【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話   作:WhatSoon

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#51 アーマー・ウォーズ part2

目の前にアイアンマン……スタークさんがいる。

僕はその事実を理解出来ずに居て……だけど、これは現実で……。

 

ウィップラッシュが嘲笑いながら口を開いた。

 

 

『フン、真打ち登場と──

 

 

最後まで言葉は喋られなかった。

青白い光に吹っ飛ばされたからだ。

 

アイアンマンは両手をウィップラッシュへと向けていた。

 

 

『リパルサーレイ』。

アイアンマンが両手に装備している光学兵器だ。

光をエネルギーとして発射する装置で、これを使用する事で飛行している。

 

そして、それは敵へ向けた場合……強力なエネルギー武器となる。

 

 

リパルサーレイが直撃したウィップラッシュは吹き飛ばされて、ビル中央の空洞へと落下する。

咄嗟に鞭を放ち、ぶら下がり……落下を免れたようだ。

 

 

『スターク……!』

 

 

チタニウムマンが怒りを隠さず、声を荒らげる。

僕に乗せている足にも力が篭る。

 

 

「うっ」

 

 

思わず、声が出てしまった。

 

アイアンマンが、一歩近付いた。

 

 

『その汚い足を退けろ、マスカットくん』

 

『我が祖国の為に……!』

 

『聞こえなかったか?退けろ、と言ったんだ』

 

 

リパルサーレイが再度、光を放ち……チタニウムマンを数歩、後退させた。

 

 

『ぬぐぅっ!?』

 

 

吹き飛ばなかったのは、フィジカルがウィップラッシュよりも強いからか。

とにかく、その隙にチタニウムマンから逃れ、僕は壁へと凭れ掛かった。

 

……加勢しようと思ったけど、ダメだ。

力が入らない。

 

アイアンマン……スタークさんが僕を一瞥する。

……幻滅、されちゃった……かな。

 

 

『我が、名誉のためにィ!』

 

 

怒声を上げて、チタニウムマンがアイアンマンへ突進する。

氷結糸(アイスウェブ)の効果も切れたみたいで、ジェットを全力で燃やして突進している。

 

 

『接近戦なら勝てると思っているのか?おめでたい奴だな』

 

 

アイアンマンが片手で受け流し、リパルサーレイを起動する。

それは、チタニウムマンに命中しなかったが……目的は当てる事ではなかった。

 

リパルサーレイによって推力が発生した右手をそのまま回し、身体を回転させて回し蹴りを放ったのだ。

 

 

『うぐっ!?』

 

 

アーマー同士が衝突して、鈍く、重い打撃音が聞こえる。

 

互いのアーマーに傷はない。

だが、内部に存在する生身へのダメージはあったようだ。

 

アイアンマンが左手を突き出し、チタニウムマンの顔を殴る。

そのまま手を開いて、よろけているチタニウムマンへの追撃としてリパルサーレイを放った。

 

 

『ぐあっ!?』

 

 

吹き飛ばされたチタニウムマンが転がり、ビル中央の空洞にかかる通路へと倒れた。

 

 

アイアンマンが両手を地面に向けて、リパルサーレイを射出する。

足の踏み込みと併せて飛行し、チタニウムマンを追撃すべく追いかけた。

 

そして、両手を交差して地面へ向け……両腕の甲から赤いビームを放ち、床を切断した。

切断された断面は赤熱し、溶解している。

 

 

200ペタワットの『レーザーカッター』だ。

恐らく、チタニウムマンの装甲も易々切り裂ける程の熱量があるけど……あえて、当てずに床を切断するに留めたんだ。

直撃させれば死亡するから、だろう。

 

 

『コンクリートのベッドで寝ていると良い』

 

 

そして、アイアンマンが両腕のカートリッジを排出した。

 

切断された空中通路と共に、チタニウムマンが落下する。

 

 

『うおあぁぁ!?』

 

 

チタニウムマンは……叫び声を上げながら墜落した。

砂埃が晴れると、瓦礫に埋もれ微動だにしない姿があった。

 

恐らく、意識を失っているのだろう。

 

 

「やっぱり、凄い、や……」

 

 

思わず感嘆の声が漏れる。

僕が手こずった敵を、ほんの一瞬で無力化したのだ。

 

 

