アイ。
デッキを改造した。
リュウ。
第二話からようやく2回目のデュエル(笑)
メルと合わせて出番に恵まれない系である。
コタロウ?あの娘は人気あるから別に……
sideアイ
pm08:30
「…………うん。出来た。」
神条キョウヤAIに敗北した夜、日向アイは自室でデッキを組み直していた。
アイは元々、あまり勝利に拘るタイプではなく、デッキの調整も殆どしない。『かっこいいモンスター』が手に入れば、入れてみるくらいで、そもそも勝つための戦術など、アイのデッキにはない。
彼女のデュエルの根底は、友達が見てて楽しいかどうかにある。
もちろん、アイもデュエルは楽しい。口調に見合うほど、趣味も男の子にシンパシーを感じる物が多く、可愛いカードよりは、格好いいカードが好きだ。
それでも、女子の友達もいるから、綺麗な天使族のカードも採用している。
一緒に遊べればそれで良かった。デュエルの勝利はあくまで遊びの結果でしかない。それで良かった。
何より……
「…………あたしは……勝つ為に戦うと、その結果に直進するデッキしか組めないからな……そんなの、みんな楽しくないよな。」
(リュウはドラゴン族。
メルは可愛いデッキ。
ゲキはパワーデッキ。
チョーは……普段のデッキは、あたしにはよく分からない。
コタロウは忍者デッキ。
みんな、それぞれ個性があった。だからあたしも、何かみんなと違う、面白いデッキにしようと思った。
そしたら、手元に儀式モンスターがたくさんあったから、それで組んだ。
あんまり儀式召喚が成立しない時期もあったけど、裕介にぃがこっそり儀式召喚がしやすくなるカードを多めに入れてくれたおかげで、今の形になった。
それから……みんな、楽しそうにあたしともデュエルしてくれる。
…………でも……裕介にぃは、実はそんなあたしのデュエル、少しだけ不満なんだと思う。
だって、あたしが勝つと楽しそうにしてるのに、負けたら何も言わないんだ………。
怖い……怖いよ………裕介にぃ、どこにも行かないで………。)
「………このデッキなら、きっともっとちゃんと勝てる筈だ。でも……」
みんな………あたしのこと……嫌いにならないかな……?
「………………リュウ。」
午前08:00 日曜日
本日も快晴。
コンビニ一つないド田舎で、子どもたちがハマったのは、一つのカードゲーム。今日もまた、子どもたちは村唯一の駄菓子屋に足を運び、デュエルに興じる。
「チャース、裕介ニーチャン。チャース」
今店に入ってきた少年は、臥竜リュウ。農家の家の孫で祖父と二人暮らしのファッションヤンキーボーイだ。
「……あれ?いつもの手入れされてない芝みてえな頭のイケメン顔が居ない。」
少し耳をそばだてて、生活音を探る。裕介は駄菓子屋の店主だが、ほぼ引き籠もりと同一の存在だ。家の中のどこかに居るだろうと、勝手に中に入っていく。
「おっじゃましまんにゃわー」
聞こえてくるのは水の落ちる音。ソレが、キュッという音を立てながら消音する。
「風呂か。今日はバカ暑いからな。」
ともあれ、居場所は分かった。ちょいと失敬して用事を済ませてしまおう。着替え中かもしれんが、まぁ大丈夫だろう。裕介ニーチャンだし……そんな気持ちで脱衣場へ行き、扉を開けた。
「チャース、裕介ニーチャン。朝早くで悪いけどちょっと聞きたいことがあんだけっどもさー……」
「……あ、リュウだ。おはよう〜」
開け放った扉の向こうに居たのは、ボサボサの黒髪でも、まして成人男性でもなく。
「……………アイ?」
「おう、アイだぞ。リュウ。おはよう〜」
「……………。」
濡れた明るいオレンジの髪をバスタオルで拭いていた、全裸のアイだった。
パタン。
それをリュウが認識して、そっと扉を閉めるまで、約十秒。
ガチャ。
「リュウー」
「ーー何で出てくるんだよ!しかもマッパのままで!!」
「だっておはようって言ったのに……リュウ返してくれてない……。」
「人類にはコミュニケーションと同等、時に勝る優先事項ってもんがあんだよっ!!!」
アイの手に持つバスタオルが大きめのものだったおかげで、その柔らかな肢体は大部分が隠れてこそいる。
だが、ところどころ見えてはいけない部分が見えてしまっているがために、リュウは目のやり場が殆ど無い。
発育は6人の中では下の方。胸は平坦、身長も自分と比べると小さい。
おおよそ身体的な部分で異性を感じさせるところなどないはずなのに……。
「おはようって言ってもらって無い……2回も言ったのに、リュウが無視する…………」
何故か、悲しげに見つめてくる上目遣いの瞳に、色気すら感じさせる。
そんなアイに耐えかねたリュウは
「お は よ う ご ざ い ま す !
