【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話 作:WhatSoon
ニューヨーク、クイーンズ。
治安が悪いと言っても、毎朝喧騒がある訳じゃない。
「ふ、あ……」
僕は欠伸を一つして、洗面所へ向かう。
水を手に、顔を洗って、鏡の前に。
鏡に映っているのはピーター・パーカー。
冴えない大学生だ。
歯磨きをしつつ、時計を見る。
時間に余裕はある。
服を脱いで、洗濯カゴへ。
外出用にシャツとズボン、靴下を穿いてリュックを用意。
朝食にベーグルを焼いて、ミルクを飲む。
テレビを流し見して、物騒なニュースがない事を確認。
「よし」
大学用のリュックを背負って……っと、忘れ物。
スーツを入れて、僕は外へ出た。
うーん、久々にトラブルのない朝だ。
昨日まで毎朝、偽物のスパイダーマンがトラブルを起こしていたからね。
正体は未来世界のミステリオだって分かったし、目的も分かった。
解決はしていないけど、心のモヤモヤは充分晴れてる。
でも、ミシェルを狙っているってのは……不安だけどね。
しかし、焦っても仕方がない。
僕はセプテンバー基金奨学金のおかげで大学へ行けているし、生活費も支払えている。
これがなきゃやってけないし、家賃すら払えない。
大学で勉強すること、それが今の僕の仕事だ。
ヒーロー活動のし過ぎで学業を疎かにはできない。
バスに乗って、大学へ。
正直、糸(ウェブ)でスイングした方が速いけど、こうやってバスに乗って普通の学生の生活をするのも大切だ。
さて、エンパイア・ステート大学に到着だ。
キャンパスに移動して、講堂へ。
バイオメカニクスの教授であるオットーの元へ。
「教授、手伝いますよ」
「ああ、すまないな。ピーター」
オットー・オクタビアス教授。
眼鏡を掛けた小太りの教授で、優しくて親しみやすい……悪くいうと、ちょっと生徒から舐められている。
講義後の研究だったり、学内の色々だったり……ヒーロー活動で授業をサボってしまう僕に対して、便宜を図ってくれる。
であれば、僕も何かしら手伝いをして返さなきゃならない。
講義に使う教本だったり、実験機材だったり、タブレットだったり。
そういったものを段ボールに入れて、台車で押す。
「ここでいいですか?」
「いつも悪いな、ピーター」
教授は身体があまり良くない。
最近は特に。
教授は神経性の麻痺を誘発する病気を患っており、身体能力に難がある。
重いものを持ち上げたり、運んだり……そういった事が苦手だ。
細かい作業は得意なんだけど、力が上手く入らないらしい。
だから、僕は教授の腕代わりをしてるって訳だ。
「教授、今日は講義の後に予定はありますか?」
「ん?ああ、ちょっとな。大学関係じゃないぞ?プライベートだ」
「あー……分かりました」
「だから、手伝う事もない。今日は帰って、彼女さんでも誘ったらどうだ?」
「ちょ……」
教授がニヤニヤと笑いながら僕を揶揄う。
付き合っている恋人がいるとバレてから、こうした揶揄いが多くなっている。
教授にも仲睦まじい妻がおり、人生の先輩としてアドバイスを!といった感覚らしい。
正直、鬱陶しいが、悪い意味で揶揄ってくる訳でもないので、甘んじて受け止めている。
そうして、講義が始まって、終わって。
昼過ぎ、講義の後片付けを手伝って……校舎から出れば──
「ほら、お金」
「分かったよ……前より高くなってないか?」
「提示した通りでしょ。前より多いんだし、高くて当然。違う?」
「くそ、そうだけどよぉ」
黒人の少女……それこそ、大学に居るには若い少女が、他の生徒からお金を受け取っているのが見えた。
そうして少女は、何かノートを生徒に返して……ほくほくとした顔でその場を後にした。
一見すると、違法な取引だ。
でも、実際は違法じゃない……違法じゃないけど、学生としてモラルに欠ける取引だ。
……僕はため息を吐いて、そんな少女に近寄った。
「リリ、また人の課題やって、金儲け?」
「あ、ピーター?酷い言い方だね。私はただ、人助けしてるだけ」
