Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─ 作:疲れた斬月
道案内して下さったスタッフさん、本当にありがとうございました。
そして今回はあの大物俳優が登場!
「はぁ…緊張する…!」
ソファーに座り、深呼吸しながら自分の胸を抑えるシン。
今日はとある俳優との対談配信であり、シンは彼の所属する事務所に来ていた。
応接室で目的の人物を待つ事十数分。
部屋の扉が開き…その人は現れた。
「お待たせしました。椿タカユキです」
「弟子の熱木正義です!」
「…っ!初めまして、シン・アスカです」
現れた2人に頭を下げ、シンは挨拶する。
椿タカユキ。
【仮面ライダー剣】の主人公【剣崎一真】等、数々の映画やドラマ、舞台に出演している大物俳優であり、弟子の『熱木正義』と共に自身も動画投稿者として活動している側面を持つ人物だ。
「お会いできて光栄です、今日は宜しくお願いします!」
「こちらこそ宜しくね」
緊張気味に頭を下げるシンに、朗らかな笑顔で挨拶する椿。
シンも仮面ライダーシリーズの中で剣はかなり上位に君臨する程好きな作品であり、剣崎一真は同シリーズ作品の登場人物達の中で最も好きな人物だ。
信頼していた仲間に裏切られたり、家族を喪った経験から「守る存在」になる事を願ったりと、自身と似通った部分が多いからだ。
「俺、剣崎一真がほんと大好きで…だから今日の対談、凄く楽しみにしてました!」
「俺もだよ!ガンダムの主人公と話せる機会なんて絶対無いだろうからね」
「師匠はガンダム大好きですからね!お台場のガンダムベースにも師匠が作ったOOライザーが展示されているんですよ!」
「そうなんですね!今度俺のインパルスとバトルしませんか?」
和気藹々とした空気が漂う会話。
思った以上に気さくな椿の態度に、シンも徐々に緊張が解れて行くのを感じる。
「え~、今日は椿さんにリスナーから色々質問を預かって来てます。まず1つ目良いですか?」
「良いよ!どんどん聞いて」
「では1つ目『俳優になりたいと思った切っ掛けは何ですか』?」
「俳優になりたいと思った理由かぁ…」
腕を組み、少し唸りながら答える椿。
「ヒーローに憧れてたから、かな」
「確かに以前テレビで言ってましたよね、子供の頃の夢が正義のヒーローになる事だったって」
「うん、それで大人になってからもその気持ちは消えなくてね…だから『ヒーローになれる仕事』をしたいなって思ったんだ」
ヒーローになれる仕事…確かに、そう考えると役者はうってつけだろう。
仮面ライダーやスーパー戦隊は俳優の登竜門と呼ばれ、多くの有名な役者を産み出している。
現実ではヒーローなどというものは存在しないが、物語の中だけでもヒーローになれる役者という仕事に興味が向くのは当然なのかもしれない。
「シン君も声だけなら仮面ライダーですよね!」
「『お前倒すけど良いよね?答えは聞いてない』…これで良いですか?w」
「あはは、そっくりw」
「じゃあ次の質問いきますね…『俳優になって良かった事と悪かった事は何ですか?』」
「良かった事と悪かった事か…実はこれ、どっちも仮面ライダー関連の事なんだよね」
「どっちも…ですか?」
怪訝な顔で尋ねるシン。
正義のヒーローに憧れて俳優を目指した彼が仮面ライダーで嫌な思いをした、とはどういう事なのだろうか。
椿は少し複雑そうな表情でうん、と頷く。
「仮面ライダーっていう作品のオファーを貰えた時は勿論手離しで喜んだよ。昔から続いてる日本を代表するヒーローになれるって決まった時は、凄く嬉しかった。実際、剣崎は俺の1番のお気に入りだし。けど…『仮面ライダーディケイド』でね…」
「ああ…そういう…」
仮面ライダーディケイド。
シンはそのタイトルを聞いて漸く納得した。
「俺の大好きだった剣崎一真があんな風になってたのは、やっぱり凄く嫌だったよ」
「そう言えば『他人のつもりで演じてた』って言ってましたもんね…」
確かに、仮面ライダーディケイドに登場した剣崎一真はまるで別人だった。
正義感が強く、何時も誰かを護る為に一生懸命で、時に視野が狭くなり…そして、
あの豹変ぶりには、やはり椿も思う所があったのだろう。
「始めから『悪役』としての役回りを与えられていたならまだしも、お気に入りの役をあんな風に扱われるのはね…そこはちょっと俺の覚悟が足りてなかったかな」
「俺、許せないです!師匠の誇りである仮面ライダーをあんな風に…」
「まぁ、コンセプト自体は凄く良かったですけど…その辺で大損してる感じは否めないですよね…」
…予め弁護を入れておくと、クロスオーバーを初めて本格化させたという大きな功績を立てたり、響鬼の世界や電王の世界は評価が高かったりと、光る要素も確かにあった。
しかし、剣に関しては仮面ライダーカリスを悪役にしたり、仮面ライダーレンゲルをクズキャラにしたりと、「脚本家は剣に恨みでもあるのか?」と考える視聴者も少なくなかったのである。
「では続いての質問『オンドゥル語についてどう思いますか?』あっはっはっはっはっw」
「はははははははw」
「師匠のこれほんとにネタにされますねw 」
腹を抱えて3人は笑う。
いやはや、その通り。
椿の滑舌が悪すぎるが余りに【オンドゥル語】なる謎の言語がニコニコ動画で生まれてしまったのである。
