【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話 作:WhatSoon
痛ぅ……。
傷口がジクジクと痛む。
腹に空いた弾痕から血が流れる。
身体が冷えてくる。
意識も朦朧としてくる。
血溜まりが床に出来ている。
幾ら超人血清で身体強化されてると言えども、流石にこれ以上の放置はまずいか。
失血死は免れないだろう。
私は手に金属製の定規を取り、傷口に差し込む。
激痛。
まるで火に焼かれたような熱さを錯覚する。
私は傷口を穿り、銃弾を排出する。
……想像通り、ドローンの発射した弾丸は規格外の大きさだ。
恐らく、7.62ミリより大きい。
ハマーの独自規格か?
独自規格の弾丸なんて、誰が好むと言うのか。
「ふ、ふぅ、ひさびさに、やった……」
だが、もう二度とやりたくない。
私は
口に溜まった血を吐き出し、具合を確かめる。
……よし、万全だ。
失った体力は戻らないが、肉体の損傷はない。
そして、私は倒れているドローンに近付く。
周りを見ても人は居ない。
バレる事もない。
素手でドローンの腕部を掴み、無理矢理開く。
メキメキと金属が曲がる音が聞こえ、留め具が外れる。
……機関砲の内部が露出する。
中から一発、弾丸を取り出して手に持つ。
手の中で転がしながら、元いた場所に戻って座り込んだ。
私は自身の着ている服を触る。
……ボロボロだ。
撃たれて、地面を擦って、流血して……。
もはや血みどろのボロ切れみたいな状態だ。
……折角、グウェンに揃えてもらった服なのに。
悲しみよりも怒りが勝ち、ドローンを睨む。
どうして、こんな状況になっているかは知らないが……首謀者を殺せと言われたら、喜んで殺すだろう。
弾丸を逆さに持ち、元々撃たれていた部分へ押し当てる。
「よし……」
深く呼吸し……覚悟を決める。
定規を弾丸の尻……薬莢へと当てる。
そして。
拳で、強く叩いた。
雷管へ衝撃が走り、火薬が発火する。
破裂音がして、弾頭が射出された。
私の骨、内臓を押し退けて、体内に侵入する。
再び、流血する。
「いっ……」
側から見れば、狂人の所業だ。
態々、自己治癒を行ったのに再度体に穴を空けるなんて。
だが、今回の弾丸は重要な内臓へのダメージを与えていない。
筋肉で意識的に抑え込み、弾も浅い位置で止まっている。
グウェンは専門家ではないし、医者でもない。
私が「撃たれた」と言う認識はあるだろうが、どれほど重症だったかも分からないだろう。
前の傷は「当たりどころが悪く死に至る重傷」だ。
今の傷は「偶々当たりどころが良かったので軽傷」だ。
これなら、二日ぐらい放置しても死なない。
私は体を横倒し、空の薬莢を投げ捨てた。
砕けた定規を足で蹴る。
……これで一安心だ。
グウェンが戻って来ても、不審がられる事もない。
……後は。
グウェンが無事で居てくれれば……それで良い。
意識が朦朧としてくる。
弾丸によるダメージ。
度重なる失血。
そして、安堵からの気の緩み。
それらによって、私は意識を失った。
◇◆◇
一瞬の硬直状態。
ウォーマシンと呼ばれた黒いアイアンマンが……私と、クリムゾン・ダイナモに銃口を向けている。
私は弁明しようと思って口を──
『舐めるな!この程度では怯まぬっ!』
クリムゾン・ダイナモが両腕を光らせて、ウォーマシンへ突進した。
青白いスパークが掌から発生している。
『……そうか。ではまず、お前から対処しよう』
ウォーマシンの脚部装甲が展開し、ジェットを噴射した。