「お金を受け取ってるのに?」
「これは善意。それがお金という形になって、私に返ってくるだけ」
そう悪びれる様子すらないのは、リリ・ウィリアムズ……15歳。
飛び級で僕と同じ学年までやってきた、天才少女だ。
だけどまぁ、性格がちょっと……捻くれている。
「ピーター。相手は課題が終わって嬉しい、私もお金が貰えて嬉しい。ウィンウィンじゃん?」
「課題はその生徒の能力を上げるためだから、人にやって貰ったら身にならないよ」
「どーせ人にやって貰おう、なーんて考える奴が課題やっても、身になんかならないけどね」
「酷い言いようだなぁ、まったく」
リリとの出会いは半年前。
さっきと同様、リリは他の生徒から金を貰って課題をやってたけど……値段を黙って引き上げたのがバレて、年上の同級生とトラブルになってたんだ。
そこを助けてから、顔見知りって訳だ。
そんなリリと並んで歩く。
目的地が同じなのかもしれない。
「で?ピーターもやって欲しいの?」
「いや、いいよ。僕は自力でやるから」
「ふーん、ピーター相手だったら無料でも良いんだけど」
「悪魔の囁きだね。でも、自力でやるから。僕は」
「賢い生き方じゃないね、ピーター」
リリがそんな事を言うから、僕はため息を吐いた。
「というかさ、リリ。何でそんなにお金が必要なの?」
「将来への投資。私、大学を出たらビッグになるから……ハイテクアーマーとか作ってね」
「ハイテクアーマー?アイアンマンみたいに?」
「それよりもっと。将来はトニー・スタークよりも大金持ちになるんだから」
リリが鼻を鳴らした。
無謀だ、なんて言わない。
実際、リリは天才だ。
この歳で色々と凄い発明をして、幾つも特許を持ってるらしい。
学内でこっそり、アイアンマンみたいなスーツを作ってるのも僕は知っている。
彼女は口だけではないのだ。
……それはそれとして、一度痛い目に遭った方が良いような性格してるけど。
……っと、僕の目的地だ。
「じゃ、リリ。僕は図書館に予定があるから」
「あっそう?どうりで、変な所まで来たと思った……てか、物理の本より、電子の本の方がよくない?」
「……いや、図書館を利用すれば無料だからさ」
「それもそうか。ピーターは貧乏だもんね。かわいそ」
「はは……言い返せないや」
一通り僕を煽ったリリは、そのまま踵を返した。
「じゃ、またね。ピーター。困った事があれば、いつでも言って。お安くしておくからさ」
「リリの方こそ。僕の方は無料で助けてあげるよ」
「それはいいね。ピーターはヒーロー向いてるよ。なったら?」
「はは……なれたら、なってるよ」
そうして、リリは僕に手を振って離れていった。
……目的地は違うみたい。
態々、僕と話すためについて来たみたいだ。
まったく、彼女はこういうところがあるから憎めないんだよなぁ。
実際、悪い子じゃないし。
リリと離れた僕は図書館へと入った。
エンパイア・ステート大学図書館、そこには4000万近い本が収蔵されている。
本の数が多すぎて、目で探すのは大変だ。
カウンター近くにあるタブレットを使って、読みたい本を探す。
僕が探すのは──
「えっと……並行世界(マルチバース)について、っと」
そう、それが目的だ。
メイやマイルズ、ドクターの転移事件を解決するにも、前提知識を集めようというつもりだった。
もしかしたら、解決の糸口が見つかるかも知れないし。
そうして、タブレットに表示されたリストから良さそうな本を見つける。
『マルチバースにおける偏在と収束』
著者はリード・リチャーズだ。
この世界でもトップレベルに賢い科学者でありヒーローでもあるミスター・ファンタスティックの著書だ。
期待できる。
「えっと、Bの24の棚は……」
エンタメとは程遠い小難しい本が置いてある棚まで移動する。
好き好んで読む人は少なそうだし、本の値段も高そうだ。
……っと、あった。
目当ての本を見つけた僕は、その本を取ろうとして──
「「あっ」」
もう一人、その本を取ろうとしている人と鉢合わせた。
「えっと……君も『マルチバースにおける偏在と収束』?」