その瞬間、鞭が僕たちのいる階層の天井付近で巻き付き、鈍色のアーマーが飛び上がり……着地した。

 

ウィップラッシュだ。

 

 

『トニー・スターク、覚えているか……?貴様の兵器によって俺の──

 

『さぁね、覚えてない。しみったれた昔話なんて聞きたくもないね。それに──

 

 

アイアンマンが左手の掌をウィップラッシュへと向けた。

 

 

『重要なのは過去じゃなくて現在(いま)、君がテロリストとして僕の部下を殺そうとしていたって事だ』

 

『……お前は、そういう奴だったな。スターク。傲慢を絵に描いたような男だ』

 

 

ウィップラッシュが鞭を回転させる。

片方の鞭が飛び出して、アイアンマンの腕を絡め取った。

 

電流が流れるが……アイアンマンにダメージはないようで、怯む様子はない。

 

 

『傲慢じゃない。これは自信だ。事実、僕は君よりも優れている』

 

『ほざくな!』

 

 

鞭が宙を引き裂き、アイアンマンの頭に命中した。

 

そして……首が宙に飛んだ。

 

 

「ス、スタークさん!?」

 

『ハッ!呆気な──

 

 

ウィップラッシュが勝利を誇ろうとし……アイアンマンの頭部、マスクが空っぽである事に気づいた。

 

 

『な……!?』

 

『言ったろ?僕は君よりも優れているってね』

 

 

首のなくなったアイアンマンが、鞭に縛られていない方の腕で宙に浮いている鞭を掴んだ。

 

ウィップラッシュの左右の鞭が、アイアンマンの左右の腕によって掴まれていた。

 

 

『馬鹿な!?』

 

 

理解出来ない様子で、ウィップラッシュが喚く。

 

 

『さて、お勉強の時間だ』

 

 

アイアンマンはそのまま両腕を回し、鞭を絡め取って、ウィップラッシュへ近付いて行く。

慌てて、電流を流し続けるも、ダメージは無い。

 

逃れようにも、鞭が巻き取られていて離れる事は出来ない。

少しずつ、確実に近付いて行く。

 

 

『こういう武器は、腕から切り離せるようにした方がいい。復習は刑務所でするんだな』

 

『く、くそっ!』

 

 

接近してきたアイアンマンを、ウィップラッシュが蹴った。

……だけど、彼より力の強いチタニウムマンですらダメージを与えられなかった。

彼では、アイアンマンにダメージが入る訳もない。

 

アイアンマンの胸にあるアーク・リアクターが強く光り始める。

 

 

『そして、君の戦闘パターンも見切った』

 

 

光が収束し、飽和する。

 

 

『やめっ──

 

 

アーク・リアクターから閃光が放たれた。

高出力のエネルギーがウィップラッシュを吹き飛ばし、鞭を引きちぎり、壁へと衝突させた。

 

 

『ユニ・ビーム』

半永久発電機関、アーク・リアクターのエネルギーを直接発射するアイアンマンの切り札だ。

全力で撃てば、間違いなく敵を殺してしまうが──

 

 

『大変なんだぞ?君が気絶で済むように、出力を調整するのは』

 

 

これも、手加減していたようだ。

 

首のないアイアンマンが、落ちていた頭を手に取り、くっ付けた。

 

一瞬で決着が付いた事に驚きつつ……僕は身体を引き摺って近付く。

 

 

「ス、スタークさん……」

 

『あぁ……ピーター、大丈夫か?』

 

「大丈夫、です……」

 

 

本当は、まだ身体も痺れているけど……。

 

 

「その、ごめんなさい……」

 

『……は?何を謝ってるんだ?オイオイ待て、僕は君のパワハラ上司じゃない筈だ』

 

 

中身は空っぽのアイアンマンに、乱暴に頭を撫でられた。

 

 

「でも……その、助けが無かったら、僕は」

 

『それは僕も同じだ、ピーター。君がいなかったら、僕の会社の従業員は死んでいた。明日には謝罪会見をしていたさ』

 

「だけど……」

 

『ピーター、謙虚は美徳だが……素直に褒められてると良い。だから、何だ?その──

 

 

少し、気恥ずかしそうな素振りを見せて。

 

 

『助かったよ、ピーター』

 

「あ……」

 

 

思わず、涙が出そうになった。

僕のやった事は、覚悟は……無駄じゃないと教えてくれたから。

 

 

『いや、よく持ち堪えてくれた。僕が……あぁいや、僕はまだ病院にいるけど……そう、僕のアーマーが来るまで。よく頑張ったな』

 

「……はい」

 

 

やっぱりこれ、遠隔操作なんだ。

僕は納得した。

 

聞いた事がある。

『スターク・インダストリー』の所有する人工衛星……そこを経由する事で、どんな場所からでもスーツを操作出来るって聞いた。

 

……誰からって?