そのまま後ろに飛行しつつ、背中のガトリング・キャノンが前に迫り出した。
まずっ──
私は咄嗟に、背後の店内へ飛び込んだ。
砲身が高速で回転する。
モーターの稼働音が鳴り響く。
直後、まるで空気を引き裂く稲妻のような轟音がした。
それは、ガトリングガン・キャノンの連続した発砲音だ。
クリムゾン・ダイナモに命中し、跳弾する。
辺りのガラスが割れて、ベンチに反射された弾丸が穴を空けた。
弾丸が弾けて、周りに散らばる。
金属同士がぶつかり、火花が散る。
『ぬ、う、この程度!屁でもないわ!』
装甲に銃弾の痕を付けつつ、そのままクリムゾン・ダイナモはウォーマシンへ走って行く。
最早これは個人同士での戦いではない。
まるで、戦場のような光景だ。
『果たしてそうか?』
ウォーマシンが一歩後退し、掌を突き出す。
その掌から光が発射され、クリムゾン・ダイナモを押し返した。
距離が離れた瞬間、両腕を突き出し、
鈍い、金属の弾ける音がした。
ガトリング・キャノンによってダメージが蓄積された部位を狙い、弾丸が何度も命中する。
直後、クリムゾン・ダイナモの右肩が弾けて、右手の光が消失した。
『損傷が……!?』
焦ったクリムゾン・ダイナモにウォーマシンが接近し、右腕を胸に叩きつけた。
鈍い金属の衝突音が響き、クリムゾン・ダイナモが押される。
脚部の装甲が地面を抉り、後ろに滑った。
だが、ダメージがあるようには見えない。
『功を焦ったか!』
クリムゾン・ダイナモが無事だった方の左手を振り上げ──
『違うな』
ウォーマシンの右腕、そこにある黒い謎の外付け装置が……火を噴き、薬莢を弾き飛ばした。
それと同時に装置の中心にあった金属の杭が飛び出し、クリムゾン・ダイナモの胸に突き刺さった。
『な、なにっ!?』
『
クリムゾン・ダイナモの胸に穴が空く。
その瞬間、目に相当する頭部センサーから光が消えた。
腕の光も消失し、起動を停止して倒れた。
胸部のリアクターを破壊したため、エネルギーの供給源が無くなったのだ。
そのまま寝ているクリムゾン・ダイナモに向けて、腰から幾つかの小さな円板を取り出し、貼り付けた。
すると、青いスパークが発生し、アーマーを地面に縫い付けた。
……何かは分からないが、恐らく拘束具なのだろうと思った。
『さて──
ウォーマシンが、こちらへ腕部の
『君は敵か?それとも、味方か?どちらなんだ』
勿論、私は──
こいつ、ママに武器を向けてる。
脳裏で言葉が聞こえた。
……まずい、癇癪を起こしている。
敵意を感じ取って『グウェノム』が震えた。
『違う、ダメ……』
『違う?ダメだって?どっちなんだ』
ウォーマシンが一歩、こちらへ近付く。
ママが怖がってる。
コイツはいなくなった方がいい。
私は焦る。
ここで争えば……間違いなく、私も、この子も死んでしまう。
『抑えて……』
『抑えろだって?君は何を──
私の、全身の肌が……シンビオートのスーツが逆立った。
爪はより鋭く、舌から唾液が流れる。
より、シンビオート本来の姿に近付く。
結合レベルが、飛躍的に上昇する。
『……何のつもりだ』
ウォーマシンが警戒し、一歩引く。
右手の
左手の
ガトリングガンも展開し、動けば即座に撃つと警告されている。
思考が微睡む。
怒りと凶暴性のみが残る。
……『
「はぁい、そこまで」
グサリ、と何かを背後から刺された。
思考が一気に覚醒した。
私は首を捻り、後ろを見た。
それは……注射器だ。
でも病院で見るようなタイプではない。
