Hololive SEED DESTINY─止まらない運命─ 作:疲れた斬月
それでは最新話どうぞ。
シンとアスランの日常は大体こんな感じです。
吹雪が吹き荒ぶ中、2機のMSが幾度と無く交錯する。
互いに光の弾丸を撃ち合い、光の剣を振るいながら何度も何度もぶつかり合う。
そして、白と蒼を基調とした装甲のMS…【インパルス】が相対している蒼い翼を背負ったMS…【フリーダム】目掛けて左腕の盾を投げ付ける。
投擲した盾にビームを放つインパルス。
…だが、放たれたビームは盾を逸れて明後日の方向へ。
動揺するインパルスのパイロット。
次の瞬間には、目の前にフリーダムが迫っていた。
慌ててビームサーベルを抜刀して迎撃を試みるが、時既に遅し。
フリーダムの両手に携えられたサーベルがインパルスの両腕をあっさりと削ぎ落とす。
そして、振り上げられたフリーダムのサーベルがインパルスのコックピットに迫り…
…パソコンの画面に『撃墜』の文字が浮かんだ。
「にゃーッ!また負けたぁ!!」
「猫やんけ」
「狐じゃい!」
最早様式美と化したやり取りを交わすシンと狐の獣人の少女【白上フブキ】。
今彼女がやっていたのは、シンがC.Eで対フリーダム戦を想定した訓練の為に行っていた戦闘シミュレーションである。
ホロライブのガンダムが好きなメンバー達の「フリーダムとの戦いを体験してみたい」という要望に応え、シンが態々用意したのだが、漏れ無く全員フルボッコにされている。
1番長く保ったそらの同期のロボット【ロボ子さん】ですら1分と保たなかったのだ。
「う~…もう1回!」
リベンジしようとするフブキだが、シンがパソコンをサッと奪い取る。
「俺も動画の編集あるんで後にして下さい」
「にゃぁーッ!!」
「相変わらず騒がしいな…」
「葬式みたいな空気よりよっぽど良いでしょ?」
呆れた様なアスランの呟きにそう答えるシン。
シンとアスランがこの世界に飛ばされてから早数ヶ月。
あれから2人はYAGOOに戸籍やら仮住まいやら、何から何まで用意して貰い、仕事やら現代知識やら徹底的に頭に叩き込み、今ではそれなり以上に仕事ができる様になっていた。
多くの先輩Vtuberに見守られながらのシンのデビュー配信は、それはもう大きな波紋を呼んだ。
ホロライブ史上初の男性Vtuberデビューだったり、それがまさかのガンダムというビッグタイトルの主人公だったりで、良くも悪くも注目が集まった。
その他にも、ホロライブの面々に魔界やら異世界やらに連れて行かれたり、魂抜かれかけたり、事務所が派手にぶっ壊れたりと色々あったが、2人共元気で今の世界を満喫している。
此処数ヶ月、突拍子も無い事だらけの毎日で思い悩む事もあったが、ホロライブの賑やかさにそれも些細な事と割り切れる様になっていた。
今となってはこのお祭り騒ぎの様な毎日をそこそこ楽しんでいる。
C.Eでは悪い意味で忙しく、血生臭い毎日を送っていたが、それを忘れる程騒がしくも面白い新しい世界での毎日をシンとアスランはすっかり気に入っていた。
「お2人共すっかりウチに染まりましたね」
「いやはや、馴れというのは怖いな」
友人Aの言葉に思わず苦笑するアスラン。
裏方として加わったアスランだが、機械関連にめっぽう強い彼は凄まじい勢いで仕事を覚え、遂には他の社員の仕事も余裕で引き受けてみせる程の才覚を発揮していた。
徹夜勤務記録ホルダーとかいう不名誉通り越して辞退したいレベルの称号を持っていた友人Aだったが、アスランが来てからはほぼ毎日定時前に仕事が終わる様になり、寧ろ暇な時間が増えたと言う程だ。
