土曜、日曜を挟んで、
今日も駄菓子屋には6人の子どもたちが集まり、デュエルをして……いなかった。
「--あのボケカスドリル、バラバラに引き千切って踏み潰してやっぞ、お前らー!!!!」
「「「おう!!!!」」」
「あの高慢ちきな鼻をバキバキに砕いてやろう、みんな!!!!」
「「「おう!!!!」」」
「あの無闇に高いヒールを折って、生来の身長で見える景色まで降ろして見下ろしてやろうぞ友たちよ!!!!」
「「「おう!!!!」」」
「自尊心を徹底的に陵辱して、オレたちの顔を見るたびに漏らして顔を絶望に染めてスカートたくしあげるようにしてやろうぜ!!!!」
「「「いや、それはちょっと……」」」
「解せぬ。」
リュウ、メル、ゲキ、チョーの4人は、駄菓子屋で買った袋に水入れてジュースにするやつを空に掲げながら桃園の誓いよろしく、士気を高めあっていた。
因みに最初にやった時にうっかりジュースがごっつんこして見事に中身が溢れたので、現在テイク2である。
「おう、ニンジャ。学校で学芸会でもやんのか?」
その様子を2度見ていた駄菓子屋は、小学生の奇行を常識の範囲で予想して、お茶請けにきなこ棒をもぐもぐしていたコタロウに問うてみた。
「もくもく…。こっくん。ズズ…。ふぅ…。
いいや、裕介
四人がしているのは、明日行われる文字通りの決闘の前の宴のようなもの。
あれは、授業中のことでゴザル……」
拙者達の学校は、周囲の村々から小学生と中学生を集めることで、なんとか学び舎の体裁を保つ程度にしか生徒がいないので、基本的には自習がメインとなっている。
そのため、拙者達四年生のクラスは、授業中は大抵先生にバレない程度に遊んでいるでゴザルよ。
“いや、勉強しろよ”
拙者はしてるでゴザルよ!
コホン。
それで、今日は担任の美月先生が『青春』とか言う理由になっていない理由で、休んでいたもので、全員が最低限の線引として自粛していたデュエルをしようと、チョーが言い出したのでゴザル。
“へー。そう言うのはリュウが言い出すもんかと思ってたな”
リュウは授業中はいつも寝ている。朝早いので。
--そこで、拙者達の村とは別の村のクラスメイトが介入してきたのが、事の発端でゴザル。
「おーっほっほっほっほ!!あ〜ら、ド田舎の
“(ビクッ!?)いきなりキャラ変わったから何事かと思ったぞ、ニンジャ”
ツッコまないで欲しいでゴザル…。
いきなり拙者がモノマネした人物は、こちらの村よりは比較的、距離的な意味合いだけで都会に近い村に住んでいる村長の金髪縦ロール孫娘。通称『ドチビ糞ドリル』でゴザル。
「通称に人の悪意が漏れ出過ぎだろ。
まあもう説明はいいや。大方分かった。
要するに、そのテンプレお嬢に煽られて、売られた喧嘩を買った四人がデュエルすることになったわけだな?
正直、ゲキのバカがこういう喧嘩に参加すんのは、俺にとっては意外だったな……」
「ゲキも最初は気にしないようにと、拙者やアイと共に宥める側に回っていたのだが……」
「あ〜らあら、髪の毛の代わりにタオルを首に巻いている猿は、逃げ腰ですわねぇ〜(コタロウ)」
「無益な諍いは避ける。これもまた修行なり……(コタロウ)」
「おっほほほほ〜!ルーズドックの鳴き声が耳に心地いいですわねぇ〜よっぽど頼りないコーチにデュエルを教わったのですわねぇwww(コタロウ)」
「良かろう。首ヲ出セ。貴様の家の前に飾ってくれようか……(ガンギレまねっこコタロウ)」
「ぴいっ!???(コタロウ)」
「って。」
「バスターアサシンいるじゃん怖ッ。つーかゲキ…負け犬って呼ばれんのそんなにキレるやつだったの?」
「そこじゃないぞ裕介にぃ。もっと下。」
それまで大人しく話を聞いていたアイが、ツッコミを入れるも……
「下?畳しか無いが?」
ボケなのか天然なのか……空気が凍るほど寒いギャグで返される。
「………よしよし。いい子いい子〜」
「何でなんの脈絡もなく撫でられてんの?」
そんなのを慈愛の表情で受け入れているアイは、天使か聖母の生まれ変わりなのかもしれない…。
「ところで、アイツら四人ともやる気みたいだが、1対4でやるんか?」
「いいえ。ドチビ糞ドリルの方は、取り巻きが二人いるので、3対3の勝ち抜きライフ持ち越しデュエルで、最後の一人を倒したチームの勝ちです」
「3on3って、それ、誰か一人デュエル出来ないってことなんじゃねえの?」
「だから4人のうち誰がデュエルするかを今日決めるんだってさー。」
「そう言うアイは参加しないのか?」
