Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─   作:疲れた斬月

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プロローグです。

最初で最後のシリアス(になる予定)


プロローグ

C.E74。

 

地球へのユニウスセブン落下事件【ブレイク・ザ・ワールド】を引き金に始まった2度目の大戦は、プラント最高評議会議長【ギルバート・デュランダル】が提唱した政策【デスティニープラン】を巡る戦いを以て決着の時を迎えようとしていた。

 

決められた運命を選び、平和な明日を求めて戦うザフト。

 

約束された平和を捨て、自由な明日を求めて戦うオーブ。

 

無数の戦艦やMSが飛び交う中で、巨大な翼を背負った白灰色のMSと深紅のMSが死闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

『シン、止めろ!そんな物を護って戦うんじゃない!!』

 

強制的に繋げられる通信。

 

モニターの向こうから見慣れた男…【アスラン・ザラ】が叫ぶ。

 

悲痛な表情で叫ぶアスランへの返答代わりに、白灰色のMS【デスティニー】のコックピットに座る少年…【シン・アスカ】は背部にマウントされたビーム砲を跳ね上げ、トリガーを引いた。

 

『くッ…!』

 

ロックオンされた事を警告するアラートに突き動かされるままにアスランは自身の乗機【∞ジャスティス】を操作し、放たれたビームを紙一重で躱す。

 

「護るさ…護ってみせる…そして、終わらせる…!」

 

折り畳み式の長刀【アロンダイト・ビームソード】を抜刀し、デスティニーが赤い光の翼を広げる。

 

「その為に…あんたを討つ!!!」

 

白い残像を引きながら、デスティニーが稲妻の如く駆け抜ける。

 

『シン…!』

 

振り下ろされたデスティニーの一閃を、シールドで受け止める。

 

ビームシールドと実体シールドの二重防御の盾は、近接格闘兵器の中でも最強の破壊力を誇るデスティニーの長刀による攻撃を辛うじて防ぎ切った。

 

『もう止めろ!お前が今護っている物が何なのか…わかっているのか!?後ろにある物をよく見ろ!!』

 

デスティニーの後方…月面に建造された大規模光学兵器【レクイエム】がある。

 

『あれは国でも人でもない…従わない者を焼き尽くす為の兵器なんだぞ!!』

 

「黙れよ!裏切り者のくせに!!」

 

気付いた時には怒鳴り返していた。

 

…裏切り者の言葉になど、耳を傾けるべきではない筈なのに。

 

道を違える前の頃に戻ったかの様に、シンは言葉をぶつけて行った。

 

───俺が護ってる物?

 

そんな事、俺にだってわかってる。

 

あんな物の為に…一体どれだけの人が犠牲になった事か。

 

でも…それでも…!

 

「あれは戦争の無い世界を創る為に…デスティニープランを成功させる為に必要な力だ!だから…だからオーブは撃たなきゃならないんだ!!」

 

『なッ…!?』

 

次の標的がオーブである事を確信すると同時に、シンの言葉にアスランは愕然とする。

 

オーブには、まだ彼が住んでいた頃の友達だっている筈だ。

 

「戦争で…人の生命を弄ぶ連中がいて…!こんな世界はもう終わらせるべきなんだ!変わらなきゃいけないんだよ!!」

 

『ふざけるな!その為にオーブの国民には犠牲になれと言うのか!?そうやって全てを壊す、未来も殺す…お前が欲しかったのは、本当にそんな世界か!?そんな力なのか!?』

 

「俺だって…自分の力で全てを護りたかった!だけど…俺が討ってるのは敵じゃないって…討つのは奪う事だって…!力で解決できる事なんか何も無いって!!

