そんなわけで、今年初の更新です。
「………………ヒマだぁ」
濡れ濡れスケスケになって腰が抜けてしまったコタロウと、彼女を介助するために一緒に風呂に入ったアイが洗いっこをしたり、女性的な身体的成長について会話の花を咲かせている中、田舎のヤンキー小僧、リュウはテーブルにデッキを広げたままにして大の字で寝そべっていた。
「なんかやることねえかなー」
本来リュウは祖父と一緒にぶっ壊した畑の復元をしなければならない身だ。当然やることはある。
だが、やらなければならないことがあることと、やることがあることと言うのは、言葉としては同じだが、行動に移すまでに上げる腰の重さが羽根と鉄球くらい違うわけで。
要するに、帰って畑の修復を手伝うなどと言う殊勝な選択肢が、遊びたい盛りのキッズにあるわけがないのだ。
「………………」
壁時計を見上げる。時刻はお昼頃。昼食はまだだが、散々アイスやらジュースやら食べていて腹は減らない。
テレビもねぇ、ラジオもねえ、ネット環境もねえ。そんなど田舎に暇をつぶす術はなく…………。
「おじゃまいたします」
「都合よく暇つぶしのオモチャがやってくるわけもなく……お?」
お嬢様の語尾で挨拶の声が上がった先を見ると、そこにいたのは縦ロールの元ドチビ糞ドリル。羽衣山カザリだった。
「御機嫌よう、リュウさん。今はお一人でしたか?」
元嫌われものの高慢さも今は影も形もなく。柔和な笑みでリュウに挨拶をした。
「おう。
今はコタロウとアイが風呂入ってるからオレだけだ」
「お風呂ですか? そう言えば今日は気温が高いですね。皆様、体調を崩すようなことが無いと良いのですが……」
「ふーん」
カザリの言葉に返事とも言えないような返事で返すリュウ。
一悶着あって、解決したことで、特に思うところもないリュウは、別にカザリが嫌いでこんな返事をしているわけじゃない。単純に話がツマラナイから相槌で流しているだけだ。チュッパチャップスの包みを解いている目が死んでいる。
ソレを察したカザリは、すぐに話を切り替える。
「ところでリュウさん。皆さま方は夏のご予定についてお話されることはあるのでしょうか?」
「夏の予定? 何だそれ?」
小学生が夏の予定なんて言えば、それは当然夏休みの予定のことだろう。
だがこの閉鎖的など田舎はそもそも外出だの旅行だのという文化が無い。せいぜい服や電化製品など、自給自足が望めない物を調達するくらい。それだって、テレビもねぇラジオもねぇを地で行く田舎だ。冷蔵庫や洗濯機、あとは発電機がせいぜいだろう。
そんなわけで、この村の子どもたちは、夏休みの予定など無い。勉強から開放されれば、遊ぶ時間が増えるくらいのものだ。
「その、夏休みのことなのですが…………もし、ご迷惑で無ければ皆様を……我が家にご招待させてもらえたら嬉しいのですが。お泊りなど」
「お嬢の家に?」
「はいっ。本当はすぐにでもお誘いしたかったのですが、何分こちらからだと遠方になりますので。
なのでせっかくですから、お泊り会という催しをしてみたくって……如何でしょうか?」
「泊まりねえ……」
おずおずと誘いをかけるカザリに、リュウは関心があるのか無いのか分からない声で復唱した。
それを見たカザリは、焦るような祈るような仕草で重ねて誘いをかける。
「もし足をお運び頂けるなら、最高のおもてなしをご用意致しますわ。
皆様の好きなお食事も用意しますし、退屈のない時間を提供出来るだけの準備もあります! 増々熱くなりますし、我が家の私有地には、プールやウォータースライダーに、アスレチック遊具など、存分に身体を動かせるものも有りますわ。他にご要望が有れば、事前に教えて頂ければ準備出来ます!」
ここまで必死になっていると、営業をかけるサラリーマンのようだが、羽衣山カザリは必死なのだ。
「…………んで、その目的は?」
「そ、それはですね。ワタクシはーーむぐっ!?」
ここまで来てようやく反応らしい反応が返ってきた。ここを逃すまいと、カザリが前のめりに口を開いた。だが、それを遮るようにリュウは包みを解いたチュッパチャップスをカザリの口に突っ込むと、先に話し始める。
