【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話   作:WhatSoon

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#64 キル・ゼム・オール part3

デヴァイン大教会。

ニューヨーク市内にある大きな教会だ。

 

教会の外には数台の警察車両が止まっている。

それでも、車両の中には誰も居ないようだ。

無人の警察車両が、静かにランプだけを光らせている。

 

雨が降り頻る中、僕はそれを見ていた。

 

側にあるビルの四隅に立っているガーゴイル像の上に乗って。

 

 

『内部に熱源反応……生体反応あり』

 

 

マスクの中でAI(カレン)が報告してくる。

ジョージさんを殺した犯人が、この中に居るかも知れない。

 

スーツの胸から分離していたドローンが戻って来て、収納される。

 

足を踏み出して、僕はガーゴイル像から飛び降りた。

 

100メートル近い高さからのダイブだ。

背中から小型の(ウェブ)パラシュートを展開して、落下速度を減速する。

 

そのまま地面に手から落下し、前転して衝撃を逃す。

流石に、あの高さから落ちたら僕でも怪我をする。

 

教会内に入り、足音を立てないよう奥へ進む。

 

 

高そうな調度品を避けて、壁に貼り付いて奥へ、奥へと……。

 

……うっ。

 

どうして教会って、こうも尖ってる装飾が多いんだろう?

踏んだら痛そうだし、避けながらなるべく平らな場所を踏もう。

 

 

……血の臭いがする。

 

それも凄く、濃い臭いだ。

 

 

……う、わ。

 

 

警察官の死体が落ちている。

……一目で死んでると分かった。

 

だって、首から上がないから。

 

口の中が酸っぱくなる。

緊張と、吐き気で唾を飲んだ。

 

……ライカーズ刑務所から自力で脱出した、と言う話からクレタス・キャサディ死刑囚がまともな人間じゃないのは分かっていた。

だけど……こうも、首から上をまるで齧りとったような死体を見れば……恐ろしい化け物が奥には待っている気がして、少し怖い。

 

だけど、ジョージさんの仇だ。

 

……これ以上、被害者を出さない為にも僕は戦う。

息を大きく吸い込んで、意識を集中する。

 

……死体の血は黒く変色している。

空気に触れて、酸化したんだ。

 

殺されて時間が経っている。

そう、考えた。

 

この近くには居ないのだろう。

 

気配はない。

全くと言って良いほど、感じられない。

 

超感覚(スパイダーセンス)に少しも感じられない。

 

僕は一度、地面に降りて、死体を漁る。

……拳銃の中にある弾丸の数から、数発、犯人に撃ったのだと分かる。

 

争った形跡はある。

だけど、警官の服に傷はない。

 

……恐らく、最初の一撃で殺されたんだ。

それも、頭から上を……食べられた?

 

凄く大きな顎と、鋭い牙を持っているに違いない。

 

やっぱり、相手は人間じゃなくなっているのかも。

 

だけど、それこそ、そんな大きな怪物なら……超感覚(スパイダーセンス)に反応しても良いはずだ。

 

これは脅威に対して敏感に反応する。

隠れている敵だって、見つける事が──

 

 

……いや。

例外がある。

 

あの『ヴェノム』だ。

僕と結合していた時期がある所為で、僕の能力を解析されている。

ヤツには超感覚(スパイダーセンス)が反応しない。

 

でも、『ヴェノム』と結合しているのはエディ・ブロックって人の筈だ。

 

僕が追っているのは、キャサディだ。

 

いや、でも、そうか。

もしかして、キャサディも──

 

 

 

突然、真横の壁が崩れた。

聖母を模した装飾が砕けて、破片となって僕へと向かって来る。

 

 

「うわ!?」

 

 

そして、そのまま、壁の奥から赤い触手が伸びて来て──

 

超感覚(スパイダーセンス)に反応はない。

 

だけど、猛烈な寒気が僕の身体を襲った。

これは恐怖から来る危機感からだ。

 

心拍数が急激に上昇する。

 

 

