【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話   作:WhatSoon

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#15 インサニティ・アイズ part3

時間は21時を過ぎた。

空は暗い。

 

今日は雲が分厚くて、月も見えていない。

 

僕はコナーズ先生……いや、リザードの発見報告があった地区へと向かっていた。

 

そこは……オズコープ社の近くだ。

 

 

ビルからビルへスイングして、夜のニューヨークを駆ける。

 

空を切る音と、冷たい夜風が身を打つ。

 

 

やがて、オズコープ社が目に見えてくる。

大きなビルだ。

周りのビルとは一線を画す程に大きなビルだ。

 

 

 

……きっと、リザードの目的地はここだ。

 

僕はオズコープ社の壁を這うように走り、屋上で身構える。

 

 

リザードは、この周辺で発見された。

警官達を気にしないほど、何かに夢中なように走っていた。

 

その先はここ、オズコープ社ビルのある方角だった。

 

 

 

「……来た」

 

 

僕は屋根伝いに走り、飛び移るリザードを見つけた。

 

僕はビルから飛び降りて、(ウェブ)で途中の勢いを殺し、リザードの前に着地した。

 

 

……うっ、足が痺れる。

スタークさんのよくやっているポーズ、あれってちゃんと片手で地面に着いて衝撃を殺しているんだな……。

 

 

驚いたようにリザードが声を上げて、僕を睨みつける。

 

 

『スパイダーマン……邪魔をスる気カ?』

 

 

学校で見かけた時よりも声も、姿も人間離れしていた。

体格も2mを超して……大きくなっている。

 

……強化薬の投薬量を増やしたのか。

人間から遠ざかっている。

 

 

「何をする気か知らないけどさ、それはきっと叶わないよ」

 

『何故ダ?』

 

「僕が止めるからだよ」

 

 

(ウェブ)を放ち、右腕を掴んだ。

 

そのまま引っ張り寄せようとして。

 

 

『ウガァッ』

 

「えっ」

 

 

僕が引っ張られた。

 

ドカン!

 

と、強い打撃音がして僕は地面に叩きつけられた。

 

想像以上に力が強くなっている!

 

 

「このっ!」

 

『無駄、ダぁッ!!』

 

 

またリザードが(ウェブ)を引っ張り、僕は宙へ浮いた。

 

そのまま腕を回し、糸を巻きつけ、僕を真正面へと引き寄せる!

 

 

『ギャはハ!デスマッチとイこうじゃナイかッ』

 

 

至近距離で放たれたリザードの拳を僕は間一髪で避けた。

 

危ない!

今のは超感覚(スパイダーセンス)が無ければ避けられなかった。

僕は回避から即座に回し蹴りを放ち、リザードの顔に叩き込む。

 

 

『ハエでもトマったかァ?』

 

 

まるで無傷だ。

 

 

『シャッ!シャアッ!シャアアッ!!』

 

 

右ストレート、左フック、足払い。

 

全てを避けてカウンター気味に拳を、足を叩き込む。

 

元からタフだと思ってたけど、全然効いてないじゃないか!

 

 

『ちょこ、マ、カ、とォ!』

 

 

怒り狂ったリザードが右手を大きく振り上げる。

 

 

「わあっ!?」

 

 

体長2mもある巨体が、僕と短くつながっている紐を持ち上げればどうなる?

 

答えは簡単だ。

 

右腕を吊られ、僕は足が地面から離れてしまった。

 

 

『サンド、バッグにシテやるッ!』

 

 

左手の拳が握り込められて……。

 

 

突如、白い凍気がリザードの背中に降りかかった。

 

 

『ギャアッ!?』

 

「くらえっ、トカゲ男め!」

 

 

そう言って、そこに立っていたのは。

 

ジョージさん!?

 

右手に持っているホースから、白い冷たい空気が出ている。

背後にあるボンベは……液体窒素か!

