Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─   作:疲れた斬月

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バレンタインデーって元々バレンティヌス司教が拷問の末に撲殺された日らしいですね(爆ぜろリア充という呪いを込めて)

それはそうと、シンを巡るヒロイン達の戦いが遂に…


第15話「現実のバレンタインも血のバレンタインである」

「はぁ…」

 

夜、自室のベッドの上で仰向けになり、溜め息を吐くそらの姿があった。

 

今日は2月11日。

 

2月14日(バレンタインデー)が目前まで迫って来ている。

 

「チョコ、どうしよう…」

 

そう、女の子なら誰でも悩むチョコ問題。

 

作るか、買うか、誰に渡すか。

 

同性の友達か、それとも気になる異性か。

 

彼女の場合、もう渡したい相手は決めている。

 

黒い髪に赤い瞳の少年。

 

決めてはいるのだが…

 

「『血のバレンタイン』だもんなぁ…」

 

 

 

 

 

血のバレンタイン。

 

農業用プラント【ユニウス7】が地球連合の過激派による核ミサイル攻撃で壊滅した事件だ。

 

この惨劇によってユニウス7にいた24万人以上の人々が亡くなり、その中にはアスランの母親【レノア・ザラ】も含まれている。

 

この一件はコーディネーター殲滅を訴える連合の過激派【ブルーコスモス】が戦犯と言われているが、プラントの独立をそもそも認めていなかった当時の連合にとっては、高額な投資の元に完成させたプラントをコーディネーターによって不法占拠されたも同然であり「核はやり過ぎだが、報復されたのはプラント側の自業自得である」と考える視聴者も少なくない。

 

またその後に起きた【エイプリルフール・クライシス】による過剰な報復も、連合に同情する人間を増やす要因となっている。

 

 

 

 

 

…いささか話が逸れたが、そんなこんなで元ザフト軍人である2人にとっては、バレンタインデーは余り良い印象の無い日である筈。

 

下手にチョコなど渡すのは不謹慎だろうか…と考えてしまい、今一積極的になれない。

 

…それでも、この絶好の機会に想いを伝え、自分の気持ちにいい加減決着を付けたいと考えている自分がいるのも事実。

 

「どうすれば良いのかな…」

 

考えても考えても、答えは出ない。

 

…スマホの着信音が鳴ったのはそんな時だった。

 

「ん…?お母さん?もしもし?」

 

『もしもし、そら?元気?』

 

電話を掛けて来たのは母親だ。

 

「うん、元気だよ?」

 

『あら、本当?何だか元気無さそうだけど』

 

「あはは、やっぱりお母さんは誤魔化せないか…」

 

渇いた笑いを浮かべるそら。

 

長年自分を育てて来た母の観察眼と洞察力には恐れ入る。

 

「まぁ、ね…バレンタインのチョコ、あげた方が良いのかあげない方が良いのか迷ってて…」

 

『あら?バレンタインのチョコなら何時もあげてたでしょ?』

 

「うん、そうなんだけど…その人のいた国、バレンタインはあんまり縁起の良い日じゃなくて…」

 

『成る程ねぇ…』

 

「その人自体はバレンタインにトラウマとかある訳じゃないんだけど…やっぱり控えた方が良いのかなって…でも…」

 

『でも?』

 

「…どうしても、その…伝えたい気持ちがある…って、言うか…

 

上手く声に出せず、ゴニョゴニョと口籠るそら。

 

しかし、電話の向こうにいる母親はからかう素振りも見せず、穏やかに答える。

 

『う~ん、難しいわよねぇ…でも、そういう時は自分の気持ちを優先しなさい』

 

「私の気持ち…?」

 

『ええ。こういう事はやらずに後悔するより、やって後悔した方が傷は小さくて済むわ』

 

「…」

 

『どう?参考になった?』

 

「…うん、ありがとう、お母さん」

 

母に礼を言って通話を終了しようとした、刹那…

 

『と~こ~ろ~で~…』

 

母がおどけた様な口調で言葉を紡ぐ。

 

『その相手って…前デートしたシン君?』

 

「ふぇっ!?///」

 

そらが短い悲鳴を上げると同時に、電話口の向こうから『バリン!』と何かが割れる音が聞こえた。

 

『貴方!女同士の話に聞き耳立てないで…』

 

どうやら父が食器を落としたらしい。

 

母親に気持ちを見透かされた恥ずかしさと、突然響いた物が割れる音に対する驚愕とが相まって、そらは反射的に通話を切ってしまう。

 

「もう、お母さんったら…!」

 

顔から火を吹きそうな感覚に囚われるそら。

 