 

俺にそう言ったのはあんたじゃないか!!!」

 

『…!』

 

その言葉に、一瞬アスランの心が揺らいだ。

 

デスティニーの片手斬りが∞ジャスティスを弾き飛ばした。

 

大きく崩されたバランスを建て直すアスランだったが、既に目の前には長刀を構えたデスティニーが迫っていた。

 

慌ててステップで回避を試みるが、デスティニーの一閃が僅かに速く、ビームライフルを真っ二つに両断される。

 

『うぐッ…!』

 

反射的にシールドを構えてライフルの爆発から身を護ろうとするアスラン。

 

シンはアスランの視界がシールドによって遮られた一瞬の隙を突き、デスティニーを∞ジャスティスの背部へと回り込ませる。

 

「できる様になったのは…こんな事ばっかりだッッ!!!」

 

シールドを退かした頃には既にデスティニーは目の前から消え、後ろから頭部を鷲掴みにされる。

 

そして、デスティニーの掌に仕込まれたビーム砲【パルマフィオキーナ】が∞ジャスティスの頭部を握り潰した。

 

 

 

 

「(シン…俺はお前を絶望させていたのか!?)」

 

それは、曾て彼と仲間だった頃に贈った言葉の数々。

 

全ては、シンに自分と同じ過ちを犯して欲しくない、同じ苦しみを味わって欲しくない…それだけだった。

 

それだけだったのに…

 

「でも…議長とレイは…戦争の無い世界を創る為に、俺の力が必要だって言ってくれたんだ!だから…!」

 

デスティニーが再び長刀を構える。

 

「この力で全てを終わらせて…その先に平和な未来があるのなら俺は…俺はぁッ!!!」

 

シンの激情の如く燃え上がる光の翼を広げ、デスティニーが∞ジャスティスに襲い掛かる。

 

───今度こそ終わらせる!

 

デスティニーの刃を∞ジャスティスに向けて振り下ろす。

 

───やれる!

 

そう思った次の瞬間、ある記憶がフラッシュバックする。

 

…それは、裏切ったアスランの撃墜を命じられた時の記憶。

 

手に甦るアスランを貫いた感触。

 

口の中を満たす、刺す様な苦味。

 

「ッ…!」

 

一瞬、∞ジャスティスの動きが速かった。

 

普段のシンからは考えられない程緩慢になった斬撃をあっさりと躱し、デスティニーの背後へ駆け抜けながらビームサーベルを一閃させる。

 

シンが我に返った頃には、既にデスティニーの長刀が半ばから叩き折られ、刀身が宙を舞っていた。

 

『諦めるな!こんな風に力を使ってしまったら…お前はその呪縛から永遠に逃れられなくなるんだぞ!!』

 

「…!」

 

『…お前は本当にそっくりだよ、昔の俺に』

 

「え…?」

 

伝説のエースと呼ばれたアスランの心情。

 

それを今、シンは初めて聞かされる。

 

『そうだ、俺もお前と同じなんだ…俺も曾て、母上を殺された憎しみに任せて戦いに身を投じた…だから、今お前が感じているその哀しみを、苦しみを…俺はよく知っているんだ!!』

 

全ての始まりとなった血のバレンタインで母を…

 

それが引き金となって始まった2年前の大戦で親友であるミゲル・アイマンやニコル・アマルフィを…

 

終戦間際では父を…

 

彼等が死んで逝く瞬間を、幾度と無く見て来た。

 

…今更伝えた所で、もう遅いのだろう。

 

それでも、伝えなければならない。

 

彼に自分と同じ過ちを犯させてはならない…!

 

『無力な自分を憎んで、闇雲に力を求めて…だが、その先には何も無いんだ!シン、お前の心も永遠に救われる事は無い!』

 

「アス…ラン…」

 

『だからお前も、過去に囚われたまま戦うのは止めろ!喪ったものにばかり目を向けてはダメだ!そんな事をしても…お前の未来まで潰してしまうだけで、何も戻りはしないんだ!!』

 

 

 

 

何も戻りはしない。

 

そんな事は、シンもとっくにわかり切っていた。

 

曾て、心を通わせた少女【ステラ・ルーシェ】の生命を奪った宿敵のMS【フリーダム】を倒した時、シンの心は喜びと達成感で満ちていた。

 

心を蝕んでいた怒りと憎しみが漸く晴れたと。

 

だが、それもほんの一時だけ。

 

こんな事をしても…幾ら敵を倒しても…家族もステラも、既にこの世にはいない。

 

喪われた生命は、もう2度と戻っては来ない。

 

───なら、俺は一体何の為に?

 

俺は…何が欲しかったんだ…?

