Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─   作:疲れた斬月

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メルちゃん、GTアカデミーへ。


第24話「入学式のおめでたい空気は翌日には消える」

「そっか…メルメル、レーサー目指すんだね」

 

『すいません、お別れの挨拶もさせてあげられなくて…』

 

メルを見送った後。

 

シンはまつりに電話で彼女がGTアカデミーへ向かった事の報告と、見送りに呼ばなかった事の謝罪をした。

 

「気にしないで。多分まつり達が行っても、気まずい雰囲気になるだけだと思うし。その代わりって言ったらなんだけど、GTアカデミー日本支部の住所と郵便番号、教えてくれる?」

 

『良いですけど…何で?』

 

「手紙ぐらいは贈っても良いかなと思ってさ」

 

『…はい、わかりました。出勤してから教えますね』

 

通話を終了するまつり。

 

「…ありがとう、シン君。メルメルに新しい道を教えてくれて」

 

誰にも聞かれる事無くそう呟くと、まつりはある場所へと向かう。

 

「失礼しまーす!」

 

扉を開き、部屋の中へと入る。

 

そこに座しているのは…

 

「お、いたいた!YAGOO!」

 

ホロライブのトップ、YAGOOこと谷郷元昭だ。

 

「どうかしましたか?まつりさん」

 

「ねぇYAGOO、ちょっと話あるんだけどさ…」

 

 

 

 

 

「ここがGTアカデミー…」

 

車に揺られる事1時間半。

 

メルがやって来たのはGTアカデミー日本支部のある静岡県駿東郡小山町。

 

世界有数の高速サーキット【富士スピードウェイ】だ。

 

GTアカデミーの日本支部は、この広大な敷地の中にあるという。

 

「入校式は明後日から始まります。それまではどうぞゆっくり過ごして下さいね」

 

車を降り、荷物を下ろしてあてがわれた居室に向かう中、聞こえて来るひそひそ話。

 

「…あれ、夜空メルか?」

 

「まさかGTアカデミーに来るなんて…」

 

口の中を突き刺す様な苦味が満たし、思わず顔を顰める。

 

覚悟の上だったとは言え、【元ホロライブの夜空メル】という呪いはやはり憑いて回るのかと思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

「え〜っと、546号室、546号室…ここか」

 

部屋を探して歩き回る事数分、漸く自室となる居室を発見し、ノックする。

 

「すみません、今日から同居人になる者です」

 

『どうぞ〜』

 

気の抜けた返事が返って来て、メルは扉を開ける。

 

「失礼します」

 

扉の向こうには、まるでホテルの一室の様に広くて快適性の高い空間が広がっていた。

 

…その床で、何やら紙のシートを広げてカードで遊んでいる青い髪の少女が1人。

 

あっちの盤面を操作したと思えば、ぐるっと移動してこっちの盤面を操作。

 

それを何度も何度も繰り返している。

 

「…あの〜」

 

「?」

 

「…何やってるんですか?」

 

「…バトスピ」

 

「1人で?」

 

「うん」

 

その後も黙々と1人バトスピを続ける少女。

 

ひとまず着いた事を報告しようと、シンにスマホで電話を掛ける。

 

『もしもし?』

 

「あ、シン君?メルだよ。今アカデミーに着いた」

 

『御苦労様です、どうですか?上手くやって行けそうですか?』

 

「うーん…やっぱり【元ホロライブ】っていう目で見られるのはちょっと億劫かな…少なくとも友達は作れそうに無いかも」

 

『そうですか…』

 

「まぁ、これはメルがやらかしたのが悪いんだし。最後まで頑張るよ」

 

『…無理はしないで下さいね。何かあったら、相談ぐらいは乗りますから』

 

「ありがとう」

 

『ちょこ先生とも話しますか?そら先輩とノエル団長は出掛けてるんで無理ですけど』

 

「うん、代わって」

 

 

 

 

 

『もしもし?メル様?』

 

「ちょこ先生?今シン君から聞いたと思うけど、アカデミーに着いたよ」

 

