Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─ 作:疲れた斬月
祝ってくれる人がいなくなって初めて気づく事。
作者も毎年親にLINEや電話でお祝いされて初めて「ああ、今日誕生日だったっけ」ってなります。
「皆が隠し事を?」
「はい…」
仕事を終え、一息吐いていたアスランの元にシンが相談を持ち掛けて来る。
シンの話では、どうも1週間程前からホロライブの面々が内緒話をしている事が多いらしい。
盗み聞きも良くないだろうとシンも当初は特に気にしていなかったが、余りにもその頻度が多く、遂に何の話をしているのか直接聞いてみたが「デリカシーが無い」とミオに怒られてしまった。
「悪口とかじゃないから安心しろ、とも言われたんですけど…」
「ふむ…わかった、俺の方からも聞いてみよう」
「すいません、お願いします。じゃあ先帰ってますね」
あ、今日の夕飯はロールキャベツですよ、と最後に付け加えて事務所を出るシンの姿を見送ると、アスランはスマホで誰かに連絡を取り始める。
「もしもし、俺だ。シンが違和感に気付き始めている…ああ、そろそろ誤魔化すのも限界だ。慎重に慎重を重ねて計画を進める様に、良いな?…よし、では各員の健闘を期待する」
「皆の様子がおかしい?」
「はい、何か心当たりありませんか?」
翌日の朝、出勤して来た友人Aとのどかに尋ねるシンとアスラン。
「内緒話、ですか…私は何も。のどかさんは?」
「私も特に心当たりは…」
「2人も知らないか…すまないな、忙しい所」
「すいません、何かあったら私とのどかさんも手伝いますので」
めぼしい情報は何一つ得られなかったが、一先ず協力者は得られた。
「いや、私は何も知らないけど…」
「YAGOOのおっさんも知らないのか…」
次に尋ねたのは、社長のYAGOO。
だが、やはり心当たりは無いとの事。
「あんまり気にする事も無いんじゃないか?何か悪い事たくらんでるって訳でも無さそうなんでしょ?」
「それはそうですけど…」
「女同士の話にづけづけ突っ込むと、デリカシー無いって怒られるよ?アハハハ」
「もうミオ先輩に怒られました」
「いや手遅れかよ!!」
「結局、えーちゃん達もYAGOOのおっさんも何も知らないみたいですね」
「まさに八方塞がりだな…」
何一つ情報を得られなかった事を残念がるシンと、彼に
「一先ず、また明日から調査を再開しよう。今日はもう遅い」
「そうですね」
草木も寝静まる深夜。
シンとアスランが暮らす家の中、アスランの自室。
作業台の照明のみを光源にして1人作業に没頭するアスランの姿があった。
無数のコードでパソコンに繋がれた金属製の物体をはんだごてで溶接しながら、配線を繋ぐ。
その作業を終えると、パソコンのキーボードを操作してプログラムを入力して行く。
「よし、後少し…後少しだ」
そう呟きながら思考の海へと沈み込んでいくアスラン。
彼の作業が終わったのは、朝日が上り始めた頃だった。
「…アスラン?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ…」
朝起きると、自室から出て来たばかりのアスランと遭遇したシン。
彼の目元には青黒い隈が浮かんでおり、「機材の整備やアップデートをしていたらそのまま朝を迎えてしまった」との事。
シンは微かに違和感を覚える。
機械弄りが趣味と豪語しており、社内でも異次元レベルの技術力を持っているアスランが徹夜する程の整備とは一体どれ程のものなのだろうか?
