ポケモンは裏面が旧態だったし、デジモンも旧ルールだったし、ガッシュとか、ボーボボのカードゲームなんてのもありました。
もちろん、デュエル・マスターズも始まりを知る者でしたし、ギャザも持ってました。
なんだがよく分からない萌えイラストのカードゲームもありました。
しかし、どんなカードゲームでも、それが対人ゲームである以上、絶対に超えられない不文律があったのです。それは
友 達 は 別 売 り で す 。
カザリの運んできた衣服を飾り、値札を付け終えたアイは、レジのタッチパットを操作して、レジにお金を入れている。
「あの…日向さん?もしかしてこのお洋服、ご自身で購入されるおつもりなの?」
「え?あたしは買わないぞ?
カザリが持ってきてくれた服は、可愛いけどあたしは動きやすい服が好きだからな!
……何より、こいつらを売ってお店繁盛させていかないと、この店には未来がない。」
笑顔のまま、少しだけ瞳が光を映さなくなったアイ。
「そ、その…頑張ってくださいませ。ワタクシもなるべくお手伝い致しますので。」
「おう!ありがとうな、カザリ!」
「と、当然のことですわ!
お……………おともだち……ですもの。」
照れた顔でもじもじ笑いながら、カザリも毒のない返事を返す。
もう完全にトゲは抜けたらしい。ちょろい。
「ちゃーす裕介のアニキー!矢吹チョー、入ります。」
アイとカザリが優しい空気を放出していると、そこに無粋な野郎が一人入り込んで来た。
「お、チョー。おはよう!」
「お、お、おはようごさいますわ!!矢吹さん」
「うーす。アイもお嬢もグッモーニン。」
チョーのお嬢呼びに少しだけ寂しそうな顔をしながら、カザリは表現し辛い笑顔で返した。
「チョー。もういい加減カザリを名前で呼んでやってくれよー」
「んー……オレとしては別に、お嬢を名前で呼んでやらんこともない。」
「ーー!」
瞬間、パアッと明るい表情に変わるカザリ。
そりゃあもう、明るい。人懐っこい犬のように。尻尾があれば振っていることだろう。
(………さて、ここでこの光景を眺める同士諸兄。
オレがわざわざ羽衣山カザリを名前で呼ばない理由は察していただけたと思います。
このお嬢、トゲを引っこ抜いた瞬間オモチャ同然にいい反応返すんスよ〜。これを手放すのはもったいねえよなぁ…?(満面のゲス顔))
「やっぱ止めた。」
「はうぁっ!??」
期待は裏切られ、崩折れるカザリ。
「チョー。虐めるのは良くないぞ。」
よしよしとカザリを慰めながらチョーを言い聞かせるように言うアイ。
その言葉は、そろそろ受け入れてやってくれと説得するかのように。
だが無駄である。
この男、ただカザリの期待の表情とソレを打ち砕かれた様子が見たいだけなのだから!!
「い…いいのです……日向さん。ワタクシ、皆様に嫌な気持ちになることをたくさん言っていたのですから……まして、日向さんは、そんなワタクシにもずっと、一緒に遊んでくださると言ってくださっていて、ワタクシがその言葉に勇気を持てなかった。
これは身から出た錆なのです………っ。
ワタクシ…お許し頂ける日まで、償いながら待つ所存ですわ!!」
「よく言ったカザリ!!あたしもカザリがみんなと遊べるように説得していくからな!」
「ああ……ありがどうございまずぅわぁぁぁー……日向ざぁん…!!」
「アイで良いぞ。カザリ!」
「はいっ!アイさんっっ!!ワタクシ精進致します!!」
(…………このコントが見れる限り、オレはお嬢をお嬢と呼び続けていく所存です。
元悪役女子が改心してイジられキャラになるシチュが好きな大友のみんなはオレを応援してくれよな!)
「さてと、一通りお嬢で遊んだところで、お嬢。そろそろ例のブツを貰おうか?」
「ーー」
チョーのその一言に、カザリの動きが止まった。
「うお!?ど、どうしたカザリ!石化したぞ!」
「あ……あの…………!」
「ふっふっふっ……オレはこの時を待ちわびていた……そう…
ギャルのパンティを貰い受ける!!」
「あ…あわわ…!!」
「まーさか、用意出来てないとは言うまいなぁ…?お嬢ォ……」
「ぴいっ!??」
「今週末まで待つ。ただし、用意出来なければ、お前と葉山のパンティをその場で頂く。
言ったはずだよなぁ!?羽衣山ァ!!!!」
コキコキと片手だけで指を鳴らし、理性の感じられない顔で笑うチョー。
その様相を見て、庇うようにメイカに走り寄るカザリ。
「わ、我が羽衣山の家系には、ギャルと呼ばれるような格好の方がおりませんでしたぁ!
