僕がエイシンフラッシュのことで気を揉んでいる間に、チヨがトレーニングを切り上げて戻ってきた。
「トレーナーさん、どうしたんですか?
顔色が悪いですけど…?」
余計な心配をかけさせてしまったか。
「いや、大丈夫。なんでもないよ。
ところでチヨ、エイシンフラッシュって名前のウマ娘について何か知ってたりしないか?」
チヨ「フラッシュさんですか?
違うクラスなのであんまり仲良くはないんですけど、すごく几帳面な性格ですよ。いつも手帳を携帯してるんですけど、そこに書いてあるスケジュールは分刻みどころか秒刻みという噂も…」
チヨは冗談めかしてそんなことを言った。
なるほど、恐ろしいまでに几帳面な性格ということか。
秒刻みのスケジュールというのは流石に胡散臭いが、どっちにせよそういう噂が出回るほど予め決めた予定に準じているウマ娘ということだろう。
あの手帳に書いてあるのがその日のスケジュールなんだとしたら、あの手帳がデスノートであるという可能性は薄そうだな。
そもそも手帳にデスノートの効力が宿ることはあるんだろうか…?
「そうか、ありがとう。」
それから、チヨはメニューにあるトレーニングを一通りこなし、その日を終えるのだった。
その日僕は寮に戻った後、色々と考えを巡らせていた。
考えなければいけないことはいくつかある。
とりあえずマンハッタンカフェについて調べてみるか。
彼女はノートの所有権を持っているサクラチヨノオーですら見えないリュークを唯一見れる存在だ。
マンハッタンカフェについて調べれば、何かしらリュークのことについて分かるかもしれない。
幸いにも明日は休日。
ウマ娘たちも授業はないし、忙しくもないはずだ。
そうしてマンハッタンカフェに会いに行く決意を固め、眠りについた。
そして、次の日。
朝食を済ませた僕はリュークと共にマンハッタンカフェの元へと向かうことにした。
リュークは、特に何も喋らないという条件で連れていくことにした。
マンハッタンカフェの目の秘密を明らかにするためにはリュークがいなければ始まらないからな。
昨晩、桐生院葵と連絡を取ったところ、マンハッタンカフェは空き教室の一つを保有しているから、そこに行けば会えるのではないかという話を聞いた。
どうやら理事長が学園を広大に作り過ぎたため、空き教室や空いているトレーナー室がそれなりにあるという話だった。
…ここか。
電気がついていないが、本当に中にいるのだろうか。
ガラッ
ドアを開けると、中には白衣を着ているウマ娘が一人。
電気のついていない暗がりの中で、怪しい薬品が光っている。
見た感じ、どうやらマンハッタンカフェはいないようだ。
まだ昼前だし、ここにいないのも不思議ではない。
仕方ないから、午後にまた出直すことにしよう。
「君、待ちたまえよ。ドアを開けて要件も言わずに出ていくとは、随分不躾じゃないかな。」
突然白衣のウマ娘に声をかけられた。
何か取り込み中だったのか、
実験用ゴーグルのようなものをかけている。
「あぁ、すまない。僕は新人トレーナーの夜神月。マンハッタンカフェがここにいると聞いて来たんだが、いつ頃に来るか分かるかな?」
「残念だが彼女は常にここにいるわけじゃないのでねぇ。
知らぬ間にここに来て知らぬ間にいなくなっているから、私も彼女がここに来る正確な時間は知らないのだよ。」
なるほど。マンハッタンカフェはまさに幽霊のようなウマ娘ということか。そうなると、いつここを尋ねればいいのか分からずじまいだ。
と、ここで一つの疑問が生じる。
「ところで、君は一体誰だ?この部屋はマンハッタンカフェの部屋じゃないのか?」
桐生院から聞いた話だと、マンハッタンカフェがこの部屋にいる、以上の情報はなかった。
だからこのウマ娘がどうしてここにいるのか、僕には分からない。
「私はアグネスタキオン。この部屋は私とカフェが半分ずつ利用している空き部屋でね。ここは彼女の部屋でもあれば、私の研究室でもあるのだよ。」
なるほど、この部屋を二人でシェアしているということか。
それはさておき、どうしていちウマ娘が研究室を有しているんだろうか。
個人にそれだけの施設を与えられる程トレセン学園の敷地は余っているのだろうか。
どちらにせよ、朝方から研究室に入り浸っているウマ娘に関わりあうのは避けた方がいいだろう。
「そうか、それじゃあ僕はまた出直すとするよ。」
足早にその部屋を出ようとする。
すると、アグネスタキオンに呼び止められた。
「待ちたまえよ、君はもうここに用はないかもしれないが、私は君に用があるぞ。君だろう?カフェの言っていた、化け物を連れた新人トレーナーというやつは。」
というわけでアグネスタキオンです。
タキオンとカフェの組み合わせは個人的にめちゃくちゃ好きです。
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