銃器のような形状で、カートリッジを入れて使うタイプの武器のような注射器だ。
そんな注射器を……赤と黒のスーツ男が持っていた。
『グウェノム』が一気に沈静化される。
シンビオートの力が収まり、スーツが溶け出す。
私の素顔が露出される。
「げほっ、ごほっ……」
思わず、私は咳き込んだ。
『子供……?女……?』
ウォーマシンが銃火器を下げたのが見えた。
私は足が動かなくなり、その場で尻餅を搗いた。
『グウェノム』は……眠っている。
死んでいるわけではない。
安堵して、ため息を吐いた。
『オイ、デッドプール!どういう事だ、説明しろ』
「ビタミンC」
『何?』
「シンビオートはビタミンCを大量に取り込むと休眠状態になる。変な設定だよな、俺ちゃんもそう思う」
「う、ぁ……」
口を開こうとして……気分が異常に悪い事に気付いた。
意識も朦朧とするし、吐き気もある。
「シンビオートと高レベルで結合すると、強制解除された時にそうなる。シンビオートに任せていた体の部分が急に離れる訳だからな。これ体験者からのレビューって事で」
『デッドプール、何を言っている!?』
「あー、はいはい。ローディちゃん、見て分かる通り、このヤンチャガールは敵じゃあないんだって。ほら、その物騒な武器を早くしまえ。公然猥褻罪で逮捕されるぞ!」
『気安く渾名で呼ぶな!そして説明が全く足りん!……全くお前はいつもそうだ!あの時も──
「あ、の……」
口論を始めた二人に、私は恐る恐る割り込んだ。
「あっちに、友達が……撃たれてて……病院に……早く……う、おぇっ」
話してる途中に気持ち悪くなって、地面へ蹲り……吐いてしまった。
ツン、と酸味の強い臭いが鼻にくる。
「ヤベ、俺ちゃんも貰いゲロしちゃいそう……ちょっと、目を逸らしてても良い?オェエッ!あ、もう大丈夫」
『既に救援要請は出しているが……分かった。そちらを優先しよう。どの辺りだ?』
ウォーマシンが膝をつき、私と目線を合わせた。
もう、敵対する意志は無いようだ。
私はホットパンツにしまっていた、グシャグシャになったドルフィンモールのパンフレットを取り出し……先程までいた場所を指差した。
『分かった。君は休んでると良い。後で話がある。……デッドプール、お前もだ!まだ話があるからな!この場から離れるなよ!』
「うへぇ……」
マスクの上からでも分かるほど、嫌そうな顔をしている。
ウォーマシンが両手を地面に向け、光を放った。
そのまま飛行し、ミシェルのいた場所へ向かって飛んで行った。
……ミシェルに関しては、一安心だ。
そして。
デッドプールと呼ばれた男が、腕時計を見ていた。
……女児向けのマスコットキャラクターが描かれた玩具みたいな腕時計だ。
「57分」
「……え?」
デッドプールが時間を読み上げた。
「シンビオートとの結合レベル上昇からの時間。危なかったな。危うく射殺される所だったんだぜ?感謝しろよ〜?このオレサマに」
それは『S.H.I.E.L.D.』に決められている結合時間の上限の話だ。
「貴方……もしかして、フューリーの……」
「あー、違う違う!あっちの堅物じゃなくて、別の堅物に雇われたの!カッチカチの堅物」
「別……?」
「そ、どっちかと言うと敵対してる奴。俺もフューリー嫌いだし」
私は血の気が引いた。
『グウェノム』は動かない。
デッドプールに注射された薬剤のせいだ。
私も体調不良で上手く動けない。
もし、彼が、敵対する組織のメンバーなら──