───まぁ、アスランがそう言うなら信じよう。
そう決めて詮索を止めるシン。
…しかし、彼は大事な事を失念していた。
目の前にいる男は、2度もザフトを裏切っている人物なのだと。
「(作戦決行まで…あと6日か…)」
アスランはカレンダーを見て、誰にも聞かれる事無く心の中で呟いた。
「…」
「シン君、機嫌悪いね…」
「痺れ切らしてるのかも…」
こそこそと小声で話をするのは【雪花ラミィ】と【桃鈴ねね】。
その日、シンは事務所で1日中ブスッとした表情を浮かべていた。
無理も無いだろう。
皆自分に隠して何か計画を立てており、完全に除け者にされてしまっているのだから。
仲間外れにされている苛立ちが徐々に募り、それが遂に表に出始めたのだ。
「何かねね、流石に可哀想になって来たんだけど…ラミィちゃん何とかしてよ」
「いや無理だよ!絶対にバラすなってアスランさんにも言われてるし…!」
「お~っす、どしたの?機嫌悪いじゃん」
そんな中、2人の同期であるホワイトライオンの獣人【獅白ぼたん】がシンに声を掛けた。
「別に…」
「いやいや、無理しなくて良いよ?相談なら乗るから」
そう言って拗ねるシンにコーラの缶を手渡すぼたん。
シンは受け取った缶のプルタブを開け、コーラを煽ると、ふてぶてしい顔で同じ質問をぶつけた。
「ははぁ~、それで拗ねてたって事ね」
「別に、何か俺に都合の悪い事考えてるとかじゃないらしいんで気にしてないです」
「いや、気にしてるよね絶対…」
自身もモ○エナを喉を鳴らして飲むと、ぼたんは口を開いた。
「一応あたしは知ってるよ?皆が何してるか」
「え?」
「でもごめんね~、『その日』が来るまで教えるなって言われてるんだよね」
「その日?」
新しいワードに首を傾げるシン。
端で聞いていたラミィとねねがビクッ、と身体を跳ねさせる。
「ま、シン君は『その日』が来るまで楽しみにしてなよ。そうすればわかるから」
「あ、ありがとうございます…」
まだ詳しい事はわからないが、これで1つ真相に辿り着けた喜びでシンの表情が解れる。
ラミィとねねは、バレなかった事に安堵の息を吐いた。
『…そうか、ヒントを与えたか』
「ごめん、あのまま本格的に機嫌悪くされるよりはマシかなと思って」
『いや、俺も君の判断に賛成だ。よくやり過ごしてくれた』
シンをやり過ごして10分程経った頃。
トイレの個室に隠れてアスランと電話するぼたんの姿があった。
「あと少しだね」
『ああ、君達の協力が無ければ此処まで上手くいかなかっただろう。後は俺に任せてくれ、何とかしてみせる』
「うん、わかったよ」
そう言って通話を終了するぼたん。
「過保護だねぇ…」
「引っ越し…ですか?」
夕方、事務所から帰宅して夕食の準備をしているシンにアスランが話を持ち掛けた。
「ああ、タレントと一部スタッフ専用の社員寮ができるらしくてな。お前はどうする?正直、家賃の掛かる借家暮らしより良いと思うんだが…立地も快適性も、その寮の方が遥かに良いらしい」
「…わかりました。じゃあ引っ越しましょうか」
暫く考え込んだ後、シンは話を承諾。
「(…よし、これで条件は全てクリアされたな)」
「…すっげぇ」
6日後、今までの仮住まいを出て社員寮のある住所へ
「1階はロビーと食堂になっている。2階がスタッフ、3階がタレントの居住エリアと大浴場だ」
「へぇ~…」
バイクを駐車させ、横に『ホロライブハウス』と書かれた看板が掛かった玄関口の扉を開けるシン。
…その直後、炸裂音が響き渡る。
「!?」
反射的に扉を閉じ、陰に隠れる。
…しかし、追撃が何時まで経っても来ない。
不審に思いながらゆっくりと扉を開けると。
「「「「「お誕生日おめでとう!シン君!!」」」」」
「…へ?」
目の前には発射直後のクラッカーを構えたホロライブの面々と、派手な装飾を施されたロビーがあった。
彼女達の傍には、これでもかと積み上げられたプレゼントの山が聳え立っている。
「驚いた?この為に皆で準備してたんだよ!」
「この建物も本来はお前のパーティー会場として造られたんだ。皆の要望を盛り込んだ結果、予定を変更して寮として使う事になったがな」
中心に立っているそらと、シンの横に立つアスランが嬉しそうに説明する。
どんな反応をしてくれるだろう…驚くだろうか?
喜んでくれるだろうか?
