Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─   作:疲れた斬月

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第1話。

ホロメンとの初邂逅。

作者の最推しであり、シンのヒロイン候補の4人に登場して貰いました。

シリアスはプロローグが最初で最後と言ったな、あれは嘘だ。

はい、申し訳ありません。

シリアス抜きでこの回を書けるだけの技量は僕にはありませんでした。

という訳でもうほんのちょっとだけ続くんじゃ。

…まぁギャグはやるんですけどね(おい)


第1話「異世界転生って誰が考えたんだろうね」

「う…うぅ…」

 

微睡みの中にいたシンの意識がゆっくりと浮上して行く。

 

「そっか…俺、アスランに…」

 

月面に叩き付けられた衝撃のせいか、覚めてはいながらも今一ハッキリとしない意識の中、シンはその事実を心の中で何度も繰り返していた。

 

モニターがブラックアウトし、非常電源に切り替わったコックピットの中で、サブモニターを操作してデスティニーの状態を確認する。

 

───両腕及び右足を損失。

 

ハイパーデュートリオンエンジンに異常発生、出力低下。

 

メインスラスターに異常発生、飛行不能。

 

戦闘続行不能。

 

まともに戦える状態ではないのは言うまでもなかった。

 

しかし、今のシンにとってはどうでも良い事だった。

 

───負けた。

 

その事実だけがシンの心を占めていた。

 

全てを護る為に、戦争を終わらせる為に力を手に入れ、此処まで戦って来たのに。

 

あれだけの啖呵を切っておきながら、負けてしまった。

 

───アークエンジェルと交戦していたミネルバの皆は大丈夫だろうか。

 

ルナは無事に生きているだろうか。

 

レイはフリーダムに勝てただろうか。

 

色々な不安や疑問が頭の中に浮かぶが、すぐに消えてしまう。

 

今まで自分が信じていたもの、護ろうとしていたもの。

 

その全てが敗北した。

 

「…」

 

結局、アスランの方が正しかったのだろうか。

 

自分が間違っていたのだろうか。

 

自分なりに考えに考え、間違っているかもしれないという事も覚悟の上で戦いに挑んだのに…いざとなると、やはり受け入れるのが怖くなってしまった。

 

自分には、もう何も残されていない。

 

これからどうすれば良いのだろう?

 

そんな事を考えながら、狭いデスティニーのコックピットに身を沈めていた時だった。

 

 

 

 

───ギシッ。

 

「…?」

 

何かが軋む様な耳障りな音がした。

 

未だにハッキリしない頭を何とか回転させ、音の発生源を探ろうとする。

 

───ギシッ、ギシッ。

 

また音が鳴った。

 

しかも、どうやらかなり近いらしい。

 

───ギシッ!ギシッ!ギシッ!

 

ってかこの音、デスティニーから鳴ってないか!?

 

流石のシンも一気に意識がクリアになり、慌ててシートの下から拳銃を取り出して身構えるが、時既に遅し。

 

───バゴォォォォォン!!

 

凄まじい音と共に、デスティニーのハッチが開けられた。

 

「あ、人がいる!」

 

「大丈夫ですか~?」

 

開かれたハッチの外から白い光が差し込み、2人の女性が覗き込んでいる。

 

1人は胸周りしか隠していないリボン付きのコルセットに、下半身もこれまた腰周りしか隠していないショートパンツといったやたら露出の多い服を着た短い金髪の少女。

 

もう1人はまるで中世の世界から来た様な肩当てと胸当て、手甲を身に付けた銀髪の女性。

 

彼女の手には形こそ歪んでいるが、たった今開けられたデスティニーのハッチが握られている。

 

───え?

 

まさか、抉じ開けたのか?

 

呆気に取られていたシンだったが、そのまま立て続けに異変に気付く。

 

───っていうかちょっと待て!

 

俺はさっきまで宇宙にいたんだぞ!?

 

何で人間がいるんだ!?

