CHiYO NOTE   作:苺ジャム

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これまでの話のタイトルの一部を修正しました!
それでは本編をどうぞ!


第六話 退屈

ウマ娘がどういうトレーニングをしているのかは概ね把握出来た。

グラウンドで得られる情報はこれくらいか。

 

「葵さん、僕はそろそろ寮に帰りますが、葵さんはどうしますか?」

 

そろそろリュークがチヨノオーを見つけた頃だろうか。

桐生院葵と離れたいので、適当な嘘をつきその場を離れようとする。

 

「私はもう少し見ていきます。気になる子もいるので。」

 

もう担当したいウマ娘の目星がついているのだろうか。

 

「そうですか、それじゃあまた。」

 

一度リュークと合流するため、その場を後にした。

しばらく学園の構造の把握がてら歩いていると、リュークが空から降りてきた。

 

「いたぜ、月。あっちのコースの方だ。」

 

「そうか、ありがとうリューク。今は手元にりんごはないから、寮に戻ってからでも構わないか?」

 

「さすが月、話が分かるな。」

 

そして、リュークがチヨノオーを見つけたというコースへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…中距離レースを想定したトレーニングコースか。

かなりの数のウマ娘やトレーナーがいる。

 

やはり中距離用のコースは人が多いな。中央競バでは中距離のGIや重賞レースが多いため、トレーナーとしては中距離が得意なウマ娘を担当したいんだろうな。

ここにいるということは、チヨノオーは中距離が得意なウマ娘なんだろうか。

 

「月、あそこだ。あいつだろ?」

 

リュークのいう方には、確かにサクラチヨノオーがいた。

 

「あぁ、あの子だ。どんな走りをするのかと思ったが…なるほど、極めて特殊、と言った感じじゃないな。むしろ基礎を磨き上げたような…型にはまった走り方をしているよ。ただ、確実に他のウマ娘と比べて頭一つ抜けている。」

 

彼女の走りは、さっきのグラウンドで見たオグリキャップのような、いわゆる『特殊型』のそれではなく、基本を積み重ねた上での、教科書通りの走り、といったような走りだった。

 

そして見た限りだが、彼女にトレーナーはいない。

 

「……。」

 

「どうした、月。」

 

「決めたよ、リューク。僕は彼女の担当トレーナーになる。もちろんあのノートが気になるってのもあるが、それだけじゃない。純粋に試してみたくなったんだ。僕のトレーナーとしての実力を。」

 

「意外だな、月がそんなことを言うなんて。俺はてっきり、また『新世界の神になる』とか言い出すのかと思ったぜ。」

 

「僕ももう立派な大人だ。さすがにもうそんなことを言うような年齢でもないよ。あの時は高校生だったしね。それに、あの時はデスノートという手段があったからああいう事をしたが、今の僕にそんな力はないよ。本来僕は、『心の優しい優等生』なんだよ、リューク。」

 

「よく言うぜ。」

 

「そもそも今も昔も僕が一番恐れているのは、退屈なんだよ。リュークも退屈だったから人間界にデスノートを落としたんだろ?」

 

「まぁ、そうだな。あの時は他に何も面白いことがなかったし。」

 

「それをたまたま退屈だった僕が拾った。つまるところ、全て退屈が原因なんだよ。だから、僕がトレーナーとしてここにいるのも『退屈しのぎ』に過ぎない、ってことでいいだろ?」

 

「よく分からんが、俺は面白いものが見られるなら、なんだっていい。」

 

「安心しろ、リューク。また面白いものを見せてやるよ。新世界の創世の始まりだ。」

 

「あ、言った。」

 

「……。」

 

「月ってちょっと中二病っぽいところあるよな。」

 

「……リューク、今日はりんご抜きだ。」

 

「えぇっ、それはないぜ…」

 

そうして二人は寮へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。今日は未契約のウマ娘たちが出走する模擬レースがあるそうだ。

出走者名簿には、サクラチヨノオーの名前もあった。

 

「よし、ここで彼女をスカウト出来れば、僕は晴れて正式に担当持ちのトレーナーになれるという訳だ。」

 

「そう上手くいくか?」

 

