CHiYO NOTE   作:苺ジャム

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最近体力が落ちてきて、このままじゃいけないと思って運動を始めました。
大して支障はないんですが、全身筋肉痛が酷いです。


第五十七話 邂逅

エイシンフラッシュと担当契約を結んだ次の日。

僕とサクラチヨノオーはトレーナー室でエイシンフラッシュが訪れるのを今か今かと待ち構えていた。

昨日、エイシンフラッシュと別れて書類を出した後、すぐにサクラチヨノオーに連絡をした。

新しいチームメンバーが加わったことに対しては喜んでいたのだが、エイシンフラッシュの名前を聞いた途端少し反応にかげりが見えた。

理由を聞くと、どうやらサクラチヨノオーはエイシンフラッシュに対して恐れに近い感情を抱いているとの事だった。

ウマ娘サイドから見た彼女の印象は「ルール遵守の冷徹ウマ娘」だという。

そんな相手に対して上手くやっていけるのかが不安だということらしい。

 

外から見た彼女はそういう風に写っているのか。

とはいえまったく見当違いだと切り捨てる事も出来ない。

昨日実際に関わった時にもスカウトに来ていたトレーナーに対して臆せず命令していたし、物怖じしない性格なのは間違いないだろう。

サクラチヨノオーは物の管理も丁寧で、しっかりした性格だからエイシンフラッシュとウマが合わないということは無いと思うのだが。

そんな訳で、現在トレーナー室でエイシンフラッシュを待っているサクラチヨノオーは少し緊張していて、手に汗が滲んでいるのだった。

 

「大丈夫、エイシンフラッシュはそんなに酷い子じゃないと思うよ。」

 

「はい…そ、そうですよね!」

 

夜神月の気休めの一言に対して、サクラチヨノオーはぎこちなく簡単な返事を返すのみだった。

そうしているうちにだんだんと約束の時間が近づいて来る。

今の時刻は午後1時58分。

彼女が指定した時間は午後の2時。

もうそろそろ来る頃のはずだが…。

 

そして時計の長針が12の数字に針を合わせ、午後2時丁度になった瞬間にトレーナー室のドアがゆっくりと開いた。

 

「『午後2時にトレーナーさんの元を訪れる』、予定どおりですね。」

 

入って来るなりそう言って、満足気に手帳を眺める。

そこに居たのはもちろん、エイシンフラッシュだった。

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「は、初めましてっ!私、サクラチヨノオーと申す者です!!」

 

「初めまして。昨日そこにいる夜神トレーナーと担当契約を交わして、今日からこのチームでお世話になるエイシンフラッシュです。」

 

「はいっ!よ、よろしくお願いしゅっ…し、します!」

 

チヨノオーは緊張のあまり言葉遣いがたどだどしくなっていて、おかしな敬語を使っている。

対するエイシンフラッシュは昨日と同じ丁寧な対応を貫いている。

こうして2人を眺めていると、どちらが新入りか分からなくなってくる。

この2人を今後監督していく身としては、早いところ仲良くしてもらいたいものだが…。

そう思っていると、エイシンフラッシュが手に持っていた手提げ鞄から綺麗にラッピングされたものを取り出した。

 

「実はサクラチヨノオーさんは和菓子が好きという話を聞きましたので、作ってみたんです。和菓子はあまり作ったことがないので、お口に合うのか分かりませんが…。」

 

そう言って彼女はサクラチヨノオーに小包を渡した。

彼女が丁寧に包装を開けていくと、中には桜餅が入っていた。

それを見た瞬間、サクラチヨノオーの顔から緊張の色が抜けていく。

 

「わぁっ、これ…今、頂いてもいいですか?!」

 

「えぇ、どうぞ。」

 

尻尾をぶんぶん振りながら桜餅を眺めるサクラチヨノオーに対して、エイシンフラッシュは嬉しそうな、しかしどこか恥じらいもあるような複雑な表情を見せている。

恐らくあまり手慣れていない和菓子の出来が気になっているのだろう。

しかしそんなエイシンフラッシュをよそに、サクラチヨノオーは綺麗に形が整えられた桜餅を一口食べる。

 

しばらく咀嚼する時間があり、飲み込んだ後開口一番に出たのは素直な感想だった。

「すっっごく美味しいです!!」

 

それを聞き、フラッシュの顔色もぱっと明るくなる。

そしてサクラチヨノオーは時折和菓子に関する知識を織り交ぜながら桜餅の味や見た目の感想を事細かに伝える。

真面目なエイシンフラッシュは彼女の感想や自分の知らない知識を忙しなく手帳に記していた。

 

その様子には先程の緊張していたサクラチヨノオーの姿はどこにもなかった。

この分なら2人は上手くやっていけるだろう。

そう思い、トレーナー室の外に出る。

そして外にいるエイシンフラッシュの守り神に対して声をかける。

 

「…君も来ているとは思っていたよ。君はこっちだ。」

 

「あぁ。」

 

必要以上の言葉はいらないといった様子だ。

彼女…バイアリータークはまだ僕の事を完全には信用してくれていないようだ。

だがそれはこちらも同じだ。

()()()()()、僕らはお互いを知る必要がある。

そして、トレーナー室の隣にある物置の扉を開ける。

 

「よう、待ちくたびれたぜ、月。」

 

物置部屋の中では予めリュークに待ってもらっていた。

彼女と腹の探り合いをする上でリュークの存在は避けては通れない。

事が上手く運べば、今のリュークに関する情報も手に入るかもしれない。

 

「?!……何だ、こいつは…?」

 

案の定バイアリータークは驚いている様子だ。

彼女も『こういう』生物を見るのは初めてという事だ。

 

「それについては僕から後で説明するよ。」

 

動揺する彼女の前に椅子をひとつ出す。

渋々ではあるが彼女はその椅子に対して腰かけてくれた。

ひとまずこれで役者は揃った。

 

「さぁ、話をしようか。」

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