ど、どうか罰はワタクシだけにしてくださいっ!!メイカは悪くありませんのぉ!!」
「……………。」
「コーホー……団体の存在意義とは団結にある……成果を得る時も一緒……そして………罰を受ける時も一緒だァ……!!!!」
ダース・ベイダーのような呼吸音をさせながら、今にも実行に移さんとするチョー。
なんとかメイカだけは庇いたい泣きべそのカザリ。
無言かつ、殺気を抑えて、無表情に機を待つメイカ。チョーに見えない方の手にはサバイバルナイフ。
「こんにちはー。裕介さん。
あれ?チョー君が早い。珍しいね、この時間にチョーくんがいるの。」
((チッ……))
あと一瞬で行動に移そうとしていたところで、店の入口から可愛らしい声が耳に心地よく響いた。
委員長にして、カザリの心をへし折り、ついでに更生するきっかけになった少女、森園メルーーの参戦に、二人が内心舌打ちした。
そして
「委員長。おはようごさいますわ!!本日もご機嫌麗しゅう!」
もはや実質舎弟と化したカザリが、訓練された兵士の如く一部の無駄もない完璧な動作で土下座と挨拶を敢行した。
「おはよう、羽衣山さん。今日もいい子に出来るかな?」
「はいっっ!!羽衣山カザリ、身命を賭して良い子で居続けます!!」
現在、見守り期間と称して、メルは未だカザリを見定める姿勢を崩さず、感情の籠もらない瞳で土下座のカザリを見下ろしている。
その目は、路傍の石ころを見る目と変わらない。
そして、他の二人は
(森園メル……っっ!!よくも我が主にあのような痴態を!
………しかし……私は止められない……だって………)
「…………♡♡」
土下座で表情は見えていないが、メイカには分かる。
羽衣山カザリは、監視されようが品定めされようが、無視されるより見てもらいたい構ってちゃんだ。ゆえに……
どれだけ惨めに扱われても、どれだけ見下されるような扱いでも。無様に泣かされても
森園メルの、監視するような無遠慮な視線に、主は悦びすら感じている………。
(ああ……みなさま……ワタクシを見ていてくださる……ずっと…ずっと…見ていてくださる……ワタクシが何をせずとも…ワタクシを見て……お友達と言ってくださったアイさんも……ワタクシを弄んで楽しむチョーさんも………そして、メルさま……)
(ーー今、主が顔を上げれば……恍惚とした表情を浮かべていることだろうから………)
そして、矢吹チョーもまた動けない。
(今動けば、メルはコタロウにこのことをチクるだろう……そうなれば、フィジカルで劣るオレは逃げ切れねえ……コタロウ本人をどうこうすることは不可能ではないが…その後ろにはリュウがいる……文字通りの逆鱗が寄ってきて、触れたと言い掛かりをつけて襲ってくる!!
読んだマンガのワザをそのまま真似するようなバトルセンスを持つリュウを敵に回せば、流石のオレもただでは済まない……くっ!
何でメルにバレることが巡り巡ってリュウとやり合うことにまで発展させられねばならんのかっっ!!)
ド田舎で身体を資本に走り回り遊び回る、時代に逆行する生活を営む矢吹チョーもまた、フィジカル面では都会の中学生くらいなら正面から勝てる程度には優れている。
しかし、同じ場所で同じように生活していても格差が生じるのは人間の性。個体別の必然。
矢吹チョーはタイマンで臥竜リュウには勝てないのである!!!!
よって、両者ーー必然の停戦!!!!必須のブレーキを踏む!!!!
偽りの和睦!!!!
((ちぃッッッッ!!!!!))
内心の舌打ちを隠し、チョーが話の舵を切り出した。
「よう、メル。
今日はお嬢がオレたちに勝利のプレゼントを贈ってくれる日だからな。
こんな時くれえなら早起きもあるってもんよ。矢吹チョー様はチャンスを逃さねえ男なんだぜ。キリッ」
「へーそうなんだねー」
(良し!決まった!!パーフェクト!!完全なるどうでもいいからスルーする流れを引き寄せた!さすがオレ!!偉い!!!!)
「ーーそんなにパンツが欲しかったの?」
(オワッター)
「ふっ……燃え尽きたぜ……真っ白な灰に……」
「何だ?チョー。ボクシングするのか?」
「なぁ…アイ。何で男はこんなにパンツが好きなのに、其れを罪と咎められるんだろうな…?」
「……?なんかよく分かんないけど、そんなにパンツが欲しいならやろうか?」
「いらっっっーーねえよお前のパンツなんざぁ!!!!