「言っとくけど、ここで舐めた嘘付きやがったらオレは行かねえぞ?」
「ーーっっ!?」
「オレが行かねえとなれば、多分コタロウも行かねえかもしれねえ。アイツはオレに毎朝朝飯届けることに必死になってる感じあるしよ」
「あ、あう……っ」
「他のやつらはどうか知らんけど、少なくともメルはまだお前のこと心からは信じてねえし、チョーは普通に命の不安があって行けねえだろうし、そうなると男がいねえ状態でゲキが一人誘いに乗るとは考え辛いな」
「う……あ…………っ」
カザリは口に入れられたチュッパチャップスで歯磨きのようにして口内を弄ばれながら、ため息混じりに話すリュウの言葉に、段々と元気を無くしていく。
「…………何企んでんのか知らねえけどよ。遊びの誘いにしちゃあ必死さが不釣り合いだったぞ。
いつものお前なら、断られてもしゃーねえって感じだけどよ。今回の場合、何が何でもって雰囲気だ。それこそ条件出されりゃ、裸で土下座でもしそうなくらいによ」
「……………」
そしてついに勢いが完全に死んで、カザリは俯いてしまった。
「説明する気ないわけ?」
「…………説明したら、リュウさんは、わたくしのお願いを聞いていただけますか?」
「聞いてやるよ。聞くだけならな」
などと言いながら、リュウはカザリの一回り小さなカラダをひょいと持ち上げて肩に担いだ。
「きゃあっ!? りゅ、リュウさん!? 何をなさるのですか?」
「厄介払いだな。
お前ウザい態度が変わったら、今度はウジウジしてて結局ウザい。丁度いいってことを知らねえのか」
厄介払いと言う単語に顔を青ざめさせたカザリは、慌てて弁明し始めた。
「ーー!? も、申し訳ございません!!
わたくし、皆さまが初めてのお友達で……どう接したら良いのか分からないんですっ!
出来るだけ早急に改善しますので、厄介払いは許してください!! リュウさん! お願いします!! もう一人ぼっちは嫌なんです!! 何でもしますからそれだけは許してください!!
許してえええええぇぇぇーー!!!! 」
恐怖に濡れて泣き叫ぶカザリを気に留めず、リュウは扉を開けると、そのままカザリを追いやった。
すぐに扉を開けようとするが、開かない。外側から開かないようにしたのだろう。
「リュウさん!! 開けてください!! リュウさん!!」
ドンドンと扉を叩く音が虚しく響くも、扉の外に反応は無い。それでも必死にリュウに呼びかけるカザリ。呼びかけるしか出来ない。
もう一人ぼっちは嫌だ。そもそもの始まりは都会の金持ちの小学校に通っていた頃、羽衣山の名前を知らないクラスメイトが、田舎者と罵ってイジメの対象に取ってきたことだ。
最初は今のように周囲と馴染もうと、手探りでやっていた。でも駄目だった。だから今度は弱みを見せないように無理矢理尊大に振る舞った。だが、当然のこととして、そんな人間と友達になりたいものなどおらず、一人ぼっちのままだった。
お付きのメイカは、いつも側に居るわけでもなく。そもそも対等な友として付き合ってくれない。あくまでもカザリはお嬢様だ。
だからこそ、カザリは怪我の功名で得た友達を失うことが酷く酷く恐ろしい。ここで友達を無くしてしまえば、もう一生自分は一人ぼっちなのではないかと、強迫観念に襲われるほどに。
「一人ぼっちに……しないでくださいぃぃ…………!!」
蹲ってしまったカラダが、もう立ち直れなくなってしまうほどに…………。
ガチャリ。
「ーー!!」
ドアの開く音がして、カザリは反射的に顔を上げた。だが、扉は閉まったままだった。
また、一人ぼっちだ……そう思ったその時。
「カザリ!? どうしたんだそんな悲鳴上げて!」
背後から声がして振り向くと、そこには髪もカラダも濡れて生まれたままの格好のアイが驚いた様子で駆け寄って来ていた。
「あ……アイさん……? どうしてここに?」
「え? どうしてって……ここお風呂の脱衣場だぞ?」
「脱衣場……?」
アイに言われて、初めてカザリは自分がどこに追いやられたのか周囲を見渡した。
洗濯機や手洗い場。洗濯カゴ。他にも色々。
(…………倉庫?)