そう期待を込めて準備していた為、興奮もひとしおだ。
そして、シンの反応は…
「あ…今日俺の誕生日でしたっけ。ありがとうございます」
「…あれ?」
かなり淡白なものだった。
感謝の気持ちに嘘は無いのだろうが、何と言うか…まるでさほど特別な日とも思ってない様な雰囲気だ。
「は、反応薄いね」
「あ~、はい。家族が死んでから誰も誕生日祝ってくれる人がいなかったんで、そんなに特別な日って感じでもなくなってたんですよね。何なら今日が誕生日だって、皆に言われるまで忘れてましたし」
「…」
思っていたよりも重めの回答が来た。
皆が掛ける言葉に迷う中、メルが1歩前に出て来る。
「じゃあさ、今年から毎年お祝いしよう!もう誕生日だって事、忘れない様に!」
「毎年、ですか?」
首を傾げるシンに、メルの言葉に続ける様にそらが答える。
「うん。今日から私達、同じ屋根の下で暮らす家族なんだから、ね?良いでしょ?」
「家族…」
『『お誕生日おめでとう、シン』』
『お兄ちゃん!ハッピーバースデー!』
想起される
あの時も、毎年誕生日になると祝ってくれる家族がいた。
プレゼントや豪華な料理を用意してくれた両親。
部屋を派手に飾り付け、手作りのお菓子を作ってくれた妹。
もう、取り戻せないあの日々。
「シン君?」
「…っ」
メルに名前を呼ばれ、ハッと我に返る。
自分の目から一筋の水滴が零れ落ちていた。
「…すいません、目にゴミが入ったみたいで」
慌てて雫を拭い、笑顔を浮かべるシン。
もう、誕生日を祝ってくれる家族はいない。
死んでしまったのだから、戻って来る筈も無い。
それでも…
「…今日は俺の為に…本当、ありがとうございます」
祝ってくれる仲間がいる。
今は、それで良い。
「これだけの準備するの、大変だったでしょ?」
「うん、その上バレない様にやれ!ってアスラン君に言われてたからね」
ロビーの傍にある食堂で行われている立食パーティーの最中、シンとそらが料理を片手に談笑していた。
皆思い思いに料理や飲み物を楽しみ、ある者は派手に騒ぎ、ある者はへべれけで女同士イチャ付き、ある者は追加の料理を作ろうと
「…俺らが何かやると大体騒がしくなりますね」
「あ、あはは…」
苦笑しながら騒ぎ散らかす仲間を見詰めてごちるシンと、苦笑するそら。
「でも…凄く楽しいです。ありがとうございました」
「…どういたしまして」
すると、シンの元へ青いカブトムシの様なメカが飛んで来る。
「これって…」
「カブトムシ、かな?」
シンの周りを旋回するカブトムシに続く様に、アスランが2人分の飲み物が入ったグラスを持ってやって来た。
「俺が造ったペットロボだ。携帯電話機能を兼ね備えた、名付けて『ビートルフォン』。お前への誕生日プレゼントだよ」
「アスラン君が造ったの!?」
目を見開いて驚くそらとは対照的に、シンは呆れた様にツッコミを入れる。
「何が『名付けて』だよ…これ仮面ラ○ダーWのあれですよね」
「あはは…シンは特撮好きだからな、再現してみたんだが…気に入らなかったか?」
「めっちゃ嬉しいですありがとうございました」
シンは早口でそう伝えてから手のひらをそっと差し出すと、ビートルフォンは空中で携帯電話に変形し、彼の手の上に着地した。
「喜んで貰えたなら何よりだ。それとほら、ジュースでもどうだ?」
「「頂きます」」
2人はアスランからグラスを受け取り、口元へと運ぶ。
すると、シンがほんの2、3滴程度口に含んだだけでグラスを口から離した。
「アスラン、これ酒!カクテルですよ!」
「何!?」
慌ててシンからグラスを受け取り、アスランも舐める程度に飲む。
甘酸っぱさと一緒にアルコール特有の苦味が舌に広がった。
間違い無く酒だ。
「すまない、間違えた」
「ったく…この世界じゃ俺まだ未成年ですよ?」
C.Eでは既に成人年齢に達しているシンだが、この世界ではまだまだ未成年。
酒など飲めないのだ。
「すまない、そら。違うものが飲みたいなら取り換えて…」
そらに向き直り、謝罪するアスラン。
しかし…
「…あれ~?何か頭がポーッとする~」
「…まさか、もう酔っ払ったのか?」
そらのグラスの中は既に半分近く減っており、彼女は顔を赤く染めていた。
