よく行っていた場所へと足を進めた。

 

 

少し歩いて……空も少し暗くなって来た。

 

 

ニューヨークの治安は悪い。

あまり、夜遅くまで出歩くのは良くない。

 

……まぁ、暴漢に絡まれても負けはしないが。

それでも無意味なトラブルは避けるべきだ。

 

 

私の目に『サンドイッチ』の絵が描かれた看板が映った。

今日はここにするつもりだった。

 

私はドアに手を掛けて、中に入る。

ドアには鈴が付いており、耳心地の良い音がした。

 

年季の感じる店内には、欠伸をしている店主のデルマーがいる。

カウンターはそこそこ広く、五つほど椅子が並べてある。

 

 

「ん、あぁ……嬢ちゃん、久しぶりだな」

 

 

そう声を掛けてきてくれるぐらいには、私は常連だった。

 

しかし……何というか、いつも以上に店内は静かだった。

本当に潰れていないのが不思議に思えるほどに。

 

 

「何か、変わった事はあった?」

 

 

そう世間話をする。

 

 

「あ、あぁ……えっとな……結構前になるんだけど、近所で事件があってな」

 

「近所?」

 

 

耳を傾ける。

 

 

「そこの裏で、何かヤバい死体が見つかったらしいんだよ」

 

 

……あれ?

 

 

「……へ、へぇ」

 

 

思い出してしまった。

兄……ティンカラーが私のLMD(ライフ・モデル・デコイ)の死体をばら撒いたのは……この辺だった。

 

別に場所を指定しては居なかったのだが……当時、住んでいた場所の周辺に捨てたと言っていた。

 

……もしかして、私の死体なのか?

 

 

「だから、商売上がったりでよ……嬢ちゃんもそういう話で、ここに来なくなったんじゃなかったのか?」

 

「あ、いや……私は遠くに引っ越してたから……」

 

 

目を逸らしながらそう言って、カウンターに座った。

 

 

「そうか……で、注文は?」

 

「いつもの」

 

「ショートケーキね、あいよ」

 

 

メニューも見ずに答えて、店主のデルマーは頷いた。

 

少しすると、目の前にクリームとイチゴの入ったサンドイッチが出された。

 

皿の上に乗っているそれを手に取り、齧る。

 

 

美味しい。

生クリームの甘みが身に染みる。

ライ麦の控えめな甘さと、イチゴの酸味がクリームを引き立てている。

 

前に食べた時と変わらない……いつも通りの、美味しさだ。

 

 

なのに……何か、物足りなく感じていた。

 

 

もう一度、口に入れる。

変わらない味だ。

 

味覚と嗅覚は、全く変わっていないと答えている。

 

 

……何が、足りないのだろう。

 

いや、本当は分かっている。

 

きっと、私はここにも『誰か』……きっと『ピーター・パーカー』と来ていたのだ。

 

 

私にとって彼は……それだけ重要な存在だったのだろう……か。

 

 

チリン、と鈴が鳴った。

 

慌てて手についたクリームを舐め取り、紙ナプキンで拭き取った。

 

 

そして、視線を横にずらすと……私と同年代の少年……いや、青年が居た。

 

彼は私を見て……少し、驚いたような表情をした。

そして、私に見られている事に気付いたのか、慌てて目を逸らした。

 

髪は茶髪で……少し、疲れたような覇気のない顔をしている。

目鼻は整ってるけど、少し幼く見える。

 

そんな青年だ。

 

 

「注文は?」

 

 

店主のデルマーに声を掛けられて、青年はデルマーの顔を見た。

 

 

「5番のBLTを……あ、出来ればピクルスも入れて、ペッチャンコに潰して欲しいかな」

 

「……あいよ」

 

 

不思議な注文をするんだなって、そう思った。

 

彼もこの店の常連なのだろうか?