「うん。あたしはバトルもデュエルも大好きだけど、喧嘩は嫌いなんだ。」
「ふーん。コタロウは?」
「リュウが乗り気だから、裏方に回るでゴザル。
誰か一人くらい、頭を使う位置にいないと、いざという時のフォローが間に合わないので。」
「ふーん。夫婦みてえだな、お前ら。」
「……………………………………からかわないで欲しいでごじゃる………想像しちゃぅかりゃ……(赤面涙目)」
「なんかすまん。」
その後、理性と血が大分沸騰した四人をコタロウが抑えて、アイが作ったクジでデュエルする人選を決定して、その日はデッキの見直しと調整に集中していた4人と、それを尻目にデュエルテーブルを使ってガンガンデュエルを楽しんでいた2人は、日が沈む頃に帰宅していったのだった。
そして翌日。
6人と3人の決闘の日。
「お前らァー!!!!ぜってえ負けんなよ!!!!ビビってんじゃねえぞコラァー!!!!!」
無事にハズレくじを引いたリュウは、素直に応援に周り、アイと共に学生服姿で応援団をしている。因みにコタロウだけはチアガール衣装。服はチョーの提供である。
「ピッピッピッピッ!ファイトだぞー!みんなぁー!!」
「フレー、フレー。でゴザルー」
なお、まだ敵陣は到着してない。ので
「クソうるせぇ。
……つーかお前ら、何で店で堂々と大会開いてんだよ!?客が減るだろうが!」
裕介の発言に、マジで何言ってんだコイツみたいな顔をしたアイが一言物申す。
「何言ってるんだ裕介にぃ?このお店にお客さんは来ないぞ?」
「てめぇ……」
真実を突き付けられてピキる大人気ない大人に、純粋な少女は更に追撃する。
「裕介にぃがサボってる時によく店番してるけど、一度だってあたし達以外に人が来たことはないっ!三年生の時から週2回は店長代理してるあたしが保証する!!」
閑古鳥を宣言したアイの言葉には、土日常に時間通りに店を開けない糞ゲロ駄目カス店主に代わり店を開け、掃除をして、なんなら駄菓子の配置等を本などを読んで勉強して何時の間にか変えていたことによる力強い確信が宿っていた。
「いい加減この店には、経営努力が必要だと思うぞ、裕介にぃ。」
「うるせえよ、糞ド田舎に駄菓子屋構えて商売繁盛なんてあるわけねえだろ。」
「繁盛しなくてもいいけど、あたしが大きくなって店長替わるまでは潰さないでくれよ裕介にぃ?最初から店を構えて出すのって、潰れかけを復帰させるより大変らしいから。」
「いつ俺がテメーに店長譲るなんて話したよ」
「…?嫌なのか裕介にぃ?
あたしが店長すれば、裕介にぃはもうずっと寝てられるぞ?」
「
「少しは考えるでゴザルよ裕介
などとコントをしていると、キンキン声で調子こいた声が屋外から聞こえてきた。
「おーっほっほっほっほっ!!!!なんともみすぼらしい小屋ですわねぇー!ワタクシが買い取ってリフォームして差し上げましょうかしらぁー」
「ああ!!お姉様、なんと慈悲深いお言葉です!!
このような豚小屋に住む哀れで惨めな下民に救いの手を差し伸べようだなんて!!まさに人の上に立つ御方の器ですわぁー!!」
「……何だこの耳障りな声と会話は」
「これが『ドチビ糞ドリル』の所以でゴザル。小さい身体で糞みたいな発言を繰り返す金髪ドリルなり。」
「まったく、あいつら、一緒に遊びたいならそう言えばいいのになー……」
裕介、コタロウ、アイの三人が店の外に出ると、ド田舎のほぼ獣道同然の場に似つかわしくない黒塗りの車と、なんか趣味の悪い扇を持った縦ロールをポニーテールにしたチビと、桃色の髪をしたメイド服姿の太鼓持ち、そして執事服を着た眠たげな目の少女が立っていた。
「シキ。」
口元を扇で隠したドチビ糞ドリルが一言そう言うと、執事服を着た少女が一歩前に出て、優雅に一礼し言葉を続けた。
「『始めまして店主。
こちらは、護国十二神将〜陽の参位〜が一柱、
「--羽衣山 カザリとは、わたくしのことですわ!覚えておきなさい。」
「このような下賤なボロ屋の店主がカザリお姉様にお声掛けいただくこと自体、本来、分不相応な幸福ですのよ。」
ドヤ顔で偉そうに自己紹介したドチビ糞ドリルと、その取り巻きでしたり顔をしているピンク髪のメイドが、鼻に付く態度全開でそうほざくと
「んで、クラスメイトに喧嘩売るためにわざわざ人の店に押しかけてきたゴレージョーは、人様の家に行くのに手土産の一つも持たせてもらえないのか?」
こちらも大人とは思えないチンピラ駄目人間そのものの口調で返した。
「貴様ァ!!下民風情がカザリお姉様に口を聞くときは跪け!