「あ~、シンく~ん!」
「うわぁぁ!?」
シンの姿を視界に入れるなり、思い切り抱き付くそら。
しかし、これだけで終わらない。
「ちゅ~~~~~っ♡」
「「「「「「「!!??」」」」」」」
事もあろうかシンの顔を両手で抑え、口にキスをした。
場の空気が一斉に凍り付くが、既に酒が回り、スイッチが入ってしまったそらには関係無い。
「んちゅっ♡れろっ♡はむっ♡じゅるっ♡」
「ん~!んん~~~~~っ!!///」
そのまま舌を口内へ潜り込ませ、濃厚な口付けを交わす。
酒など殆ど飲んでいないのに顔が一気に熱くなり、目線で周りに助けてくれと訴える。
ある者は愕然とし、ある者は顔を赤くして慌てふためき、ある者はスマホでこの場面を写真に収めている。
撮影してるヤツは後でぶん殴ろう、などと考えていると、そらは漸くシンの口から自分の唇を離す。
2人の間に唾液の橋が掛かっていた。
「えへへ~♡シン君とちゅ~しちゃった♡私、幸せぇ…♡」
恍惚とした表情でそう言い残し、そらはそのままシンにしなだれ掛かる様に倒れた。
「おっと!そ、そら先輩…!?」
「ぐぅ~…すやぁ…」
シンが具合を尋ねようとすると、そらは幸せそうな表情を浮かべて寝息を立て始めた。
「シ…シン様が…そら先輩と…!?」
そんな中、余りのショックの大きさにちょこが膝から崩れ落ちる。
「あ…ああ…シン様の…ファーストキスが…」
「ちょこ先生ぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!??」
ちょこの身体がクリムゾンスマッシュを喰らったオルフェ○クの如く灰塵と化し、メルの絶叫が響き渡った。
「ふぅ…これで良し」
「すいません、ありがとうございます…」
あの後シンは友人Aと共にそらを彼女自身の居室へと運び、ベッドに寝かせた。
社員寮は外見だけではなく、居室までもがかなり豪勢に造られており、簡易的だがダイニングキッチンやリビング、トイレと個別にバスルームまで用意されている。
ベッドに使われている枕とマットレスも硬過ぎず、柔らか過ぎずの絶妙な反発力で、寝心地も良さそうだ。
「何か疲れたなぁ…俺も自分の部屋に戻りますね」
「すいません、そらがご迷惑をお掛けして…」
「いや、えーちゃんが謝る事じゃないですって。じゃ、おやすみなさい」
平謝りする友人Aを優しく宥め、シンも部屋へ戻った。
───そんなに恥ずかしがらないで♡
───どう?気持ち良い?
───あっ、それ、イイ…!
───やぁん…イク…っ!
───大好きよ、シン様。
「ハッ!?」
目が覚める。
窓の外には太陽が昇っており、雀の囀ずる声が窓越しに耳に届く。
時刻は既に朝の8時半を指しており、普段に比べると少し起きるのが遅めだ。
「…何つー夢見ちまってんだよ、俺は…!」
自己嫌悪に襲われ、乱暴に頭を搔き毟って吐き捨てる。
「落ち着け俺、あれは夢だ!気にするな!」
頬を両手で叩き、意識を切り替える為に洗面所で顔を洗う
歯磨きまで終わらせ、寝間着にしていたジャージから私服に着替え、そろそろ朝食にするか、と1階の食堂に向かった。
「あらシン様、おはちょこ~ん♡」
「お、おはよう、シン君…」
「おはようございます」
食堂に下りると、そらとちょこが先に下りて来ていた。
ちょこが朝食を作っているらしく、フライパンの上で2人分のフレンチトーストがジュージューと音を立てている。
「シン様も朝御飯?」
「はい」
「じゃあ一緒に作っちゃうわね」
「良いんですか?ありがとうございます」
ちょこはフライパンの上にもう1枚フレンチトーストを追加した。
「シン君、その…き、昨日はごめんなさい!私、とんでもない事しちゃった!」
涙ながらに頭を下げるそら。
顔は青ざめ、声も震えており、かなり責任を感じているのが伝わって来る。
「別に大丈夫ですよ、あれは事故みたいなもんですから。強いて言うならジュースと酒を間違えたアスランのせいです。まぁ、今度から気を付けてくれればそれで良いですよ」
「うん…本当にごめんね」
「じゃあ俺、コーヒー淹れて来ますね。そら先輩とちょこ先生は?」
「あっ、じゃあオレンジジュースで…」