さっさと服着て出直して来い!!!!」
「……うん!!着替えてくる!!」
さっさと本人を満足させて、退場させるしかすべを持たなかった。
「はー……ったく。まさかアイが入ってたとは……何でこんな朝早くに駄菓子屋居るんだよ」
「今日は裕介にぃが居ないから、早めの留守番に来たんだぞ。」
「ーーまだいたのかよ!さっさと服……着てるな。」
「着てるぞ?」
「早くねーか?」
「そりゃ、パンツ履いて、ホットパンツ履いて、上はブカブカのノースリーブだからな。いきなり暑くなってきたし、衣替えだな!」
「あー、そうだな……。」
「それじゃあ服も着たことだし……リュウ。」
「あ?」
朝っぱらから振り回されてげんなりしたリュウに、アイが太陽のような笑顔で一言。
「おはよう!」
「…………………………おはよう……」
何故か一層疲れた顔で返す、リュウなのだった。
一通り終わり、アイとリュウは店の方に戻って来ていた。
店の中のクーラーを付けて、二人並んで座り、棒2つで固められたアイスを割って食べる。
「今日は暑いな〜リュウ。」
「さっきも聞いたぞ、ソレ。」
「そうだっけ?」
「そうだろ。暑さで脳がやられたか?」
「むぅ〜。リュウは時々、言葉がいじわるだなぁ。
あたしはもっと、優しい話がしたいのに。」
「それならコタロウに頼め。餅は餅屋。カンカツ違いだ。」
「あ、それ知ってるぞ。オヤクショ仕事ってやつだ。
リュウはあたしと話すの……嫌?」
「質問は秘書を通してお願いします」
「ん〜〜!あたしはリュウと話すの、好きなのにな〜!楽しいのにな〜!!
リュウがいじわるばっかり言う!いじわるされるの嫌だな〜〜!!
それに昨日なんてずっといなかった〜!」
不満げに床に頬を擦りつけながら、
「畑の修復してたんだよ。
………っつーかさ、アイ。お前って、誰にでもそんな感じなわけ?」
「
「他に誰もいない時、二人きりの時、別人みてぇにガキっぽいんだけど?お前の情緒どうなってんの?」
「何を言ってるんだリュウ。十歳は立派にガキだぞ?」
「うんうんそうそう、その感じな?それがみんながいる時のやつな?
ナイフで痛いとこ刺す感じ。叩くときは寝込みか背中って感じ。
お前、何でそう……なんつーの?2人きりの時に露骨に甘えてこようとすんの?クセなの?」
「何でって……リュウは、あたし達の兄ちゃんだろ?