 

「そら先輩!ちょこ先生!人がいたよ~!」

 

愕然とするシンを尻目に、金髪の少女が誰かを呼びに向かう。

 

───俺は恐らく撃墜された後、アスランか誰かに救出されて何処かのコロニーに運び込まれたのだろう。

 

シンは一先ずそう結論付ける事にした。

 

つくづく、自分の悪運の強さにうんざりする。

 

…だが、シンは気付いていなかった。

 

自分が今、想像を絶する状況に置かれているのだという事に。

 

 

 

 

「うわっ、本物のシン君だ!」

 

続けて現れたのは、長い茶髪に青いアイドル衣装の様な服を着た女性と、白衣を纏った長い金髪の女性。

 

「大丈夫?怪我は無い?」

 

「いや、その…」

 

白衣を着た女性の方がコックピットの中に入って来て容態を尋ねて来るのだが、シンはその女性から思わず目を逸らしてしまう。

 

それもその筈、白衣の下に纏われた彼女の服は、ピンク色の上着のボタンが臍の辺りまで開放されており、小さな蝙蝠の様なタトゥーが刻まれた豊満な乳房が半分以上も露になっている。

 

下半身は下半身で、彼女が穿いているスカートは太腿の付け根を辛うじて隠せる程度の長さしか無く、黒いストッキングを止めるガーターベルトが丸見えで、何かを拾おうとしただけであっさり中の領域が覗けてしまうだろう。

 

こんな目に猛毒な女性と狭いコックピットの中に押し込められた様な状態になれば、思春期真っ盛りのシンにはかなりキツいものがある。

 

さっきの短い金髪の子も露出の多い服を着ていたが…まさか姉妹か?

 

等と考え、極力彼女の身体を意識しない様にしていた所…ある物が目に入った。

 

「えっ…角?」

 

そう、角である。

 

金髪の女性の頭から、立派な2本の角が生えている。

 

そこからトントン拍子で違和感に気付く。

 

「え、羽?ってか、これ…尻尾!?あ、あんた一体何なんだよ!?」

 

よく見ると彼女の背中には蝙蝠の様な翼があり、腰の辺りからは黒い尻尾が生え、細長い脚に巻き付いている。

 

「言いたい事はわかるけど…一旦落ち着いて、とりあえず情報交換しましょ。外に出られる?」

 

「え、あ…は、はい」

 

混乱の極みに達し、頭から煙を噴き始めたシンを角の生えた女性が宥め、外に出る様促す。

 

シンも一先ずは外に出ても大丈夫な様なので、彼女に導かれるがまま、デスティニーのコックピットから這い出た。

 

 

 

 

「とりあえず…助けてくれてありがとうございました。俺はザf」

 

「シン・アスカ君だよね!?」

 

「え?は、はい…そうですけど…何で俺の事を?」

 

シンが自分から身分を明かす前に、茶髪の女性が自分の正体を言い当ててしまう。

 

やたら目を輝かせているが…自分で考えるのも何だが、まさかファンだとでも言うのだろうか?

 

「実は…信じて貰えないと思うけどね?」

 

興奮している茶髪の女性の代わりに角の生えた女性が話し始めるが…その内容は、彼の常識の範疇を遥かに超えていた。

 

今自分がいるのはC.Eとは違う世界の【日本】という国であるという事。

 

自分は【ガンダム】というシリーズ作品の1つ【機動戦士ガンダムSEED DESTINY】という作品の主人公であるという事。

 

今自分を救出してくれた4人の女性の内3人も別の世界から来ており、さらに短い金髪の少女は吸血鬼、角の生えた女性は悪魔だという事。

 

彼女達は動画サイトでの配信活動やアイドル活動を生業としている【Vtuber】と呼ばれる存在であり、魔界やら異世界やらから来ている者もいるという事。

 

青いアイドル衣装を纏い、清純な雰囲気を漂わせる茶髪の少女【ときのそら】。

 

幼女の様な可憐さと、それに相反する豊満な我が儘ボディが特徴的な金髪の吸血鬼【夜空メル】。

 

大人の色気を放つ白衣を纏った悪魔【癒月ちょこ】。

 

デスティニーのハッチを抉じ開け、引き千切るという離れ技をやってのけた色々とデカい女騎士【白銀ノエル】。

 

Vtuberグループ【ホロライブプロダクション】のメンバーだそうだ。

 

「…まさか、今デスティニーの下敷きになってるのって」

 

「ウチの事務所だね」

 

メルの返答に絶望するシン。

 

戦争に敗れ、身寄りの無い状態で異世界に飛ばされたかと思いきや、いきなり多額の借金が追加だ。

 

───神様、あんたは俺に恨みでもあるのか?