「リューク、僕の予想が正しければ、この模擬レースの結果はーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク、本当にそんなに上手くいくか?」

 

「まぁ見てなよ、リューク。」

 

とはいえ、まだ11時を回ったばかり。

模擬レースは昼の12時から、距離別に開催される。

 

最初に短距離のレースが行われる。

次にマイル、中距離、長距離ときて、最後にダートレースが行われる。

 

それぞれ一時間の予定で、レースの間に20分程度の時間がある。

これはレース場の移動に関係している。

 

ここトレセン学園は簡単に言うとかなり広く、距離ごとに別々のレース場が用意されている。

 

ウマ娘からしたら、自分の最も得意な距離を選んでコースを走れるといった利点がある。

 

加えて、今回の模擬レースのような学園内のイベントにも利用されている。

 

本来、レース場をいくつも設置すると莫大な金額がかかるため距離別にコースが用意してあるのはかなり珍しい。

聞くところによると、理事長がかなり無理を言って設置したらしい。

子供のように見えて、恐ろしい人だ。

 

 

そして僕とリュークは昼食を取るため、食堂へと来ていた。

なんだかんだ、食堂に来るのも初めてだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入ってすぐに後悔した。

席に座って食事をしているのは、ほとんどがウマ娘だった。

 

 

これは後になって知ったことだが、トレーナーたちが食堂で食べることはあまりなく、自分のトレーナー室で食事を取るのが普通、とのことらしい。

 

人目を気にする方ではないのだが、さすがにこっちを見ている人数が多い…

次回からは自室で食事を取ろう、と固く誓う夜神月であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして僕たちは食事を取り終えた後に、午後から始まる模擬レースのため、中距離用のコースへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中距離用のコースに着いたが、時間よりかなり早めだったので、レースが始まるまでかなり時間がある。

 

今回の模擬レースは距離ごとに違う時間にレースが開催され、トレーナーたちは見ようと思えば全てのレースが見られるようになっている。

 

「中距離の前はマイルのレースか…」

 

昨日見た『オグリキャップ』も出走するみたいだ。まだ時間もあるし、見に行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

マイル用のコースへと向かっていると、後ろから声をかけられた。

 

「トレーナーさんデスか?」

 

今日のレースに出るウマ娘だろうか。何故かプロレスラーが試合でつけるようなマスクをつけている。

 

「あぁ、僕は新人トレーナーの夜神。君は今日のレースに出る子かな?」

 

「私には既にトレーナーさんがいるので、今日のレースには出れないのデース!今日のレースに出るライバルの偵察に来たのデース!」

 

そういうパターンもあるのか。

 

「そうなんだ、じゃあ、僕は行くところがあるから。」

 

背を向け、その場を離れようとすると、またしても呼び止められた。

 

「あ、待ってくだサイ!まだ名前を言ってないデス!」

 

そう言うと、彼女はまた僕に近づいてきた。

確かにまだ彼女の名前を聞いていないが、僕に名前を伝えることがそんなに大事なのだろうか。

 

 

 

直後、彼女が言った言葉に、思わず背筋が凍りついた。

 

 

 

 

「私は『エル』デース。」

 

 

「!!!」

 

 

 

このセリフは…聞いたことがある。忘れるはずがない。

〝あいつ〟と初めて会った時のセリフ…

 

「これは私のトレーナーさんに教えてもらった挨拶なんデス!どうデス?面白いデスか?」

 

面白いというか…僕にとっては恐怖でしかないんだよ、そのセリフは。

 

「う、うん、独特な挨拶だね。僕は先を急ぐから。それじゃあね、エルさん。」

 

「はい、また会いまショウ!」

 

 

嵐のような子だったな。

 

 

…待てよ、さっき、あのセリフはトレーナーさんに教えてもらった、とか言ってなかったか?

 

いや、考えすぎか。あのウマ娘に担当トレーナーがいるということは、僕が関わることもそうそうないだろう。

今は自分のことに集中しなければ。

 

気持ちを切り替え、マイル用のコースへと向かうのだった。




エルコンドルパサーは今回初登場でしたね!
果たしてエルのトレーナーとは…?

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