だから甘えたくなるんだよ」
きょとんとした顔で返すアイ。何をそんな当たり前のことを?とでも言いたげな顔だ。
「いやそんな設定知らんが?何、俺たち6人血縁なの?異母兄弟なの?オレじーさんと血の繋がり無いの?」
「血縁…じゃないけどさ〜。リュウは、一番兄ちゃんって感じだったんだよ。」
「ほほ〜ん?まぁ、リュウさんはぁ?アニキ体質?みたいな?仕方ねーっつーかー?」
「そう、そのドヤ顔で語る小物臭さと三下臭。とってもノセやすくて扱い安いところが特に。」
「喧嘩売ってんのかオドレ、コラァ!!!!」
「あははっ!」
「あー傷付いたわーマジで心breakんだわ〜無いわ〜!もう今日は口利きかねえわ〜!!」
「あははっ!ごめんごめん。あんまりリュウが意地悪ばっかり言うから、ちょっとだけ仕返し。
でも、リュウが兄ちゃんだって思ってるのは本当だぞ。
メルも、ゲキも、チョーも、コタロウも。
きっとみんな、思ってる。本当に困った時、友達の中で一番最初に相談したくなるのは、きっとリュウなんだ。だから……きっと……」
「上げて落としてまた上げてきたよ。なんなのこの飴と鞭。」
「ーーリュウ!」
「何だ!!」
「デュエルしよう!!!!」
「脈絡。」
「リュウが勝ったら、明日の掃除当番代わってあげるぞ。」
「ーー今この瞬間、俺は修羅と化す。残念ながら勝たせて頂きます。」
「いや〜ほんとに扱いやすいなーこの
愛おしそうに笑うアイの表情は、どちらかと言うと、『妹』より『姉』の方が似つかわしい気がした。
「ところでアイ。裕介ニーチャンがいないのに、デュエルテーブル動かせんのか?壊したらヤベーんじゃねーか?」
「何言ってるんだ?リュウ。
裕介にぃが居なくて動かせない機械なんてこの店にはないぞ。」
「へぇ〜そんなに簡単なのか?この辺の機械。」
「逆にあたしが居なくて裕介にぃが使えない機械は、割とガッツリある。POSだってあたしがやってるぞ!」
「…………それでいーのか安堂裕介………」
「そう言う駄目なところが、可愛いよな〜♡」
デレデレとした表情で両頬を手のひらで抑えるアイ。
「ごめん、さっき素直に受け入れるところが兄ちゃんとか言われたけど、俺ちょっとお前のこと受け入れられるか不安になってきたわ。」
「大丈夫だぞ。リュウなら出来る!あたしは信じてる!」
「それ昨日コタロウにも言われたやつ!!
『畑の修繕はもう無理だから諦めて畑は無かったことにしようぜ』って言ったらおんなじこと言われたぞ!!
しかも最終的には
『遊んだらちゃんとお片付けしないと、悪い子になるでゴザルよ!めっ!』
って説教されたんだぞ!!オカンか!!いねーけど!!」
「……もしあたしがリュウと結婚したら、コタロウも一緒に家族になるのか。いいなー!それ。」
「結婚しねーしコタロウはかーちゃんじゃねえし、お前裕介ニーチャンの面倒見るんじゃねーのかよ!!
この狭いクソド田舎で多夫一妻性作る気なのか村が滅ぶわ!!」
「多夫一妻…?
なぁ、リュウ。あたしは裕介にぃの事は大好きだけど、結婚とかは考えてないぞ?」
「……何そのカミングアウト今日一番、肝抜かれたんですけど。
え?なんなのお前?あんだけベタベタしてて別に恋愛対象じゃありませんって何?
死ぬまで面倒見るつもりだけど結婚とかじゃありませんって何!??俺もうお前の価値観受け入れる以前に全貌を見失ってるんですけど!!?」
「まぁまぁ。そんなに興奮すると倒れるぞ。リュウ。はい、ジュース。」
「これ飲みかけじゃねーかよ……ディスタンスはどこ行ったんだよ。飲むけど。」
「女はミステリアスな位が魅力的だって、美月先生が言ってたよな。」
「あの女教師はミステリアスなんじゃなくて、単に頭のネジが外れて常識が狂ってるだけだからな?
真似しちゃイケません。お兄ちゃん許しませんよ?」
チューとストローでジュースを飲んでいるリュウにふふん笑ったアイは……
ガチャッ。(←くっそ古いボイスレコーダーの録音を止めるボタン押し込んだ音。)
「ーー今の所、録音しといたぞ。美月先生に伝えておくな」
美月先生→みんなの担任。専門は科学。趣味は薬品を使った人体実験。若い美人女教師。童顔。
学校の校長先生に校舎の床が意外と美味しいですと言わせた人物。
「さーて何だったかな〜あーそうだデュエルだー!