 

「あ、弁償とかそういう事考えてるなら大丈夫よ?ウチの事務所、しょっちゅう壊れるからこういう事慣れてるのよね」

 

「そうなんですか?なら良かっtいや良くないだろ!?しょっちゅう壊れるって何だよ!?」

 

ちょこからの助け船に安堵の息を漏らすも束の間、とんでもない発言に思わずツッコミを炸裂させる。

 

いやはや慣れって怖いね、などと暢気に談笑する4人だが、どんな日常送ってんだコイツらと叫びたくなる。

 

弁償の事を考える必要が無くなったのは良いが、しょっちゅう事務所を壊される社長の身にもなれというものだ。

 

こんな一癖も二癖もありそうな女性達を纏め上げる社長…一体どんな傑物なのやら。

 

「それはそうとして…別の世界に飛ばされて来たって、あれもですか?」

 

そう言って、シンはデスティニーの側で横たわる鉄灰色の残骸…∞ジャスティスに目を向ける。

 

「あれ、シン君の仲間なの?」

 

「…元、ですけどね」

 

ガンダムにあまり詳しくないメルの質問に、シンが少しぶっきらぼうに答える。

 

「乗ってるのってまさか…」

 

「…はい、アスラン・ザラです。多分コックピットの中で気絶してると思います」

 

物憂げなそらの言葉にシンが続ける。

 

「おっしゃ!団長が抉じ開けたる」

 

「んな事しなくて良いですよ!コックピットの近くに緊急用の開閉スイッチある筈ですから!」

 

一瞬でシリアスな空気を吹っ飛ばしたノエルにツッコミを入れながら、シンは他の4人と∞ジャスティスに近付いた。

 

 

 

 

「…ン…ラ…」

 

微睡む意識の中、微かに聞こえる声。

 

何処かで聞き覚えがある声だが、意識が覚醒し切っていない為か全く思い出せない。

 

───誰だ?

 

「…スラ…ア…」

 

───そうだ。

 

俺はシンを庇って、仲間に撃たれて…。

 

そうか、俺は死んだんだ。

 

この声は…お迎えとやらでも来たのだろうか?

 

「アスラン!!」

 

「ヘァァァァァァッ!!?」

 

大きな声で呼ばれて急激に意識が浮上し、奇声を発しながら飛び起きるアスラン。

 

「ったく、やっと起きた…」

 

「シン!?お前、生きて…って、俺もか!?それに、この状況は一体!?」

 

「あ~、説明するとちょっと面倒なんですけどね?」

 

目を覚ましたアスランに、シンはそら達から聞かされた話を説明した。

 

「にわかには信じがたいが…俺達がこうして生きているのがその証拠か。しかし、俺達がアニメーションやコミックの世界の住人だと!?」

 

「何ならシン君も知らない様なアスラン君の秘密も知ってるよ?」

 

「!?わ、わかった、信じよう。だから勘弁してくれ…」

 

あっけらかんと話すそらに、思わず冷や汗を流しながら要求する。

 

一方のシンは、まるで「折角アスランを弄り倒せるネタが手に入ると思ったのに」と言いたげな残念そうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

シンもアスランも、一先ず自分達が置かれている状況は理解できた。

 

ならば、次に考えるべき事は。

 

「それで…シン様とアスラン様はこれからどうするの?」

 

「「…」」

 

これから何をするか、である。

 

今までMSパイロットとして無数の戦場を駆け抜け、スーパーエース級の戦果をポンポン叩き出して来た2人だが、そんな彼等にとっても今置かれている状況はイレギュラー中のイレギュラーだ。

 

「この世界って、異世界から来てる人達も多いんですよね?ならその技術とかを使って、俺達を元の世界に戻す事って…」

 

「う~ん、ちょっと失礼な事言っちゃうけど…アスラン君の話が本当なら、2人共帰らない方が安全だと思うよ?」

 

そらの言葉にムッとした表情を浮かべるシンとアスランだが、それも一瞬で引っ込んだ。

 

実際、彼女の言う事は何も間違っていない。

 

下手に元の世界に戻れば、あのラクス・クラインこそが正義だと、オーブの理念こそが絶対だと狂信する者達によって間違い無くシンの身柄は拘束され、裁判を受ける事すら許されずに銃殺刑に処されるだろう。

 

現にカガリ・ユラ・アスハが誘拐された後、一時的にオーブを統治していたユウナ・ロマ・セイランも彼女本人が帰国した途端に国家反逆罪に処され、権力の座を追われたのだ。

 

否、銃殺刑だけで済めばまだ優しい方かもしれない。

 

下手をすれば拷問に掛けられ、苦痛の極限を味わいながら嬲り殺しにされる可能性も否めない。

 

それ程までにあの2人に集まる忠誠心は常軌を逸しており、最早崇拝や信仰と呼んでも過言ではない粋に達している。

 

一方のアスランも、クライン派がシンに対して働いた一方的な殺戮が世間に漏れない様、口封じの為に殺される可能性があると来た。

 

そういった事情を抜きにしても、死んだ人間が何事も無かったかの様にノコノコ戻って行ったりすれば大混乱間違い無しだ。

 