「そうだけど。貴方も?」
そこに居たのは黒髪の女性だった。
年齢は僕と同じぐらい……スレンダーで長髪、可愛いというより美人な女性だ。
「うん、僕も……って、あれ?君って学生じゃないの?」
僕は彼女の首元にある入館証を見つけた。
GUESTと書かれたそれは、学外の一般人がエンパイア・ステート大学に入る事を許可するものだ。
教授だけが発行できる、入館証だ。
「ええ、悪い?」
「いや、悪くないよ。気になっただけなんだ」
そんなものを身に付けているということは、つまり学外からのお客様ということ。
「それで、貴方が読む?私も読みたいのだけれど」
「いや、僕は遠慮するよ。学生だから、いつでも読めるし」
そう、お客様なのだから、いつまでも大学に居られる訳じゃない。
急ぎの用事って訳でもないし……まぁ、なるべく早く解決すべきだけど……彼女に譲った方が良いと僕は判断した。
「いいの?」
「いいよ?」
彼女は少し目を瞬かせて、仄かに笑った。
「感謝する……私はリズ。貴方、名前は?」
「え?僕?僕はピーター、ピーター・パーカー」
名乗ると、彼女……リズはまた目を瞬いた。
少し驚いた様子で、何故か納得した様子で頷いた。
「そう……ありがとう、ピーター。何かお礼が出来れば良いけど、生憎、手持ちがなくて」
「え?いいよ、大丈夫。そんな、お礼を言われるような事じゃないし」
リズの雰囲気が柔らかくなった。
先程までの警戒するような表情が嘘のように、親しげな笑みを浮かべてくる。
……僕、何かしたっけ?
読みたい本を譲っただけなんだけど。
そう思っていると、スマホに通知があった。
「ねぇ、ちょっと話していかない?」
「え、あー……ごめん、僕ちょっと用事があるから」
「そう……」
残念そうな顔をするリズから離れて、僕はスマホを手に取った。
ショートメッセージを確認すれば──
『エンパイア・ステート大学の近くまで来てる。良ければ、お昼でも一緒に食べない?』
というミシェルからのメッセージだった。
僕も返答する。
『いいね。丁度、予定が終わったから行くよ』
『じゃあ、南側の正門で待ってる』
そうして、ショートメッセージを送ってると──
「貴方、図書館では電子機器に利用は厳禁よ」
「あ、すみません……」
司書に怒られてしまった。
持ち出し不可の本を写真に撮る人が居たらいけないから、って禁止されているのだ。
まぁ、それは建前で、クーラーの効いた図書館で、スマホ弄り続ける生徒が多かったから、ってのが通説らしいけど。
視線を戻す。
リズが席に座り、本を手に僕をチラチラと見ている。
彼女であるミシェルを待たせて、他の女性と会話するのはダメだ……ってグウェンも言ってたし。
しかし、何がそんなに興味を引くのだろうか。
僕ってそんな魅力的な男性じゃないし……ハリーみたいなイケメンならまだしも。
「じゃ、これで僕は」
「うん、またね」
またね?
またね、か。
次も会えると確信しているような言い方だ。
また大学に来るのだろうか?
不思議に思いながら、僕は図書館を出た。
そして、キャンパス内を歩いて正門まで来た。
そう、ミシェルとの待ち合わせ場所だ。
なのだけれど……明らかに一箇所、視線が集まっている場所がある。
……はぁ、あの場に僕、向かわなきゃいけないのかな。
意を決して、飛び込む。
「……ごめん、ミシェル。待たせたかな?」
「ううん、今来たとこ」
ミシェルは美人だ。
昔は少し幼さを感じさせる美少女って感じだったけど……まぁ、今も実年齢より若そうだけど、大人の女性になった。
その、女性的な丸みもあるし……異性からの目を惹きつけてしまう。
大学生なんて年頃なんだから、それはもう当然だ。
しかし、そんなミシェルの横に冴えない僕。
周りからの目から、困惑が見て取れる。
「って……メイ?」
というか、ミシェルの背後にメイも居た。
……メイは美人ってより、美少女なんだよな。
こうして並んでいると、美人姉妹って感じだ。
髪色は似てないけど、何となく、顔の造形は似てるし。
あれかな、美人と美人は美の完成系だから似るってやつ?