さあ、デュエルしようか。アイ。お兄ちゃんがドーンと受け入れてやるぞー♪アッハッハッハー!!」
「わーいデュエルだー。おにいちゃんだいすきー(笑)」
「ついでにその録音もバキッと消しておこうか?」
「あたしに勝てたらな。リュウ。」
「ーーこの瞬間、リュウさんは鬼神と化す。お気の毒ですが1ナノメートルの勝ち筋すら与えわけには行きません。」
(…………うん。このくらいマジモードにしておけば、充分かな。)
アイは手に持っていた
(ごめんな、リュウ。脅すようなことして。
勝っても負けても、明日の給食のゼリーもあげるからな。)
心中で謝りながら、結んでいたサイドテールを左右逆に結び直した。
「ーーそれじゃあわたしも、全力で勝ちに行くよ。リュウ!!!!」
「ーー退路の無い龍の本気を味わえええーー!!!!」
「「デュエルーー!!!!」」
ポーン。デュエルテーブルの自動システムで、先行を示すランプはリュウの側に点灯した。
(良かった。運が向いてる。
手札も良いし、リュウは後攻で攻撃するのが得意な分、先行で全力は出し辛いようになってる。
昨日の負けで知った悔しさで、デッキに勝つ力を求めたわたしの今のデュエル。万全の状態で試せる……試せるんだ………。
うん……大丈夫……っ)
「オレのターン。
モンスターを1体セット。ターンエンドだ。」
「ーー!!」
(モンスターが裏守備表示。伏せカードも無い理想的な盤面!
絶好のチャンスだ!リュウには気の毒だけど、このターンで決める)
「わたしのターン!ドロー。魔法カード『増援』を発動。」
「増援……?あいつのデッキにレベル4以下の戦士族なんていたか?」
「あたしは『重装武者-ベン・ケイ』を手札に加えて、そのまま召喚。」
「何だあの変なオッサン。初めて見たカードだな……え〜っと、何何?
重装武者-ベン・ケイ ATK500
通常攻撃に加えて、自分の装備魔法の分だけ
珍しいな、お前が効果モンスター召喚してくるの。
いつもの『切り裂かれし闇』と通常モンスターの手札補強ゴリラ殴り戦術は変えたのか?」
「うん。ちょっとデッキを変えてみたんだけど……まずはリュウとデュエルしたくて。ごめんね、強引に誘って。」
「別に構わねーっつーか、そうならそうと言えば良いのに。
らしくねーなー?」
「あはは…そうだね。
それじゃあ続けるね?
装備魔法『魔導師の力』を装備。」
重装武者-ベン・ケイ ATK1000
(なるほどな。これまでの儀式モンスターを強化して殴るデッキを、ベン・ケイに変更したのか。
確かにこれなら、攻撃力の確保はしやすいし、デッキに採用するカードの選択肢は増える……が、何だ?この余裕のねえデッキコンセプト。こいつ
「もう一枚。『魔導師の力』を装備するね。」
重装武者−ベン・ケイ ATK2500
「ほーん。火力は必要な分だけに絞って確実に相手をブチのめす……ってわけか。
ハッ…随分急に勝ちにこだわり出したじゃねーか、アイ。」
「……リュウ、何か……怒ってる?」
「いや、別に?ただ、そう言う『相手を倒すための計算』とかすんの、嫌いなのかと思ってただけだ。
攻撃力重視と言えば聞こえは良いが、お前の場合、その大火力を相手を倒す為に使ってるんじゃなく、ただ魅せものにしてる印象が強かった。
少なくとも、確実に相手を仕留め切るための戦術なんて、お前にしちゃらしくない。チョーなら大いに分かるが。アイツゲスいし。」
「…あは、チョーの扱いが酷いぞ、リュウ。
でも、そうだね。私は、攻撃力が高いモンスターで攻撃すると、見てるみんなは楽しいかなって、思ってたから。勝ち負けには拘って無かったよ。
でも……今のままじゃ私、勝たなきゃいけない時に勝てないから!
装備魔法『ビッグバン・シュート』を装備!!」
「鬼か。」
ベン・ケイ ATK3900(4回攻撃可能。貫通能力持ち)
「バトルフェイズ!ベン・ケイでセットモンスターに攻撃!」
「…………。」
ベン・ケイが槍を振りかぶると、裏側のモンスターが開示される。
仮面竜DEF 1100
「あれは……ドラゴン族のリクルートモンスター!」
「戦闘破壊されたことで、効果発動だ。」
「う、うん……あと、戦闘ダメージも入るね。」
「だな。」
ダメージ2800
リュウLP8000→5200
「仮面竜を攻撃表示で特殊召喚だ。」
「…………そっか。ベン・ケイはあと3回攻撃出来るから、私の勝ち……だね。」
自分の勝利がほぼ確実になったアイは、何故か浮かない顔で俯いている。
「…………嫌なら止めてもいいぞ?」
「……ううん。私は大丈夫。ちゃんと……勝つためのデッキを組んで、ちゃんと……勝てるって分かったんだから……大丈夫……大丈夫……っ」
「ーー誰が勝てるって?4枚も手札失って、そっからどう逆転する気だ?」
「え?何……言ってるのリュウ?」
「追い詰められてんのはお前だ。アイ。
なにせお前のこのワンショットキルは失敗するんだからな。」
「そ、そんなことないよ……だって、リュウの場にはリバースカードも無いし………」
何故か、少し期待するような表情でリュウを否定するアイ。
「そう思うなら掛かってこい。お兄ちゃんが受け止め切ってやるよォ!!」
「う、うん……行くよリュウ!!