だが…

 

「戸籍もコネも何一つ無いんじゃなぁ…」

 

そう言って乱暴に頭を掻き毟るシン。

 

此方の世界で暮らすにしても、最早前提からして詰んでいるのだ。

 

戸籍が無ければ仕事もできないし、学校にも行けない。

 

物乞いなどした所でろくすっぽ集まらないだろうし、野宿でもしていようものなら警察の世話になる可能性大だ。

 

だからと言って折角助かった命、簡単に野垂れ死んでやるつもりなど毛頭無い。

 

だが、何も良案が無いのも事実だ。

 

そら達も一生懸命考えてくれているが、やはり打つ手無しの様だ。

 

そんな時、シン達の背後に1台の車が停車し、助手席から『hololive』とプリントされた黒いTシャツを着た眼鏡の女性と、運転席からは顎に無精髭を生やした人の良さそうな中年男性が降りて来た。

 

「お~、こりゃまた随分派手にやってくれたなぁ」

 

そう言って朗らかに笑う男性。

 

「誰ですか?あの2人」

 

「眼鏡のお姉さんの方が裏方のAちゃんで、おっちゃんの方が社長のYAGOOね」

 

ノエルの返答を聞いて、シンは言葉を失った。

 

目の前で事務所がMSの下敷きになっているのに、凄まじい胆力の持ち主だ。

 

「ん?おお!そうか、君達が…シン・アスカとアスラン・ザラだよね?」

 

「やっぱ知ってんですか…」

 

「初めまして、ホロライブプロダクション社長のYAGOOです」

 

そう言って、男性は名刺を差し出して来る。

 

名刺には【谷郷 元昭】と書かれており、YAGOOとは愛称の様だ。

 

「知ってると思いますけど一応…ザフト軍FAITH隊所属、シン・アスカです」

 

「オーブ軍アークエンジェル所属、アスラン・ザラです」

 

律儀に挨拶を返す2人。

 

「君達の事は聞かせて貰ったよ。これからの話なんだけど…どう?行く宛無いなら暫くウチに居る?」

 

YAGOOのその提案は、シンとアスランにとっては正に渡りに舟と言えた。

 

現状、自分達はこの世界から完全に孤立しており、このままでは何も出来ずに餓死する運命は避けられない。

 

ならばまずは、この世界での生活の基盤を作る手段を確保するのが最優先事項だ。

 

この世界については、その中で学んでいけば良い。

 

アスランと顔を見合せ、互いに頷き合ってから、シンはYAGOOに告げる。

 

「はい、宜しくお願いします!」

 

 

 

その夜、シンとアスランはYAGOOの家に案内され、空いている部屋を使わせて貰う事となった。

 

部屋には余裕があるので、2人の戸籍と仮住まいが用意できるまでは自由に使ってくれて構わないという彼からの厚意だった。

 

「シン、その…すまなかったな」

 

「…何がです?」

 

「まぁ、色々だが…まずは護ってやれなかった事だ。まさか…仲間があんな事をするとは…」

 

此処に飛ばされる切っ掛けになったとかいう件か、とシンは心の中で呟く。

 

アスランに撃墜され、身動きすら取れなくなっている自分は彼等にとって格好の獲物だったのだろう。

 

どうにかして自分を護ろうと間に入ってくれたらしいが、やはりと言うか、多勢に無勢だった様だ。

 

「…別に、アスランが気にする事じゃないですよ。戦えなくなったMSが戦場で辿る運命なんて、そんなもんですし」

 

シンがそう割り切っている一方で、アスランは当時の仲間達の狂気を思い出していた。

 

───全ては、ラクス様の為に!!!

 

カガリ様の為に!!!

 

…今思い出しても背筋が凍り付く様な感覚に襲われる。

 

味方であった自分ですらこのザマなのだ。

 

彼等の標的となっていたシンがあの光景を目の当たりにしていたら、最低でも精神崩壊は免れないだろう。

 

墜落時の衝撃で気を失ってくれていたのが幸いだった。

 

「俺の方こそ、すいませんでした。わざわざ庇って貰って…」

 

「それこそ気にするな。俺がそうすべきだと思ったからやったまでだ…それに、部下を護るのは上司として当たり前の事だしな」

 

道こそ違えてしまったが、アスランにとってシンは大事な部下だ。

 

今まで彼と向き合わずに苦しめてしまっただけの自分にそんな資格がある筈も無いのは百も承知だが、それでもシンが大事な存在だという事に変わりは無かった。

 

「…」

 