 

 

僕はリザードが怯んだ隙に(ウェブ)を断ち切り、ジョージさんの方へ向かう。

 

 

「ジョ……」

 

 

あぁ、ダメだ。

スパイダーは彼の名前を知らない。

 

 

「警官さん、それは……」

 

「あぁ?スパイダーマン、こいつは液体窒素だ」

 

 

いや、そりゃ見れば分かるよ!

だってボンベに「液体窒素」って書いてあるじゃないか!

 

僕が聞きたいのは、

 

 

「何故、こんな危ない事を……」

 

「街を守るのは警察官の仕事だろうが、危ないも糞もねぇよ!」

 

 

液体窒素を掛けられて身動きが鈍っていたリザードが、鋭い目つきでコチラを睨んだ。

 

 

「話は後だ!こいつで俺が弱らせるから、お前が拘束しろ!」

 

「分かりました!ジ、警官さん!」

 

 

僕はジョージさんを守るように飛び出して、リザードの左腕に巻き付ける。

 

 

『馬鹿メ!同じ過チを繰り返ス、なド!』

 

 

そう言ってリザードが(ウェブ)を引っ張ろうとした瞬間、僕はリザードの大きく空いた股ぐらに目がけて滑り込んだ。

そのまま背後を取りつつ、(ウェブ)を切って、リザードの右足へ巻きつけた。

 

 

『う、ォオ!?』

 

 

そのままバランスを崩して、リザードが転倒する。

 

 

 

「今です!警官さん!」

 

「おっし、任せとけ!」

 

 

ジョージさんが液体窒素をリザードへと吹き掛ける。

 

 

『ギャ、グ、ウォ』

 

 

そうだ。

リザードは爬虫類の体だから温度の変化に弱いんだ!

 

そのまま左半身が凍結して……。

 

 

突如、僕の超感覚(スパイダーセンス)が警戒を強く示した。

 

 

「ジョージさん!危なっ」

 

『グオオオオォォ!!!』

 

 

突如、リザードが凍結していた左腕をもぎ取り、立ち上がった。

 

 

「なっ」

 

 

僕は咄嗟にジョージさんを庇おうとして飛び掛かった。

 

 

『邪魔だァ!』

 

 

右腕が僕の顔に命中し、地面に叩きつけられる。

 

 

『グ、ォオ!』

 

 

ずるり。

 

と音がして、砕けた左腕が生えてくる。

 

再生能力!?

 

いや、僕はこの能力を初めて見た訳じゃない!

学校で、変身した瞬間に見たじゃないか!

失った腕が再生していた所を!

 

 

尻尾で薙ぎ払われて、ジョージさんが吹っ飛ばされる。

そのまま貯水タンクに衝突して、気を失った。

 

 

『殺ス!』

 

 

まずい!

僕は体を起こそうとして、足元から崩れた。

 

ダメだ!

さっきの衝撃で脳が揺れてる!

平衡感覚がない!

 

だけど!

動け、僕の身体!

 

 

凍結された足元が滑って、僕は無様に転げた。

 

 

「やめ、ろ!コナーズ!」

 

『コイツを殺シたら、次はオマエだ!スパ

 

『そこまでだ』

 

 

突如、炸裂音が響いた。

 

それは……ただの発砲音にしては大きすぎた。

 

……ショットガン?

 

無数の穴がリザードの身体に出来ていた。

傷付けられたリザードの身体から、緑色の血が流れている。

 

 

『ギャアアアッ!?』

 

『どうやら再生力はあるようだが、痛みがないと言う訳ではないらしいな』

 

 

その機械音声のような声に、僕は聞き覚えがあった。

無意識に右手で脇腹を押さえた。

 

この傷を付けた赤いマスクの男が、そこに立っていた。





今後登場して欲しいヴィランは?

  • グリーン・ゴブリン
  • ヴェノム
  • ミステリオ
  • エレクトロ
  • ドクオク(オットー・オクタビアス)
  • ヴァルチャー
  • その他

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