スタークさん本人が自慢していた。

 

 

「あ、でも、急がないと……ここ以外にも、襲撃されてるって……」

 

『それは大丈夫だ、心配する必要はない』

 

「大丈夫……?」

 

『そうとも、僕の最も信頼している友達を連れて来たからね。所要時間5時間以上、僕と空の旅を同行した……生真面目なお人好しさ』

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

私は宙を舞い、触手を壁に突き刺して移動する。

 

ミシェルを傷付けたドローンは、一体だけではない。

まだ街に複数体いる。

 

街を駆けながら、一体、また一体と破壊していく。

 

全部倒して……ミシェルを病院に連れていく。

 

 

……私はフューリーから戦う事を許可されていない。

まだ未熟だから、子供だから……責任が取れないから。

 

だけど。

 

ミシェルは私の前で震えていた。

怯えていた。

それなのに、私を助けようとしていた……。

 

だから、私は戦う事に決めた。

後で、きっとフューリーに怒られるけど……いや、怒られる程度で済めば良いぐらいだけど。

 

私は壁を蹴り、舞い上がる。

 

この姿……黒いスーツ姿は結合レベルを引き上げた姿だ。

身体能力が数倍に跳ね上がるが、リスクもある。

 

『シンビオート』と深く結合し過ぎると人格が引っ張られてしまう。

もし、その状態で暴走すれば……自力で戻る事は叶わない。

 

だから、『S.H.I.E.L.D.』から1時間のタイムリミットを設けられている。

1時間だけだ。

 

それ以上を過ぎれば、『エージェント・グウェノム』への射殺命令が出る。

 

だから、それだけは絶対に避けなければならない。

 

 

ドローンが子供を追いかけている所を目撃する。

 

私はアイススケートのように宙を回転して、回し蹴りを叩き込んだ。

 

 

よし、次は──

 

 

『そこまでだ』

 

 

声と共に、大きな何かが私に衝突した。

強烈な衝撃に、一瞬意識が飛びそうになり……何とか耐える。

 

木製のドアを壊し、私は店へ転がり込んだ。

店内に飾られていたグラスが落下し、砕け散った。

 

『グウェノム』が震えて、怒りを表している。

自然と唸り声が上がる。

 

 

即座に立ち上がって、元いた場所を見る。

 

……そこには、緑色のドローンとは見た目が異なる、赤いアーマーの姿があった。

 

体長は恐らく、2メートルを超えている。

そして、上半身の装甲が厚く、両腕も大きい。

逆三角形のシルエットをしている。

胸には青白く光る星形のリアクター。

 

……ドローンとは違う、明らかな強敵。

 

 

『……アンタが事件(コレ)の首謀者?』

 

 

私は訊きながら、ドアを蹴飛ばした。

 

宙を飛んだドアは、その赤いアーマーに弾かれてしまった。

 

 

『驚いたな、畜生の類いかと思ったが……まさか人間だったとは』

 

 

私は一歩ずつ、あの赤いアーマーへと近付く。

 

 

『そして、先程の質問にYESとは答えられないが……そうだな、部分的にはそうとも言えるな』

 

『馬鹿にしてんの……!?』

 

 

他人事のような言葉に、私の脳は沸騰寸前になる。

アドレナリンが分泌されて、シンビオートの活動が活発になっていく。

 

 

『……ブッ殺す』

 

 

舌から直接生えた牙が逆立ち、爪が鋭く鋭利になる。

 

今すぐ、コイツをバラバラに引き裂いてやる……!

 

肌がピリピリする。

『グウェノム』も興奮しているのが分かる。

 

……ママ、アイツ、嫌い?