シンはタレントとして、アスランはスタッフとして、それぞれホロライブの大きな戦力となっていた。
「…ん?」
ふと、シンが怪訝な声を上げる。
「どうした?シ…ン…」
尋ねようとしたアスランも、続けて友人Aも違和感に気付いた。
「…何ですかこの臭い」
そう言って顔を顰めるシン。
何処からか甘ったるい様な酸っぱい様な、それでいて何かが焦げている様な、色んな匂いが混ざり合った不快な臭いが漂って来た。
辺りを見回すと、キッチンの方から黒い煙が立ち昇っているのが見えた。
「「「…」」」
こんな事するヤツはアイツしかいねぇ。
「…シン」
「はい」
「ハアチャマッチャマ~♪」
意味のわからない言葉を口にしながらキッチンで何かを作っているのはホロライブ1期生【赤井はあと】である。
彼女が取り扱っている鍋の中には、グロテスクな色と見た目の何かがグツグツと音を立てて煮込まれている。
その中にドクロのマークが描かれた小瓶に入った赤い液体をこれでもか、これでもかと言わんばかりにぶち込んで行く。
「完成~!蠍とタランチュラのメントスコーラ煮、デスソースを添えて!早速皆に「振る舞わないで下さい」ザクっ!?」
キッチンに入って来たシンが【あろんだいと】と書かれたテープが貼ってあるハリセンでツッコミを1発。
「また変なもん作って…皆が腹壊したらどうすんですか!」
「う~…!」
鍋の中のグロテスクな物体を処分しながら説教するシン。
ホロライブ随一のクレイジーガールである彼女はこうしてよく変なモノを作っては皆に振る舞おうとする。
「うぇっ、ひっでぇ臭い…ってかこのソース何ですか!?絶対ヤバいヤツでしょこれ!?」
「料理には少しの刺激も必要なのよ!」
「あんたのは刺激ありすぎなんですよ!悪い意味で!!」
デビュー当初はもっと刺々しくも可愛らしいツンデレキャラだったそうだが、今のクレイジーガールとしてのキャラが確立されてから出会ったシンには全くそのイメージが湧かない。
あのままだったら確実にシンのヒロイン候補に加わり、ツンデレ同士のやり取りをニヤニヤしながら書いていただろう、とは作者の談である。
「ったく…もう止めて下さいね」
「それはちょっと」
「…」
呆れた様に溜め息を吐きながらシンはキッチンを後にする。
暴走する者を止めるストッパーも楽じゃないな、と心の中で呟きながらC.Eでその役割を果たしてくれていた親友に改めて感謝した。
「シン様、どうしたの?」
「はあと先輩がまたやらかしました」
「またやったのね」
キッチンを出たシンにちょこがコーヒーを差し出す。
受け取ったコーヒーを啜り、ホッと息を吐く。
ちょこも砂糖とミルクを入れた自分のコーヒーを口に運んだ。
「此処での生活には馴れた?」
「今でも結構振り回されますけど…お陰様で」
「騒がしいでしょ、ウチ…w」
「まぁ、馴れると結構楽しいですよ。葬式みたいな雰囲気の毎日よりは全然良いですし」
何処と無く「良い雰囲気」を漂わせながら談笑する2人。
此方の世界に飛ばされて来たばかりの頃、C.Eでの戦いの日々で負った心の傷と、新しい世界に馴染めないストレスで心身共に疲弊していたシン。
ちょこは養護教諭としてのノウハウを活かし、そんな彼のメンタルケアを率先して請け負っていた。
他のホロライブの面々も色々と気に掛けてくれてはいたのだが、やはり中心となっていたのが彼女だったのは言うまでも無く、今現在シンが最も心を開いている相手と言っても過言ではない。
「シンやミネルバにとって本当に必要だったのは彼女の様な存在かもしれない」とはアスランの談である。
「…ッ!?」
突然シンの表情が強張る。
何やら妙な気配が此方に向かって来ている。
───何か来る!