 

『(過去があるから、明日を望む事ができる。同じ悲劇をもう繰り返さない様にな。だから、その明日をお前が護れ、シン。お前の力でな)』

 

ふと、親友である【レイ・ザ・バレル】の言葉が頭を過る。

 

真っ暗になりかけた視界が、再び開けて行く。

 

「…アスラン、あんたやっぱ凄いや」

 

『シン…?』

 

───俺の家族は…死んで逝った大切な人達は、もう戻っては来ない。

 

「俺もあんたみたいに考えられたら…別の選択肢を選ぶ事もできたかもしれない」

 

それでも…

 

「でも…デスティニープランがダメだって言うなら、他にどうすれば良いんだ?あんたの言う理想ってヤツで、戦争を終わらせられるのか?」

 

『!』

 

否、だからこそ…!

 

「喪った過去を護るのは間違いなのか?未来を護る事だけが正義なのか?それって、俺自身が自分の意思で決めるべき事なんじゃないのか?」

 

『そ、それは…!』

 

「俺も俺なりに色々考えたんだ。何が正しいのか、どうすれば戦争は無くなるのかって」

 

もう、2度と同じ哀しみを繰り返させない。

 

「でも…幾ら考えてもわからなかった。俺以外の誰かも、答えを持ってなかった」

 

その為に!

 

「だから俺は議長の未来を信じて戦うんだ!俺を信じてくれる仲間の為に…俺達が戦争を終わらせてくれるって信じてる全ての人達の為に!!」

 

もう…止まる訳にはいかない!!

 

『シン…!』

 

「あんたが正しいって言うのなら…俺に勝ってみせろ!!アスランッ!!!」

 

その言葉と同時に、デスティニーは両肩に装備されたビームブーメラン【フラッシュエッジⅡ】を投擲。

 

『ッ!!』

 

一撃目のブーメランをシールドで弾き、二撃目を脚部の【グリフォン・ビームブレード】で蹴り上げる。

 

「うおおおおおおおおおーーーーーッッ!!!」

 

体勢を建て直した時には、既にデスティニーが目の前にいた。

 

突き出された掌底をシールドで防ごうとするが、シンがビームの出力を上げると、ビームシールド発生装置が破壊され、盾が爆散。

 

爆発に巻き込まれた∞ジャスティスの左腕の装甲が見事に吹き飛び、露になったフレームがスパークを上げていた。

 

しかしアスランは左腕のダメージに目もくれず、爆煙を目眩ましとして利用し、両手に携えたビームサーベルでデスティニーに斬り掛かる。

 

一方のシンも、アスランのその動きを読んでおり、デスティニーの両手のビーム砲を起動させて振り掛かるサーベルを真っ向から受け止めた。

 

『シィィィィィィィィィィィィンッ!!!』

 

「アァスラァァァァァァァァァンッ!!!」

 

∞ジャスティスの刃とデスティニーの掌が…2人の想いがぶつかり合う。

 

激しい閃光が炸裂し、宇宙の闇を白く焼き尽くす。

 

そして…

 

「!!」

 

デスティニーの両腕が、負荷に耐え切れずに爆散した。

 

───そんな…

 

俺は、負けるのか…?

 

戦争の無い世界を…平和な明日を護れないのか?

 

反射的に蹴りを繰り出すデスティニーだが、その一撃も∞ジャスティスの右脚の刃によってあっさり受け止められ、右脚を蹴り砕かれてしまう。

 

───負けた…。

 

その事実に呆然としながら、シンの意識はブラックアウトした。

 

 

 

 

「シン…」

 

墜ちて行くデスティニーを見詰めながら、アスランは消えてしまいそうな声で相手の名を呟いた。

 

ギリギリの戦いだった。

 

実力も経験も、少しの要素で簡単にひっくり返されてしまう程度の差しか無く、1歩間違えれば自分の命は無かっただろう。

 

───何故俺は、相手を否定する事ばかり上手くなってしまうんだろう…?