全部プリ●ュアとかのキャラ物じゃねえか!!!!!」
「チョーの好きそうなヒラヒラな大人のパンツもあるぞ?」
「ーー下さい。キリッ」
「はい。一万円になります。」
そう言って、商品の飾ってある棚から大人のお姉さんしか履かないようなショーツを持ってきたアイに絶望したチョーは灰になったのだった。
ーーーーーーーーーー
「あ、そうですわ。ワタクシ実はもう一つ、面白いお土産をお持ちしましたの。」
それは、ある程度時間が経過して、多分今日はもうこれ以上集まらないと思われるようなタイミングになってカザリが発言した言葉だ。
ちなみに本日のイカれたメンバーは
森園メル、日向アイ、矢吹チョー、羽衣山カザリ、葉山メイカの5名。
チョーが野郎一人ハーレム状態だが、これはラヴコメでは無いので、誰もチョーを愛さない。
「何だ何だ?何を持ってきてくれたんだーカザリ?」
「はい。こちらに一つだけ隠しておいたダンボールですの!
アイさん、開けてみてくださいませ」
「おう!分かった!!」
ガサゴソガサゴソ……
箱の中身は
「おー!これもしかしてゲームか!?」
「これ…デュエルターミナルじゃねーか?」
「矢吹さん惜しいですわ!
こちら、カタチは同じものですが、中身は時代に見合った新時代のツールですのよ!」
「お嬢様、このようなものまで用意されていたのですか!?」
「はい!ワタクシ、皆様に少しでも喜んで頂ければと思い、お祖父様におねだりしてしまいましたわ!」
「それで、これは何が出来るものなのかな?羽衣山さん」
「はい、それでは説明させていただきますわ!!
コホン。こちらは、世界中のデュエルディスクから合意のあった試合データだけをマザーコンピュータに回収して、充分なデータが取れたデュエリストのデータのみをピックアップして制作された、デュエルツール。
その名も
『ぼっちでもデュエリストコレクション!!!!』
別売りのお友達も、ネット回線も必要としない!まさに一人ぼっちのデュエリストでも世界中のデュエリストの方々と擬似的に対戦出来る、孤独に優しいデュエルアイテムですの!!
ワタクシはこれで、コーチの来ない日はずっと!!雨の日も風の日も、デュエルの腕を磨いていましてよー!!!!」
「………」
「………」
「………」
その悲しすぎる告白に、メル、アイ、チョーは絶句した。
「…………あ、あら…??ど、どうされましたの皆様方…??
もしかしてこれ…もう持っていらした……とか…??」
「あー………カザリ。」
「はい!なんでしょうかアイさん。」
「………………………やりかた、教えてくれるか?」
「もちろん!!喜んでお教え致します!!!!」
『デュエルがしたいなら、友達とすればいいんじゃないかな?』
ひまわりのような満面の笑みではしゃぐカザリに対して
その言葉がどんな猛毒や、ノコギリで切断されることよりも彼女の心を抉る言葉のナイフなのだと気付いたアイは、言葉と涙を飲み込み……せめて、彼女がぼっちデュエリストライフを満喫していた世界を認めて、理解し、そしてなるべく多く遊びに誘い出すことが、自分に出来ることなのだと、羽衣山カザリに歩み寄るのだった。
「別にデュエルなら友達とやーー」
ガバッ!!!!
「黙れ愚民、頼む愚民!!!!
一欠片でも人の心があるなら、その一言だけはお嬢様に聞かせないでくれ!!!!!(小声)」
「お、おう……さすがに今のは軽率だったな……すまん、ちょっと動揺しすぎた……(小声)」
あまりの悲しさに葉山メイカですら頼む形でチョーを黙らせる。
そしてチョーもまた、動揺の余りの失態を侘びた。
(………………もうそろそろ…許して上げたほうがいいのかな……。
いつまでも怒っていても、誰も幸せにならないし……)
機械がデュエル相手という、6人にとってあまりにも血の通わない悲しい答えに、メルも思わず同情と和解の念を禁じ得ず。
「それでは早速、デュエリストコレクションを起動致しますわね!」
羽衣山カザリの楽しそうな笑顔に、無粋な横槍など入れられるはずも無かったのだった………。
「た…楽しみダナー……」
現代は本当に素晴らしい時代です。
ネットで繋がれば同じ趣味が共有できるし、何より金に目がくらんだ企業が次から次へと、そういう環境を整えてくれるのですから。
おじさんが子供の頃なんてね……一人ぼっちがそれでもカードゲームしたかったら、ゲームボーイに頼るとかするしかなかったんですよ。
現代よりもずっと、友達は別売りですの言葉は重かったんたんです。
若人よ、ネットでもリアルでも、友達は宝です。
最終的に飽きて売るカードより、ゲームより、仲間は大切です。
親友という環境トップは常に握っておきましょう。
でないと………カザリみたいになりますよ?
これまでを読んで一番好きなキャラに投票してください。
-
臥竜リュウ
-
森園メル
-
阿修羅ゲキ
-
日向アイ
-
矢吹チョー
-
風間コタロウ
-
羽衣山カザリ
-
葉山メイカ
-
シキ