ベン・ケイで攻撃!!」
重装武者-ベン・ケイ ATK3900 VS 仮面竜 ATK1400
リュウLP2700
「おっしゃあ!!目ェかっぽじってよ〜く見てやがれェ!!!!
仮面竜の効果発動ォ!!!!」
「どうするつもりなの……リュウ?仮面竜じゃもう受けきれないのに!」
「ばァか言ってんじゃねェよ!!あんな無駄に効果活かしきれねえカード3枚も入れるかよォ!オレが呼び付けるのはコイツだ!!
オラ来いやァ!レベル8『グランドタスク・ドラゴン』!!!!」
グランドタスク・ドラゴンATK1400
「レベル8のモンスター!?」
「グランドタスク・ドラゴンの効果発動ォ!!
召喚・特殊召喚成功時、自分以外の場の2枚を対象に取って踏み潰す!!
ベン・ケイとビッグバン・シュートを踏み砕けェ!!」
『グオオオオオオオーー!!!!』
グランドタスク・ドラゴンは、景気の良い咆哮と共に、非力なオッサンと、持ち物を微塵の容赦も無く軽快に踏み潰した。
「きゃっ!??」
「まだまだァ!!グランドタスク・ドラゴンが効果でカチ割ったカード一枚につき、攻撃力は600上がる!よって2枚分の攻撃力上昇だ!!」
グランドタスク・ドラゴン ATK2600
「うそ……レベル4のモンスターから出てきて、カードを2枚破壊して、攻撃力まで上がるの!?凄い!!凄いよリュウ〜!!」
「ハッハァ〜!!どんなもんでェ!!
お前が多少デキの良い頭捻ったデッキを使ったところで、戦いならリュウ様の独擅場だァ!!
だからオメーは変に遠慮してねーで、もっと全力で来いや!
お前が強くなっても、お前が自分の力に遠慮する暇なんざねーくらいの速度でオレは強くなる!
何で争い嫌いのお前が、急に強くなりたいなんて思ったんか知らねーがな。練習ぐらい幾らでも付き合ってやるよ!!
お前はオレのスピードに振り落とされねえ努力だけ心配してやがれェ!!」
「……………うんっ!!
私はカードを2枚伏せてターンエンド!」
「しゃあ!行くぜ。
ドロー。メインフェイズ!!」
(ああ……やっぱり、リュウ……やっぱり……
まだ裕介が村に現れる以前、外遊びに飽き出した子どもたちは、年寄りから様々なゲームも教わっていた。
将棋、囲碁、花札、麻雀。
有名な知的遊戯は、6人の子どもたちは全員出来る。
その時、勝つのは大体アイだった。
悪知恵が働くリュウより、真面目で努力家なメルより、バカなゲキより、トリッキーなチョーより、単純に頭が良いコタロウより……。
日向アイは天才だった。特に完璧な理論が物を言う将棋と囲碁に関しては、教えた年寄りも相手にならないレベルで、完璧な神の一手を繰り出し続けられる、完全な理論派。
運に左右されないゲームは、日向アイの独擅場。
だから……みんな、アイと将棋や囲碁はやらなくなった。強過ぎて、全然ゲームにならないからだ。
なら、花札は?実はこれも良くはない。アイは
だから、デュエルモンスターズと出会うまで、アイは誰かと一対一で勝負することは殆どなくなっていた。
寂しかった。遊んでほしかった。
(また、遊んでもらえなくなるくらいなら……あたしは、勝ちなんていらない……楽しくしよう?遊ぼうよ。みんな……)
「手札から、アレキサンドライドラゴンを召喚。
バトルフェイズだ!!」
「うん…。」
そんな中でも唯一、リュウだけは一対一で遊んでくれた。
本人はどっちかって言うと麻雀が一番楽しかったらしくて、あんまり将棋や囲碁は興味が惹かれなかったらしいんだけど……
『リュウ……あたしと将棋しない……か?』
『おーいいぞ。麻雀は二人じゃつまんねーしな。』
『……囲碁も、したい。』
『アレ時間かかるじゃねーかよ!