そしてその口の聞き方は何だ!!」
ガンギレで怒鳴り散らすピンク髪を他所に、執事服の少女が風呂敷の包みを差し出してきた。
「はい。ダガシヤさん。これ、鳳扇のおじいちゃんから、持っていくように言われてるの。」
「これはどうも。主とは対極にご丁寧な対応をどうも。
さっきと随分口調が違うな?」
「アレ、だいほんなの。あいずが来たら、えんぎするように言われて、れんしゅうしてたの。
シキ、上手に出来た?」
「おう。アレが普段の口調かと思うくらいには執事してたぞ。
まさかこんなほわほわふわふわみてえな擬音が付きそうな口調が素だとは誰も思うまい。」
「えへへ。大せいこう。なの。
あと、おじいちゃんがくれぐれもよろしく言うように言ってたの。」
「俺にか?知り合いにこんなけたたましいガキを孫に持つじーさん居たかな…?」
「まだ言うかキサ--」
ドサッ--!!
さっきまで目の前にいたシキと言う少女が、突如裕介の目の前から消えて、再び荒らげようとしたピンク髪を一瞬で地に押さえつけた。
それは自分の記憶を探っていた裕介は勿論、アイやコタロウすら見失うほど、完璧な瞬歩だった。
「むぐっ!?むぐぐぐぐー!!!」
「…………もうダメ。メイカ。
おじいちゃんから言われてる。この人にしつれいな事を言っちゃダメ。」
「ぷはっ!……シキ!キサマ分家の末席の分際で、わたしを呼び捨てにするのか!」
「--目に余るようなら、おじいちゃんに報告するよう言われている。なの。」
「くっ……!!」
「もういいわ。シキ。
メイカ、貴女も控えなさい。」
「うん。」
「は、はい…お姉様……」
パチン、とセンスの悪い扇を閉じると、ドチビ糞ドリルのそれまでの態度が鳴りを潜めた。
「お祖父様が失礼のないようにと言われたのなら、羽衣山の者として礼を改めねばなりません。
護国十二神将、陽の参位--羽山鳳扇が孫娘。羽衣山カザリと申します。
先程の無礼をお詫び致しますわ。」
「へぇ…さっきまでの態度が嘘みてえだ。よっぽどお爺ちゃん子と見える。」
「祖父のことは、当然尊敬しておりますわ。
ですが、それより問題なのは、下々の者に礼を失することの無いようにとお祖父様が言うことは、今まで一度もありませんでしたの。そのお祖父様が礼を失する事を禁じた以上、何かが貴方にあると考えます。
よろしければ、お名前をお聞かせ願えますかしら?」
「別に名乗る程のモンでもねえんだがなぁ。
安堂裕介です。よろしく。」
「安堂…………裕介…………。
聞き覚えはありませんが、お祖父様が仰ることは絶対ですわ。
安堂様、突然のことで恐縮ですが、本日こちらのお店を貸し切りとして頂けませんか?
勿論、お礼はさせていただきますので」
「………まあ、別にいいか。
どうせこの店に客はいねえらしいしな。」
アイの方をチラリと見ながら言う。
「あ、あれ?もしかして裕介にぃ怒ってる……?」
「別に。
カザリ、場所を貸すのは構わんが、ウチにはデュエルディスクが無いから、デュエルテーブルしかないぞ。」
「構いませんわ。郷に入れば郷に従え。
デュエルが出来れば、問題ありませんので。」
「んじゃ、取り返しがつく範囲で勝手にやってくれ。」
「寛大なお言葉に感謝いたしますわ。それでは、お邪魔いたしますわ。行きますわよ、メイカ、シキ。決戦ですわ!!」
「はい、お姉様!!必ず名誉を挽回しますわ!!」
「その前にこの服脱ぎたいの。丸腰のズボンは落ち着かないの……」
「なんだよ丸腰のズボンって…」
「太ももにホルスターを付けてても目立たないから、メイド服の方が落ち着くの…。」
「そっかぁ…メイド服って戦略的な武器の隠蔽目的で履くものなのか……」
「すごいなメイド服!裕介にぃ、あたしも着たい!!」
「俺に言うなよ。メイド服なんて持ってる人間に見えんのか」
「お給料代わりに買ってほしい!」
「ガキに給料は出ねえよ」
「裕介にぃより
「……………………。
手に入ることがあったらな……」
「おー!言ってみるもんだなー」
「……今度、メルとコタロウにも欲しいもんあるか聞いとけ……」
「はーい。」
日向アイ(10)
ダメなやつを見ると面倒見たくなる世話焼きタイプ。
別に駄菓子屋になりたいでは無いが、裕介の世話をすることに愉しみを感じるダメ男ハンター。
学校で生き物係になったはいいが、世話の必要がほぼない蚕しかいないため、欲求不満であり、それを裕介で解消しているところがある。
絶対に更生しないだろうという確たる信頼を裕介に置いている。
改めて好きなキャラクターに入れて下さい。
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臥竜リュウ
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森園メル
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矢吹チョー
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日向アイ
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阿修羅ゲキ
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風間コタロウ