「アレ?もしかして、勘違いされちゃってる?待て待て待て待て、俺ちゃんが女子供殺すように見える?」
正直に言うと。
「見え……るけど?」
「ハァ!?嘘だろ、どう見たってスーパーなヒーローじゃん!マジかよ!」
頭を抱えて、膝を抱えた。
イジけるような態度を取っている。
「俺ちゃん、女と子供……ましてや、女で子供なんて絶対殺さないようにしてんのに。何故だか分かるか?女子供代表」
少し、口調にイラつく。
そして、喋ることすらキツい状態の私にダル絡みをしてくる精神に、正気を疑った。
「それは読者人気がなくなるからだ。分かるか?ヒールでダークなヒーローっつうのは良い。だが、ガキをブチ殺せば読者からの人気はパーだ。どんだけデザインが良くてもな。人気がなくなれば出番が減る。気付けばエンサイクロペディアの片隅に3行ぐらいの説明文だけで存在を匂わされるキャラクターになっちまうんだぞ!そんなんじゃ映画には出れねぇし、アニメにもなんねぇ!出番も削られちまう。良いか?チヤホヤされたかったら女と子供は絶対殺すな!俺ちゃんとの約束だ!」
……どこを見てるか分からないが、途中で虚空に向かって話しかけていた。
正気を疑ったが……本当に正気を失っているとは思わなかった。
「つー訳で俺ちゃんは帰る。ドロン、おさらば」
「え……?」
さっき、ウォーマシンに「その場にいろ」って言われてた筈なのに。
全く無視して、落ちてた注射器を回収し、その場を後にした。
尻を掻きながら、走り去っていくデッドプールを、私は眺める事しか出来ない。
「え……えぇ……?」
その場には私と、拘束されているアーマー男しか残されていなかった。
◇◆◇
戦いは終わった。
スタークさん曰く、今回の騒動は『ハマー・インダストリー』によるネガティブキャンペーン……が要因の一つだが、それ以外にも様々な思惑が絡んでいたらしい。
この国を転覆させ、某国を蘇らせようとするカルト集団が居たらしく、それらが黒幕だったとか。
『スターク・インダストリー』はこの国を支える大企業だ。
そんな大企業にダメージを与えられれば、国家全体へ不況が発生する事は明らかだ。
だから、ハマーを唆して攻撃させたらしい。
『スターク・インダストリー』からアイアンマンスーツの情報を盗み出したのもソイツらだ。
実際にスタークさんが捕まえて、叩きのめしたとか。
名は『スパイマスター』……そのまま、安直な名前だ。
数日前は盗まれたスーツを着た奴らと戦っていたらしい。
多勢に無勢で、何とか勝ったがスタークさん自身もダメージを負ってしまったとか。
最終的に、マイアミでの事件が証拠となってジャスティン・ハマーは逮捕されたらしい。
一件落着だ。
とにかく、夏期旅行の最後はメチャクチャになったけど……。
僕はスタークさんと分かれて、ドルフィンモールへと戻った。
スーツを解除して、辺りを見る。
銃弾によって開けられた穴や、火で燃えた跡。
数時間前からは見る影もないほど、ボロボロになってしまっていた。
僕は、息を呑んだ。
頭のどこかで、僕の友達は大丈夫だって思い込んでいたらしい。
無意識のうちに、最悪な事態にはならないと……そう、目を逸らしていた。
現実に、この惨状を見せつけられると……心は不安で一杯になった。
グウェン、ネッド、ミシェル……。
名前を叫びたい欲求に駆られながらも、僕は救急隊が設立した救難テントへと向かった。
そこには幾人もの人が悲痛げな顔で仮設ベンチに座っていた。
僕はテントを回って、知っている顔を探す。
誰か……誰か居ないのか?