『お疲れ様。入校式はいつ?』

 

「明後日。本格的な課程は明々後日から始まるみたい」

 

『そう…無理はしないで、怪我とか病気の無い様にね』

 

「うん」

 

『偶には電話頂戴ね』

 

「わかった、できるだけこまめに生存報告は入れる。じゃあ、またね」

 

『ええ、またねメル様』

 

 

 

 

 

…そして、通話終了後。

 

「…ねぇ…それ、1人でやって楽しいの?」

 

ずっと1人バトスピに勤しんでいる少女に声を掛けるメル。

 

「仕方無い。相手がいないから」

 

「もう…ほら、ルール教えて?メルが相手になってあげるから」

 

「良いの?」

 

少女の目がきらりと輝き、メルは苦笑する。

 

「こんなの1人でやったって面白くないでしょ?」

 

「…じゃあ、このデッキ使って」

 

そう言って少女は盤面の上を1度片付けると、使用していたデッキの片方を渡して来る。

 

渡されたのは攻撃主体の赤属性デッキだ。

 

「初心者ならまずこれから使うのがオススメ」

 

「ご丁寧にありがとう」

 

デッキを受け取り、シャッフルする。

 

デッキとコアをそれぞれ盤面に置いて、バトルを始めると、突然少女が口を開いた。

 

「そう言えば…貴女の名前は?」

 

「え?メルの事知らないの?」

 

「メル…それが貴女の名前?」

 

どうやら、眼の前の少女はアイドルやホロライブには余り興味が無い様だ。

 

それが逆にメルの心苦しさを和らげ、気分を楽にさせる。

 

「うん、夜空メルだよ。宜しくね」

 

「夜空メル、夜空メル…うん、覚えた。私、小町永遠」

 

少女の名を聞いて、思わず苦笑するメル。

 

嘗ての後輩と同じ名前だ。

 

「そう、宜しくね、小町ちゃん」

 

「…下の名前で読んでくれないの?」

 

「ごめんね、同じ名前の知り合いがいるから、わかりづらくなっちゃうんだ」

 

「…うん、そういう事なら仕方無い。宜しく、メル」

 

挨拶を交わし、2人はバトスピを開始する。

 

…そして当然ながら素人のメルはフルボッコにされ、罰ゲームと称して胸をたっぷりと揉みしだかれたのだった。

 

 

 

 

 

『新入生の皆さん、ようこそ!GTアカデミーへ!』

 

そして、入学式が始まった。

 

今回の入校生は総勢で80名。

 

半年の在学期間を終えれば、レーサーとしてのライセンスを獲得できる。

 

しかし、レーサーとしての道を確かなものにする為には、成績上位十名に入り、チームやメーカーからのスカウトを得るのが最も確実だ。

 

困難な道である事に変わりは無い。

 

それでも…

 

(…必ずプロになってやる!)

 

新しい道を示し、送り出してくれた家族の為に、絶対に逃げる事はしない。

 

どんなに高い壁であっても。

 

理事長の挨拶を聞く傍ら、メルは固く拳を握り締めた。




アカデミー初日からお友達ができました。

小町永遠
CV.井澤詩織
親友兼ライバルポジ。
出演作品は4月放送の新アニメ「HIGHSPEED Étoile」。
幼い頃からレーサーである両親の英才教育を受けており、才能と実力は折り紙付き。
しかしレース以外の知識に乏しく、友達がいない。
メルにとっては【元ホロライブ】という色眼鏡を抜きにして自分を見てくれる貴重な存在であり、永遠もまた自分にできた初めての友達としてメルを大切に思っている。
…反面、絶壁である事がコンプレックスになっており、メルの大きな胸に嫉妬する事も。
趣味はアナログゲームとカードゲーム(どちらも1人プレイ)。

余談…実は同作に【浅河カナタ】というキャラがおり、こちらも出そうと思ったが名前的な意味でメルちゃんが余計混乱すると思ったので片方は諦める事に。
どちらにするかコイントスで選んだ結果、今回の永遠が採用されましたとさ。
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