CHiYO NOTE   作:苺ジャム

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「なぜ前回から唐突にスイープトウショウが出てきたんですか?」

可愛いからです。


第三十三話 魔法

魔女のような格好をしたウマ娘に連れられ、先程の畑の辺りに戻ってきた。

一体彼女の目的は何なんだ…?

 

 

「アンタにはさっきこの辺りで逃げたスズメを探して貰うわ!!」

 

寄りによって地味に難易度の高い作業だ。

昆虫なんかの捕獲は方法を知っていれば比較的簡単なのだが、鳥となるとそうもいかない。

というか、鳥類の無断での保護は鳥類保護法の8条に違法するので、基本的に行ってはならないことだ。

スズメも例外ではなく、もし然るべき機関に保護の事実が露呈した場合は1年以下の懲役や罰金が課せられる場合がある。

何故この子がスズメを探しているかによっては、僕が止めなければならない可能性もある。

 

 

「ちなみに、君はどうしてスズメを探しているんだ?」

 

 

僕がそう言うなり、彼女は得意げな表情をし、こう答えた。

 

「ふふん、気になるのね?仕方ない、教えてあげるわ!

私は魔法少女スイーピー!今は変化魔法の練習中なの!

スズメをフェニックスに変化させるのよ!」

 

 

なるほど、この子は本当に魔法使いに憧れているのか。

手に持っている杖からもその程が伺い知れる。

まさかこの子、スズメを探すためだけに授業を欠席したということか?

多少変わった子のようだが、彼女に限らずこの学園に在籍するウマ娘は大小はあるもののそれぞれが強烈な個性を備えている。

特に取り立てて驚くようなことでもない。

 

まぁ鳥類保護法に引っかかる事もなさそうだし、問題は無いか。

本来ならここで帰っても構わないのだが、先程嘘が露呈したことで彼女を怒らせている。

流石に帰ることは出来ないだろう。

 

 

「分かったよ、少しだけならそのスズメ探しを手伝うよ。」

 

スイープトウショウと共にスズメを探すことにした。

畑の周りには柵があり、彼女が畑の中でスズメを逃がしてから飛び立った鳥はいないと言うので、恐らくスズメはこの畑の中にいるはずだ。

とはいえ、この畑だけを探すにしても広い。

という訳で、彼女にバレない範囲でリュークにもスズメ探しを手伝ってもらうことにした。

リュークに飛んでもらい、空からスズメを捜索する。

とはいえ、スズメのいる場所にはある程度目星がついている。

彼女が言うには、スズメを見つけたのもこの畑の辺りだったらしいからな。

となれば、この辺り巣があるはずだ。

スズメは家の屋根の内側に巣を作る性質を持っている。

この畑の周りで建物と言えば、農作業用の道具を保管してあるこの倉庫くらいのものだ。

 

…あった。

 

屋根の内側に巣があり、その中にスズメが3匹ほど。

2匹はまだ幼い子供だ。

恐らく彼女が見つけたのは成体のスズメの方だろう。

1度彼女の元に行き、スズメがいた旨を知らせると、倉庫の方に飛んでいってしまった。

 

しかし、スズメの巣は彼女の手の届かない位置にあるので、むくれていた。

1番手っ取り早いのは餌を使って寄せる方法だ。

スズメが好む餌は青米なのだが…

生憎持ち合わせがない。

ちょうど倉庫の中に代用出来そうな稲穂が置いてあったので、それを使いスズメを寄せる。

これでスズメが見つかった訳だが、彼女はここから一体どうするつもりなんだろうか。

そんなことを思っていると、彼女はおもむろに杖を振り、呪文のような言葉を叫ぶ。

 

 

「パンドレーア☆パンドラナ!パフィオペディルム☆インシグネ!」

 

 

…。

 

 

当然、何かが起こるはずもなかった。

この不思議な世界でならそういうことも有り得るのかとも思ったが、流石に魔法やら魔獣やらといった概念はないようだ。

 

 

「うーん、おかしいわね…グランマに教えてもらった魔法、間違ってないはずなんだけれど…?」

 

 

どうやら本当に魔法が成功すると信じていたようだ。

このままだとまた何かしら要求されそうな気もする…。

どうにかして彼女に魔法が成功したと思わせなければ…。

その時、ちょうど上空にいたリュークが降りてきた。

 

 

「月、スズメなんでどこにも…って、なんだ、もう見つけてたのか。」

 

 

そうだ、彼女にはリュークが見えない。

それなら、リュークを使って魔法のように見せることも可能なんじゃないか?