重症患者と、死者はテントに居ないらしい。
つまり、ここに居ないと言うことは……。
僕は勢い良くテントを捲って──
「うわぁお!?急に開けんな!」
驚いた声を出された。
テントの中にいたのは。
「ネッド!?無事だったの!?」
「おう、無事だ。なんか良く分からねぇけど……スパイダーマンみたいなマスクの奴に助けられた」
僕はそれを聞いて、爆笑している赤と黒のパンダみたいな奴を思い出した。
……ちょっと気分が悪くなったけど、まぁ、感謝はしておこう。
「でも、お前の方こそ大丈夫か?……随分、ボロボロだけど」
「え、あ、うん。まぁ、色々あったからね」
「……後で聞かせろよ?」
「うん……あ、でも、それよりも!グウェンとミシェルは!?無事なの!?」
僕はネッドの肩を揺する。
ネッドが慌てた様子で僕を宥める。
「ちょっ、落ち着けピーター!おまっ、お前ホント力が強ぇから!」
「あ、ごめん……」
「全く……」
ぱたぱたと服の皺を伸ばして、机に置いてある紙のリストを持った。
「それは?」
「近くの病院への入院者一覧だ。ほら、ここ」
グウェン・ステイシー
症状:軽症
吐き気、眩暈
「あ……」
僕はホッと胸を撫で下ろした。
どうやら、重症ではないらしい。
……そして、ミシェルの欄もあった。
死んでいなかった事に喜びながら、詳細を見る。
ミシェル・ジェーン
症状:重傷
出血多量、意識不明
「……え?」
僕はリストを地面に落とした。
プラスチック製の板が音を鳴らした。
「あ、おい!ピーター、落とすなよ」
「ちょっ、ネッド!何をそんなに冷静になってんの!?ミシェル、これ凄く大変な──
「あーもう、だから揺らすなって!」
そう言われて、また肩を掴んでいた事に気づいた。
「ご、ごめん」
「ヤバかったら俺もこんなに落ち着いてねぇよ!それは入院時の記録!」
ネッドがリストを指差した。
「今は目が覚めてるし、それほど大きな怪我じゃなかったって話だって。病院からも連絡が来たから」
「そ、そっか……」
僕は胸を撫で下ろした。
それでも、血を流してたって事は……大きな怪我をしていたのだろう。
思わず、シャツを強く握り締めた。
そんな僕の様子を見て、ネッドが口を開いた。
「……じゃあ、その入院してる病院まで行くぞ」
「う、うん……あれ?行って良いの?」
僕は首を傾げた。
だって……それなら、ネッドは何故テントの方に居たのか分からなくなる。
ネッドも心配で病院に様子を見に行っても、おかしくないのに。
「そんなの、お前を待ってたからに決まってるだろ!電話も寄越さないしよ」
「あぁ……ごめん。スマホ壊れちゃって」
ウィップラッシュのムチによって電撃が流され、スマホは故障していた。
……結構、ショックを受けている。
ネッドから借りるほど、お金を持ってないのに……。
またバイトの掛け持ちしなきゃ。
いや、スタークさんに言って……ダメだ。
そんな事で迷惑かけたくないし……うん。
結局、僕とネッドは救難テントから離れて、グウェンとミシェルが入院している病院へ向かった。
◇◆◇
スマホが鳴る。
「はぁい、こちらデップー」
『……そのふざけた態度は控えて貰いたい』
「開口一番からそれ?そうあんまりカッカしてると、身体が真っ赤になって巨大化しちゃっても知らないぜ」
『はぁ……まぁ、いい』
電話先から老人のため息が聞こえる。
『シンビオートの宿主はどうだった?コントロール出来ているのか?』
「そりゃもう……バッチグー。全然、まーったく、問題なし。水道から出てくる水よりも安心」
『……そうか、ニック・フューリーの失脚に繋がるかと思ったが』
「人の失敗見て揚げ足を取ってるようじゃダメだぜ?ロスお爺ちゃん」
『長官だ。国務長官に対して生意気な態度を取れるのは……お前ぐらいしか知らん。全く、人選ミスだったと言わざるを得ない』
俺ちゃんは眉をヒクつかせて怒ってる姿を幻視して失笑しちゃった。
「そんなに嫌だったら、アンタん所の……何?『サンダーボルツ』にでも頼めば良かったじゃん」
『お前には関係のない話だ。傭兵は傭兵らしく、黙って役割を果たせば良い』
おっと、煽り過ぎちゃったかな。
「ハイハイ、分っかりましたよ、と」
『所定の口座に金は入れておく。以降、この電話番号に電話しても無駄だ。回線も放棄する。他言した場合は──
「そりゃあ、もう。お口チャックしとくぜ」
『……チッ』
舌打ちと共に電話が切れた。
スマホを投げ捨てると……そのまま瓦礫に紛れて壊れた。
「最後にスパイディに挨拶したかったけど。ま、しゃーねーか」
俺ちゃんは止めておいた盗難車のドアを開けて、エンジンをかけた。
「あ、そう言えば……」
「ま、良いか。俺ちゃん関係ねぇし?」
え?俺ちゃんの出番コレで終了!?マジで?