「遅いよぉ、ピーター。お腹減ったよ〜」
「ご、ごめん?って、何でメイが?」
僕が訊くと、メイではなくミシェルが口を開いた。
「ちょっと買い物をね。必需品だけじゃストレスも溜まるから」
「買ってもらったの」
「へぇ」
メイが手元の紙袋を見せる。
何を買ったのだろうか。
そう思っていると、メイが袋に中を見せてきた。
「これはヘッドホン……音楽聴きたいからね。これはプリペイドカード……スマホに音楽をダウンロードするんだよ」
「へー、メイって音楽が好きなの?」
「まぁね。ピーターはルナ・スノーって分かる?」
「ルナ・スノー?ヒーローみたいな名前だね」
「……分かってないのは分かったよ」
メイが少し落胆したような顔で、首を横に振った。
ため息まで吐かれた。
ひどい。
少し落ち込んでいると、ミシェルが僕の肩を叩いた。
「で、ピーター。お昼は外食でいいよね?」
「え?あ、いいよ?」
「なら、行こう」
「よーし、ごーごー!」
メイがふんふん鼻を鳴らしながら、僕とミシェルの間に挟まってきた。
……ミシェルと僕が近付くのを阻止したいのだろうか?
そう思ったけれど、何処か嬉しそうだ。
……そういえば、メイが言っていたような──
『私の世界では、結婚してたよ。ピーターと、MJは』
って……メイはこの世界の未来でもある並行世界(マルチバース)から来た。
つまり、僕は将来、ミシェルと結婚する可能性が高いという事だ。
「…………」
そもそも、その予定だったけれども。
他人から肯定されるってのは、それだけで嬉しいものだ。
少し笑みを浮かべていると、メイが僕へ視線を向けた。
「なに、ピーター。ニヤニヤしてて、気持ち悪ーい」
「え?あ、あー……ごめん?」
歳下の女の子に気持ち悪いと言われてしまった。
少し、ショックを受けてるとミシェルが笑みを浮かべた。
「大丈夫、ピーターは気持ち悪くないよ」
「あー、ミシェルったら。甘やかしちゃダメだよ」
「甘やかしてない」
「……恋は盲目って言うもんねー。うげー」
僕を擁護するミシェルと、僕を弄ろうとするメイ。
そんな二人を連れて、大学から離れる。
……周りの視線がちょっと痛い。
でも、幸せだった。
メイと出会って、まだ数日だけど……親しみを感じている。
こうして一時でも、平和な中、3人で交流できるのは心休まるものだ。
この一瞬ぐらい、並行世界(マルチバース)とか復讐者(ミステリオ)とか、そういった事は忘れていたい。
僕はそう思った。
◇◆◇
私は手元にある本のページを捲る。
『マルチバースにおける偏在と収束』……そのタイトルに相応しい内容だ。
並行世界(マルチバース)において、極めて近しい時間・空間・法則を持つ世界は引かれ合う。
一つになろうと近づいていく。
もし、意図的に、世界の壁へ干渉できるとしたら?