咄嗟に(ウェブ)を伸ばして、距離を取ろうとする。

 

だけど、伸びて来る触手は一つ、二つなんて数じゃない。

 

幾つもの細い触手が、僕へと詰めてくる。

その先端は鉤爪のような形状で、黒く変色している。

 

それを無作為に振り回して、砕けた石壁の奥から埃を巻き上げて襲いかかってくる。

 

宙で錐揉みして、迫ってくる一本を蹴飛ばした。

 

だけど、他が避け切れない。

 

触手の先端にある鉤爪が、僕の身体を切り裂いた。

 

 

()っ!」

 

 

スーツが切り裂かれて、身体から血が出る。

ナノマシンが即座にスーツを修復して塞がる。

傷口も抑え込んで、応急処置を自動でしてくれる。

 

だけど、傷が無くなる訳じゃない。

 

痛みで顔を歪めながらも、必死に距離を取る。

幸い、傷は浅い。

 

皮膚の表面が裂けただけだ。

傷も二の腕と、太腿、横っ腹……傷は浅い。

 

距離を取れば、触手の射程限界が来たのか……その主が埃を掻き分け姿を現した。

 

まるで血のように赤い、ドロドロの皮膚を持った怪物だ。

乱雑に生えた歯を剥き出しにして、口からは長い舌がみえている。

 

……まるで、赤い『ヴェノム』だ。

体型はヴェノムよりも細い。

だけど、小柄って訳じゃない。

僕よりも長身だ。

 

知り合いのリチャーズ博士が僕の『ブラック・スーツ』……いや、『ヴェノム』を解析した時に言っていた『シンビオート』って種族で間違いない。

 

 

だけど、僕の超感覚(スパイダーセンス)を無効化するのは『シンビオート』という種族としての能力じゃない。

僕と結合して、力をコピーした『ヴェノム』としての能力だ。

 

なら、目の前の赤いヤツは……『ヴェノム』のクローン?

とにかく、きっと近い生物に違いない。

 

 

傷口が痛みながらも、頭は回る。

現実逃避、かも知れないけど。

 

超感覚(スパイダーセンス)が効かない所為で、攻撃を全部避けるのは不可能だ。

攻撃され続けていれば──

 

 

赤い怪物が歯を剥き出しにして笑った。

 

 

『……スパイダーマンか。目的とは少し違うが……お前のコーデックスも頂くとしよう』

 

 

コーデックス?

……全く何か分からないけど、兎に角目の前のヤバい奴に命を狙われてるって事は分かった。

 

知らない奴からも命を狙われるなんて……僕って人気者?

 

そんな軽口を叩いている余裕がないってのも、流石に分かるけど。

 

 

「急に出てきたけど……何者?僕は君じゃなくて、クレタス・キャサディに用があるんだけど」

 

『なら丁度良いな、俺の宿主がキャサディだ』

 

 

……あぁ、なるほど。

やっぱり、キャサディも『シンビオート』と結合したみたいだ。

 

嫌な予感ほど命中する。

 

……今日の運勢は最悪だ。

 

 

「それじゃあ、君を倒す理由が出来ちゃったな……まぁ、命を狙って来るんだから、どっちにせよ戦う事になってたと思うけど」

 

『戦う?倒す?お前は喜劇俳優(コメディアン)だったのか?傑作だ、お前は俺に殺されるだけだ』

 

 

赤いシンビオートを纏ったキャサディが、触手を広げた。

 

 

「それじゃあ、笑い死なないように気を付けて……えっと、赤い『ヴェノム』?」

 

『違う。ヤツと一緒にするな……俺は──

 

 

触手が一斉に、僕へと殺到する。

 

 

『『大虐殺(カーネイジ) 』だ……!』

 

 

その先端は小さな鉤爪、なんて可愛い物じゃなくなっていた。

 

鋭いドリルのような針、小さな斧、鎌……選り取り見取りだ。

 

全く、欲しくはないけど。

 

(ウェブ)を放ち、触手を拘束しようとするけど……素早く小刻みに動いて狙いが定まらない。

 

 

触手の扱いが、ヴェノムより上手い。

……ヴェノムは僕と同程度のパワーがある。

僕の能力をコピーしたからだ。

 

だから、ヴェノム相手に僕は苦戦したけど……この目の前のカーネイジはもっと強いって事だろうか?