だが、何だかんだで適切なアドバイスをくれた事に対する感謝も感じていた。

 

…そして、自分が決着を付けなければならないのは、自分の気持ちに対してだけではない事を思い出す。

 

「…私だけフライングなんて…ずるいもんね」

 

 

 

 

 

所変わって、ちょこの自室。

 

下手くそな鼻歌混じりにチョコ作りの準備をするちょこの姿があった。

 

…ちょこ先がチョコ作りって、書いててややこしいなこれ。

 

───コン、コン。

 

「ん?は~い!」

 

ドアを叩く音が響き、ちょこは一旦手を止めて入り口に向かう。

 

扉を開けると、そこにはそらの姿が。

 

「あら?そら先輩?」

 

「お邪魔します…あ、チョコ作ってたの?」

 

「ええ、シン様にあげる為にね。不謹慎かな~って思ったけど、アスラン様に頼まれちゃったから」

 

「アスラン君に?」

 

首を傾げるそらに、ちょこは首を縦に振って答える。

 

「『こっちの世界のバレンタインに慣れさせてやって欲しい』ってね。アスラン様なりの気遣いだと思うわ」

 

「そっか…」

 

恐らくアスランは「血のバレンタイン」の印象を払拭させれば、シンがC.E(呪縛)に負けずに前へ進む一助になるかもしれない…と判断したのだろう。

 

「…それで、そら先輩は何か用?」

 

「ちょこちゃん…」

 

深呼吸をして、ちょこの目を真っ直ぐに見詰めるそら。

 

そして、意を決して宣言する。

 

「…そろそろ、決着を付けよう!」

 

沈黙が辺りを支配する。

 

1秒が1分にも1時間にも感じられる、長い長い静寂が続き…

 

「…そうね」

 

フッと微笑み、ちょこもそらからの宣戦布告を受諾する。

 

「どっちが勝っても、恨みっこ無しよ」

 

「うん…!」

 

 

 

 

「「ちょっと待ったー!!」」

 

2人だけの宣誓に待ったを掛ける声。

 

そらが振り向くと、そこにはメルとノエルの姿が。

 

「あら、メル様にノエル様?」

 

「どうしたの?」

 

「その勝負…メル達も混ぜて貰うよ!」

 

「…えぇっ!?」

 

驚愕の声を上げて固まるそら。

 

ちょこも思わぬライバルの追加に目を見開き、メルとノエルを眺める。

 

「シン様、本当にモテモテねぇ…」

 

「あ、あはは…」

 

申し訳無さそうに苦笑するノエル。

 

「…よし!じゃあ対等に勝負できる様に、皆でチョコ作っちゃおう!」

 

「「「おーっ!」」」

 

そらの提案に拳を上げて同調する3人。

 

こうして、シン争奪戦は最終章を迎える…!

 

 

 

 

 

「…」

 

その様子を、物陰から観察する者が1人。

 

チョコ作りを開始する4人の姿を見届けると、スマホを使って何処かへ連絡を始めた。

 

「あ、もしもし?うん、僕。ちょっとお願いがあるんだけど…」

 

 

 

 

 

「そら先輩、急に呼び出してどうしたんですか?」

 

そして迎えた2月14日。

 

そらに呼び出され、彼女の部屋にやって来たシン。

 

扉を開けると、そらの他にメル、ちょこ、ノエルが並び、シンを出迎えた。

 

「私達、シン君に受け取って欲しい物があって…」

 

そう言って、4人は背後に隠していたチョコを手渡す。

 

そらが作ったハート型のチョコ。

 

メルが作った生チョコ。

 

ちょこが作った小さめのガトーショコラ。

 

ノエルが作った動物型のチョコクッキー。

 

形も種類も様々なチョコレート菓子が、シンの前に差し出された。

 

「良いんですか?こんなに貰って」

 

「うん。シン君とアスラン君にとってバレンタインってあんまり縁起の良い日じゃないから、本当はやめた方が良いかな…って思ったんだけど、どうしても伝えたい事があって…嫌だった?」

 

「…いえ、凄く嬉しいです。ありがとうございます」

 

差し出されたチョコを受け取り、お礼を言った所で、シンはハッとする。

 

「…ん?伝えたい事、って何ですか?」

 

「…」

 

そらは何も答えず、シンを真正面から見据える。

 

そして、シンの目の前に歩み寄り…

 

「そ、そら先輩…?」

 

シンの顔を両手で抑え、

 

「っ!?」

 

唇を重ねた。

 

「!?!?!?!?!?」

 

「ん…っ」

 

そのまま数十秒程の沈黙が流れた後、そらは唇を離す。

 

そして、頬を紅く染めながら内に秘めた想いを伝えた。

 