えぇ、嫌いよ。

 

脳裏でグウェノムと会話する。

 

 

『私は『クリムゾン・ダイナモ』。名乗っておこう……黄泉の国への駄賃代わりだ。大義の為、恨んでくれるなよ?』

 

 

クリムゾン・ダイナモの両腕が金色に光る。

バチバリという空気を引き裂く音がして、放電し始める。

 

……当たったら死ぬかも知れない。

だけど、そんなのもう関係ない。

 

恐怖はない。

怒りと殺意が、脳を侵食する。

 

 

『何も知らない人を巻き込んで……傷付けて……そんな!お前が……!大義を語るな……!』

 

 

シンビオートはアドレナリンを……怒りを食らって強くなる。

 

私は今、怒っている。

今までの人生で、最も怒ってると言っていい。

 

『グウェノム』が私の怒りを食って、脈打つ。

 

力が溢れる。

私は、全能感に支配される。

 

私は一歩、踏み出そうとして──

 

 

視界の隅、空の上で……黒い飛行物体が見えた。

……その飛行物体は人型だ。

 

黒い、アーマー。

 

 

増援?

敵?

 

 

そのアーマーの肩部が開かれて、小さなペンのようなものがばら撒かれる。

それは小さな火を吐いて、空中で射出された。

……小型(マイクロ)ミサイルだ。

 

空中から地上に降り注ぎ……私から離れた位置で爆発した。

 

……それは、ドローンが居た位置だ。

私が確認していた奴らの位置と、全く同じ場所だ。

 

 

『何だと……?』

 

 

クリムゾン・ダイナモが気付き、顔を空へ向けた。

 

その瞬間、黒いアーマースーツが急降下して、クリムゾン・ダイナモに接近した。

 

黒いアーマーは……アイアンマンのような容姿だった。

だけど、違うのは……肩にガトリングガンやミサイルポッドを装備し、腕にも銃火器を装備している事だ。

 

黒いアイアンマンは背部の取っ手を引き抜く。

それは警棒のような形状で……縦にスライドして内部が露出し、シャフトが伸びた。

 

警棒の内部から、黄色いスパークが漏れる。

 

空中から地上へ落下し、そのまま警棒をクリムゾン・ダイナモへ叩き付けた。

 

 

『ぬぅっ!?』

 

 

バリバリと音を立てて、装甲を焦がす。

 

慌てたクリムゾン・ダイナモがスパークさせた腕を振るい、引き剥がした。

警棒を投げ捨てて、黒いアイアンマンが後退する。

 

 

『邪魔をするか……『ウォーマシン』め!』

 

 

黒いアイアンマン……ウォーマシンと呼ばれたアーマーが、地面に着地した。

地面が揺れて、その重量を私は感じ取った。

 

そして……マスクから男性の声が聞こえた。

 

 

『私は空軍大佐のジェイムス・ルバート・ローズだ。……君たちは何者だ?そして──

 

 

両腕を上げて、銃火器を展開する。

銃身がスライドして、標的へと向いた。

 

 

『君達は私の、そして市民の敵か?ハッキリと明確に答えてくれたまえ……この突撃銃(アサルトライフル)で蜂の巣にされたくなければ、な』

 

 

その両腕に装備された銃火器は……。

クリムゾン・ダイナモと……私にも向いていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「お、これヤバいんじゃね?」

 

 

俺ちゃんは好物のチミチャンガを食べる。

高速道路の高架橋の端で、双眼鏡を覗き込んだ。

 

視線の先には……今回の目標(ターゲット)

 

……そんで、振り返ればダッセェ、緑色のハマー製ロボットが転がってる。

 

双眼鏡を脇に挟んで、腕のスーツを捲る。

ドロドロに溶けてグチャグチャになった皮膚に……ハローな子猫ちゃんの女児向け腕時計が巻かれてる。

 

時間を見れば……。

 

 

「42分ね、まぁまぁな時間。配信ドラマシリーズの1話分ぐらいだな」

 

 

ハマーポンコツ超合金から刀を抜き取り、背中に差す。

首をボキボキと鳴らして、双眼鏡を投げ捨てる。

 

ガシャン!

って良い音がして砕け散る。

 

 

「うっし……あんま気が乗らないけど、俺ちゃんもそろそろ仕事の時間かな。そろそろ良い所見せないと怒られちゃうし」

 

 

高架橋を飛び降りて、走るトラックへと着地した。

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