 

それなら、まずい。

 

かなりピンチだ。

 

だけど、逃げる訳には行かない。

凄く怖いけど。

 

……大いなる力には大いなる責任が伴う。

敵からも責任からも、僕は逃げるつもりはない。

 

迫り来る触手を避けて、僕はカーネイジへと向かって行った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『ここか?』

 

『えぇ……凄く、大きな反応があるって……グウェノムも言ってる』

 

 

私は真横にいるナイトキャップを一瞥した。

ナイトキャップが乗っていた警察車両を停めて、降りる。

 

ハリーも降りて……ライオットの宿主は警察車両に乗せたままだ。

まだ気絶してるし。

 

目の前には大きな教会がある。

その中から……強烈な反応が来ている。

まるで首の裏を針で刺すかのような、鋭い感覚。

 

間違いない。

ここに……シンビオートがいる。

 

それがキャサディか、違うかは分からないけど……居るのは間違いない。

 

私は教会を警戒しながら観察しているナイトキャップをよそに、入り口へと近付く。

 

それを見たナイトキャップが慌てて私を止めた。

 

 

『待てグウェ……グウェノム。私が先行する』

 

『探知できる私が先に行った方が、不意打ちされなくて良いでしょ?』

 

『…………そうだな』

 

 

そう言い返すと、渋々と言った様子で頷いた。

ハリーも後から追いかけて来て……私とナイトキャップの間に挟まった。

 

……うん、まだ彼を凄く警戒してるみたいだ。

 

 

『それじゃあ、入──

 

 

真上。

 

強烈な反応が来た。

 

上から、強襲される!

 

 

咄嗟に触手で足を伸ばして、壁を叩いた反動で自分の体を弾き飛ばした。

ゴロゴロと転がり、そのまま向かいの壁にぶつかる。

 

それと同時に、屋根が砕けて、私の居た場所に大きな質量が落下して来た。

 

ドカン!と強い音がして石床が砕けて散る。

 

 

『チッ!避けたか……だが見つけたぞ、クレタス・キャサディ!』

 

 

そう言って表れたのは……大きな、筋肉質で、真っ黒なシンビオートだ。

……脳内でグウェノムがはしゃいでいる。

 

あぁ、じゃあ、コイツが……グウェノムの『パパ』?

 

つまり──

 

 

『ヴェノム……!』

 

『俺達がお前をブチのめ──

 

「待て待て待て、ヴェノム!」

 

 

ヴェノムの中から、男の声が聞こえた。

 

 

『なんだ、エディ!邪魔をするのか!?』

 

「オイ、キャサディは男だったよな……?」

 

『あぁ、そうだ!気味の悪い男だ!』

 

「目の前の奴は……?」

 

 

ヴェノムが私をジロジロと見る。

……何だか居心地が悪い。

 

そして、目を見開いて驚愕した。

 

 

『胸があるな、女だぞ?エディ!』

 

 

……グウェノムと結合すると身体のラインが出てしまう。

 

 

『……キモ』

 

 

私は嫌悪感を感じて、一歩下がった。

 

 

「だよな?じゃあ──

 

『……キャサディは女だったのか?』

 

「違う!コイツはキャサディじゃないって事だ!」

 

 

……これが、グウェノムの父?

凄く……うん、ポンコツと言うか……うん。

 

そんな私の心境も知らず、グウェノムがはしゃいでいるけど。

 

 

『ヴェノム』

 

 

私の後ろから、ナイトキャップが前に出た。

 

私を庇うように前に立つ。

……いや、私の自意識過剰かも知れないけど。

 

 

『誰だ?いや、待て。見覚えがあるぞ』

 

『……レッドキャップだ』

 

 

……ナイトキャップが、自身を『レッドキャップ』と言った。

 

一体全体、結局の所、彼の名前はどっちなんだろう?