ったく、しゃーねーなー。今日はアイに付き合ってやるかー』
『……………ありがとう。リュウ。』
『礼なんて言われることしてねーよ。ただ遊ぶだけじゃねーか。』
「アレキサンドライドラゴンで攻撃だ!」
「そのまま受けるよ!」
アレキサンドライドラゴンATK2000
アイLP6000
「グランドタスク・ドラゴンで攻撃!」
グランドタスク・ドラゴンATK2600
「そこは止めるよ。リュウ!
攻撃宣言時、罠カード発動!『カウンター・ゲート』!
攻撃を無効にして、一枚ドロー!引いたカードがモンスターカードなら表側で召喚も出来る!」
「ちぃっ!ちょっと勿体ねえが仕方ねえ!チェーン2。
速効魔法『ライバル・アライバル』発動!!グランドタスクをリリース!!
来やがれ!!『ストロング・ウィンド・ドラゴン』!!」
ストロング・ウィンド、ドラゴンATK3100
「来たね、リュウの切り札!」
「本当は素の火力が高いアレキサンドライドラゴンをリリースしたかったんだが、手札0のお前にドローさせるくらいなら、こっちの方がマシだってな!!
おら行け!!ストロング・ウィンド!!
ストロング・ウィンド・ドラゴン ATK3100
「もう一度攻撃宣言時、罠発動!『カウンター・ゲート』!!」
「2枚ともカウンター・ゲートかよ!!」
「えへへ……実は『ライバル・アライバル』使ってカウンター・ゲートを無効にしてくるのも計算済みだったして。」
「お前本当……バカみてぇなキャラして抜け目ねーよな……」
「バカは余計だよ!私6人の誰よりお利口さんだもん!」
「お利口さんは自らダメ男に引っかかって人生捧げようとしねーんだよ!!!」
「仕方ないじゃん!それが私には幸せに感じちゃったんだから!
本当はリュウのことだって面倒見たかったんだよ!!」
「オレはダメ男じゃねーよ!!」
「自分んちの畑ぶっ壊した癖に〜!コタロウにも怒られたんだーや〜いや〜いリュウのダメ男〜!!要介護対象ー!」
「こいつマジ………!!(ピキピキ)」
「さぁーってと。お利口さんな私は、計画通りリュウのストロング・ウィンド・ドラゴンの攻撃を無効にして、『カウンター・ゲート』でドローしまーす。ドロー!」
「ターンエンドだ!!」
「私のターン、ドロー!
行くよリュウ!もう遠慮なんてしないから!負けても知らないよ!
墓地の装備魔法『魔導師の力』を除外して『ゴッドフェニックス・ギア・フリード』の効果発動!このモンスターを特殊召喚する!」
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ATK3000
「墓地の装備魔法をコストにしただけで攻撃力3000のモンスター特殊召喚できんのかよ!!」
「昨日裕介にぃに貰った。更にデーモンの斧も装備するね。
バトル行くよ!
ゴッドフェニックス・ギア・フリードで、アレキサンドライドラゴンに攻撃!」
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ATK4000 VS アレキサンドライドラゴン ATK2000
「アレキサンドライドラゴンは破壊されるが、問題ねえ!
次のターンでストロングが殴り返してやるだけだ…」
「じゃあダメージステップ開始時にストロング・ウィンド・ドラゴンを対象に効果発動!
対象モンスターを攻撃力500アップの装備カードに変えて装備する!」
「ざけんなよオイ!?」
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ATK4500
「陽光ーー装甲斬!!」
「ぐおっ!?」
「ターン終了。」
リュウLP200
手札2
アイLP6000
手札0
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ATK4500(デーモンの斧。ストロング・ウィンド・ドラゴン装備)
「まさか手札一枚からモンスター全滅させられて殴られるとはな……」
「ふふ〜ん。どうだ参ったか〜。ちゃんと倒しきれなかった時の第二プランも用意してるんだもんね〜」
「ああ、ぶっちゃけ参った。」
「…………やっぱり、勝てない?」
「どうかな。次の引きに期待するしかねーな」
「そっか……まあ、そうだよね。リュウ、将棋も囲碁も、一回も私に勝てなかったもんね!……仕方ない、よね。
また、次も遊んでね……。」
「…………………チッ。」
(泣きそうなツラしやがって……)
ガラガラ……。
「お邪魔するでゴザルよ裕介
リュウがここに逃げて来ていないでゴザルか〜?」
「オレのターン、ドローカード!!」
「リュウ……やっぱりここにいたでゴザルな……まだ畑の修繕が少し残っているというのに……」
デュエルに集中していたリュウも、悲しいのを堪えるので精一杯のアイも、コタロウが入店して来たことに気付かなかった。
「来たぜェ!!手札のアームド・ドラゴン・サンダーLv.7を捨てて、効果発動ォ!!