「危ない!!」
「キャッ!?」
己の背筋を電流の如く迸る衝動に突き動かされるまま、シンはちょこを押し倒し、彼女の身体に覆い被さる。
その直後、窓ガラスが割れ、一瞬前までちょこがいた空間に赤色のヤベーイヤツが突っ込んで来た。
太陽をバックに立ち上がるその女の名は…
「宝鐘マリン…出☆社」
「じゃないだろう!」
「グフっ!?」
アスランが【しゃいにんぐえっじ】と書かれたテープを貼ってあるハリセンでツッコミを入れたのはホロライブ3期生の【宝鐘マリン】。
赤い髪にこれまた赤を基調とした服が特徴的なキツ…もとい、海賊(船は無い)である。
「いってぇ~…!レディの頭をいきなり殴る普通!?」
「レディは窓ガラスを破って入って来たりしない!」
マリンとアスランが漫才を繰り広げる傍らで、シンはちょこに怪我が無いか尋ねる。
「うぅっ…ちょこ先生、大丈夫ですか?」
「あ~、ちょこは大丈夫なんだけどね?」
「?」
そこまで言われた所で、シンは漸く違和感に気付いた。
右手に何か柔らかくて温かいものが当たっており、中指と薬指の間に弾力のある突起物の様なものが挟まっている。
すべすべとした肌触りで、本来手に当たっているべき感触…ちょこの衣服の感触が無い。
「あ…んっ♪シン様ったら、そんな…♡」
右手に少し力を込めると、ちょこがやたら甘い声を上げる。
そして、遂に自分が触っているものが何なのかを理解し…
「…すいませんでしたぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」
コンマ01秒の速さでちょこの身体から離れ、見事な土下座を披露する。
…シンが触っていたのはちょこの胸だった。
それも衣服越しですら無く、露になった右側の乳房を直接。
アニメで目にしたシンの
「顔を上げて、大丈夫だから。ね?」
ちょこはそう言って優しく微笑みながらはだけた服を直す。
───天使かこの人。
悪魔なのに。
ちょこめいと(ちょこのファンの総称)にバレたら殺されるだろうな、とシンは心の中で呟いた。
現にこの場面を自ら書いておきながら妬ましく思っている
「あ~ん!シン君ったら大たん"ッ!?」
煽る様なマリンの一言をアスランのとどめの一撃が遮り、彼女の意識を刈り取った。
「シン、窓ガラスの掃除を頼んで良いか?」
「え?別に良いですけど…」
「すまない、助かる。終わったら事務所の談話室に来い。面白いゲームを思い付いたんだ」
そう言ってマリンをずるずると引き摺って行くアスラン。
「あ、動画の編集…ま、後で良いか」
「シン様」
「はい?」
気の抜けた様な返事をするシンの耳元に唇を近付け…
「…気持ち良かったわよ♪」
「ッッ!?」
蠱惑的な笑みを浮かべてそう呟き、アスランの後を追う様に去って行った。
───前言撤回。
やっぱ悪魔だあの人。
「アスラン、窓ガラスの掃除終わりまs…って何だこりゃ!?」
「ありがとう、シン。これか?言っただろう、面白いゲームを思い付いたと」
掃除を終え、事務所の談話室へとやって来たシンの目の前には、付け髭を付けられ、デカい樽に詰められているマリンの姿があった。
樽の傍らには様々な形状の刀剣が置かれている。
「シン君~!へるぷみー!」
「これ当たり引いたら何かあるんですか?」
「今日の買い出しで欲しい物をマリン様が1つ奢るわ」
それを聞き、シンは樽の傍らに置かれている
「…ハズレだな」
「チッ」
「おいぃ!船長の事はまるっと無視かい!」
喚き散らすマリンを当然の如く無視し、ちょこが
「…あら、ちょこもハズレだわ」
「止めてぇ!船長吹っ飛んじゃう!お星様になっちゃう!」
「おっは余~!何だか面白そうな事をやってるな!」
「いや船長何やってんの!?」
事務所の扉を開けて入って来た2人はホロライブ2期生の鬼の少女【百鬼あやめ】とホロライブゲーマーズ所属の狼の獣人【大神ミオ】。
「サプライズを仕掛けたと思ったら樽に詰められました」
「成る程わからん」
そう答えるミオを尻目に、あやめが
「…ぐぬぬ、ハズレか」
「ちょっ、流石にこれ以上は止めた方が…」
「因みに当てたら今日の買い出しで欲しい物をマリンが1つ奢るぞ」
制止しようとしたミオもそれを聞いてノリノリで
「Nooooooooooooo!」
「お~、何か面白そうな事やっとんね」
「マリン、今度は何したの?」
続けてノエルと共に事務所に入って来たのは褐色肌のエルフ【不知火フレア】。
ノエルやマリンと同じホロライブ3期生である。
2人は顔を見合せてニヤリと笑い、
「よし刺すぞ~!」
「何処がええやろ?」
流れに悪乗りした。
「どうかお慈悲を~!」
悲痛な叫び声を上げるマリン。
こうしてホロライブの1日は今日も過ぎて行く。
前回の感想でホロスターズに関するコメントを頂いたので此処で明記させて貰います。
申し訳ありませんが、本作にホロスターズは出て来ません。
理由としては、僕がホロスターズの存在を知って間も無い為、知識が全くと言って良い程無いからです。
この先知識を得て興味が湧く様であれば出すかもしれませんが、その際は本来の設定や世界観から大きく外れた形で出す事になるかもしれません(まぁホロライブ4期生以降の方が先にデビューしてる時点でほぼそうなってるんですがね)
ではまた次回(・ω・)ノシ