付き合いの短い私にはサッパリ分からない。

 

 

『そうだ!だが、何故だ?前は赤かった筈だ』

 

『今日は少し、色が違うだけだ……』

 

『知ってるぞ、イメチェンって奴だ』

 

 

ヴェノムの声に、宿主……エディと呼ばれた男が口を開いた。

 

 

「なぁ、ヴェノム、もう黙った方が良いと思うぞ……」

 

『何故だ?』

 

「そりゃ……」

 

 

馬鹿な事を言ってるからだろう。

恐らく、宿主は恥ずかしいのだ。

 

微妙な空気になっていると、ドタドタと走って来る音が聞こえた。

 

 

「お、オイ!勝手に先に行くなよ!」

 

『お前が遅いから悪い』

 

 

その声にヴェノムが悪態を吐いた。

……態度的に仲間、なんだろうか?

 

穴の空いた屋根から飛び降りたのは、茶色のスーツに、黄色のアーマーを着込んだ男だ。

フルフェイスのマスクで、目が黄色く光っている。

両腕に大きな手甲(ガントレット)を付けていて、よく目立つ格好だ。

 

そのまま着地して──

 

 

「うぉっ」

 

 

よろけた。

思ったより高度が高かったようで、上手く着地出来なかったみたいだ。

そのまま尻餅をついて、慌てて立ち上がった。

 

私が苦笑いしながら、横のナイトキャップを見ると──

 

 

『……ハーマン?』

 

 

驚いた様子で言っていた。

……彼が驚いている姿は初めて見たかも知れない。

 

 

「あぁ、アンタか。一ヶ月振りだな……って、何で黒くなってるんだ?」

 

『事情があるんだ……それより何故、お前が此処に居る?』

 

 

ナイトキャップが気安い態度で言葉を返す。

……何だか、親しそうな雰囲気だ。

 

どう言う関係なのだろうか?

いや、ハリーが言うにはナイトキャップは殺し屋……ならこの、ハーマンも殺し屋?

 

……先程の姿からは、あんまりそんなイメージが湧かないけど。

 

 

「フィス……いや、あー、オレ達の?ボスからの命令だ。この街に入り込んで来た化物共をボコボコにしろってよ」

 

『……そうか、なるほど。目的は同じ様だな』

 

「いや、良かった。アンタとは戦いたくなかったしな」

 

『まぁ、そうだな』

 

 

何やら親しげに頷いているのを見て、敵じゃないのかと安心して息を吐いた。

 

そして、それを見てヴェノムが口を開いた。

 

 

『ハーマン、その赤い奴の、後ろのガキ共は何だ?』

 

「あ?オレが知るかよ……レッドキャップ、コイツらは誰だ?」

 

『あぁ……』

 

 

レッド……?ナイト?ややこしい。

兎に角、ナイトキャップが私とハリーを一瞥した。

 

 

『この黒いシンビオートと共生しているのは……』

 

『思い出したぞ、『躁病(マニア)』だ!俺の舌を切り取って『ライフ財団』が作ったガキだ……!』

 

『……そうなのか?』

 

 

ヴェノムの言葉に、ナイトキャップが私を見た。

 

 

『今は『グウェノム』よ』

 

『……ン?何だ、どう言う事だ?』

 

 

困惑した様子でヴェノムが首を傾げた。

 

 

『私が付けたの、名前を』

 

『あ?何故だ?』

 

『可愛くないからよ』

 

『……エディ、若い人間の女は考える事が分からない。お前が話せ』

 

「え?は、はぁ?」

 

 

ヴェノムの顔が割れて、宿主、エディの顔が表れた。

何と言うか……冴えない顔をした男だ。

 

 

「ど、どうも?」

 

『どうも』

 

 

ヴェノムよりはまだ、まともな感性と落ち着きがあるみたいで、私が『S.H.I.E.L.D.』のエージェントだって事もすんなりと理解してくれた。

 