来やがれェ!!パイル・アームド・ドラゴン!!」
(……リュウの口調が本気モードになっている…?
いったい何があったでござる!??)
コタロウは、気配を消してそっとデュエルルームの様子を探り始めた。
「…………ゴッドフェニックス・ギア・フリードの効果発動。
発動したモンスター効果を、装備カードをコストにして無効にして破壊するね。ストロング・ウィンドは返すね。」
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ATK4000
「それならコストで殺したLv.7の効果発動!!『アームド・ドラゴン』カードを手札に加える!!
俺が加えるのは………」
(くそったれバカ野郎!!!!切り札のカードだってのに何でサーチが出来ねえ仕様になってやがんだ腐れボケがッッ!!!!
引くしかねえ…もう何でもいいから、勝てるやつを引く以外にねえ!!!!)
「アームド・ドラゴン・サンダーLv3だ!!」
「……………リュウは優しいね。全然諦めてない。」
「しみったれたツラしてんじゃねェぞ!オレの風はまだ止んじゃいねェ!!それに録音のテープ消すのも忘れんじゃねえぞ!?
魔法カード発動!!『死者蘇生』!!
起きろォ!!アームド・ドラゴン・サンダーLv7!!」
「…………ここから、逆転、出来るのかな?」
「やってやるさ!いいから着いて来い。オレのスピードに!!」
(ーー!!)
リュウの言葉に、コタロウの記憶が蘇る。
『着いてこれるかなじゃねェ!!お前がオレに着いて来やがれェ!!!!』
アイと同じように、自分の才能に苦しんでいたコタロウを、リュウが救った時と、同じ。
(…………仕方ないでゴザルな。畑の修繕は、臥竜翁と二人で終わらせるとしよう。)
「アームド・ドラゴン・サンダーLv.7の効果発動!手札のLv.3を捨てて、デッキから『アームド・ドラゴン・サンダーLv.10を特殊召喚!!!!』」
アームド・ドラゴン・サンダーLv.10
『コオオオオオオオオオオオオオオーーーーー!!!!!!』
目を眩ませる程の閃光、鼓膜を震わせるほどの雷鳴を轟かせ、巨大な翼を拡げた、最強の雷龍がデュエルフィールドに降臨した!!
「ふぇぇ……」
その時、既に外に出ていたコタロウがビビって腰を抜かしてしまったのは、勿論二人とも気付いてはいなかった。
「くうっ……!やっぱりそのモンスター、すっごい迫力だね…リュウ。」
「ハッ!!ちったぁ元気出たかァ!!しょぼくれるなら負けてからにしがれェ!!
コストで墓地へ送ったLv.3の効果発動!!デッキから一枚ドローするぜェ!!」
デッキから力強く引く一枚のカード。これ一枚で勝敗は左右される。運の要素。地頭で劣るリュウが、本気のアイに勝つには、ここで差を生むしかない。
「リュウ………」
(この状況……オレが勝ちを拾うには……あのカードしかねェ。
もし、そいつを引き逃したら……アイツはまた……)
リュウは、アイがこれまで遠慮してゲームをしていたことなんか知らない。
デュエルでも、意味もなく勝ちたいわけじゃないことも知らない。
ただ……
「どいつもこいつも……才能のせいで勝つのが詰まりませんみたいなツラしてんじゃねェよ!!!!