 

結局、自分は曾て親友と殺し合ったあの頃から何も成長できていなかったのだと思い知らされる。

 

本当に理解して欲しい相手に中途半端な言葉ばかりを投げ付けて苦しめ、こうして殺し合いを始める。

 

そして、全てが手遅れという段階になってから、初めて過ちに気が付くのだ。

 

何より、シンよりも広い視野で世界を…色々な物を見る事ができていた筈だったにも関わらず、シンの問い掛けに何一つ答えを出せなかったその事実に、アスランは強い屈辱と絶望を覚えた。

 

───今更手遅れかもしれないが…。

 

話し合わなければ何もわかって貰えないし、何もわかってやれない。

 

墜落したデスティニーの側に∞ジャスティスを着陸させようと、操縦桿を動かそうとした…その時だった。

 

 

 

 

『お見事でした、アスラン様!後は我等が!』

 

「!?」

 

唐突に繋げられる通信。

 

周りを見回すと、オーブ軍のムラサメや、自分達反抗勢力のトップ【ラクス・クライン】の言葉で寝返った一部のザフト軍のザクやグフ、バビが、デスティニーと自分を囲む様に陣取っていた。

 

アスランの背筋を冷たいものが迸る。

 

「待て、一体何を考えている!?」

 

『この者は危険分子!生かしておけば、必ずや我等の障害になります!』

 

『此処で消すべきです!』

 

『ラクス様に弓引く悪魔め!』

 

『カガリ様に逆らった罰だ!』

 

『デュランダルの番犬に裁きを!』

 

「あ…ああ…!!」

 

デスティニーに銃口を向けるMSの群れ。

 

仲間達の狂気を目にしたアスランは、己の眼前に広がる光景に恐怖すら覚えていた。

 

全身から嫌な汗が噴き出し、手足がガタガタと震える。

 

『『『『全ては、ラクス様の為に!!』』』』

 

『『『『カガリ様の為に!!』』』』

 

気味の悪い唱和と同時に、MSの群れが引き金を引いた。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーッ!!!」

 

喉の奥から絶叫が迸る。

 

考えるより先に身体が動いた。

 

放たれたビームとデスティニーの間に∞ジャスティスを滑り込ませる。

 

しかし、余りに火線の数が多過ぎた。

 

ビームの多くが∞ジャスティスを素通りし、デスティニーに殺到する。

 

「シン…!!」

 

自身もビームに貫かれ、爆発の熱と衝撃波に晒され、それでも尚シンの名前を呼びながら、アスランの意識は闇に消えた。

 

 

 

 

都内某所、ビルの森の中。

 

表通りから少し離れたビルの1つから、眼鏡を掛けた女性が姿を現す。

 

「ふぁ~、寒っ…」

 

時刻は朝の6時。

 

空がにわかに明るくなって行く。

 

近場を軽く散歩しながら背筋を伸ばすと、身体の節々からポキポキと小気味良い音が鳴る。

 

徹夜明けの疲れた身体に、朝の冷えた空気が沁み渡るのを感じる。

 

「あ~、今日のスケジュール確認しなきゃ…」

 

眼鏡を掛け直し、濃紺色の髪をかき上げながらスマホを取り出すと、1件の通知が届いている事に気付く。

 

『Aちゃんおはよう!今日の放送、楽しみにしてるね!』

 

親友からのメッセージに女性…【友人A】は思わず表情を綻ばせながら返信を送る。

 

『ありがと、元気出たよ』

 

簡素なメッセージだが、感謝の意は十分伝わるだろう。

 

伊達に長年親友をやっている訳ではないのだ。

 

「…よし、今日も1日頑張りますか!」

 

気分転換の散歩を終え、ビルへ戻ろうとした所で…。

 

 

 

 

───ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「ヴェッ!?」

 

凄まじい轟音が響き渡り、地面がぐらぐらと揺れる。

 

慌てて音のした方へ走る。

 

其所には、全長18mはあろうかという巨大な2機のロボットが眠っていた。

 

1機は両腕と右脚が朽ち果て、2枚1対の巨大な翼がひしゃげてしまっている。

 

もう1機は頭部が無く、左腕の装甲が吹き飛び、露になったフレームが焼けて痛々しい団子状になっている。

 

2機のロボットの下敷きになっているのは、今自分が出て来たビル…だった瓦礫の山。

 

「…何も見なかった」

 

騒ぎを聞きつけた野次馬達が群がって来る中、友人Aは遠い目で空を仰ぎながらそう呟いた。




これ、アスランの方がトラウマになりそう(小並感)

因みに本作の2人は高山版とTHE EDGEと無双2を足して3で割ったイメージで書いております。
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