ナチュラルに失礼な金持ち思考に行き着いたが、危なげなく本音を隠してアイに向き直った。
「それで、どうしてカザリは泣いてたんだ?」
「あ、あの…………リュウさんに厄介払いだと、ここに連れて来られたので、てっきり嫌われてしまったのかと思って、取り乱してしまって……」
「リュウが?」
(……さてはうっかりキツいこと言って落ち込ませて、収集が付かなくなったからあたしに押し付けたな)
「…………アイ。様子はどうでゴザル?」
そう言いながら、長く美しい黒髪に流し残しのシャンプーの泡を付けたコタロウが顔だけ出して覗き込んでいた。
「あ……コタロウさん」
「む? カザリ? どうしてこんなところで叫んでいたでゴザルか?」
「あの……」
「あー! そうだ、せっかくだしカザリも一緒にお風呂に入ろう!」
「え……お風呂ですか?」
「おう! あたし達もまだ入ったばっかりだし、店にはリュウだけだしな。女同士の裸の付き合いをしよう! な!」
出来の良い頭で顛末をなんとなく察したアイは、取り敢えずカザリの心を癒やして、その上で話を聞く為に裸の付き合いを提案した。
わざわざリュウがカザリをここに連れてきた以上、少なくともすぐに帰してしまうのは二人にとって都合が良くないだろうとも考えた上での誘いだ。
「…………アイさん、お誘いは嬉しいのですが……コタロウさんもいらっしゃいますし……」
「拙者は構わぬよ。裸の付き合いをするでござる」
「だってさ。まあ、カザリが恥ずかしいって言うなら、今からあたしがリュウの所に行って話ししてくるけど」
「…………分かりました。ありがたくお誘いをお受けしますわ。アイさん。コタロウさん」
「よっしゃー! じゃあせっかくだからお風呂のブクブク追加して楽しもうな!!」
カザリが少し気恥ずかしそうにしつつも裸の付き合いを受け入れたことで、アイは満面の笑みで山盛りのバブルボムを投入して行くのだった。
「…………ふぅ。なんとか落ち着いたみたいだな」
カザリをアイに押し付けたリュウは、入口の側で寝そべりながら聞き耳を立てていたが、風呂場から楽しそうな笑い声が聞こえ始めたことで、一息付いていた。
「これから先もあんな調子じゃ、鬱陶しいったらねえぜ。ウジウジメソメソと……」
学校を除けば友人付き合いがある女子はメル、アイ、コタロウの三人だけなリュウは、キャラ変して……もとい高慢さを叩き潰されて本来の性格になったカザリの、後ろ向きで自信のない態度がやりにくいことこの上ない。いっそドチビ糞ドリルの頃の方がマシなぐらいだ。
「メルはやられたらやり返してくる。
アイは言いたいことははっきり言う。
コタロウも今となってはあの通り。
そんな中でアレだもんなぁ……いっそわざと怒らせて壁を取っ払ってみるか? いやいや、今さっきアイに後始末押し付けといてそれはいくら何でもキレられるか。
つーかメルならスカートの一つもめくってやれば、仕返しに殺しに来るぐらいのことはしそうだけど、今のお嬢はなんか全裸になって土下座とかしてきそうな危うさあるんだよな……」
扱いが面倒な新しい友達の対応について頭を悩ませていたリュウは、アイの上がったぞ〜リュウーと言う声も聞こえないまま眉間にシワを寄せて考え事を続ける。
「あの、リュウさん、さきほどのお話なのですが……きゃっ!?」
「んあ?」
そのため急に頭上から聞こえた小さな悲鳴に思わず目を開けて上を見上げたのは、断じてわざとでは無い。
したがって…………。
「………………っっ」
中断してしまった話しの続きをしようと、真っ先にやってきて偶然リュウの頭のすぐ側にワンピース姿で立っていたカザリのスカートの中身が見えてしまったのは、不可抗力なわけで。
「…………マジかよ」
「………………ぐすっ……お、お見苦しいものを、ぐすっ、お見せしてして……もうし、わけっ……ううっ……」
「リュウーおまたせ〜って、何でまた泣いてるんだカザリ!?」
「リュウ……せっかく元気を取り戻した所だったというのに」
しかしわざとであろうが無かろうが、否のない人間が泣かされていれば、泣かせた方がギルティなのは小学生裁判ではほぼほぼ覆らない血の裁定なわけで……。
(オレ、お嬢と相性悪いんだろうな…………)
誰も悪くない出来事で、カザリのパンツを覗いてしまったリュウを女子二人は責めないまでも、庇ってもくれないのだった。
同じ頃、山では……
「ムスコよおおおおーー!! お昼の感謝のチンコダンベル4545回with爺さんと爺さんが絡んだヌード写真(美しいポーズ)!!
地獄の精神修行、イクぞおおおおおーーーー!!!!(血涙)」
「イクイクウウウゥゥゥーー!!!!(血涙)」
「「1!! 2!! 3!! 4!! 5!! 6!! 7!!8!! 9!! 10……!! 」」
「…………ふむ。よく分からんが、精神修行も行うのか。修行に余念が無いのだな。
小生も精進せねば!!」
矢吹親子は夜はどんな修行するのか!? お楽しみに
ヒロイン限定!!人気投票〜!!!!
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森園メル
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日向アイ
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風間コタロウ
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羽衣山カザリ
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葉山メイカ
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シキ
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