第一章の始まりです!
それでは、どうぞ。
十一話 挨拶
紆余曲折あったが、僕は正式にサクラチヨノオーのトレーナーとなった。
早速今日からレースで勝つためにトレーニングをしていくわけだが。
ウマ娘は、レースで勝つことが目標とは言っても、実際に重賞レースで勝つことが出来る素質を持つウマ娘は一握り。
レースに勝つことが出来ずにレースの道を諦めるウマ娘も数多くいる。
そして、そうなってしまったときは普通の人間同様、進学なり就職なりするので、最低限の学力は必要。
なので、普通の学生同様に、勉学に励んでいる。ということらしい。
この時間のウマ娘たちは授業を受けているので、僕は授業が終わるまで待っていなければならない。
そういえば、正式にトレーナーになって、この学園に来てから三日経つが、まだ理事長に挨拶をしていない。色々あったとはいえ、これ以上後回しにするのも良くないだろう。
時間もあるし、一度理事長に挨拶に行こう。
コンコン
「失礼します、新人トレーナーの夜神です。
理事長へのご挨拶に伺いました。」
「許可ッ!入ってよろしい!」
ドアを開けると、そこにはたづなさんと理事長がいた。
「君がトレーナー試験をトップの成績で合格したという夜神トレーナーだな?」
「はい、…そうみたいですね。」
トレーナー試験を受けた時の記憶がないので、こういう答え方になってしまう。
「歓迎ッ!我々は、君のこの学園での活躍を心から期待しているぞ!」
新人トレーナー説明会のときも思ったが、背丈が子供くらいしかない。
これだけ近くで見るとなおのことそう思う。
それに、独特な喋り方をする人だな…。
「私は『秋川やよい』だ!何か用があるときは理事長と呼んでくれて構わない!」
秋川やよい理事長…活力のある人だな。
噂によれば、莫大な財産を所有しており、その私財を惜しげも無くウマ娘たちのトレーニング施設に投資しているらしいが…。
「夜神さん、お久しぶりです。早速担当ウマ娘も決まったみたいですね。」
「はい、この学園のトレーナーとして、誠心誠意努力したいと思います。」
「感心ッ!良い心がけだ!今年はトップでの合格者が二人もいるし、ウマ娘側だけでなく、トレーナー側も豊作な年だったな!たづな!」
「そうですね、理事長。」
試験の成績トップが二人同時に出ただと?
聞くところによると、東大に合格するような人間でもこの試験に合格することは難しいと言われているらしいが…
…嫌な記憶が蘇ってくる。
僕は過去にも同じようなことを経験したことがある。
あれは東応大学の入試の時。
あの時も、僕は試験の成績一位で合格した。
それも全教科満点でだ。
しかし、〝あいつ〟も僕と同じく全教科満点で合格した。
結果、僕と〝あいつ〟はその年の大学の新入生代表としてスピーチをした訳だが…
この世界でも同じような奴がいるとはな。
どんな奴なのか、一度見てみたいな。
「夜神さんは、もう一人の成績トップの方とはお会いになりましたか?」
「いえ、おそらく会ったことはないですね。成績トップが二人もいたんですね。初めて知りました。」
「そうなんですね。しかしその方、少し変わった方のようで…」
「変わった…というと?」
「どうやら模擬レースを見る前から担当するウマ娘を決めていたようで。契約用の用紙を模擬レースの前に出しに来たとか…。」
模擬レースを見る前から…?
ということは、あの説明会の日に、即日で担当するウマ娘を決めたということか?
確かに変わっているな。
本来なら自分の担当するウマ娘は慎重に選ぶものだからな。
「そうなんですか、もし会うことがあったら、ぜひトレーニングの意見などを聞いてみたいものです。」
実際、この世界に来たばかりの僕にはウマ娘に関わりのある知人が少ない。
人脈は大事なので、その成績トップの奴に限らず、多くのトレーナーと交流をしていかなければな。
「それでは、失礼します。」
理事長室を出て、トレーナー室へ行くまでの廊下で、おそらく新人のトレーナーとすれ違った。
やたら姿勢が悪かったので、顔はよく見えなかったが、どこかで見たことがあるような気がした。
こうして、理事長への挨拶を終えた僕は、トレーナー室で食事を取り、授業が終わる頃に待ち合わせ場所のグラウンドに向かうのだった。
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