一度も見た事はないけれど。

 

私はショートケーキのサンドイッチに視線を戻す。

そして、また口にする。

 

 

視線を感じる。

……さっきの、青年からだ。

 

 

「……どうかした?」

 

 

顔をそちらに向ける。

すると彼は……少し驚いたような顔をして、目線を泳がせた。

 

 

「な、何でもないよ」

 

「……そう?」

 

 

彼は頬を掻いて、苦笑した。

よくわからない奴だ。

 

黙々とショートケーキのサンドイッチを食べる。

 

彼はそわそわと……私に視線を向けないように、天井を見たりしている。

少し、気まずかった。

 

だけど、不思議と不快には感じなかった。

寧ろ……どこか、心地良さを感じていた。

 

 

少しして、デルマーさんが戻って来た。

手には押し潰されて薄くなったサンドイッチがあった。

 

 

「ほいよ、坊主。4ドルだ」

 

「あ、どうも……ありがとう、おじさん」

 

 

彼は店主へ、お金を渡して……また、私の方を見た。

 

 

「あの……ちょっと、良いかな」

 

 

私はサンドイッチを食べ終えて……手を紙で拭いた。

 

 

「……何?」

 

「その……えっと……」

 

 

彼は必死に言葉を選んでいるように見えた。

私は、そんな彼の姿を見つめている。

 

 

「さっき食べてたサンドイッチって美味しかった?」

 

「……うん。美味しい。オススメ」

 

「そっか……」

 

 

何が聞きたいのか……どんな意図があるのか、分からなくて、私は首を傾げた。

 

彼はそのまま両手を組んで……悩むような素振りをして、また口を開いた。

 

 

「えっと……今、その……幸せ?」

 

 

本当に変な質問だった。

 

その質問の意図は分からないけど……幸せ、か。

 

 

大切な友人に囲まれて。

人を殺さずに生きていられて。

穏やかな毎日を過ごしている。

 

それは凄く……私にとって──

 

 

「うん、今は幸せ、だと思う」

 

 

私はそう答えた。

 

 

「そっか……良かった」

 

 

彼は、その返答を噛み締める様にして……踵を返した。

 

 

「それじゃあ、その……さよなら」

 

 

ドアに手を掛けて……開けた。

 

 

「……うん、さよなら」

 

 

心地よい鈴が鳴って、ドアが閉じる。

彼はサンドイッチ屋から出て行った。

 

 

さよなら……さよなら、か。

その言葉は、私は嫌いだった。

 

どうしてかは私にも分からないけど……さよならは、嫌だった。

またね、とかそういう言葉の方が好きだ。

 

 

キッチンに入っていたデルマーがカウンターに戻って来た。

私は財布を取り出して、お金を払う。

 

 

そして──

 

 

「さっきの男の人……彼も、常連?」

 

 

そう聞いた。

 

サンドイッチを潰す、ピクルスを入れる……何だか、詳しく知っているイメージがあったからだ。

 

 

だが、帰ってきた答えは違った。

 

 

「いいや?だが、BLTを潰すってのは悪くない発想だな」

 

 

その否定の言葉に……私は、眉を顰めた。

そして……一つの、予想が脳裏に浮かんだ。

 

彼は常連……だったのに、忘れられているんじゃないか?

 

そして、それはきっと──

 

 

私は慌てて、サンドイッチ屋から出た。

外はもう暗くなっていた。

 

左右を見渡しても……彼はもう、居ない。

後ろでデルマーの困惑するような声が聞こえた。

 

……だけど、立ち止まっては居られなかった。

 

 

私は……彼を探して、走り出していた。

 

きっと彼は……恐らく……私がよく知っていた人だ。

私が感じている喪失感の正体だ。

 

私と一緒にいてくれた『誰か』だ。

 

だから……だから、見つけなければ。

 

 

だって、彼はきっと……。

 

 

彼の名前は……。

 

 

「ピーター……?」

 

 

少し走って……暗くなったニューヨークの街灯の下で、彼を見つけた。

 

私が呼んだ事に気付いて……驚いた様子で振り返った。


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