シンは前にも1度、上官に敵の攻撃から庇って貰った事があった。

 

フリーダムが初めて戦場に現れた時の混乱で、自分も彼も武装を破壊されてしまった。

 

身を守る事すらできなくなってしまった自分を庇い、敵の攻撃を受けて死んでしまったのだ。

 

その後、彼からの最初で最後の命令を黙って守り抜いた。

 

とても気さくで面倒見の良い人で、アスランも「俺もあんな風にやれたらな」とボヤいていたのは記憶にある。

 

「それよりも…成長したな、シン」

 

「え?」

 

唐突なアスランの言葉に首を傾げるシン。

 

「俺は、お前を助けなければと…議長やレイに操られているお前を救い、正しく導かなければと…傲慢に考えていた」

 

「…俺やレイの事、そんな風に思ってたんですか」

 

ジト目でアスランを睨むシン。

 

何度も戦場で背中を預け合い、時には自分の傍若無人な振る舞いの後始末までしてくれた親友と、自分に力を与え、道を示してくれた人をそんな風に言われると、やはり良い気分にはならない。

 

「あはは…だが、お前はお前なりに答えを出し、自分の信じるものを貫く為に戦った。そして、俺はそんなお前を力で抑え付ける事でしか否定できなかった。肝心の俺自身は何も答えを出していなかったんだ」

 

「アスラン…」

 

他人の考えを否定するのは簡単だ。

 

完璧な答えを出せる人間などいない。

 

どんなやり方にも、必ず粗というものがある。

 

それを突き付け、相手が屈服するまで糾弾すれば良いだけなのだから。

 

だが、答えを出し、それに基づいて行動するとなるとそういう訳にもいかない。

 

自分が間違っているかもしれない、他に良いやり方があるかもしれない、という恐れを抱いたまま進まなければいけないのだから。

 

「そんなやり方でしかお前の正しさに勝つ事ができなかった、俺の…」

 

其所まで言った所で、アスランはバツが悪そうに苦笑しながら続けた。

 

「…完敗だ、シン」

 

その言葉に、漸くシンも自分の心の中に掛かっていた靄がすっきりと晴れ渡って行くのを感じた。

 

「止めて下さいよ、アスラン。もう、そういうのは良いんです」

 

態度では反発しながらも、心の中では常に尊敬していた上司が自分を認め、敬意を示してくれている。

 

それだけで、もう十分だった。

 

「C.Eなんて…もう捨てて良い過去だって決めたんです。俺自身で」

 

「…そうか」

 

今度こそ、自分達は手を取り合って前に進んで行ける。

 

2人は漸くそう信じる事ができた。

 

…因みに、後になって機動戦士ガンダムSEED DESTINYのアニメを見たシンとアスランが「ハイネはこんな無様な死に方してない」「シンの強さはこんなものじゃないし、キラを強く描き過ぎ」「俺はルナとこんな仲になってない」「結局これ誰が主人公なんだよ」等々、ありったけの文句を言いまくったのは完全な余談である。




本作でのシンとアスランの和解シーン、如何でしたでしょうか?

「キラとアスランの敵だから」「ザフトだから」「シンは間違っていた」という理由でシンを嫌う人がいますが、そんな風に単純に決めている人を見るとやはり嫌な気持ちになります。

僕は個人的に「正しいと同時に間違ってもいた」のがシンで「間違ってはいないけど正しくもなかった」のがキラ&アスランだと思っています。

デスティニープランは確かに政策の内容や導入のムーブメントに関しては問題やツッコミ所は多々ありますが、あの世界を一旦落ち着かせる為の政策としては最良の案の1つであるというのが公式の見解なので、やはり無条件に「間違った政策」とは言えないのではないでしょうか。

それに対するキラ達の批判は決して間違ってはいないのですが「じゃあデスティニープランがダメならどんな方法があるか?」と聞かれると、多分彼等は答えられないですよね。

「明確な答えを出していなかった」という点ではキラ達はお世辞にも正しいとは言えないし、言ってはいけないと思います(望む未来は議長と同じと本人達が言っているから尚更)。

シンとの戦いに勝利したものの、そういう点ではアスランは完敗を喫していたという形で決着を付けさせて貰いました。

実は双方が手を取り合った先にこそ本当に正しい答えがあった、という結末は種運命の数少n…ゲフンゲフン、ガンダムらしいポイントではあると思うんですがね。

因みにホロライブを知らない人は是非「癒月ちょこ」で検索してみて下さい。

こんな人と狭いコックピットの中でほぼ密着状態にあったシン君の心境や如何に(ゲス顔)

ではまた次回。
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