望む世界、望む時間の物を呼び出す事が出来る。
それこそが将来、タイムマシンを開発できる可能性となる。
……とか。
読みながら重要な項目を脳に入れていく。
しかし、肝心な、私の知りたい情報はない。
少し落胆していると、向かいの席に人が座った。
「精が出ますね、リズ」
「……マイケル・ウォーレン」
「教授をつけてください。少なくとも、今は」
「……チッ」
少し鬱陶しく感じる。
このマイケル・ウォーレン……いや、教授から私は入館証を貰っている。
「それで、何か成果は得られましたか?」
そう言われて、先程出会った男……ピーター・パーカーを思い出す。
「いや、何も」
しかし、口には出さない。
この男に教えても、面倒ごとにしかならない。
「そうですか……仕方ありませんね。それで、まだここに?」
「……いや、もういい。居座っても、得られる情報はないだろう」
私は手に持っていた本を返却棚に戻して、教授と図書館を出る。
視線を逸らして、また教授へ戻すと……別人になっていた。
初老の男から、若い男へ。
別人のように。
「……何故、姿を変えた?」
「貴女、気付いてないかもしれないですけど目立つんですよ。教授と生徒で並んでいると尚更ね」
「そうか?で、次は何と呼べば?」
「何でも良いですよ?」
「じゃあ、『カメレオン』」
「それはやめてください」
「……フン」
目の前にいる男は、碌でもないクズだ。
私も同類ではあるが、軽蔑する程の度を超えたクズだ。
カメレオン。
人に変装する技術を持つ男。
人の姿を真似るだけ、ではない。
その姿を見た相手が望む姿、立ち振る舞いを主軸として、自らの目的のために他人を操る。
技術だけの男だけではない。
人の心を理解した上で、踏み躙る。
仲間といえど、油断できない男だ。
「しかし、私は貴方の望みを叶えた訳です。成果が得られなかったとしても」
「回りくどい。言いたい事があるなら、率直に言え」
カメレオンと長々と会話をするつもりはない。
この男と会話すること、それこそがリスクだ。
「では、一つ。お使いをお願い致します」
「私は子供ではない。少ない駄賃で何でもするほど、落ちぶれてはいないが?」
安く見積もられたくない。
それはちっぽけなプライドというより、自分の身を自分で守るために必要な事だ。
足元を見られては、寄り添う壁もないこの場所で立ち続ける事は出来ない。
「故郷に帰りたいのでしょう?」
だが、そんな私の強がりをカメレオンは見抜いている。
「……チッ、碌な死に方しないぞ。お前」
「それは貴女も。屑には屑の死に方があるでしょう。ですが、今はまだ死にたくはない……違いますか?」
話していると、苛立つ。
手のひらの上で転がされているような不快感。
それでも私は、目的のために……この男の言うように踊るしかない。
足を止めて、振り返る。
カメレオンにつられて、人影のない建物裏まで来ていたようだ。
「要件を言え、『カメレオン』」
私、リズ……エリザベス・リズ・トゥームスの言葉に、カメレオンは笑みを深めた。
「なに、貴女が得意な空の仕事ですよ……『ヴァルチャー』」
邪悪で、歪な笑みを。
◇◆◇
「ねぇ、ミシェル。なんでここに?」
僕がそう問いかける。
ここは僕がよくいくサンドウィッチ屋だ。
複数人で並んで食べるような店ではない。
「メイが行きたいって言うから」
「え?そうなの?」
メイに目を向ける。
サンドウィッチを頬張っていた。
そんなメイが僕に視線を戻した。
「んもんぐもんももぐも?」
何言ってるんだ。
僕がそう思っていると、ミシェルがメイの背中をつついた。
「口に物を含んだまま喋らない」
「んぐ……ごめんなさーい」
うーん、やっぱり何だか歳の近い姉妹みたいだ。
メイは僕を相手にすると凄く生意気なのに、ミシェルの言う事には素直に従っている。
同姓特有の親しさもあるのだろう。
距離も近いし。
そう考えていると、メイが僕に視線を戻した。
「何でここにって話だっけ?ここのサンドウィッチが美味しいって聞いてたから」
「そうなんだ……未来でも繁盛してるのかな?」
後半は小声で。
メイが未来人だなんて、周りに聞かれたら僕が異常者扱いされちゃうからね。
「ううん、売上不振で潰れてるよ」
だというのに、メイは隠さずにそんな事を言う。
ギョッとして周りを見渡したけど、聞いてた人は居なさそうだ。
そんな僕とは対照的に、ミシェルは少しショックを受けているようだ。
「ここの生クリームサンド、美味しいのに」
「なら、ミシェルが買い支えなきゃね。SNSにレビューでも投稿したら良いんじゃない?」
「SNS?やってない」
「え、あー……確かに。やってなさそー。ピーターは?」
急に話題を振られた。
「え?僕?僕は……やってないけど」
「二人とも本当に現代人?」
未来人には言われたくないよ。
そう思いつつ、僕はBLTサンドを口に運んだ。
いつも通りの味に、僕は笑みを浮かべた。
BND観た?
BND観ました。
BNDよかったです。
BND観ましょう。