「俺としては仮面ライダー剣により興味を持って貰う為の一助になれば良いかな~、程度に思ってたんだけど…まさかこんなにウケるとは思わなくてw」
「ある程度解読されてる今でも1話の『本当に裏切ったんですか』と『嘘だそんな事』は『オンドゥルルラギッタンディスカ』『ウゾダドンドコドーン』にしか聞こえませんからね…w」
「まぁ皆が笑ってくれるならそれで良いや…って思う反面で『聞き取れない言語喋っちゃってごめんなさい』って気持ちもあるんだよねw」
「リアタイで見てた人達、困ったでしょうねw」
最終的に東映にすらネタにされてしまったこの言語。
どうやら本人はまあまあ気に入っているらしい。
「では最後の質問…うっわ、誰だこんな質問入れたの?」
「何て書いてあるの?」
「読み上げますね…?『仮面ライダーは自由と平和を護るヒーローとして描かれていますが、自由と平和のどちらかしか選べなくなったらどっちを選びますか?』…すいません俺のリスナーが意地悪な質問しちゃって」
「あっはっはっはっはwほんとに意地悪だなぁ…w」
申し訳無さそうに謝罪するシンに対し、ケラケラと笑う椿。
「でも、師匠がどっちを選ぶのかは凄く気になります!」
「どっちを選ぶかって言われてもなぁ…w『時と場合による』としか言えないんだよね」
「時と場合…ですか?」
シンの問い掛けに対し、椿は穏やかさの中に一抹の真剣さを湛えた眼差しで答える。
「人間ってさ、感情がある以上はどうしても争いを捨てられない生き物なんだよね。本当に争いの無い世界を作るとしたら、それこそ【ディエンドの世界】みたいな事をしなきゃいけなくなると思う」
ディエンドの世界。
先述した仮面ライダーディケイドに登場する【仮面ライダーディエンド】に変身する青年、海東大樹の故郷だ。
その世界では、
人間を文字通りの社会の為に生きる歯車とする事で、世界の平静を保っていたのだ。
…デスティニープランも、突き詰めすぎるとああなっていたのかも知れない。
そんなシンの気持ちを察してか知らずか、椿が言葉を紡いだ。
「でも…安定と再建から成り立つ平和があって初めて自由をやる余裕が生まれる、っていうのも紛れも無い事実だからね。平和が無いのに自由をやろうとしたら、その自由はすぐに無秩序に変わっちゃう。シン君が住んでた世界がまさにその好例でしょ?あんな世界を平和にしようとすると、それこそ『デスティニープラン』なんてものを思い付いちゃう人がいるのも俺は仕方無い事だと思うよ」
「俺も最初はこんな政策間違ってる!って思ってましたけど…時間が経ってから見返すと、あんな政策が必要になるぐらい酷いあの世界が悪すぎるって思う様になりましたよ…シン君、ほんとよく頑張ったっスね」
椿と正義から同情と労いの言葉を掛けて貰い、心が少し軽くなるのをシンは感じる。
「だから『時と場合による』としか言えないんだよ。その世界にまず『何が必要か』って所を知らなきゃ、どっちが大事か、なんて決められる訳も無いしね。もしデスティニープランを
それを聞いて、シンはハッとする。
互いが互いを同じ【命】として認め、共に歩む事を受け入れているこの平和な世界で。
仲間と共に同じ未来を見て、夢を追い掛けて、自分らしく輝く事が許されているこの自由な世界で…
…漸く椿の言いたい事が完全に理解できた。
「…肯定派として戦ってた俺が言うのも何ですけど、この世界でやっても百害あって一利なしだと思います」
「でしょ?そういう事だよ。何が正しいかなんて誰にもわからないし、答えは無い。正義なんて人それぞれだからね。その人がどんな環境で産まれて、どんな経験をして、最終的に何を思うかで変わるんだよ。だから仮面ライダーは正義を名乗らないんだ」
そこまで言った所で、椿は一息吐いてから再び言葉を紡いだ。
「まぁ、何が正しくて何が間違いかなんて、結果が出なきゃわからないからね。その結果に自分が納得できたなら、それは正しかったって事だよ。だから…シン君もさ、自分の行いとか想いとかがどうだったかなんて、簡単に決め付けちゃダメだよ。この世界はC.Eと違って時間と余裕ならたっぷりあるから、ゆっくり考えれば良いよ。今までの事も、これからの事もね」
そう言って、椿は慰める様にシンの頭にポンと手を置く。
その様子はまるで挫折した息子を励ます父親、或いは進路に迷う生徒の相談に乗る教師にも似て見えた。
「今日はありがとうございました!」
「今度はガンプラバトルの動画録ろうね」
全ての過程が終わり、別れの挨拶を交わす3人。
背中を向けて事務所を後にするシンを見守りながら、正義は椿に尋ねた。
「…最後の質問、あれ本当にリスナーさんからの質問だったんですかね?」
「多分、リスナーさんの質問に便乗したんじゃないかな?シン君としても聞きたい事ではあったんだろうけど…シン君の性格なら、そんな回りくどい事せずに直接聞くと思うしね」
椿はふっ、と微笑みながら去って行くシンの背中を眺める。
(色んな事に挑戦して、色んな経験をして…カッコいい男になるんだぞ、シン君)
椿さんがVtuberやってると聞いてずっと書いてみたかった。
因みに受け答えに関しては「椿さんならこう言うかも」っていうのを妄想しながら適当に書いてるだけですのでご了承下さい。
そしてこの話を書いていてC.Eが地獄なのかホロライブの世界が天国なのかわからなくなってしまいました()