……でも、しかし。

これがグウェノムの『パパ』ね。

少し、幻滅したかも知れない。

凄い自分勝手な奴だ。

 

話が済んで、ナイトキャップがもう一人……ハリーを紹介した。

ヴェノムとハーマンとも面識があった様で、ハーマンが引き笑いをしていた。

 

 

「な、何がおかしいんだ」

 

「いや、何……お前が悪いんじゃない……『シニスター・シックス』の面子が殆ど揃っちまってる事にな」

 

「……それは僕にとって、思い出したくない過去だ」

 

 

ハリーが眉を顰めて、目を逸らした。

それを見て更にハーマンが馬鹿にする様に笑っていた。

 

……何だか、あんまり仲良く出来ないかも知れない、この二人とは。

仲良くする意欲が湧かないと言うか……。

 

だって、自分勝手なシンビオートと、チンピラなんだもん。

 

そんな私の心境を知ってか知らずか、ナイトキャップが口を開いた。

 

 

『……私達の目的もキャサディの確保だ。一旦は協力と言う形で構わないか?』

 

「僕は構わない」

 

「オレも、アンタが言うなら反対しねぇよ」

 

 

みんなが同調する中で反論するのは少し、気まずいけど……私は口を開いた。

 

 

『……少し、良い?』

 

『どうした?』

 

『話があるの……そこの、ヴェノムに』

 

 

私が目を向けると、再びエディを黒いシンビオートが覆った。

鋭い目付きで私を睨む。

 

 

『何だ、クソガキ』

 

『……キャサディにシンビオートを植え付けたのは貴方でしょ?』

 

『勝手に奴が奪っただけだ』

 

 

……自分が原因だって、認めるつもりはないらしい。

間接的に、父が死ぬ原因を作ったのはコイツ、なのに。

 

ダメだ。

そんな事を考えていると……怒りに呑まれてしまう。

 

 

『どうしてキャサディを追うの?……責任感?』

 

『『責任感』?『責任』だと?ククッ、聞いたかエディ?傑作だ!』

 

 

その言葉を聞いた瞬間、ヴェノムが馬鹿笑いした。

 

 

『な、何?何がおかしいのよ!』

 

『『責任』とは凡庸な弱者の為の言葉だ!俺達には必要ない』

 

 

頭に血が昇りそうになる。

だけど、押さえ込む。

 

……バナー博士との怒りのコントロールトレーニングが役に立っている。

 

 

『お前もそうだ、躁病(マニア)……いや、今はグウェノムだったか?』

 

『じゃあ、何でアンタはキャサディを追うのよ』

 

 

矛盾点を見つけて、私は訊いた。

その言葉にヴェノムが笑い……舌を伸ばした。

 

 

『俺達は、勝手に盗んだ力を扱い……勝手に暴れている奴が、呑気に生きているのが許せないだけだ』

 

 

あまりにも身勝手で、横暴な理由に私は言葉を失った。

 

 

『そん、なのって……』

 

『勝手に喚いていろ。俺達はお前らに協力しない。ハーマン、お前との協力もここまでだ』

 

「はぁ?」

 

『俺達はガキ共の馴れ合いに手を貸すつもりはない……勝手にやらせて貰う』

 

 

そう言うと、ヴェノムは触手を伸ばし、穴を空けた屋根から上へと飛び上がった。

ハーマンは何か思う所があったようで、レッドキャップを見て……ため息を吐いた。

 

 

「心配すんな、オレはアンタに協力するから」

 

『すまないな、ハーマン』

 

「気にすんな」

 

 

ナイトキャップの背中をハーマンが叩こうとして……ナイトキャップに避けられていた。

 

でも、「アンタら」じゃなくて、「アンタ」ね。

結局、ハーマンも私達の事は気に入らないみたいだ。

 

……頭の中でグウェノムが私を心配する声が聞こえた。

大丈夫よ、と返事をした。

 

 


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