「う~ん、ちょこは…カフェオレをお願いできる?」
「わかりました」
席を立って厨房に入るシンを見送り、そらはシンが下りて来る前のちょことの会話を思い出していた。
「ねぇ、そら先輩?」
「何?ちょこちゃん」
起床後、部屋から出たちょこと遭遇し、一緒に食堂へ下りて来たそら。
ちょこが纏めて朝食を用意すると言うので任せて待っていると、調理しながら唐突に声を掛けて来た。
「そら先輩…シン様の事好きでしょ?」
突然投下される爆弾。
数秒の沈黙の後、ぎこちない口調で返事をする。
「も、勿論だよ!大事なホロライブの仲間だもん!」
「そういう意味じゃないわ。異性としてって事」
獲物を狙う様なちょこの目線。
完全にバレてしまっている事を察し、そらは赤面する。
「…どうして、わかったの?私がシン君を好きって」
「普段のそら先輩を見ていればわかるわ。シン様とお話してる時、凄く楽しそうだもの。確信に変わったのは昨日だったけど」
「え?私何かしたっけ?」
「忘れちゃったの?仕方無いわね」
ちょこの瞳が紫色の光を放つ。
すると、そらの瞳も共鳴する様に紫色に光った。
…そして、泥酔状態にあった為に抹消されていた記憶が一気に蘇って来た。
「…あっ…わ、私…何て事を…!///」
「シン様にちゃんと謝っておくのよ?」
ゆっくりと頷くそら。
想いを寄せる男性とキスできた嬉しさも無い訳ではないが、それ以上にシンを嫌な気持ちにさせてしまった申し訳無さ、嫌われてしまったかもしれないという不安、皆に見られた恥ずかしさの方が圧倒的に勝った。
「それにしても、そら先輩が…ねぇ。強力なライバルができちゃったわね」
「えっ…ま、まさか…ちょこちゃんも!?」
頬を染めながら頷き、肯定を示すちょこ。
「ああ…ごめんなさい!シン君のファーストキス、勝手に奪っちゃって…!」
「気にしないで。確かに悔しかったけど…その分ちょこも楽しませて貰ったから」
「えっ?」
「…そら先輩だけにこっそり教えるけどね?」
調理を中断し、そらに近寄ると彼女の耳に唇を寄せ、何かを耳打ちで伝える。
すると、そらの耳から首までが一気に真っ赤に染まった。
「そ、そ、そ、そんな事までしたの!?///」
「ええ、終わった後にシン様の意識と記憶を書き換えさせて貰ったけどね。多分、
うっとりとした表情で語るちょこ。
「そ、そこまでやっちゃったなら…私、引き下がった方が」
そらの言葉は、唇に押し当てられたちょこの人差し指によって遮られた。
「…逆よ、そら先輩。ここまでさせておいて引き下がったりしたら許さないわ」
そう語るちょこの目は鋭かった。
やってしまった事に対して正面から向き合え、と目線で呼び掛けて来る。
「ちゃんと正々堂々、勝負しましょう。どっちがシン様に振り向いて貰えるか」
鋭い視線を和らげ、穏やかな表情で宣戦布告して来るちょこ。
過ちを気にせず、遠回しに「チャンスをくれる」と言ってくれている彼女の優しさにそらは涙を流す。
ちょこは優しくそらを抱き締め、慰める。
「どっちが勝っても恨みっこ無しよ、そら先輩」
「うん…!」
「…そら先輩?」
「ひゃあ!?」
ふと、背後から声を掛けられ、回想が強制的に終了する。
「飲み物、持って来ましたよ」
「あ、うん、ありがとう」
シンはお盆の上に載ったオレンジジュースのグラスをそらの前に置くと、自分も席に着いてコーヒーを飲む。
「(私が勝てるのかな…ちょこちゃんに)」
ちょこは強敵だ。
顔も身体付きも同性の自分ですら憧れてしまう程色っぽくて美しく、悪魔でありながら聖母の様な慈愛に満ちた清らかな心を持ち、家事全般も得意。
とても自信を持って『勝てる』と言える相手ではない。
「(…ううん、勝てるか勝てないかじゃない!)」
心の中で首を横に振り、迷いを捨て去る。
此処で諦めたりしたら、それはちょこの宣戦布告に対する冒涜だ。
「(ちょこちゃん、私…絶対に勝つから!)」
はい、シン君の誕生日会でした。
前振りで作者が述べた様な寂しさをまだ14歳の頃からずっと味わって来たんですよね。
誕生日おめでとう。
作者からはそらちゃんとのファーストキスをプレゼントしまs(長射程ビーム砲