ドロー!!!!」
負けながら勝ちを求めて足掻くリュウには、勝ちたい相手がしょぼくれたツラをしてるのが気に入らない。
「ーー雷鳴轟き大地鳴き、旋風が唄い龍が踊る。」
引いたカードと共鳴したLv.10は、バチバチと電気が鳴り、豪快に、愉快そうに嗤いながら、自身の身を生贄に捧げながら光りに包まれていく。
「アームド・ドラゴン・サンダーLv.10をリリースした!?」
「間に合った……最後の切り札が。
アドバンス召喚ーーレベル8 オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン!!!!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ATK3000
「これは、ゲキと戦った時の切り札…!」
「ああ。アドバンス召喚時効果発動。
ゴッドフェニックスを破壊し、元々の攻撃力分のダメージを与えるぞォ!」
「ゴッドフェニックスの攻撃力は…3000!」
アイLP3000
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ATK3000
「………どうだ、本気出して負ける感想はァ?」
「…………うん。やっぱりわたし、あんまり勝負事に向いてないんだと思う。
あんまり、悔しくないんだ。リュウ。」
「…………けっ、こっちがマジで頭回して戦ったってのにソレかよ。」
「でも、ありがとう。やっぱり、リュウはお兄ちゃんだ。」
「言ってろ。
オッドアイズで、アイにダイレクトアタック。」
「そのまま、受けるよ。」
アイLP0
デュエルが終わって、二人はまた店で二人並んで座っていた。
髪の結びはいつもの通りに戻って、口調も元通り。
仲間全体にとって割と謎なシステムではあるが、もう慣れた。
「また遊んでくれるか?リュウ?」
「ハッ…いつでも来やがれ。
……つーか、誕生日的にはお前の方が姉のはずなんだがな。」
「じゃあ、あたしのことお姉ちゃんって呼んでくれるのか?」
「断固拒否する。こんな人生進んで底なし沼に進んでいく姉とか血縁でも嫌だわ。」
「くすっ…ほんとに、意地悪だなぁ……リュウは。」
「どっちがだよ。レコードが空でした〜とか、魔王かテメーは。」
「ごめんって〜明日の給食、棚ぼた…?ゼリー上げるから許してくれよ、リュウ。」
「七夕ゼリーな。もうすぐ夏休みなのに時期外れだし、消費期限が怪しいよなアレ。」
「ん〜それなら、何か別のプレゼント用意しよっかな〜何が良い?」
「あー…………世界の半分?」
「魔王から離れて考えてくれよ〜!」
「はいはい。オレの望みは、お前が全裸で人前に出なくなるような羞恥心を持ってくれることですよっと……アイスもう一本食うか。」
かったるそうに店の扉をガラガラと空けて、外のクーラーボックスに目をやると……
「あ……。」
「りゅ……りゅう〜…………」
未だ腰が抜けて立ち上がれずに半泣きになっていたコタロウが発見されたのだった。
時間はそろそろ12:00近く。暑さも増す一方。そんな中、白いノースリーブ服のコタロウの服が汗で透けていたのは、自然の摂理である。
「うわっ!?コタロウ、大丈夫か!?汗だくだし服はびしょびしょじゃないか!」
「あ、アイ……さっきの落雷で、腰が抜けて……」
「……え?あれから結構時間だったけど……ずっとそのままだったのか…?」
「……こいつ、運動能力高い割に糞ビビリだからな…」
「そっか〜良し!!それじゃあコタロウ。お風呂に入って汗を流そう!都合よく服も店に売り出してることだしな。」
「う…うう……面目ないでごじゃる……」
「ほ〜ら、あたしの首に腕回してー。」
「うう…上手く立てない………」
「しょうがないな〜コタロウは。
じゃあ一緒にお風呂入ろう。リュウも一緒に入るか?」
「ーーふえええー!???あ、アイ!!それは流石に…!!」
「え〜嫌なのか?でも、結婚したらそのくらい良くあるって……」
「け、けけけ結婚!??一体何の話をしているのでごじゃるうううーー!!??
リュウ、これはどういう状況なのか説明して欲しいでゴザル!!」
「………はぁ………………アイ、オレのさっきの話聞いてくれてた?あ、覚えてない?無いですか。そーですか………」
今日の日曜日はまだ……始まったばかりだ。
後半に続く。
ゲキをそろそろ強化しないとデュエル書けないし、忍者が多すぎてコタロウのデッキ纏まらないしで……どうしたもんか。
何 で 強 化 な ん て さ れ た ん だ よ 忍 者
ヒロイン限定!!人気投票〜!!!!
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森園メル
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日向アイ
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風間コタロウ
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羽衣山カザリ
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葉山メイカ
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シキ
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