「ライトさん、大丈夫ですか?!」
サクラチヨノオーが心配して声をかける。
しまった、思わず大声をあげてしまった。
「だ、大丈夫。はい、ノート。」
月はチヨノオーにノートを返す。
どうやらチヨノオーにはリュークは見えていないようだ。
「そ、それじゃあ、ライトさんに格言を差し上げます!!
えーっと…『にんじんは、いつ雨が降るか知らないものである。』!!」
………。
どういう意味なんだろうか。
「あ、ありがとう、それじゃあ僕はもう行くね」
「はい、お元気でー!!」
とりあえずどうにかその場を離れ、その日は家に帰った。
なぜかリュークもついてきたが。
「おいリューク、どういうことだ?
僕が今この世界にいるのはリュークが関係してるのか?」
「いや、俺じゃない。あの時月を殺したと思ったら、急に目の前が真っ白になって、気がついたらあのノートの死神になってたんだ。」
リュークもこの状況を理解していないのか。
いよいよ八方塞がりだな。
「あのウマ娘には、お前の姿は見えてないのか?」
「あぁ、見えてないみたいだ。デスノートのルールで『ノートに触れた人間は死神が見えるようになる』ってのがあるだろ?
あれには他の生物は適応されないから、それと同じってことじゃないのか?」
「…やはりウマ娘は人間とは異なる生物、ということか…?
そもそもあのノートは何なんだ?あれはデスノートなのか?」
「いや、どうやら違うみたいだ。あのノートにはところどころに色んなやつの名前が書いてあったが、そいつらは死んでなかったからな。
だから正確に言えば、俺は今死神じゃないのかもな。」
「……前に文献で読んだことがあるが…
この状況はもうそうとしか…」
「お、月、心当たりがあるのか?」
「心当たりがある、というかそう考えるしかない状況ってだけだ。
リューク、僕の見立てが正しければここはパラレルワールドってやつだ。
デイヴィッド・ドイッチュ曰く、人間が生きてる世界は一つだけでなく、いくつかの多次元世界が同時に進行しているという理論だ。
僕たちはその無数に存在するパラレルワールドに迷い込んだということなんじゃないか?」
「そんなことが本当にあるのか?」
「あるのかもな。今僕たちがこうしている説明がこれでしかつかないんだ。非現実的な話だが、死神やウマ娘がいる時点で、もう十分非現実的だ。」
「なるほど、言えてるな。」
そう言ってリュークは笑う。
「一応聞いておく。リュークは今デスノートを持ってないんだな?」
「あぁ、持ってない。それどころかこの世界にはどうやら死神界もないらしい。一度死神界に行こうと思ったんだが、無かったからな。
まぁ、あんな何も無いところに戻りたいわけでもないけど…。」
「となると、この世界で僕がまたキラとして新世界を創る、というのは出来なさそうだね。残念だよ、リューク。」
「そんなこと俺に言われてもなぁ」
「とにかく、もう一度サクラチヨノオーに接触する。あのノートがデスノートでないにせよ、あのノートにはリュークが憑いてるんだ。普通のノートじゃない可能性は高い。」
「つっても、どうするんだ?月、あの子と接点なんてないだろ?」
「おいおいリューク、僕はトレーナー試験に合格し、晴れてトレーナーとなったんだ。あの学園でトレーナーをやっていれば、彼女との接点は作れるよ。」
「月、知らないのか?あのウマ娘とかいう奴らには、一人につきトレーナーが一人担当について、個別でトレーニングをさせたりするって話らしいぞ。接触するにしても、お前はあのサクラ…なんとかの担当トレーナーってやつになるしかないんじゃないか?」
「なっ、そうなのか?」
知らなかった。一般的なスポーツで言うトレーナーは、複数人の指導を出来るものだから、勘違いしていた。そういえば前に調べた時にも、『担当トレーナーと協力して~』のようなことが書いてあったな。
しかし、問題は無い。接触する方法はいくらでもある。
「でも問題ないよ、リューク。もし彼女に担当がいたとしても、僕が別のウマ娘のトレーナーになって、その立場から彼女に接触すればいい。チャンスはいくらでもある。」
そのためには、ウマ娘についての知識が必要だ。トレーナーと言うからには、恐らくウマ娘に対して様々なアドバイスやサポートを施すのだろう。現状、僕はそういった知識については無知に等しい。
「それじゃあまだお昼だし、昼食を済ませたら図書館に出かけよう。リューク、りんごでも食べるか?」
「おぉ、りんごがあるのか?じゃ、頂こう。人間界のりんごは格別に美味いからな。」
こうして、何の因果か再び出会った僕とリュークは、昼食を済ませた後、図書館へ向かうのだった。
【リューク】
死神と呼ばれる存在。なお、この作品『CHiYO NOTE』では死神としての力を失っている。
本来死神のみが持つアイテムだったデスノートを人間界へと落とした、全ての元凶とも言える存在。
そんな彼だが、意外と愛嬌があり、ファンからの人気は高い。
好物はリンゴ。食べないと禁断症状が出るらしい。
連載の方式について
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2000文字くらいで週3~5連載
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4000文字で週1~2連載