「私…シン君が好きです!」

 

「えぇっ!?」

 

伝えられた愛の言葉に戸惑う間も無く、今度はメルが前に出て来る。

 

「シン君…メルもシン君が好き!」

 

「え…んんっ!?!?」

 

間髪入れず、自身より身長の高いシンに合わせて爪先立ちし、唇を重ねて来るメル。

 

メルがキスを終えると、今度はちょこが。

 

「もう、皆せっかちなんだから…っ」

 

「っっ!!」

 

押し寄せるキスの嵐に、目を白黒させる事しかできないシン。

 

「ぷはっ…チョコレートだけじゃなくて、ちょこ先生も貰ってくれる?」

 

「あ、あの、その…」

 

しどろもどろになっていると、今度はノエルが。

 

「シン君、団長も…んっ」

 

「~っ!!」

 

キスには抵抗があると話していたらしいノエルですら唇を重ねて来る。

 

幾ら正常な判断ができない状況でもわかる。

 

彼女達の想いは本物だ。

 

「…っ、み、皆…?」

 

「ごめんね、驚かせちゃって…でも、私達本気なんだ」

 

真剣な眼差しで見詰めて来るそら。

 

だが…

 

「…すいません、やっぱり…すぐには答えられない、です」

 

パニックからまだ完全に戻っていない頭で、何とか捻り出した返事がこれだった。

 

無理も無いだろう。

 

1人の女性から告白されただけでも戸惑うのに、ましてや複数人だ。

 

「うん、団長達もすぐ答え出るなんて思ってないからええよ」

 

「ゆっくり考えて、シン様自身が納得できる答えを出してくれれば良いわ」

 

優しく諭してくれるノエルとちょこに心の中で感謝しつつ、シンも真剣に目の前の4人と向き合う。

 

「…わかりました、時間は掛かると思いますけど、できる限り誠意のある答えを出します」

 

皆、自分を救ってくれた恩人であり、尊敬できる先輩であり…そして、とても魅力的な女性。

 

その中から1人を選ぶとなると、骨が折れるどころか砕けるレベルだろう。

 

それでも、こんな自分の事を愛してくれた以上、誠実に向き合うのが俺の義務だ。

 

シンは己の心に強く言い聞かせた。

 

 

 

 

 

『速報です。日本政府が少子高齢化対策の一貫として、一夫多妻制の試験的導入を決定しました』

 

「何でだァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

翌朝。

 

食堂でニュースを見ていたシンの叫び声が木霊した。

 

何で昨日あんな事があった後に、その中からたった1人を選ばなければならないと責任を感じていた翌日にこれなんだ?

 

テレビはそんなシンの叫び声を無視するかの如く、試験運用の期間については検討に検討を重ね、慎重に検討を進めて行く旨や、試験運用期間中に複数の相手と婚姻を結んだ夫婦は期間終了後も夫婦として生活する事を認める旨が語られている。

 

「お、ココは上手くやってくれたみたいだね!」

 

そう発言するのはホロライブ4期生の天使(ゴリラ)『天音かなた』。

 

彼女の言うココとは、元ホロライブ4期生であり、現在は実家のヤクザ稼業【桐生会】の会長職を継いでいるドラゴン【桐生ココ】の事である。

 

「いや何したんですか一体!?」

 

「この前そら先輩達が話してるのを見ちゃってさ、ココに頼んで重婚を許可する法律を通す様に日本政府と『O HA NA SHI』して貰ったんだ♪」

 

「絶対世間一般のお話じゃないですよねそれ!?」

 

「シン君!」

 

そこへ、そらが息を切らしながら2人の会話に割り込んで来る。

 

興奮を抑えられず、走って来たのだろう。

 

「今朝のニュース見た!?」

 

「み、見ましたけど…でも、流石に…!」

 

倫理的にどうなんだ、とツッコミを入れたくなるが、頬を輝かせて喜ぶそらの姿を見ると強く言い出せない。

 

「やった!これで…シン君とずっと一緒だぁ!」

 

「そ、そら先輩…!」

 

シンに抱き着いて喜ぶそら。

 

そして、シンは…

 

「まぁ…それで皆が喜んでくれるなら良いか…」

 

そう呟いて、考えるのをやめた。

 

だがシン自身も気持ちを落ち着かせる期間が欲しい為、まずは恋人としての交際から始めようという事になり、4人はそれを承諾。

 

こうして、シン争奪戦は思わぬ形で決着を迎えたのであった。




はい、まどろっこしかったんで無理矢理くっつけました()

次回は番外編を1つ投稿した後、あの有名人とシン君が対談するお話を予定しています。

それではまた次回。
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