僕は置いてあった箱からにんじんをひとつ掴み、リュークに手渡す。

 

 

「リューク、その辺りでこのにんじんを持っていてくれ。」

 

 

そう言うとリュークは首を傾げながらもにんじんを持って少し離れた場所に立ってくれた。

それを確認して、僕は彼女に声をかける。

 

 

「すごいな、君は魔法使いだったんだね。」

 

 

「そうだけど、別に魔法は失敗しちゃったじゃない!」

 

 

「え、じゃああのにんじんが浮いているのは君の魔法じゃないのか?」

 

 

彼女がリュークのいる辺りを見る。

僕から見たらリュークがにんじんを持ってそこに立っているだけだが、彼女から見たらそこににんじんが浮いているように見えているはずだ。

 

 

「あ、あれっ?にんじんが浮いて…?…い、いや!そうよ!これこそ大魔法使いスイーピー様の魔法よ!どうよ?!凄いでしょう?!」

 

 

彼女は一瞬困惑しながらも、すぐに自慢げな表情に変わり、僕に嬉しそうに自慢している。

ひとまずこれで彼女がこれ以上駄々をこねることもないだろう。

 

思った通り、彼女は魔法が成功したことで満足してどこかへと行ってしまった。

そういえば、名前を聞いていなかったな、なんてことをふと思う。

自分のことを魔法使いスイーピーとか言っていたが、スイーピーという名前が本名という訳ではないだろう。

まぁ、特に名前を知っておく必要がある相手という訳でもない。

 

【その時、ふと閃いた!このアイデアは、サクラチヨノオーとのトレーニングに生かせるかもしれない!】

 

…?!

なんだ、今のモノローグのようなものは…?

頭の中に直接響いたような感覚がしたぞ、くそっ、どうなっている…?

新手の催眠術のようなものか…?

 

よく分からないが、特に異常も起こらなかったので、疲れていたんだろうと思い、深く考えないことにした。

しかし、その後のサクラチヨノオーとのトレーニングで、何故かやたらと他のウマ娘が協力してくれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日もトレーニングが終わり、寮に帰るところで、アグネスタキオンと出会った。

特に用もないので素通りしようとしたが、彼女は僕に話しかけてきた。

 

 

「やぁやぁ、夜神くんじゃないか。元気かい?どうも君の担当のサクラチヨノオーくんとも上手くやっているようじゃないか。」

 

 

「あぁ、この前の重賞も問題なく勝てた。このままいけば、日本ダービーも本当に勝てるとさえ思っているよ。」

 

 

僕が話を切り上げ寮に戻ろうとすると、彼女は突然よく分からないことを言い出した。

 

 

「ふぅン、そうか…ところで君、『名前のないトレーナー』に会ったことはあるかい?」

 

 

名前のないトレーナー、だと?

常識で考えれば、そんな人間はめったに存在するものではない。

 

 

「話が見えてこないな。そんな人間など見たことも無い。なにかの心理テストでもしているのか?」

 

 

「いや、出会ったことがないのなら良い。何せ彼は滅多に人前には現れないからね。とはいえ、恐らくジュニアGIには出走してくるだろう。そうだな、ホープフルステークスあたりか。…それと、ひとつ忠告しておくことがある。もしそいつに出会っても、『()()()()()()()()()。』」

 

 

なんだ…?彼女が冗談でこんな事を言うとは思えない。

もしや、本当に名前のない人間が存在するとでも言うのか?

 

 

「あぁ、ご忠告どうも。まぁ気にはかけておくよ、その名前の無いトレーナーというやつをね。」

 

もし彼女の言うことが本当なら、そいつはホープフルステークスに出走してくるらしい。

そんな人間がいるとは思えないが、もし彼女の言うことが本当なら、1度見てみたいものだ。

 

そうして彼女は僕の中に大きな謎を残して、どこかへと去っていくのだった。

 

心なしかその日はよく眠ることが出来なかった。




モノローグについてですが、あれはゲーム版と同じ仕様になっています。

ゲーム版ウマ娘では、特定の行動条件をクリアすることでトレーナーがトレーニングに生かせるヒントを閃き、その恩恵を担当ウマ娘が受けられるというシステムがありますが、この世界にもそれが存在します。

夜神月はゲーム版で言う「ワンダフル☆ミステイク」をクリアしたのでサクラチヨノオーに愛嬌が付与されました。

やったね。
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