CHiYO NOTE   作:苺ジャム

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第四十五話 占い

肩まではかからない程度の長さの艶のある黒髪に、白いシュシュのような形をした耳飾り。

そして何よりその耳と尻尾が彼女である証拠だ。

あれはエイシンフラッシュで間違いないだろう。

見たところ、出店の綿菓子屋に並んでいるようだ。

並んでいる最中、何度も手帳を取り出し、しきりに腕時計で時間を確認したり、鞄から取り出したペンで手帳に何かを書き加えたりしているようだった。余程時間に気を配っているのだろう。

 

以前サクラチヨノオーに『エイシンフラッシュは恐ろしい程に几帳面なウマ娘だ』という話を聞いたことがあった。

分刻みや秒刻みのスケジュールで生活しているという話だったが、あの様子だとそんな噂が流れるのも納得だ。

そして、その後彼女は綿菓子を2つ買って店を後にした。

2つ…ということは恐らく他の誰かと来ているのだろうか。

そして彼女は神社の入口の方へと向かう。

現状怪しい点はないが、誰と来ているのかくらいは把握しておきたい。

交友関係は後々彼女を調べることになった時に重要になってくるからだ。

少し後ろの方で見ていた僕も彼女の後をつけようと歩き出す。

しかし、僕が動き出したのとほぼ同時に、この神社の巫女らしき人物が人混みの中をかなりの速さで突っ切ってきた。

咄嗟の反射で直撃は避けたが、その巫女は僕の左肩の辺りに勢いよくぶつかり、派手に転んだ。

その拍子に、手に抱えていた大量の絵馬やらお守りやらを砂利の上に散乱させてしまった。

 

いくら向こうからぶつかってきたとはいえ、この状況でこれを見て見ぬふりをしてエイシンフラッシュの方を追うというのは流石に無理だろうな…

結局僕はそれ以上追うのを諦め、先程落として地面に散乱しているお守りを拾い始めた。

 

「す、すすすみません、すみません〜!だ、大丈夫ですか〜!?」

 

こちらから何かを言う前に、その巫女は勢いよく謝り始めた。

ぶつかってしまったことで気が動転しているのか、声が上擦っている。

 

「あぁ、これくらい大丈夫だよ。こっちこそ悪いね。拾うの、手伝うよ。」

 

その後も彼女は落ちているものを拾いながら何度も頭を下げていた。

ぶつかった時は気づかなかったが、この巫女もウマ娘だ。

茶髪に前髪の一部だけ白という、トウカイテイオーを彷彿とさせるような髪質のウマ娘。この娘はまさか…

 

少し間を置いて質問をする。

「…もしかして君はトレセン学園の生徒だったりしないかな。間違っていたら申し訳ない。僕は昨年からトレセン学園でトレーナーとして勤めていてね。何度か学園で君のようなウマ娘を見かけたような気がしたから。」

 

結論から言うと、僕は彼女が学園在籍のウマ娘だという事に対して確信を持っている。

今言った通り、トレーニングコートを使っている時に何度か見かけたことがあるからだ。

まぁ覚えていたのは、僕が見かける時に彼女が毎回何かしらのトラブルを起こしていたというのもあるのだが。

ある時はバケツの水をひっくり返していたし、ある時は前日の雨でぬかるんだターフで転んでいた。

見る度に何かしらのトラブルに巻き込まれたりしていたので、印象に残っていた。

 

「トレーナーさんだったんですねぇ〜、わ、私はメイショウドトウと申します〜!」

 

メイショウドトウか…。昨年に開催されたレースの出走者名簿には全て目を通したはずだが、メイショウドトウという名前はなかったはずだ。

となると恐らくデビュー前のウマ娘なのだろう。

 

「普段は学園でフクキタルさんと占いをしたりしながらトレーニングをしてるんです〜、お正月の間はフクキタルさんとここの神社で働かせてもらってるんですよ〜!」

 

他のウマ娘と一緒に働いていたのか。

フクキタル…という名前には聞き覚えがある。

恐らくマチカネフクキタルの事だろう。

確かサクラチヨノオーと同じく昨年デビューのウマ娘だ。

手相やタロット、四柱推命、西洋占星術などの占いやまじないを重要視するウマ娘で、出走するレースさえも占いで決めているという噂も聞いたことがある。

とはいえ実力は確からしく、デビュー戦で1着を取り、その後もいくつかの重賞レースで勝ち星を勝ち星を挙げていた。

僕がどこかでぶつかるかもしれないと警戒しているウマ娘の1人だ。

 

そのマチカネフクキタルと行動を共にしているのが彼女ならば、彼女…メイショウドトウかなりの実力者なのだろうか。

そんな事に考えを巡らせながら散乱しているお守りを拾う。

拾っていて思うのだが、かなりの量がある。

本来2〜3人がかりで運ぶような量。

この量をまた彼女1人に押し付けてしまうと、また同じようなことになりそうな予感がする。どうするべきか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拾ってもらった上に、一緒に運んでくれるなんて…本当、ありがとうございます〜〜!!」

 

「いや、気にする事はないよ。それに、君がトレセン学園の生徒なら、今後僕と関わる機会もあるかもしれないし、その時はどうかよろしく頼むよ。」

 

少し考え、結局拾った道具をメイショウドトウと一緒にマチカネフクキタルのいる社務所へと持っていくことにした。

特にこの後何かする予定もなかったので、それなら恩を売っておく方が得策だと考えたのだ。

 

社務所への道中にいくつか分かったことがある。

マチカネフクキタルの実家は神社で、彼女はいずれその神社を継ごうと思っていること。

そして、その神社を継ぐための経験を養う為に正月にこの神社でアルバイトをしているということ。

彼女の占いを神聖視する性格は家庭背景にあるのかもしれない。

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

そんな話をしながら歩いていると、案外早く社務所へと着いた。

メイショウドトウに連れられて裏口から入る。

朝方ではあるが日が差す窓が少ないために中は暗い。

少し進むと、大量の商品を置いておく部屋があった。

恐らく表で売るためのものだろう。

そして、きちんと整頓されている商品とは別に、ドリームキャッチャーなど、各地の開運グッズらしきものが所狭しと置かれていた。

これはマチカネフクキタルの私物…だろうか。

奇抜な色合いをしている壺や絶妙な味を出している掛け軸などがそこら中に乱雑に置かれている。

こう言っては悪いが、どれも展覧会などに並べてある一流の作品には今ひとつ届かないといった感じのする贋作のようなものに見えてしまう。

 

少しして、どたどたと大袈裟に廊下を走る音がして、マチカネフクキタルが部屋に入ってきた。

こちらは白の巫女服ではなく、花柄のあしらわれた薄緑の着物に白を基調とした袴を着ている。

 

「あ゛ーーっ!ドトウさぁん!どこ行ってたんですかぁ!」

 

「す、すみませ〜ん!私、商品の残りが少なくなってたから新しいのを取りに行ってたんですぅ〜!」

 

謝ると同時に、メイショウドトウはここまでの経緯を話し始めた。

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